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魂喰い覚醒で最強へ成り上がるFランク少女、意識を奪う闇と共に歩む  作者: beck2026


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第七話:未知なる第二層と、黒き牙の初陣

第一層の魔物を一顧だにせず通り過ぎ、

三月はすでに、第二層の薄暗い通路の奥深くへと足を進めていた。

上層の発光キノコによる幻想的な明るさは完全に消え去り、

ここ第二層は、壁の岩肌が微かに放つ青白い燐光だけが頼りの世界。

天井は遥か高く、まるで巨大な地下の渓谷を歩いているかのような、

圧倒的な広大さと不気味な静寂が支配していた。

十年かけて人類がようやく到達した最高到達層が、わずか三十層程度。

その初期の境界線である第二層であっても、

立ち入ることを許されるのは、最低でもDランク以上の熟練パーティのみ。

空気中に漂う魔力の密度は第一層のそれとは比べ物にならないほど濃く、

油断すれば一瞬で命を落とす、本物の魔境だった。

しかし、三月の足取りに恐れは微塵もなかった。

それもそのはずだった。

本来、ホブゴブリンやオークといった強力な魔物は、

ダンジョンの『十層以降』という遥か深層にしか生息していないはずの存在なのだ。

三月が第一層で遭遇したのは、何らかの理由で浅層へと迷い込んできた、

あるいはダンジョンの気まぐれで発生した、完全なるイレギュラー。

通常ならFランク探索者など一瞬で消し飛ぶ天災のような絶望だった。

だが、三月はそのイレギュラーを逆に喰らい尽くし、

十層以降の魔物の力を、すでにその肉体に宿してしまっている。

だからこそ、本来なら危険地帯であるはずの第二層の魔力ですら、

今の三月にとっては、どこか物足りなく、生温く感じられていた。

「……やっぱり、あいつらと比べたら、全然大したことない」

ぽつりと溢れた声は、冷たい空気の中に吸い込まれていく。

腰に帯びた新しい武器――『魔鉄の塊剣』の柄に手をかけた。

筋力自慢の探索者でも両手で持て余すという、無骨な黒鉄の塊。

しかし、十層クラスのオークの魂を喰らって『怪力(小)』へと進化した今の三月にとっては、

その圧倒的な質量こそが、最高に頼もしい相棒だった。

カツン、とブーツの音が硬い岩肌に響いた、その時だった。

「……来た」

三月はピタリと足を止め、闇の奥を睨みつけた。

獲得した『俊敏(微)』のスキルによって鋭敏になった五感が、

前方の暗闇から、こちらへ急速に接近してくる「明確な敵意」を捉えた。

ガチガチ、ガチガチ、と。

硬い何かが岩を叩く、不気味で金属質な音が不快に響き渡る。

青白い燐光に照らされて現れたのは、第二層の本来の主とも言える異形の怪物だった。

それは、三月の身体を優に超える大きさをした、巨大な蜘蛛の魔獣。

全身が漆黒の、硬質な金属のような光沢を持つ外殻で覆われている。

八本の脚はそれぞれが鋭い槍のようになっており、

複数の複眼が、怪しく赤い光を放ちながら三月をロックオンしていた。

「『アイアン・スパイダー』……」

探索者協会の図鑑で見たことがある。

第二層以降に生息する、圧倒的な防御力を誇る危険な魔獣だ。

その外殻は並の鉄の剣では傷一つつけられず、

多くの新人探索者が武器をへし折られ、そのまま捕食されてきたという。

「キシャアアアアアッ!」

蜘蛛の怪物が鋭い悲鳴をあげ、猛烈な速度で地を這いながら突進してきた。

槍のような鋭い前脚が、彼女の胸元めがけて容赦なく突き出される。

しかし。

十層以降の魔物であるオークの、あの超重戦車の如き突進を経験している三月にとって、

第二層の蜘蛛のスピードなど、止まっているも同然だった。

「遅すぎる」

三月は最小限のステップで、その前脚の突きを紙一重で回避した。

直後、彼女の顔のすぐ横を、猛烈な風圧とともに鋭い脚が通り過ぎる。

すれ違いざま、三月は魔鉄の塊剣を両手で握り締め、

蜘蛛の頭部に向けて、思い切り振り下ろした。

「――おおおっ!」

進化させた『怪力(小)』の全力が、黒い刀身へと注ぎ込まれる。

切れ味の鈍い黒鉄の刃が、アイアン・スパイダーの堅牢な外殻へと衝突した。

ギィィィィンッ!!

