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魂喰い覚醒で最強へ成り上がるFランク少女、意識を奪う闇と共に歩む  作者: beck2026
第五章:深淵の門(アビスゲート)。見えざる少年指揮官と、最強の主人公の蹂躙劇

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第323話:第二十四階層『灼熱の砂海』。温度調整(リゾート開発)と、季節の支配者(後編)

第二十四階層のボス魔獣『アビス・フレイム・スコーピオン(Sランク)』は、三月が作り出した絶対零度のスケートリンクの上で無様に足を滑らせ、大剣の平打ち(カーリング)によって遥か彼方の壁へと激突し、あっけなく消滅した。

摂氏五十度の灼熱地獄だった砂漠は、今や見渡す限りの氷河期(永久凍土)となっている。

その広大な氷原のど真ん中で、誇り高き銀狼の獣人ザイオンは、己の全魔力を『体温維持』に注ぎ込み、丸まって巨大な毛玉(ヒーター)と化していた。

「ザイオンお兄ちゃん、あったかいのにゃぁ……。ポカポカのお布団みたい……」

彼のフワフワの銀色の毛皮の中にスッポリと潜り込んだルルは、冷え切った体を温められ、ゴロゴロと喉を鳴らして幸せそうに丸くなっていた。

(……あぁ。俺は今、間違いなくこの家族の役に立っている……ッ!)

ザイオンは、凍てつく冷気の中で、戦士としてのプライドと引き換えに手に入れた『究極のモフモフ係(暖房器具)』としての喜びに、一人でむせび泣いていた。

しかし。

彼らが極寒の中で温め合っている、まさにその時だった。

『……むにゃ……冷房、効きすぎた……。ちょっと、温度……上げるか……むにゃ』

インカムの向こうから、自室のベッドで爆睡中の少年指揮官――如月拓也の、微かな寝言が聞こえてきたのである。

ピッ。

そして、エアコンのリモコンの温度設定を『26度(快適な室温)』へと引き上げる電子音が、かすかに響いた。

『…………ハッ!!』

インカム越しにその寝言と電子音を完璧に拾い上げたクロエ・アーヴィングが、天啓を受けたように震え上がった。

『承知いたしました、拓也様ッ!! 敵を氷漬けにして殲滅するという目的は完全に達成された! これより、三月お姉様とルル殿が快適に休息できるよう、【最適な環境温度への再調整】を実行せよ、との仰せですね!!』

クロエは、拓也の「単に自分の部屋が冷えすぎたからエアコンの設定温度を上げただけの寝言」を、またしても『神の如き慈悲深き采配』として完全に深読みした。

『お姉様! 拓也様より、次なる神算鬼謀の戦術指示が下りました!』

「ほんと!? 拓也、なんて言ってたの?」

三月が、氷の上をツルツルとスケートのように滑って遊びながら、インカムに問いかける。

『はい! 敵の排除は完了したゆえ、冷房の温度を上げて、ルル殿が快適に過ごせる【適温のリゾート空間】へと環境を再構築するよう仰っておられます! お姉様の持つ【爆熱の魔力回路】と【精密魔力循環】を用いて、この氷河を「快適な南国」へと調整なさいませ!』

「なるほどー! さすが拓也、優しいなぁ! 確かに、冷房つけっぱなしだとルルちゃん風邪引いちゃうもんね!」

三月は、ポンッと手を打って納得した。

彼女は、雪山のように丸まっているザイオンに向かって、大きく手を振った。

「ザイオンお兄ちゃーん! ルルちゃーん! 今、お部屋をちょうどいい温度にしてあげるからねー!」

三月は、氷の上にふわりと降り立つと、深呼吸をするように大きく胸を反らした。

そして、彼女の内に眠る、長き眠りを経て極限まで研ぎ澄まされたもう一つの力――【爆熱の魔力回路(極)】を起動した。

ただの爆発ではない。

彼女がFランク時代から血の滲むような努力で培い、今や神域に達した【精密魔力循環(極)】によって、その熱量は「1度の狂いもなく」完璧にコントロールされていた。

「えいっ!! 適温になぁれぇぇぇぇぇっ!!!!」

フワァァァァァァァァァァァッ……!!!!

