29話 装具屋の災難
新しい場所に着きましたよ!
一週間後、無事ワルゴに到着した俺達はそれぞれのやる事を為すために別れた。
「じゃあ俺は盗賊共の捕縛を依頼に冒険者ギルドに言ってくるぜ」
「では私達は店に戻りますか…」
「じゃあ、俺達は地図の店に行ってみるよ」
ラッツは盗賊の捕縛を依頼にギルドへ向かっていった。
バイエル達は元々ここを拠点として各都市や村に行商に行っていたようで、此処に店を構えているらしい、そしてアカネ達はバイエル達について行って、面倒を見てもらう事になっている。
別れ際、アカネとトトーナが離れたくないと言ってきた…。
泣き出す2人に困り果てているとバイエルが、この街に居る時はわたし達の店に泊まればいいと言ってきたのでありがたく世話になる事になった…。
現在、俺とライアーとマニ達で紹介状に書かれた町外れの店にきているのだが…。
「あれ?店何か無いぞ…」
「本当だな…」
「ミツル師匠がそんなミスするとは思えませんけれど…」
「だよねぇ…」
「ん?もしかして空にあるとか?」
「小吉…それは無いと思うぞ」
「とりあえずちょっとそこらで聞いてーー」
「そ、そこの人達〜!!」
誰かが土煙を上げながら全力で走って来た…。
「あの!その紹介状があるという事は私達の店の客人ですよね!!」
走って来たのは黒に近い紫色の髪をオールバックにした細身の男性だ…。
服装は所々が土で汚れた作業着の様なものを着ている。
「多分そうだと思うが…、一体どうしたんだ?」
「理由は説明します!でも今はそれどころじゃないんです!お願いです!一緒に来てください!」
尋常じゃない焦り方に何か良からぬ事を感じ取った一行…。
「ちょっと待って!いきなり説明も無しにはいそうですか、何て行けるわけがないだろ?とりあえず落ち着け」
「は、はい。すみません…。えっと…その紹介状があるという事は戦いに腕がある人という証明でもあります。私達の店へは招待状が無ければ入れませんからね。……で、本題なのですけれども、鉱石材料を取りに店が所有してる片道2日の鉱山へと向かったのですが魔物の巣を堀り当ててしまって…魔物が暴れたせいで落盤…親方と弟子1人が巣の方へ取り残されてしまいました…、僕は幸い出口側に避難できたので助けを呼びに来たのです…」
なるほど…つまり今回の武具作成はその親方が居ないと出来ないのでは?
「分かった…助けに行こう…」
「あ、ありがとうございます!じゃあ早速馬の準備を…」
「コール!」
ポンッ!
(((何でしょうか?小吉様!!)))
ビシッ!っと敬礼しながらナノ達が現れた。
まるで軍隊だな…。
「わわ!何でクルーが!?」
「こいつらに乗ればすぐに着くはずだ!行くぞ!」
俺とライアーが別々で乗って、そこにマニ達が乗り、余ったピコが男性を銜えて自身の上にポイッ!っと乗せた…。
「しっかり捕まってろよ………えーと…名前何?」
「アルーノです!」
「OK!じゃあしっかり捕まってろよ!アルーノ!………フルパワーギア!」
「えっ!?どういうーーギャアァァァ!!」
アルーノは生まれて初めての絶叫マシンに体の奥底から悲鳴を上げた…。
…
……
………
走り出してから約2時間程で例の鉱山に到着した。
アルーノはあまりの速さに後半からは興奮状態になっていた。
「恐らく親方達が閉じ込められてから1日は経っています…親方は腕っ節もありますがそれでも持たないかもしれません!」
「ご主人様!早く助けに行きましょう!」
「そうだな…案内してくれ!」
「こっちです!ついてきて下さい!」
こうして俺達は突入を開始した…。
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もう落盤が発生してからかなり経ったと思う…、恐らく1日は経ったと思う。
アルーノが街に着くまでは後1日…戻って来るのに馬かクルーを使えば1日、食料は水が 水筒3本分だけだ…。
衰弱はするだろうが十分間に合うと思う。
「馬かクルーを使えばよかったな…すまんなジェット…」
「親方のせいだけじゃないですよ…賛同した俺達も悪いんですよ…お相子です…」
割と小柄な女性が大人の男性を重量を感じさせない足取りで背負って歩いている。
ジェットと呼ばれた男性は黒の短髪で顔色が悪い…、何故なら左足が膝から下が痛々しく噛みちぎられており、アルーノと同じ作業着が血で滲んでいるからだ…。
親方と呼ばれた女性は、やはりアルーノと同じ作業着にヘルメットを被っていて、ヘルメットから溢れたオレンジ色の髪で2つの三つ編みを作り後ろに下げている。
腰のベルトには様々な道具が吊るしてあり、中には血がこびりついたツルハシもある…、恐らくこれで戦ったのだろう…。
「とりあえず見つからない場所に隠れようか…」
「…………………」
「おい!ジェット!大丈夫か!?」
「!?…だ、大丈夫です…少しだけ眠いだけです…」
「ほら、水分を補給しておけ…焼いて傷口を塞いだとはいえ、かなり出血した筈だ」
「これは親方の分じゃないですか!?まだ大丈夫です!とっておきましょう!」
「駄目だ、飲んでおけ。お前達に死なれると困るんでな…」
「わ、分かりました…ありがとうございます…」
ガァァァァ!!
