27話 その後…
前回程じゃないけど、ちょっぴりグロテスクな表現があるかもしれません。
現在、ラッツと盗賊のお頭が対峙している。
ラッツは剣に盾を持ち、お頭は無骨な槌を肩に乗っけている。
(何か雰囲気から既に負けてる気がするな…)
「ラッツとかいうの!負けんなよ!」
「大丈夫です!これでも魔物退治で食べてきたんです!」
「ふん!直ぐにこの槌の錆にしてやるわ!!」
お頭が指をクイクイっとやってラッツを挑発する…、憎らしさが十分に伝わってくるけどこんなのに乗る馬鹿なんて居なーー
「コノヤロー!!!」
居た…。
突っ込んたラッツを迎撃しようとお頭が槌を横に振る…。
ガシャーン!!!
(ぬわぁー!?お宝がぁ!?)
しかしラッツは槌をくぐり抜けて、狙いの無くなった槌は無慈悲にお宝の山を粉砕する…。
そしてお頭に肉薄したラッツはスキルを放った…。
「スラッシュ!!」
剣を振るスピードが上がって残像が見える。
左下から右上にかけて斜めに切り裂いた事に見ていた俺でさえも手応えを感じていた…。
「やったか!?」
(おい…ラッツよ…それを言うんじゃない…)
「ふん!効かぬな!」
突如振るわれたお頭の右ストレートがラッツの顔面に直撃して吹き飛ばされる…。
「ぐっ…な、何でだ?硬すぎる…」
呻きながら疑問を口にするラッツ…。
(強さの秘密をそうそう教えてくれる馬鹿なんて居なーー)
「冥土の土産に教えてやろう!」
(居たぁー!?俺なら絶対に言わねぇ!!)
「これはな!俺のユニークスキル、鋼鉄の体って奴のお陰よ!皮膚を硬くして身を守る以外にさっきの様に殴るのにも使える便利スキルだ!」
(何か今ので弱点が分かった気がするわ…)
「くそっ!一体どうすればいいんだ!!」
(分かれよ!今弱点を自分で暴露したんだぞ!?)
もう突っ込むのに疲れてきた…。
ラッツに弱点を教えて、俺はお宝を漁るとしますか。
(ラッツ、あいつの弱点は体の内側だぞ。中から破壊するか打撃で骨でも折ってやれば大人しくなるだろ…)
ラッツは立ち上がりながら物凄いキョロキョロしている…。
そんな事をしてるうちにお頭が槌を振りかざし、勝利を確信した笑みを放つ…。
「ぶっ潰れろ!!」
ズゴーン!!
土煙が舞い上がり坑道が揺れてパラパラと岩の欠片が落ちてくる…そして煙が晴れるとそこには…。
「な!?躱しただと!?」
盾を構えて大きく振りかぶったラッツが居た。
そして腕を折にかかった…。
「シールドバッシュ!!」
盾が少し光って威力を底上げし、両手で振り下ろす様に腕を狙う。
ガツン!!ピシッ!!
「がぁー!?…このクソが…ぁ?」
お頭が槌から手を放して、それを狙っていたラッツが持ち上げる…。
どう見ても重さが50キロ以上あるであろう槌が持ち上げられ、振り上げられる…。
(ラッツ…隙だらけだな…。仕方ないな…)
(不味い!?このままじゃやられる!?早く逃げーー痛!?)
不意に足に強烈な痛みを感じたお頭は足を見た…。
(なっ!?)
足を見て絶句した…足首から先が切断されて無くなっていたのだ…。
「どこ余所見してんだ…よ!!!」
ドゴン!!!
