40話 城にて-1
お城ですよぉ!
腐敗貴族ですよぉ!
ファンタジーですね!
「俺は行かんぞ」
「ご主人様!もうお城の前ですよ!ここに来て我が儘言わないでください!迷惑が掛かるのはバイエルさん達なんですからね!」
現在俺、ライアー、マニ、イナリ、トトーナ、リリー、フラールで城に来てしまっている…。
リリーは本来呼ばれて無かったがついていきたいらしいのでいつも通り胸ポケットに入って頭を出している。
もちろんフラールはフード付きのコートを被せて低空飛行させてある。
俺は嫌な予感がビンビンするので断固として行きたくは無いが渋々行くことになってしまっていた…。
「早く行きますよ!さっと行ってさっと戻ればいいんですよ!」
マニが飛び上がって俺の背中を馬鹿力でぐいぐい押してくる。
「分かった分かった!行く行く!あぁもう!ヤケクソだ!何でもこいやぁ!」
「そうです!その息です!ほらほら、ライアーさん達も行きますよ!」
2人はぐんぐんと先に進んでいった…。
「ご主人様…どんだけ嫌だったの…」
「私も嫌だけどな…」
「私はマナーは一通り出来るので大丈夫です!」
((格好が一番怪しいけどね…))
ライアーとイナリがなんとも言えない目でフラールを見つめていた…。
…
……
………
「ようこそ!よくぞ来てくれた!私がこの街の首長、ドン・ヨークだ!君が小吉君かね?」
高身長で整った髪と正装に渋い髭、好感が持てそうな雰囲気の中にしっかりとした荘厳な空気を持った紳士が執事達を伴って現れた…。
当初考えていた人物像と180度違ってみんなが驚いている…。
「どうかしたかね?私の顔に何か付いているかね?……おぉ、これは失敬…ケーキのクリームが付いていたようだ…」
ドン・ヨーク?はハンカチを取り出すと口元を綺麗な仕草で拭った…。
「はっ!?すみません…ちょっと寝不足でぼーっとしてしまって…」
「大丈夫ですかね?寝不足は肌にも悪いのでお気を付けて…」
「お気遣いありがとうございます…。僕が小吉です」
(((僕…)))
ライアーとマニとイナリがクスッと笑う…。
おいおい…後で覚えておけよ…。
「ふふふ、そんな敬語で畏まらなくてもいいですぞ!普段通りの素の状態で接してくれ。あくまでも私が呼び出した客人なのだからな」
「は、はぁ…ありがとうございます」
「して、そちらのお嬢様方も可愛らしい方達ですなぁ…私ももう少し若かったら積極的になっていたかも知れませんな、ははははは!!」
以外と接しやすい人物で助かったと心底感じた…。
しかし、何故このような人物が嫌われるのか理解が全く出来なかった…本能的に好感が持てる様な人物だったからだ…。
(なぁ、ライアー…この人物どう思う?)
俺はスキルを使ってライアーに話しかけた。
(…正直何故嫌われているのかが全く分からない…小吉は?)