グルルル!
「ちっ!またか!?ジェット!ここに隠れてろ!」
親方は近くの窪みにジェットを下ろした。
ジェットも足手まといなのが分かっている為、素直に従う。
親方はツルハシを持ち、石を拾うと声がした方向へ構える…。
洞窟の窪みに隠れていたのであろう白いブヨブヨした目の無い犬のような魔物が3匹現れた…。
「よりによってこいつか!?勘弁してくれよ…」
音もなく一匹が飛びかかって、頭の部分が十字に開き中の牙が所狭しと並んでいる…。
それを紙一重で躱すと別の魔物の向こうへと石を投げて飛びかかってきた方へ追撃をする。
カツーン!!
飛びかかって来なかった二匹が音に反応した瞬間、飛びかかってきた魔物の頭にツルハシを振り下ろし頭蓋骨を砕く。
グジュッ!!
血肉をまき散らしながら一匹が絶命する…。
仲間の気配が消えたのを感知した二匹が順番に飛び掛る。
先に飛び掛った方の口へ石を投擲し、もう一匹はツルハシでガードした。
「ぐぬぬぬぬ!!」
食いついた魔物はツルハシを奪い取ろうと引っ張るが親方の方が力は上のようで片手で抑えて片手でノミ(石等を削る為の道具)を頭に突き刺した!
「キシャァー!!」
断末魔の悲鳴を上げてまた一匹力尽きる…。
「あと一匹……どこだ?……ーーそこか!」
音もなく飛び掛った残りの一匹にツルハシを使い正面から叩き落とし、再度振り下ろして頭を砕く。
グシャッ!!
「ふぅ……これで終わりか?」
「!?親方!後ろです!」
「な!?ーーきゃ!?」
どんっ!
親方が体当たりを受けて倒れる…そのうえにさっきと同種の魔物がのしかかり食い殺そうとする。
咄嗟に腕を出すが、分厚い作業着を容易く引き裂いて無数の牙が皮膚に食い込む…。
「うぐぅ……!!」
(このままじゃ不味い!奥の手を!)
左腕の痛みで上手く動かない右腕を使い腰から下げた袋の中身に触ってスキルを使う。
「…そ、装具精製!!」
袋の中で何かが光る…。
「うぐぁぁ!!……は、離せ!!」
そのまま食いちぎろうとする魔物に右手で精製したダガーを振った…。
スパン!っと抵抗を感じさせない程の切れ味で魔物の首が切断され、宙を舞う…。
ゴトッ……。
「た、助かった……うぐぁ!?」
「だ…大丈夫ですか!?親方!?」
「だ…大丈夫だ…まだやれる…」
左腕を確認すると無数の穴が空き血が大量に流れている…。
指を動かそうとすると激痛が走る…、恐らくしばらくは使えないだろう。
「は…ははは…すまんなジェット…お前を担げそうにないや…」
「いや、心配無いです…親方1人ならにげれますよ!」
「馬鹿が!弟子を見捨てる師匠何かいるか!此処で私が2日耐えればいいだけだ…」
グルルル!!
暗がりからまたもや魔物"達"が集まってくる…。
「もう少しだけ休ませてくれよ…」
親方がフラフラしながらも立ち上がり右手でナイフを構える…。
(やばいな…こんな精度のダガーなんか作るんじゃなかった…)
恐らくさっきのスキルが原因の目眩が親方を襲う…、もちろんそれを魔物が見逃す筈は無く無慈悲にも飛び掛ってきた。
「あぁぁ!」
右脇腹の柔らかい部分に噛み付いてくるが、すぐにナイフで首を切断したため食いちぎられはしなかったがやはり無数に空いた穴から血が大量に流れ出す…。
あまりの激痛と頭痛で倒れ込んでしまう…。
霞んだ目にはまだまだ沢山の魔物達が見えた…。
(済まないなアルーノ…流石に無理だったよ…)
ガルルル!グルァ!!
