↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魂喰い覚醒で最強へ成り上がるFランク少女、意識を奪う闇と共に歩む  作者: beck2026
第五章:深淵の門(アビスゲート)。見えざる少年指揮官と、最強の主人公の蹂躙劇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
322/359

第322話:第二十四階層『灼熱の砂海』。絶対零度のエアコンと、モフモフの暖房(中編)

「えいっ!! 冷えろぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

如月三月(きさらぎ みつき)が、天に向かって両手を掲げた瞬間。

彼女の体内に極限まで圧縮されて眠っていた【氷結の魔力回路(極)】が、第二十四階層の空間そのものを書き換えるほどの絶大な出力で解放された。

ピキィィィィィィィィィィィィンッ!!!!

鼓膜を突き破るような、甲高い氷結音が広大な階層全体に響き渡った。

それは、魔法というよりも、圧倒的な物理現象の強制的な上書きであった。

摂氏五十度を超え、蜃気楼が揺らめいていた灼熱の空気。

そのすべてが、三月の身体を中心として発生した『絶対零度の魔力波動』によって、一瞬にして凍りついたのだ。

ザザザザザザッ……!! ピキピキピキッ!!

見渡す限り広がっていた黄金色の砂の海は、砂粒の一つ一つが極低温によって結合し、瞬く間に『広大な白銀のスケートリンク(永久凍土)』へと変貌を遂げた。

あちこちで発生していたアリジゴクの流砂も、まるで時間を止められたかのように、すり鉢状の形のままカチコチに凍りついている。

さらに。

「ギ、ギャアァァァッ!?」

「ギュルルルルッ!?」

砂の海の中を猛スピードで泳ぎ回り、三月たちを足元から奇襲しようと狙っていたAランク魔獣『アビス・サンド・ワーム』の群れ。

彼らは、周囲の砂が突然氷のブロックへと変わったことにより、地上へと飛び出そうと身をよじらせた『その姿勢のまま』完全に凍結。

広大なスケートリンクの上に、不気味な巨大ワームのアイスキャンディー(氷柱)が何十本も林立するという、シュール極まりない光景が生み出されたのである。

わずか数秒。

まさに一瞬の出来事であった。

灼熱の地獄は、三月の「エアコンを一番強くした」というただ一点の物理的暴挙によって、一切の生命活動を許さない極寒の氷河期へと塗り替えられてしまったのだ。

「ふにゃあぁぁぁぁ……っ!? さ、さむいにゃぁぁっ!!」

その時、ザイオンの背中に乗っていた猫耳幼女のルルが、耳をペタンと伏せてブルブルと激しく震え出した。

アビス・ケットシーである彼女は、先ほどの灼熱の砂漠も大の苦手であったが、極寒の環境も等しく苦手である。

急激すぎる温度変化によって、ルルの小さな体は完全に体温調節機能を奪われ、自分の尻尾をマフラー代わりにギュッと抱きしめて歯の根を合わさずに震えていた。

「あちゃー! しまった! エアコンの温度、一番下に下げすぎちゃったかも! ルルちゃん、ごめんね!」

三月が慌てて舌を出して謝る。

【堅牢(極)】によってどんな極端な気温変化も無効化できる三月にとっては、この絶対零度の空間も「ちょっと涼しくなったかな?」程度の感覚でしかないのだが、ルルにとっては死活問題であった。

「ルル、心配するな!」

その絶体絶命のピンチに、誇り高き狼さんバス――ザイオンが、力強く声を上げた。

「俺のこの美しい銀色の毛皮は、成功作としてあらゆる極限環境に耐えうるよう、完璧な防寒機能(ヒーター)を備えている! さぁ、ルル! 俺のモフモフの中に深く潜り込み、暖を取るがいい!!」

ザイオンは、ルルを包み込むように、自身のフワフワの毛並みをボワッと最大限に膨らませた。

彼の体温は魔力によって一定に保たれており、その豊かな毛皮の内側は、まさに最高級の羽毛布団のような温かさに包まれているのだ。

「わぁ……。ザイオンお兄ちゃん、すっごくあったかいのにゃ……。ポカポカするの……」

ルルは、冷え切った体をザイオンの背中の毛皮の中に深く埋め、ゴロゴロと喉を鳴らしながら幸せそうに目を閉じた。

(……素晴らしい。俺は今、極寒の地で愛する妹の命を温める『命のストーブ』としての重責を果たしているッ……! もはや、敵を切り裂く爪など不要! この温もりこそが、俺の最強の武器だッ!!)

