36話 救助
「イナリ!こっちです!居ました!」
「はぁはぁ…ようやく見つけーートトーナ!!」
イナリはボロボロになって倒れてるトトーナを見て叫んだ…、マニも思わず拳に力が入ってしまう。
「イナリ…貴方は回復出来ないからこの人達の相手をお願い、私がトトーナを助けるわ」
「分かった!頼んだよ、お姉ちゃん!」
「させるか!お前達また弱体化を掛けて1箇所に集まりな!」
「「「「「了解!」」」」」
迅速かつ適切な対応で素早く命令をこなす部下たち…部下が再び魔術を行使するとマニとイナリも体が怠くなって動きにくくなった。
(なるほど…これでアカネ達を守りながらだとトトーナじゃきついかもね…)
イナリは愛刀をマヤに預けてあるので予備の自作の刀を2つ出して構えた。
「ちっ!こいつも化け物か!?…まぁいい…丁度手応えが無かった所だったからね!!」
ターメルは今度は最初から全力で連射した…だが…
「馬鹿ね!それを正面から受ける何て!ーー何!?」
イナリは集中すると正面からの矢を無駄の無い動作で受け流し、あるいは叩き切った…。
そのままゆっくりとターメルに近寄っていく。
(ふっ…矢が正面からしか飛んで来ないと思ったか!後ろだよ!)
数本の矢がイナリの真後ろから飛んできた…
(殺った!)
ガガガガン!
しかし、イミテーションによって増えたイナリによってそれは防がれた…。
「なっ!何で増えてるのよ!?こうなったら!」
ターメルはクロスボウを出鱈目に乱射して全ての矢の進路を途中でねじ曲げあらゆる角度からイナリを狙った。
しかし、更にイミテーションが増えた事で迫ってくる速度は変わらない…。
だが、ターメルの狙いはもう1つあった…
「きゃぁぁぁ!?」
アカネ達に無数の矢が襲いかかる…しかしイナリは全く動揺しなかった、何故なら自分達の中でも1番強い小さな姉が居たからだ。
マニは降り注ぐ無数の矢を蹴って進路を変え、握りつぶし、爆破した。
そのうち、十分に距離を詰めたイナリがクロスボウを微塵切りにし、ターメルの首に刀を突きつけた…。
「何よ?アンタ達?まさかこんな子供にやられるなんて…」
部下たちもイミテーションにより刀を突きつけられ魔術を解いた…。
「ふん!まだ上の階に私より強い奴が残っていーー」
ズドーン!!
突如天井が崩れ落ち、アカネ達を誘拐した時に居た2人の男が瓦礫の山に落ちてきた…。
1人は体中の首以外の関節が変な方向に曲がり、1人は全身の皮膚が炭化している…。
「ら、ライアーさん?ちょっとやり過ぎじゃないですか?」
「そうだぞ、ライアー!俺みたいに動けなくすればいいんだよ」
「小吉だって最初凄い目で殺してやるって言ってたじゃないか!?」
「あれはあれだ…娘が誘拐されて変態に売られるって聞いたら誰でもそうなるだろ?な?」
「おいおい、旦那…炭はともかくもう片方は元の生活に戻れるのか?」
「知らん!」
上の階で男2人と女と幽霊が騒いでいる…。
「えっ?な、何で…こんな事って…」
ターメルは自分の上司が殺られた事に絶望してその場にへたりこんでしまった…。
「トトーナちゃん!トトーナちゃん!…マニさん!トトーナちゃんは大丈夫何ですか!?」
「はい!大丈夫です!気絶してるだけですから!」
「はぁ…良かった…」
アカネはトトーナを抱きしめてしばらくの間泣いていた…。
…
……
………
その後、街の衛兵を呼んで事情を話す事になった…。
衛兵長を務めるヤクトというおっさんが俺達に事情等を聞いてきたので説明をした。
「なるほどな…家族が居なくなったから探したと…にしても大手柄だな!中々尻尾を出さず俺達が相当手を焼いた連中だ!売られた人々も何処に売ったかの帳簿が見つかったからそこから連れ戻す事も出来るだろう!この街の住民を代表して言わせて貰おう、本当にありがとう!」
「いやぁそれほどでもないですぅ!」
「そうです!私達に掛かればこれくらいちょちょいのちょいですよ!」
マニとイナリが調子に乗ってドヤ顔をする。
ヤクトさんも苦笑いしつつも感謝を述べる。
「随分と個性的な仲間ですな…どう言った関係で?」
「このちっちゃい2人と治療を受けてるハーピーの子とこのネズミが俺の契約してる魔物でライアーが…彼女…で、この冴えないおっさんが…おっさんで、この幽霊は…人形姫だ…」
改めて口に出すと凄い面子だと思う…。
思わず"彼女"という所で言葉が詰まってしまった。
「聞きたい事が色々あり過ぎて出てこないぞ…」
「俺も何でこうなったのか聞きたい…」
男2人が頭を抑えてため息をついた…。
「「ちっちゃい…」」
「か、"彼女"……」
「結局おっさんじゃないか!?」
「結局幽霊でいいんですか?」
(えっ?何!?私は寝てただけですけど…)
三者三様の反応で騒ぎ出した…。
「まぁ、こいつらは放っといて…、今回1番活躍したのはあの治療中のトトーナと彼女にしがみついて離れないアカネだろうね…」