一匹の魔物が飛び掛って来て、"破裂した"ところで意識が無くなった…。
…
……
………
「ご主人様!間に合いましたよ!2人とも酷い怪我ですが生きてます!」
マニは気を失った親方とジェットを背にして魔物達との間に割り込む…。
「君!危ない!」
「大丈夫です!」
マニは飛び掛ってきた魔物を空中で蹴りとばし壁に叩きつけて絶命させる。
更に単身魔物の群れに突っ込み怒涛の勢いで殲滅して行く…。
「す…凄い…」
ジェットは小柄なマニが一騎当千の実力を発揮しているのに見蕩れていた…。
「おーい!親方!ジェット!助けを呼んできたぞ!」
「た、助かった…」
安心して気が抜けたのかそのままジェットは気絶してしまった…。
「これは酷いな…」
俺は親方の腕と腹を見て呟いた。
多分血を流しすぎて気を失っただけだろう…。
「ライアー!トトーナ!傷の手当てを頼む!イナリはマニとは反対側を警戒してくれ!手当てが済んだら直ぐに脱出するぞ!」
それぞれが素直に行動を起こしてくれる。
本当に頼もしい仲間だ…。
…
……
………
現在は無事脱出できた為、外にある小屋で2人が起きるのを待っている状態だ…。
「おっ。いい匂いがしてきたな」
「そうだな、私もお腹が空いてきたぞ」
「トトもお腹空いた!」
マニとイナリはよく一緒に居る事が多いので2人揃ってゴブリンの主婦達やミツルから料理を教えてもらう事が多かった為、料理がかなり上達している。
2人の持ち物は特に料理に関する物が多いのだ。
ちなみにリリーも2人に混じって料理を作ってる。
何かそんな映画あったなぁ…。
「それにしてもこのダガー凄いな…軽い上に切れ味がとてもいいぞ」
ライアーは先程親方が落としたダガーを回収しており、その素晴らしさに感心していた。
「そうか。俺達のもそれくらい凄い物を作って貰うとするか!まぁ…しばらく掛かりそうだけどな…」
何せあの怪我だ…、場合によってはあと一週間は掛かるだろう。
だが、別に急いでるわけでも無いのでどっちにしろ待つつもりだ。
「お、親方!まだ寝てなきゃ駄目ですよ!大怪我なんですから!」
「だ、大丈夫だ!恩人達に感謝せねば気がすまんのだ!」
よろよろと寝室から歩いてきた親方が顔を出す。
「あんたらが今回助けてくれたのかい?ありがとう、助かったぞ。自己紹介がまだだったな…アタシは装具士のマヤって言う者で、武具とか魔道具とか道具系を作る店のオーナー兼職人長だ!よろしくな!」
にっ!と笑うマヤ。
笑顔が眩しい女性、というのが第一印象だ。
「俺は小吉、こっちはライアー、この子がトトーナで、向こうで料理してる狐耳の子がイナリで、やたらちっちゃいのがマニで面白い体色のネズミがリリーだ」
こうやって口に出すと結構増えたとつくづく思う…。
「おや?みんな若いねぇ!それに子供が多いね!…大丈夫だ!アタシは亜人であろうと差別はしないから!亜人の子供が居ても問題ないぞ!」
ライアーをチラ見すると顔を真っ赤にして俯いて震えている…。
やっぱり初対面の人にはそうやって見られるのかね?
「トトーナは子供だが俺の子じゃないぞ。魔物で俺達の仲間だ。それに俺とライアー以外は全員魔物だぞ。単に俺のクラスが魔物使いなだけだ」
「そうかそうか!これは失敬した!トトーナちゃんは魔物なのか…、中々に可愛いじゃないか」
「うふふ!ありがとう!マヤ!」
「どう致しまして♪可愛い子は世界の財産だからねぇ!……ところで、紹介状があるって聞いたのだが見せてもらえないか?」
「あぁ、いいぞ…………ほいどうぞ」
「ありがとう………………どうやら本物みたいだな!凄いな…ウチの客で来た奴の中では一番若いぞ!これは張り切って作らなければな!」
俺は紹介状を返してもらいながらこう思った…。
(そりゃまだ1歳にもなってない奴ばかりだからな…)
「そりゃあ楽しみだな!」
「お前らが驚くくらいのアーティファクトレベルの装備を作ってやる!期待してもいいぞ!」
マヤが腕をガシッ!っとやってどんと構える。
ぐぅ〜…
周りがしーん、となってみるみるマヤの顔が赤くなっていく…。
「……そ、その前にご飯くれ…昨日から何も食べてないんだ…」
「お待たせしましたー!焼きたてのパンですよー!」
「僕達でスープと肉料理も作ったのでどんどん食べて下さいね!」
(うんしょ!うんしょ!)
丁度いいタイミングで料理が運ばれてきた。
マニが頭の上にパンが沢山乗ったバスケットを持って、イナリが大きめの鍋を運んで、リリーがスプーンとフォークが入った籠に器を乗せて、器用に尻尾も使って頑張って運んでる…。
「トトーナ、ちょっとリリーを手伝ってあげてくれ」
「はーい!」
(ありがとう、トトーナ!)
で、マヤをチラ見すると…
「……………じゅるり」
怖いくらい真剣な目で見つめていた。
とりあえず座れよ…。
一方、ナノ達は…
ナノ「あのスープ凄く美味しそうね…」
ピコ「確かにね…人間になりたい…」
マイ「ここら辺の草、凄く瑞々しくて美味しいわよ!!」
ナノ&ピコ「「マジで!?…超美味い!!」」
イナリ(スープ持ってきたけど別に要らないかな?)
クルーは雑食です!
※本文の1番始めの部分に盗賊達に対する対処の描写を追加。(14/8/27)
※誤字、脱字の改善
(2014/8/28)