ラッツが振り下ろした槌がお頭の頭に命中し、スキルのお陰か頭の形は変わらなかったが、失神するには十分な威力だったようだ…。
「………やった…父さんはやったぞ…仇はとったぞ!!安心して眠ってくれ!!ヤン!ユーリ!」
ラッツが勝利した事を家族に報告しながら雄叫びを上げる…。
坑道内で非常に響いてちょっと五月蝿いが、彼にとって一番の目的が達成されたのだ…、それは流石に邪魔できない。
「チュウ!チュウ!」
(ご主人様。やって来ましたよ)
てちてち、と歩いて戻って来たのは先程、坑道に入る前に契約を結んでおいたブレードラットという身長20cm位で長い尻尾が刃物になっているネズミの魔物だ。
姿こそネズミのそれだが、体色は三毛猫の様な色合いと模様である…。
「よくやったな。偉いぞリリー」
手にリリーを乗せて撫でる…。
気持ち良さそうに寝っ転がってお腹を見せてくるので、お腹も撫でてやる。
(やっぱりこういうのが癒されるなぁ…)
撫でるのを辞めると、(もうお終い?もっと撫でて…)と訴えてくる…。
とりあえずリリーを胸ポケットにしまって立ち上がる。
胸ポケットの大きさはちょうどいいようで、リリーは頭をポケットから出してキョロキョロしている。
「ラッツ!終わったならこれ運ぶの手伝ってよ」
「これはすみませんでした…。はい!是非ともお手伝いさせて下さい!」
俺達は大きめの袋に金になりそうな物とか、個人的にいいなと思った物を詰め込んだ。
…
……
………
俺達は来た方向へ戻り、もう一方の牢屋の方へと向かっている。
先程、スキルの切れたお頭にトドメを刺さないのか?と聞いたが、今殺して楽にするよりも、死ぬまで強制労働させるのがいい、と見た目からは想像出来ない程の腹黒さでお頭を必要以上に縛り付けていた。
牢屋への道には数名の監視役が居たが、別にどうって事も無かった…。
また気絶させて転がしておいた。ただ、今度は遊びが目的じゃなくて先程のラッツの言葉通り、奴隷として働いてもらうのが目的だ。
そして現在、意外に少なかった牢屋の前では盗賊が人質をとって居た…。
「く、来るなァ!!この女がどうなってもいいのか!!」
盗賊が虚ろな目をした少女に対してナイフを突きつけていた…。
どうやらラッツも初めて入った様で、ここにいる人の数は分からないらしいが、見た感じ囚われている少女と牢の中の少年だけの様だ…。
服装は頭と腕を出すだけの穴が空いた布だけだ…。
「おい!ラッツ!こ、このナイフでその男を始末しろ!!」
盗賊は別のナイフをラッツに向けて投げる…。
カラン!カラカラン!
(行け、リリー…この通りにやるんだぞ)
(分かりました)
(そこの君、今から助けるから驚かないでじっとしていて…)
少女は少しだけ頷いた…。
(ラッツ…お前はこのイメージ通りに行動しろ)
(あ、あぁ)
「おい!何ボーっとしてやがんだ!?さっさとやれ!!」
「…あぁ…分かったよ…済まないな小吉さん!俺の為だ!」
ドスッ!!
「がはぁ!?…お前!絶対に許さないからな!」
ラッツの裏切りに少女と少年は驚き、また絶望したような目になった…。
「…は…ハッハッハ!!これは愉快だ!盗賊何かを案内人に使うからこんな事にーー!?ギャー!!指がぁ!?俺の指がぁ!?」
俺は一気に盗賊に駆け寄るとアッパーで下から顎を砕く…そして浮いた体を回し蹴りで鉄格子に叩きつける。
ガシャーン!!