三月の身体を中心として、第二十四階層の空間に、春の陽だまりのような『極上の温風』が吹き荒れた。

その瞬間。

見渡す限りを覆い尽くしていた絶対零度の氷原が、まるで魔法のようにジュワァァァッと音を立てて溶け始めたのだ。

だが、洪水にはならない。三月の精密な温度制御によって、過剰な水分は瞬時に蒸発して心地よい湿度へと変わり、残った水は、かつての流砂のすり鉢状の穴に流れ込んで、透き通るような『美しいオアシス(水風呂)』を形成していった。

黄金色の砂は、かつての摂氏五十度の殺人的な熱ではなく、裸足で歩くとじんわりと温かい「リゾートビーチの砂浜」のような快適な温度へと調整された。

「ふにゃ……? あったかいのにゃ?」

ルルが、ザイオンの毛皮の中から顔を出した。

先ほどまでの極寒の気配は完全に消え去り、そこには、気温26度、湿度50パーセントという、人間(と獣人)にとって最も快適な『究極の南国リゾート』が広がっていたのである。

「わぁぁっ! すごい! お水がキラキラしてるのにゃ!」

寒さから解放されたルルは、大喜びでザイオンの背中から飛び降り、温かい砂浜を駆け出して、透き通ったオアシスの水際でパシャパシャと遊び始めた。

「……神、なのか……? この少女は、本当に……」

ザイオンは、自らの周囲で起きた『局地的な気候の完全支配(テラフォーミング)』を目の当たりにし、もはや驚く気力すら失っていた。

灼熱の地獄を絶対零度の氷河期に変え、今度はそれを、妹が快適に遊べる南国リゾートへと秒で造り変えてしまったのだ。

これが、人間の……いや、お姉ちゃんのやることなのか。

「ふふっ、これでルルちゃんも寒くないね! ザイオンお兄ちゃん、お疲れ様!」

三月が、満足そうにザイオンの鼻先を撫でる。

「……あぁ。俺も、少し……休ませてもらうと、しよう……」

ザイオンは、完全に悟りを開いた穏やかな顔で、温かい砂浜の上にゴロンと横たわった。

そこに、水遊びを終えたルルがトテトテと戻ってきて、ザイオンのフワフワのお腹の上にダイブする。

「ザイオンお兄ちゃんのお腹、最高級のソファーなのにゃぁ……。むにゃむにゃ……」

「……うむ。俺の腹の上で、心ゆくまで眠るがいい、ルルよ」

Sランクの戦闘兵器であったはずのザイオンは、こうして完全に『如月家の巨大なモフモフソファー』としての余生を受け入れ、幸せそうに目を閉じたのであった。

『おおおおおおおおッ!!! す、素晴らしいッ!! 素晴らしすぎます、三月お姉様ァァァッ!!!』

インカムの向こうで、クロエがまたしても絶叫していた。

『拓也様(爆睡中)の【最適な室温調整】の戦術を、これ以上ない完璧な形で実行なさいました! 敵を殲滅した後は、過酷な環境を癒やしのリゾートへと造り変え、戦士たちに極上の休息を与える! これぞまさに、無慈悲なる破壊と、無限の慈愛の完全両立! 拓也様も、この快適な室温にさぞご満足されていることでしょうッ!!』

一方その頃。

アビスゲートの外、東京・新宿の上空で防衛戦を死守していたSランク探索者たちの間では、またしても戦場の常識を覆す『神の奇跡』が降り注いでいた。

「ハァ……ハァ……ッ! 凍らせたのはいいが、今度は俺たちの体が凍傷になりそうだぜ……ッ!」

レオン・カーターが、自身の吐く真っ白な息を見つめながら震えていた。

先ほどの『絶対零度のバフ』によって、空を覆っていた炎の魔獣たちは見事に氷漬けになったが、その余波である冷気は凄まじく、今度は探索者たち自身の体温を奪い始めていたのだ。

「いかん……。このままでは、魔獣を倒す前に我々が凍死してしまう……!」

神宮寺(じんぐうじ)もまた、刀の柄を握る感覚がなくなるほどの寒さに耐え忍んでいた。

その、限界寸前の極寒の最中だった。

上空のアビスゲートから、三月が第二十四階層を『気温26度の快適な南国リゾート』に造り変えた際に生じた、莫大な【生命を癒やす最適温度と、慈愛の春風】のエネルギーが逆流してきたのだ。

それが、戦場全体に広域の【全体力・状態異常の完全回復(フル・ヒール)と、生命力の活性化】のパルスとなって降り注いだのである。

フワァァァァァァァァァッ……!!!!

