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魂喰い覚醒で最強へ成り上がるFランク少女、意識を奪う闇と共に歩む  作者: beck2026
第五章:深淵の門(アビスゲート)。見えざる少年指揮官と、最強の主人公の蹂躙劇

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第330話:第二十七階層『死霊の呪墓』。最強の柔軟剤と、全自動お洗濯コース(前編)

第二十六階層『運命の遊技場』にて。

確率すらも物理の腕力でスキップするという前代未聞のイカサマ破りを見せつけ、Sランクのディーラーをフルスイングで粉砕した如月三月(きさらぎ みつき)。

彼女の圧倒的な暴力(とガチャ運)の前に、迷宮のルールすらもねじ伏せられ、一行は次なる階層へのゲートを潜った。

しかし、その先に待ち受けていたのは、先ほどの煌びやかなカジノとは打って変わって、背筋が凍るような陰惨な空間であった。

「うわぁ……。なんだか、急に寒くなったね。お空も真っ暗だ」

三月が、自身の吐く白い息を見つめながら呟いた。

第二十七階層――そこは【死霊の呪墓】。

見渡す限り、ひび割れた墓石が乱立し、足元は腐敗した泥に覆われている。空間全体に冷たい紫色の霧が立ち込め、あちこちで青白い人魂(ウィル・オ・ウィスプ)がフワフワと浮遊する、絵に描いたような巨大な墓地エリアであった。

「ふ、ふにゃぁぁぁぁっ……!? む、無理にゃ! わたし、お化けさんは絶対に無理なのにゃぁぁっ!!」

ゲートを抜けた瞬間、ルルが悲鳴を上げて、ザイオンの銀色の毛皮の中に完全に潜り込んでしまった。

尻尾の先だけを外に出し、ブルブルと激しく震えている。

獣人の中でも特に感覚の鋭いアビス・ケットシーである彼女にとって、この階層に充満する「死者の念」や「冷たい霊気」、そして何より『強烈な腐敗臭』は、生理的な恐怖の対象であった。

『お姉様! 第二十七階層への到達、確認いたしましたッ!』

インカムから、自室で爆睡中の拓也(たくや)に代わり、狂信者クロエ・アーヴィングの緊迫した声が響く。

『そこは【死霊の呪墓】! アビスゲートの中でも極めて異質な、アンデッド魔獣たちの巣窟です! 物理攻撃が一切すり抜けてしまう「アビス・レイス(悪霊)」や、倒しても泥から無限に蘇る「アビス・スケルトン」が徘徊する、恐るべき無限耐久階層です!』

クロエの解説を裏付けるように。

泥の中から、ガシャッ……ガシャッ……と音を立てて、泥まみれの白骨の群れが這い出してきた。

さらに空からは、半透明のボロボロのローブを纏った悪霊たちが、恨めしげなうめき声を上げながら三月たちを取り囲んでいく。

「フッ。ルルよ、安心しろ。たとえ相手が死人であろうと、俺の爪がすべてを切り裂いてみせ――」

ザイオンが、ルルを護るために前へと飛び出し、空中の悪霊に向かって必殺の真空刃を振り抜いた。

シュパァァァッ!!