「そうですな…彼女達を捕まえた人さらいは完全に運に見放されてた様ですな」
そんなこんなで事情聴取も終わりその日は家に帰る事が出来た…。
…
……
………
帰り道、またまた夜遅くなってしまい、もしかしたらまたあの心霊現象が…なんて考えてしまい、全員がプルプル震えながら歩いた…もっとも、幽霊がすぐ傍に居るわけだが。
「何か今日も疲れたな…」
「き、今日こそはまともに帰って寝るぞ!」
「ひゃ!ご、ご主人様!い、今あそこで何か動きましたよ!?」
「やめてよ!お姉ちゃん!?僕達だって怖いんだから!」
「本当ですか!?マニさん!?私も怖いです!」
「いやいや、幽霊のお嬢ちゃんの方が怖いって…」
「おいおい…怪我人運んでるんだからあんまり引っ付くなよ…」
ライアーにはマニを抱かせて置いてわいわいしてる面子を放って置いて、ガナッシュを背負った俺は後ろで無言で歩いてるアカネの所に下がる…。
「どうした?元気無いな?」
「小吉お兄さん……何でも無いです…」
「何にも無いことも無いだろ?…今回、自分が弱くて足でまといだった事を悩んでるんだろ?」
「!?」
図星だった様でアカネはビクッ!っと肩を震わせた…。
「今回のはしょうがなかったと思うぞ…そもそもランクが一番上の人間同士の戦いだったし戦い方も相手が1つ上だった…どう考えても一般人が入れないぞ」
「…でも、もし頑張って地面を這って隠れられてたらトトーナちゃんは傷つかなかった…」
「いや、あれは動ける方がおかしいだろ…マニ達があれだけ動けなくなる程だからな。まっ!とゆうわけでアカネは何も悪くない!気にすんな!」
「…ふふふ、そうですね…ありがとうございます。お陰で元気が出てきました!」
いつも何処か素っ気なかったアカネが初めての満面の笑みを見せてくれた。
(ライアーさんとエレノアさんが惚れたのが分かる気がします…)
理解者の理でアカネからの言葉が頭に響く…。
「何か言った?」
「!?!?い、いえ!何も!」
どうやら無意識のうちに漏れ出してしまった様だ…地味に面倒だな…このスキル。
どうにかしないとな。
「そうか…。にしてもガナッシュ軽いな…ちゃんと飯食ってるのか?」
「多分、遠慮してるんだと思います…彼は妙にそういう性格なので…」
「う〜ん…起きたら遠慮するなって言っといて」
「分かりました」
「ん…んん…!?ここは!?」
俺が背負っていたガナッシュが目覚める。
なんて素晴らしいタイミングなのか…。
「ガナッシュ!良かった…ようやく起きた…」
「アカネ!…それに兄ちゃん!?何で!?」
「お兄さん達が助けてくれたの!それと、ちゃんと遠慮せずに飯食えって!」
(そこはちゃんと言うのな…今言おうと思ったのに…)
「な、何故それを今…それと、兄ちゃん!ありがとう、また助けて貰っちゃったな…」
「一応保護者だからな…しかしお前が着いていながら何でまたこんな事に?」
「えっと…確かトトーナが待ってるって言われて連れてかれたんだ…。俺もあの時はトトーナを探す事で精一杯だったから…ごめん」
「反省してるなら気にするな。…じゃあ何でトトーナは連れ去られたんだ?あいつなら抵抗すれば直ぐに逃げれただろうし…」
「何ででしょうね?本人は私の背中で寝てますし…」
「むにゃむにゃ…もう食べられないよぉ…」
当の本人はアカネの背中でうっすらよだれを垂らしながら寝ていた…。
呑気な奴だ…。
「案外お菓子とかで釣られたのかもしれないな…」
「いや、そこまで馬鹿じゃないだろトトーナは…無いだろ…いや多分無い…」
思い当たる節が多すぎて段々と自信が無くなってゆく。
アカネもガナッシュも苦笑いだ…。
「に、兄ちゃん!もう自分で歩くから降ろしてくれよ!」
「大丈夫か?思いっきり頭を殴られたんだ…気持ち悪くなったりしたらすぐ言えよ」
「はいはい…全く、兄ちゃんは心配症だなぁ」
俺はガナッシュを地面に降ろした…、若干ふらついたがちゃんと歩ける様だ…。
「あっ」
「おっと、危ない…そういえば聞いたぞ、アカネ…お前も出血が酷かったって…トトーナは俺が背負うからアカネはガナッシュと手を繋いでおけ」
「う、うん…」
アカネからトトーナを貰って背負う…こいつ身長の割に重いぞ…勿論問題は無いが、ガナッシュと大きさが同じだったらトトーナの方が絶対に重い…。
アカネはガナッシュの手を包帯で覆われた手で握った。
「いつっ!?」
「すまん!?大丈夫か!?」
「うん…大丈夫…今度は優しくしてね?」
後ろから見てると中々に仲が良い様だ…。
聞くと幼馴染みだった様だ…兄弟かと思ってたぞ…。
「し、小吉!マニ達が怖い話をするんだが!?止めさせてくれないか!?」
ライアーがしがみついてきた。
おいおい、何やってんだよ…お前ら…。
すっかり調子に乗ったマニとイナリが俺の知識にあった怪談を聞かせていた様だ。
こんなアホな事でもうっすら笑っていながら俺も便乗して歩いていった。