ザイオンは、完全に戦士としての道を外れ、究極のモフモフ係(暖房器具)としての悟りを開き、一人で感動の涙を流していた。

しかし。

彼らが平和に暖を取っている、その静寂の氷原を揺るがすように。

ドゴォォォォォォォォォォンッ!!!!

凍りついた砂の地面の奥深くから、巨大な氷盤をブチ破って、『それ』が姿を現した。

全身を赤蓮の炎に包まれ、巨大なハサミと猛毒の針を持つ、第二十四階層のボス魔獣。

『アビス・フレイム・スコーピオン(Sランク)』である。

本来であれば、灼熱の砂海を自在に泳ぎ回り、熱風と共に獲物を焼き尽くす最強の捕食者。

自身の住処を突然「巨大な冷凍庫」にされた怒りで、口から高熱の炎を吐き出しながら三月たちを睨みつけた。

「シャアァァァァァァッ!!」

Sランクの巨大サソリが、三月たちを両断しようと、巨大な炎のハサミを振り上げて突進してきた。

しかし。

ツルゥゥゥゥゥゥッ!!? スッテェェェェェンッ!!!!

「……え?」

ザイオンが、目を点にして固まった。

灼熱の砂漠での戦闘しか想定していないボス魔獣が、完璧に磨き上げられた『絶対零度のスケートリンク(三月の氷結魔法の跡地)』の上で、まともに走れるはずがなかったのだ。

アビス・フレイム・スコーピオンは、勢いよく踏み出した途端に足を滑らせ、六本の足をバタバタと空回りさせながら、信じられないほど無様な姿でスッ転び、そのまま仰向けの状態で氷の上をツルツルと滑っていったのである。

「シャ、シャアァァ……!?(な、なんだこのツルツルは!?)」

「あっ、おっきな虫さんだ! ルルちゃんが寝てるのに、お部屋で暴れちゃダメでしょ!」

三月が、ツルツルと滑りながらもがき苦しむSランク魔獣に向かって、まるでフィギュアスケーターのように軽やかに氷の上を滑って近づいていく。

そして、巨大な大剣『魔鉄の塊剣』を、右手一本でスッと横に構えた。

「邪魔な虫さんは、ポイだね! そーれっ、カーリング!!」

カキィィィィィィィィィィンッ!!!!

三月が、大剣の平打ち(バッティング)で、仰向けでジタバタしている巨大サソリの甲殻をフルスイングで打ち払った。

その瞬間。

ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!

凍りついたアビス・フレイム・スコーピオンの巨体は、凄まじいスピードで氷の砂漠の上を滑走していき。

そのまま遥か数キロ先の階層の壁に、超音速で激突した。

ドガァァァァァァァァァァァンッ!!!!

あまりの衝撃に、Sランク魔獣の強固な甲殻も、内包していた炎も、一瞬にして木っ端微塵に粉砕され、光の粒子となって消滅。

後に残されたのは、綺麗に磨き上げられた氷原の跡と、Sランクの魔核だけであった。

「ふふっ! ストライク! これで静かにお昼寝できるね!」

三月が、満面の笑みでブイサインを決める。

「……俺の出番は、やはり未来永劫、このモフモフ係しかないようだな……。いや、それでいい。それがいいのだ……」

ザイオンは、Sランクのボスが「氷の上で滑ってコケたところを、物理のカーリングで弾き飛ばされた」という理不尽すぎる光景を前に、もはや何の感情も湧かず、ただルルを温めるためだけに自身の体温調整に全神経を集中させていた。

『おおおおおおおおッ!!! す、素晴らしいッ!! 素晴らしすぎます、三月お姉様ァァァッ!!!』

インカムの向こうで、クロエ・アーヴィングが、聖書(メモ帳)に新たな伝説を書き込みながら絶叫していた。

『拓也様(爆睡中)の【超・冷房(エアコン)戦術】を、これ以上ない完璧な形で実行なさいました! 環境そのものを絶対零度に書き換え、適応できない敵を滑らせてからカーリングで粉砕する! これぞまさに、無慈悲なる冷却の極意! 拓也様も、この涼しくなったお部屋にさぞご満足されていることでしょうッ!!』