「……ギヤァァァァァァ……」

しかし。

鋼鉄を両断するはずのザイオンの爪は、悪霊の半透明の体を『完全にすり抜けて』しまったのだ。

ダメージを受けた様子は一切なく、悪霊は不気味に笑いながらザイオンの首元に冷たい手を伸ばす。

「なっ……!? 実体がないだと!? 物理攻撃が、まったく通じない……ッ!」

ザイオンが慌ててバックステップで距離を取る。

さらに、足元から襲いかかってきたスケルトンを前足で粉砕するが、砕けた骨はすぐに泥の魔力を吸い上げ、数秒で元の泥まみれの姿へと組み上がってしまった。

「クソッ! 倒しても無限に再生しやがる! 物理攻撃が主体である俺たちにとって、これほど相性の悪い敵はいないぞ!」

ザイオンの言う通りであった。

アンデッドを完全に消滅させるには、『神聖魔法』や『光属性の浄化』が必要不可欠である。

純粋な物理攻撃(怪力)を極めている三月にとっても、実体のない幽霊や無限再生するゾンビは、最も面倒な相手のはずであった。

「お化けさん、叩いてもすり抜けちゃうのかぁ。それに、泥んこでちょっと臭いね。どうしようかな?」

三月が、大剣を肩に担いだまま小首を傾げる。

実体がない敵を、どうやって物理で殴るか。

最強の姉が珍しく思案に暮れていた、まさにその時だった。

「……むにゃ。……あー、洗濯物……溜まってるな……」

インカムの向こうから。

先ほどまで「ガチャでSSRを引いた」と満足げに眠っていた少年指揮官・如月拓也の、ひどく所帯染みた寝言が聞こえてきたのである。

『ハッ! 拓也様! お目覚めになられたのですね!』

クロエが、一筋の光明を見出したように歓喜の声を上げる。

「……部活のユニフォーム……泥だらけだし……汗臭い……むにゃ……」

拓也は、夢の中で「週末に溜まった自分と姉の大量の洗濯物」を前に、ため息をついていた。

如月家において、洗濯は拓也の重要な家事当番の一つである。

「……こんなガンコな泥汚れとニオイは……洗剤だけじゃ落ちないな……。漂白剤(ハイター)を……たっぷり入れて……。あと、柔軟剤も……フローラルな香りのやつ、入れとこ……」

拓也は、夢の中で洗濯機に洗剤と漂白剤、そして仕上げの柔軟剤をドボドボと投入した。

「……あとは……洗濯機を『強力洗浄・全自動コース』に設定して……水流を最大にして……グルグル回せば……真っ白になる……むにゃ……スゥ……」

拓也は、洗濯機のスタートボタンを押し、そのまま再び深い安眠の世界へと旅立っていった。

『…………ハッ!!』

インカムの向こうで、クロエ・アーヴィングの眼の奥に、狂信的な光がギラギラと灯った。

『承知いたしました、拓也様ッ!! 泥にまみれ、怨念(悪臭)に穢れた不浄なる死霊ども! 奴らを一網打尽にする究極の【強力漂白と、全自動洗濯機コース】! さらには、ルル殿の恐怖を和らげるための【極上の柔軟剤(フローラルな慈愛)】の投入ですね!!』

クロエは、拓也の「単に週末の洗濯物を回しているだけの寝言」を、第二十七階層のアンデッドを完全に浄化し、匂いまで改善するための『完璧な神の啓示』として完全に誤認(受信)した。

『お姉様! 拓也様より、神算鬼謀の戦術指示が下りました!』

「ほんと!? 拓也、なんて言ってたの?」

三月が、幽霊に囲まれながらも目をキラキラさせてインカムに問いかける。

『はい! 敵は実体を持たぬガンコな汚れ! 剣で斬るのではなく、まとめて「お洗濯」して真っ白に漂白してしまえと仰っておられます! 空間を水で満たし、お姉様の魔力を【漂白剤とフローラル柔軟剤】として溶かし込み、階層全体を『超巨大な洗濯機』になさいませ!』