(俺もだ…)
「さて、みなさん!此処で食事に致しましょう!ではごゆっくりと…」
何故かドン・ヨークは頭を下げてドアを開けた…。
部屋の中には長い机の上に沢山の料理が並べられていて、既に誰かが食事をしている…。
「どういう事だ?」
「私は先代から仕えている影武者兼執事長です。この度は小吉様方を騙す様な真似をして申し訳ありません…。中でお食事になられているのが現在の城塞都市ワルゴの首長です…私は味方ですどうかお気を付けて…」
最後は小声で注意を促してきたと同時に紙を渡して来た…。
「…ありがとう」
中に入ると執事長が椅子を引いてくれて座らせてくれた。
全員が座ると部屋の隅に移動し、待機した。
「おぉ。よくぞ参った!小吉とやらとそこの娘達よ…まぁ、楽しくやろうでは無いか」
口に物を入れたまま喋るのはブクブクと太った脂ぎったおっさんだった…。
(うわぁ…想像してた腐敗貴族だ…)
「先程のアルスとのやり取りを見ていたぞ。それで敵意は無いと判断して私が直々に出てきてやったのだ、感謝しろよ?」
the上から目線が酷い…それに影武者と容姿が違いすぎて意味が無い…本当に相手が敵意を持っていたら気づくだろ。
「は、はぁ…ありがとうございます」
とりあえず適当に返しておいてさっさと退散するとしましょうか…。
「さて、本題なのだが…非正規の奴隷商の組織を壊滅させたのはお前達で合ってるのか?」
「はい。そうですが…」
「おぉ!それは素晴らしい!良くぞ我が都市に巣食う蛆虫を倒してくれた!礼をいうぞ!」
「………?」
この時マニだけがドン・ヨークが一瞬不機嫌になったのを見過ごさなかった…。
「ふぁ〜ぁ…パパ…眠い…」
「眠い?さっきまであんなに元気だったじゃないか?」
「すみません…ご主人様…僕も眠いです…」
心なしかライアーもフラールも眠そうだ。
時刻は午後9時頃なのでしょうがないか…。
「どうやらかなりお疲れのようですな!是非とも我が城へ泊まっていくがいいぞ!おい!客人を客人用寝室まで案内しろ」
俺達は執事長以外の別の執事に連れられて寝室へと案内された。
「お嬢様方はこちらの部屋になっております。旦那様はこちらへどうぞ…」
(ご主人様…気をつけて下さい…何か嫌な予感がします)
(あぁ…)
…
……
………
部屋に入るととりあえず胸ポケットに仕舞ったさっき貰った紙を出した。
(ご主人様、なんですか?それ?)
一緒にポケットに入っていたリリーも顔を出す。
「分からん………粉?何の粉だ?」
せめて紙に何の粉か位書いて欲しかったな…。
俺は隠し持っていたパンをリリーにあげるとベッドに横になった。
(あれ?寝ちゃうんですか?)
「あぁ…何か疲れた…最近立て続けに色々あったしな…みんな疲れが溜まってんだな…」
(大変ですね…私もこのパンを食べたら寝ますかね…………あれ?このパン変な匂いがしますよ?…ご主人様?寝ちゃった…)
お腹の空いたリリーはパンを食べようとするがどうしても匂いが嫌で別の食べ物を探しに行った。
器用にドアノブを下ろして開けてタッタッタといい匂いのする方向へ走っていく…。
「チュウチュウ!!チュチュウ!」
(へい!そこの姉ちゃん!俺と遊ばないか?)
「チュウ!チュウチュウ…チュチュウ!チチュ」
(ご主人様から知らないネズミにはついていくなって言われてます…お腹が空いたので失礼します)
「チュウチュウチュチュウ!チュウ!」
(それならいい道を知ってるぜ!ついて来な!)
「チュ!チュウ!」
(ちょっと!待ってください!)
結局ついていってしまうリリーなのであった…。
…
……
………
(この道を通ると厨房だ!ネズミ取りに気をつけろよ!偶にかかる奴は余所者だからいいけど、あんたみたいなかわい子ちゃんは見捨てる訳にはいかないからな!)
(別に掛からないです!そこまで馬鹿じゃないです!)
「なぁ…本当にこんな事して良かったのかなぁ…」
(ヤバイ!料理長達だ!隠れろ!)
ささっ!っと元の穴に潜り混むと身を小さくした。
「仕方が無いだろ…俺達の生活もあるし家族も居る…逆らえないだろ?」
「それはそうだけど…見ず知らずの人でもそれは同じだろ?そんな同じような人にあんな量の猛毒を盛るなんて…正気の沙汰じゃない!あの人達死ぬぞ!」
「いや、噂じゃあの人達は全員がランクSだ…多分死なないさ…精々2日位眠り続けるだけさ…」
「でもあの"肉"あの娘までも自分の物にする気だぞ!俺にだって同じ位の娘が居る!耐えられるか!?」
「馬鹿!声がデカイ!この事は俺達料理長とアルス執事長と一部の人と本人しか知らない…。バラしたらお前の娘もそうなるかも知れないんだぞ!」
「くっ!先代の首長ならこんな事には…」
「それは誰もが思ってる事さ…しょうがないさ…レジスタンスも当てにならないしな…」
コッコッコッ…。
「おい、誰か来たぞ…」
2人の料理長は急いで仕事をやってる振りをし始める…。
しばらくするとさっきの首長が2つの袋を持ってやって来た…。
「いやいや!ご苦労!ほら報酬の金だ…」
ジャラ!