新宿の空を凍らせていた絶対零度の空気が。

突如として吹き荒れた、春の陽だまりのように温かく、命を芽吹かせるような『慈愛の風』によって、一瞬にして完璧な適温へと中和された。

「……な、なんだ!? 寒さが……消えた!?」

レオンが目を見開く。

それだけではない。極寒によって引き起こされかけていた凍傷も、これまでの戦いで蓄積していた疲労や打撲傷も、その温かい風を浴びた瞬間に、嘘のように完全に癒やされていったのだ。

「ハッハァァァァッ!! 冗談だろオイ!? 敵を完全に氷漬けにして行動不能にした後で、今度は俺たちだけを【完璧に回復させる適温の春風】で癒やしてくれるだとォ!?」

完全にスタミナと傷が全回復したレオンが、自身の両拳を打ち合わせ、雷のオーラを爆発させる。

「なんという……なんという深き慈悲と、完璧なる盤面管理だ……!」

神宮寺は、完全に癒やされた体で神速の抜刀術の構えを取り直し、空のゲートに向かって歓喜の涙を流して叫んだ。

「彼は、極端なバフが我々の肉体に負担をかけることすらも計算に入れていたのだ! 敵を滅ぼすための『冬』をもたらし、次いで我々を癒やすための『春』をもたらす! 季節すらも自在に操り、我々を勝利へと導いてくれるとは! 如月拓也……! 君はもはや、戦術の神を超えた【季節の支配者】だ!!」

「ハッハァ! 春夏秋冬、全部俺たちの味方だぜ!! 一生ついていくぜ、コンダクター!!」

Sランクの猛者たちが、完全に回復した無敵のコンディションで、空のゲートに向かって熱狂的な信仰を叫び、身動きの取れない氷漬けの敵への蹂躙を再開する。

もちろん、彼らは知らない。

この究極の全体回復と適温のバフが、「冷房が効きすぎたから温度を26度に上げたという寝言を受けた三月が、砂漠を南国リゾートに造り変えた」という、理不尽極まりない『お姉ちゃんのリモコン操作(物理)』の余波に過ぎないという事実を。

そして、彼らが季節の支配者と崇め奉る指揮官が、現在自室のベッドで。

「……むにゃ……ちょうどいい温度だ……。これなら……朝までぐっすり、だな……むにゃ」

と、完璧に設定されたエアコンの下で、ヨダレを垂らしながら極上の睡眠を満喫しているだけだという事実も。

かくして。

深淵迷宮の第二十四階層は、覚醒した最強スキルによる『過剰な温度調節(リゾート開発)』によって踏破された。

「ルルちゃん、そろそろ行こうか! 次のお部屋が待ってるよ!」

「にゃっ! ザイオンお兄ちゃんバス、起きてー!」

ルルにポムポムとお腹を叩かれ、モフモフソファーと化していたザイオンが、ゆっくりと立ち上がる。

「あぁ、任せておけ。俺の背中は、いつでもお前たちのためにある」

完全に家族としての絆を深め、乗り物としての誇りに目覚めたSランク魔獣のザイオン。

彼を新たな足として迎えた三月とルルは、オアシスの奥に現れた階段を下り、次なる第二十五階層へと、笑顔で進んでいくのであった。

残るアビスゲートは、26階層。

最強の姉と、最強のお荷物(指揮官)の理不尽な蹂躙劇は、過酷な環境をピクニックに変えながら、さらに奥深くへと突き進んでいく。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

第24階層『灼熱の砂海』の完結編(第323話)でした!

拓也の「エアコンの温度を上げる」という寝言によって、今度は絶対零度の氷河期から、気温26度の完璧な南国リゾート(オアシス付き)へと階層を造り変えてしまった三月お姉ちゃん。

【爆熱の魔力回路】と【精密魔力循環】の合わせ技によるテラフォーミングです。もはや神の御業ですね。

そして、ルルちゃんを温めることに命を懸けていたザイオンお兄ちゃんは、気候が良くなったことで完全に「最高級のモフモフソファー(移動バス)」としての悟りを開き、幸せな余生(?)を受け入れました(笑)。

一方、外のSランクたちは、絶対零度からの「適温の春風(全体回復バフ)」を受け、爆睡中の拓也をいよいよ『季節の支配者』と崇め奉っています。当の拓也は、「適温で朝までぐっすり寝れる」と喜んでいるだけなのですが!

新たな仲間(モフモフの乗り物)も加わり、絆を深めた如月パーティー。

次回(第324話)からは、第25階層へと突入していきます!

よろしければ、ページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、今後の執筆の大きな励みになります!

次回(第324話)もどうぞよろしくお願いいたします!

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