無人の牢の鉄格子を壊して中の壁に叩きつけられた…、恐らく即死だろう…。
俺は少年の入った牢の鉄格子を捻じ曲げて少年を外に解放する。
少年と少女は走りよって抱き締めあった…。
「アカネ!」
「ガナッシュ!」
「感動の再会のところ申し訳ないがそろそろ行こうか?」
「えっ!?あっ!はい、すみません…」
ガナッシュと呼ばれた少年が答える。
「とりあえず外に仲間と別の人質になっていた人達がいるからそこに戻ろう」
「ちょっと待ってくれ!その盗賊はどうするんだ!?裏切り者じゃないのか!?」
そう言ってガナッシュはラッツを指で示した。
ラッツの方は焦ってわたわたしてる…。
もうちょいしっかりしろよ…既婚者なんだろ…。
「あぁ、あれは演技だ。ナイフをこうやって脇に刺して演技するんだ。そうすれば相手は刺したと勘違いするからね」
俺は、さっきラッツにやらせたことを2人に実践しながら説明してあげた。
2人は「おぉ!」と中々に気持ちのいい反応を示してくれた。
まさか中学校の時にやりまくった遊びが此処にきて活かされるとは思いも寄らなかった…。
「とゆうわけで、彼は味方だ。それに元々此処のお頭を潰す為に入ってきたらしいぞ」
「…そうだったのか…ごめんなさい、ラッツさん…」
「いやいや!謝らなくていいさ!君達が受けた事を考えたら当然の事だ…」
2人がお互いに頭を下げては、相手に頭を上げて下さいと言う面白い光景に周りの人物は思わず笑みが溢れる。
「さて!じゃあここを出るぞ」
…
……
………
来た道を戻り、最初に野営をする事にした場所に戻ってきた…。
そう、前回マニ達が暴走して血の海になった現場だ…。
「な…何だこれは?」
俺とラッツとリリーは青い顔をして、アカネはその場で吐いてしまうが何も食べていなかったのかえづくだけだった…、慌てたガナッシュがアカネの背中を摩る…。
「おーい!誰かいるか!?」
俺は声を張り上げて周りに仲間が居ないかを確認する。
本来こんな森の中で声を張り上げるのは褒められた行為では無いが、小吉はそれを忘れる程に焦っていた…。
「……こっちだ!小吉!」
別の場所からライアーの声が聞こえた…。
急いで他のみんなを連れて走った。
惨劇の現場から数十m離れた川沿いの開けた場所で別れていた全員を発見して安堵する…。
「パパ!」
「「「「「「「パパ!?」」」」」」」
俺を含め、ラッツ、ガナッシュ、アカネ、バイエル、エレノア、ソニアがトトーナの声に疑問の声を上げた。
トトーナは真っ直ぐ俺に駆け寄ってきて飛びついて来た…。
(えっ!?俺!?)
「パパー!!良かったぁー!殺されちゃったかと思ったー!」
泣き出すトトーナを撫でながらライアーにスキルで説明を求めた…。
(何があったんだ?それと、向こうの血だまりはなんだったんだ?)
(どうやらマニ達を襲った盗賊達のせいで小吉と私が殺されたと勘違いして暴走したらしい…、向こうの惨劇もこの子達がやったみたいだ…)
(………マジで?)
(マジだ…)
とりあえず良く分からないが、盗賊達のご冥福をお祈りします…。
「な、なぁ?小吉?その子、多分ハーピーだよな?お前の子供なのか?」
ラッツの疑問にうんうんと頷く何も知らない6人と一匹…。
俺が聞きたいわ!!
「よく分からん…。なぁ?トトーナ?ご主人様じゃなかったっけ?」
「ご主人様はパパなの!!」
「あぁ…ちょっと、そのパパって言うの止めてくれないか?周りが勘違いするから…」
「やっ!」
「頼むから…おやつ増やしてやるから…」
「やっ!」
駄目だ…聞く耳を持ってくれない…。
とりあえずそのまま抱っこしておいて、連れて来た人の対応をする事にした。
…
……
………
まず、全員の自己紹介を済ましてから恐らく色々な苦痛を味わったであろうアカネのケアをエレノアとソニアとライアー任せて、ガナッシュは俺が対応した…。
捕虜として捕まっていた4人の服や下着等はバイエルが今回運んでいた積荷から貰った…。
ラッツは割と綺麗な服装をしていたので別に大丈夫だ。
テント等は元々持って無かったので、マニに頼んで想像魔術で石の小屋を作って貰った。流石にあれだけ魔力を持っていると想像魔術も殆ど苦にならないようだ。
中ではナノ達に寄り添ってエレノア達とマニ達とガナッシュ達が寝ている。
外に居るのは俺とライアーとラッツとバイエルだけだ。