「"お前達のお陰"で上手くいきそうだ…報酬には色をつけといてやったぞ?また何かあったら頼むぞ!わはははは!」
コッコッコッ…
首長は馬鹿笑いをしながら去っていった…。
「…ふざけるなよ…こんな金!!」
バシャァン!!!
料理長の1人が机の上の袋を1つ床に叩きつけた…。
床に金貨がばら蒔かれる…1枚が穴の中に転がってきた…。
(おぉ!金貨だ!すげぇ!)
「馬鹿!何やってんだ!?誰か来たらどうするつもりだ!?」
もう一人が急いで金貨を拾い集める…。
「何してる!さっさとお前も拾えよ!……ちっ、こんな穴の中にまで…うわっ!?何か居る!?」
(やばっ!?逃げるぞ!…おい!どうしたんだ!?早くしろ!?)
リリーはよろよろと穴から出ていくと例の看板を召喚して魔力で文字を浮かび上がらせ、料理長に見せる…。
ガタガタガタン!!
料理長は驚いて後ずさった…。
"落ち着いて下さい!話があります!"
「おい…俺疲れてるのかなぁ?変な色のネズミが看板持ってる…」
「いや、俺も見えるから2人とも疲れてるか頭がイったのどちらかだ…」
"現実です!いいからちゃんと見てください!"
「「マジか!?」」
2人は顔を見合わせるとリリーを机の上に乗っけた…。
(あわわわ!あいつ殺されるぞ!?どうにかしないと!?)
とりあえず飛び出してきたネズミ♂は急いでかけ登ってリリーの前に出た…。
(…何やってるんですか?)
(惚れた雌を守るんだよ!さぁここは俺に任せて逃げてくれ!)
「「………」」
ぽかーん…といきなり出てきて両手を広げたネズミを見て止まる2人…。
「この厨房もうダメじゃね?」
「ヤバイな…」
…
……
………
リリーはネズミ♂を説得して下がらせて自分が小吉の仲間だという事と、先程のやり取りを見ていた事を話した…。
「なるほど…今回は本当に済まない事をした…出来ればその仲間を助けてやって欲しい…。非常に勝手な事を言っているのは分かるが俺達は元々やりたくは無かったんだ…助ける手助けはある程度なら出来るから頼ってくれて構わない。ただ、こっちの生活もある事だけは覚えていてくれ…」
"分かりました"
厨房でネズミ相手に料理長が許しを貰うというなんとも言えない状況だが2人はホッとしていた…。
"それと聞きたい事があるんですが、今日食事前にご主人様がアルスさんから白い粉を貰っていました…。心当たりはありませんか?"
器用に看板の裏と表を使って文字を出していくリリー…。
「アルス執事長…白い粉…分からんな…何せ料理一筋でここまで来たからな…薬はこれっぽっちも…」
「薬かぁ…そう言えば昨日、アルス執事長が俺に何の毒を入れるのか秘密裏に教えて欲しいって言ってたな…」
「じゃあ解毒剤か?でもあんな猛毒の解毒薬なんて高すぎるんじゃないか?」
"でもほんの少量でした!精々2人しか飲めないと思います!"
「いつも完璧に準備する人が揃えられなかったなら尚更解毒剤だろうな…」
"じゃあそれを飲ませれば!"
「あぁ…2人は目覚めるだろうな…ただ遅効性だったら不味いんじゃないか?」
"なら早速飲ませて来ます!"
「まて、これを持ってけ…」
料理長は瓶にぬるま湯を入れて短めの棒をリリーの背中に落ないように紐で結んだ…。
「粉ならこの瓶に溶いて飲ませるんだ…少量づつだぞ?人間は一気に入れるとむせるから気をつけろよ」
"ありがとうございます!"
そう伝えてリリーはネズミ♂を連れて小吉の下へ急いだ…。
影の薄いリリーさんが活躍します!
※誤字、脱字の改善
(2014/8/28)