「なるほどー! さすが拓也! お洋服が汚れてて臭い時は、漂白剤と柔軟剤を入れて洗濯機でグルグル回せば、真っ白で良い匂いになるもんね!」

三月は、ポンッと手を打って、これ以上ないほど納得した顔をした。

その言葉を聞いたザイオンが、「……は?」と間の抜けた声を漏らす。

「お洗濯……柔軟剤? 三月殿、何を言っている。ここは水すらない泥の墓地だぞ。それに、幽霊を洗濯機で回すなど、物理法則が――」

「ザイオンお兄ちゃーん! ルルちゃーん! 洗濯機回すから、ちょっとおっきい墓石の上に乗っててねー!」

三月は、ザイオンの常識的な忠告を完全にスルーし、無骨な大剣『魔鉄の塊剣』をスッと上段に構えた。

水がないなら、作ればいい。

長き眠りを経て極限まで研ぎ澄まされた彼女の力は、もはや地形すらも自在に操る。

「まずは、お水を入れるよ! えいっ!」

三月が【氷結の魔力回路(極)】を一瞬だけ起動し、階層の空中の水分を凍らせて巨大な氷塊を無数に生み出す。

そして、間髪入れずに【爆熱の魔力回路(極)】でそれを瞬時に融解!

ドバァァァァァァァァァッ!!!!

第二十七階層の墓地に、文字通り「滝のような大洪水」が発生し、すり鉢状の階層全体が瞬く間に巨大なプール(洗濯槽)へと変貌した。

「なっ!? 一瞬で地形を水没させただと!?」

ザイオンが慌てて最も高い墓石の上に飛び乗り、水没を免れる。

「ギャ、ギョベェェェェッ!?」

突然の洪水に、先ほどまで恨めしげに空中を漂っていた悪霊たちや泥まみれのスケルトンが、一斉に水の中に飲み込まれ、水を飲んで(?)溺れ始めた。

ホラー映画のワンシーンが、突如として『水難事故(家事の被害)』という極めてシュールな光景へとすり替わったのだ。

「次は漂白剤と柔軟剤! えーっと、ルルちゃんが怖がらないように、お花の香りの魔力をたーっぷり入れて……!」

三月は、自身の体内に眠る膨大な『純粋魔力』を、惜しげもなく水の中に放出(ドボドボ)した。

神域に達した彼女の魔力は、それ自体が極めて純度の高いエネルギーであり、死霊たちにとっては触れるだけで魂が灼かれるほどの『超強力な浄化液(ハイター)』。

そして同時に、ルルを安心させるための『フローラルな香りのバフ(柔軟剤)』が絶妙な配分でブレンドされていた。

ジュワァァァァァァッ!!

「ギェピーーッ!!?(目が! 目がぁぁぁ!)」

水(漂白剤入り)に浸かったスケルトンたちから白い煙が上がり、彼らは骨を擦り合わせながら熱湯風呂に入ったようにジタバタと暴れ回る。

階層全体が、瞬く間に華やかなお花の香りに包まれていく。

「よし! 準備完了! あとは『強力洗浄・全自動コース』で、しっかり脱水までいくよぉぉぉぉっ!!!!」

三月は、階層の中央の高台に立ち、大剣を水中に突き立てた。

そして、彼女の【怪力(極)】が、水をかき回す『巨大なパルセーター(回転羽根)』として、容赦なく全開で解放されたのである!

(第331話へ続く)

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

第27階層『死霊の呪墓』の前編(第330話)でした。

今回は「物理無効のホラー」に対し、「日常の家事(お洗濯)」という究極のギャップをぶつける構成にこだわりました!

絶望的なはずのアンデッドたちが、漂白剤入りの巨大洗濯機でただ溺れてむせるという「シュールな水難事故」に巻き込まれています(笑)。

三月がルルちゃんのためにブレンドした「フローラルな柔軟剤」も、単なる優しさだけでなく、外で戦うSランクたちが後々「神聖なる浄化の香り……!」と勘違いするための重要な伏線(アンジャッシュ展開)になっています。

次回(第331話・中編)は、いよいよ大剣パルセーターによる『強力洗浄・全自動コース(脱水付き)』がスタート!

強烈な遠心力でペラペラになるボスの末路や、極上柔軟剤を浴びたザイオンの「過去最高のモフモフ進化」など、お洗濯ならではの笑いが全開です!

よろしければ、ページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、今後の執筆の大きな励みになります!

次回(第331話)もどうぞよろしくお願いいたします!

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