「この度は本当にありがとうございます!小吉さん!エレノア達も助けて頂いた事も本当に感謝しています!」
「いいよいいよ、別にいいさ…それにもっと早く進んでいればエレノア達もあんな目には遭わなかったのに…こちらこそ済まない気持ちで一杯だ…」
「いや、助けて貰っただけでも十分です!彼女達も感謝している筈です!」
「はいはい!そこまで!いつまでもそんな事言ってたら話しが進まないじゃないか!これからどうするか話しあうんだろ?」
なんとも言えない空気に押され、ライアーが止めに入った…。
「そうですぜ!旦那ぁ!ライアーの姉御の言う通りですよ!」
ラッツは可愛いものが好きな所で小吉と息が合い、すっかり他人行儀な所が無くなって素になって話している。
てゆうか、原形がないな…。
「そうだな…。じゃあこれからどうするか話し合うとするか!まず俺達だが、当初の予定通りにワルゴに向かう。その後は旅に戻ると思う」
「私達もワルゴに向かいます…ただ、移動手段が無いのは困りましたね…」
「俺はやる事も無くなったし旦那についていこうと思います!」
「お前…ついてこれるのか?目的のせいで、生半可な強さだと死ぬぞ…」
「大丈夫です!これでもランクCのストライダーです!ほら」
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名前:ラッツ・フランジ
クラス:ストライダー
Rank:C
生存魔力:3516
自由魔力:976
筋力:15
体力:21
素早さ:36
知性:14
抵抗:9
~スキル~
・武具攻撃
各種武器や防具を使用した時攻撃スキルが出せる。
・回避行動
攻撃を察知できる。
・不意打ち
不意を付く時、効率よく攻撃が出来る。
・レーダー
半径50m以内の敵対している者を感知できる。
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「「はぁ〜…」」
「何ですか!?その溜め息!?確かにあんな強さの小吉さんには敵わないでしょうけど…」
「ちなみに言うとな…悲しい事に俺は仲間の中でも1番弱いぞ…」
あんまり直視したくない現実を思い出してしまった…。
1番強い奴らは中ですやすやとヨダレ垂らしながら寝てると思われる…。
「そんな事はないぞ!小吉!対魔物の大群なら小吉が1番強いぞ!」
うん、出来ればそんなのと戦いたくは無いけどな…。
必死に慰めてくれる恋人が居たのでまだ心の傷は浅い。
「どひゃあ!?そうなんですか!?ちなみに1番強いのはやっぱり姉御ですか!?」
「残念ながらライアーでもないぞ…中で寝てるウチの三姉妹だ…多分あいつらと戦ったら10秒持たない…」
「三姉妹って…マニちゃんとイナリちゃんとトトーナちゃんですか?またまたご冗談を!わはははは!」
バイエルは笑っているラッツを尻目にさっきの惨劇の現場を思い出してぷるぷるしてる…。
「ラッツさん…多分それ本当ですよ…」
「…えっ?」
ラッツの顔が笑顔のまま固まる…。
どんな風に強いかを教えてやるとするか…。
「マニは1番小さいが力と単純な破壊力ならズバ抜けてる…、イナリは増えるし、何でも切り刻む…、トトーナは本気を出せば音を置き去りにして飛ぶ事も出来るだろう…」
「マジですか?」
「マジです」
「いやぁ…女の子って怖いですねぇ…」
顔を青くして冷や汗をダラダラ垂らしながら話すラッツ…。
中々に顔の変化が楽しい奴だな。
「ついてくるのは自由だが、それを考慮しておいてくれよ…」
「……それでも…ついていこうと思います!」
「そうか…分かった。あっ!それと、これはウチの絶対ルールだが、「死んだら殴る」からな」
「何ですかそれ!?ただの死体蹴りじゃないですか!?」
…
……
………
「さて、ラッツはさて置いて、バイエル達の移動手段だが、魔術の得意なマニとライアーに頼もうと思う」
「私か!?」
「大部分は多分マニで大丈夫だが、細かい所はライアーに任せようと思う」
「具体的にはどうやってやるのです?」
「想像魔術を使って馬車を創る」
バイエルとラッツが驚きの表情でこちらを見つめていた…。
トトーナ 「パパ?その胸ポケットにいるのはなーに?」
リリー 「チュウ!?」
小吉 「ん?新しい仲間だぞ。仲良くするんだぞ」
トトーナ 「うん!分かった!……じゅるり」
リリー (食われる!?)
※食べられません。ご安心を…。