迷宮の通路に、鼓膜を震わせるような激しい金属音が炸裂した。

火花が闇の中に激しく飛び散る。

普通の鉄の剣であれば、この瞬間に衝撃で刃が粉々に砕け散っていただろう。

だが、十層のオークを叩き斬った腕力と、頑丈さだけを極限まで高めた黒い剣の前では、

第二層の怪物の装甲など、ただの薄いガラスも同然だった。

「力の差で……押し潰す!」

三月がさらに腕に力を込め、強引に剣を押し込むと、

圧倒的な質量と腕力が装甲の限界を突破した。

バキバキと凄まじい亀裂の音を立てて、蜘蛛の頭部を外殻ごと叩き潰す。

「ギガッ……!? ギ、ギ……」

頭部を完全に粉砕されたアイアン・スパイダーの巨体が、

痙攣するように激しく震え、その場にどさりと崩れ落ちた。

一撃。

防御力に定評のある第二層の危険な魔獣を、三月は正面からの純粋な力業だけで、

文字通り「粉砕」してみせたのだ。

「凄い……本当に折れない。この剣なら、いくらでも力を込められる……!」

三月は新調した武器の性能に、歓喜の笑みを浮かべた。

だが、その喜びの感情は、すぐに身体の奥底から湧き上がってきた、

狂おしいほどの『飢餓感』によって塗りつぶされた。

怪物の身体が光の粒子に変わる前に、三月は潰れた頭部へと両手を押し当てた。

視界が、真っ赤な捕食の色に染まる。

【固有スキル『魂喰い(ソウルイーター)』を発動します】

「あ、はあぁぁ……っ!!」

流れ込んできたのは、ひどく冷徹で、強固な精神の塊――蜘蛛の『魂』だった。

ドロリとした濃密なエネルギーが、両手を通じて三月の体内に吸収されていく。

十層のオークほどの爆発的な熱量はないが、

その代わりに、硬質で緻密なエネルギーが全身の神経を駆け巡った。

魂を喰らうたびに、自分の存在が人間という枠組みから遠ざかり、

より高次の、恐ろしい何かへと進化していくのがリアルに体感できる。

その変化に伴う万能感が、彼女の理性を完全に麻痺させていた。

やがて、アイアン・スパイダーの巨体は完全に灰色の塵となり、

光の粒子となって消滅した。

後に残されたのは、第一層の雑魚が落とすものよりも少し大きくて綺麗な、

青色の魔石だった。

「ふぅ……はぁ, はぁ……」

三月は荒い息を吐きながら、自分の手の平を見つめた。

皮膚の表面には、先ほど戦った蜘蛛の外殻のような、

微かな、けれど絶対的な強度の残滓が感じられる。

【アイアン・スパイダーの魂の捕食を完了しました】

【身体能力が上昇します】

【スキル『堅牢(微)』が『堅牢(小)』へと進化しました】

頭の中に響く冷徹なアナウンスが、彼女のさらなる変質を告げた。

防御力を高める『堅牢』のスキルが、一段階上のレベルへと進化を果たしたのだ。

今の彼女なら、低ランクの怪物の攻撃程度であれば、

防具なしの素肌で受け止めても傷一つ負わないかもしれない。

三月は地面に転がる青い魔石を拾い上げた。

第二層のドロップ品。

第一層のゴブリンなどよりは高いものの、換金すれば数万円といったところだろう。

先日の、本来は深層の獲物であるオークの魔石。

それだけで「百三十万円」という、凄まじい大金が手に入ったおかげで、

実家への仕送りはすでに完全に済ませてある。

普通に生活する分には、当面のお金の心配はもうなかった。

かつての自分なら、この「数万円の魔石」を手に入れただけでも、

今日のご飯や弟の参考書代が稼げたと、涙を流して喜んでいたはずだ。

しかし、三月はその魔石を見つめても、もはや何の感情も湧かなかった。

お金という現実的な価値など、今の彼女の頭からは完全に消え去っていた。

「次は……どこ?」

ぽつりと溢れた声は、少女のものとは思えないほど冷たく、飢えていた。

第二層の主すら一撃で屠る力を得た三月。

だが、十層の味を知ってしまった彼女の渇きは、これしきでは全く癒えない。

もっとたくさんの、もっと強い怪物の魂を、この身に注ぎ込まなければ。

黒い剣を無造作に構え直し、三月は第二層のさらに深い暗闇へと足を進めた。

最底辺だったFランクの少女は、

十層以降の深層を、そして最高到達層である三十層のその先を睨みながら、

生態系を根底から揺るがす恐怖の捕食者として、確実にその歩みを加速させていた。

第七話をお読みいただき、ありがとうございました!

本来は十層以降の深層にしか生息していないはずのオークの魂を喰らった三月にとって、第二層の強敵であるアイアン・スパイダーすらもはや敵ではありませんでしたね。新調した黒鉄の塊剣の威力も凄まじく、スキルも『堅牢(小)』へとさらなる進化を遂げました。

お金の心配から完全に解放され、純粋な『飢え』と快感に従って迷宮を突き進む彼女の変質は、ここからさらに加速していきます……。

少しでも「面白い」「続きが読みたい」と思ってくださったら、ブックマークや**評価(↓の☆☆☆☆☆)**で応援していただけると、執筆の大きな励みになります!

それでは、第八話でお会いしましょう!

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