一方その頃。

アビスゲートの外、東京・新宿の上空で防衛戦を死守していたSランク探索者たちの間では、文字通り「戦場の温度」を根底から覆す『神の奇跡』が降り注いでいた。

「がはっ……! クソッ、熱い……! 防具が、溶ける……ッ!」

レオン・カーターが、空中で膝をつき、自身の焦げた腕を抑えながら呻き声を上げた。

彼らを襲っていたのは、全身から数千度の高熱の業火を撒き散らす変異種「アビス・イフリート」の群れであった。

どれほど強力な雷撃や斬撃を放とうとも、近づくことすら許されない圧倒的な熱量。

戦場一帯の空気そのものがオーブンの中のように熱せられ、探索者たちは呼吸をするだけで肺が焼け焦げるような地獄の苦しみを味わっていた。

「い、いかん……。このままでは、我々は熱波で干からびてしまう……!」

神宮寺(じんぐうじ)もまた、汗だくになりながら、意識を繋ぎ止めるのがやっとの状態であった。

その、絶望的な灼熱地獄の最中だった。

上空のアビスゲートから、三月が第二十四階層を『エアコン最大設定の絶対零度の氷河期』に変貌させた際に生じた、莫大な【絶対冷却と、炎熱無効のエネルギー】が逆流してきたのだ。

それが、戦場全体に広域の【絶対零度の冷却(コールド・スリープ)と、熱系状態異常の完全無効化】のパルスとなって降り注いだのである。

ピキィィィィィィィィィィンッ……!!!!

新宿の空を焦がしていた地獄の業火が。

突如として吹き荒れた、ダイヤモンド・ダストのような白銀の冷気によって、一瞬にして文字通り「カチコチに凍りついた」のだ。

「……な、なんだ!? 炎が……凍っただと!?」

レオンが目を見開く。

それだけではない。彼らの体を焼き焦がしていた熱波が完全に消え去り、火傷の痛みも冷気によって瞬時に癒やされていく。

さらに、彼らの眼の前にいた無敵のアビス・イフリートの群れが、自身の放つ炎ごと完全に氷漬けにされ、身動き一つ取れない『ただの巨大な氷の彫像』へと成り果てていた。

「ハッハァァァァッ!! 冗談だろオイ!? 今度は地獄の業火すらも一瞬で消し飛ばす、究極の絶対零度のバフだとォ!?」

限界まで冷却され、完全に動きを止めた氷のイフリートに向かって。レオンの雷撃が、容赦なく叩き込まれる。

「なんという……なんという恐るべき神の采配だ……!」

神宮寺は、氷漬けになった敵の核をあっさりと両断しながら、空のゲートに向かって深い畏敬の念を込めて叫んだ。

「彼は、我々が熱波の敵に苦戦していると見るや否や、この世界の『温度』そのものを完全に書き換えてみせたのだ! 炎の悪魔すら一瞬で凍らせる、まさに氷の絶対神……! 如月拓也……! 君の前に、不可能という文字は存在しないのか!!」

「ハッハァ! 炎の悪魔がなんだ! 俺たちの指揮官が、世界ごと冷蔵庫に変えてくれたんだからな!! 一生ついていくぜ、コンダクター!!」

Sランクの猛者たちが、絶対零度のバフによる完全有利な状況で、空のゲートに向かって熱狂的な信仰を叫び、反撃の蹂躙を開始する。

もちろん、彼らは知らない。

この究極の冷却バフが、「部屋が暑いからエアコンを最大にしたという寝言を受けた三月が、砂漠を丸ごと凍らせてサソリをカーリングで吹っ飛ばした」という、理不尽極まりない『お姉ちゃんの温度調節』の余波に過ぎないという事実を。

そして、彼らが氷の絶対神と崇め奉る指揮官が、現在自室のベッドで。

「……むにゃ……冷房、効きすぎた……。ちょっと、温度……上げるか……むにゃ」

と、布団にくるまりながらピッ、とエアコンの温度を上げ、単に自分の快適な睡眠環境を追求しているだけの寝言を呟いているという事実も。

かくして。

深淵迷宮の第二十四階層は、覚醒した最強スキルによる『絶対零度のカーリング』によって蹂躙され、外で戦うSランクたちは、爆睡中の少年指揮官への心酔をいよいよ『氷の絶対神』の領域へと昇華させていくのであった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

第24階層『灼熱の砂海』の中編(第322話)でした!

拓也の「エアコンを一番強い冷房にしろ」という寝言により、摂氏50度の砂漠がまさかの絶対零度のスケートリンク(永久凍土)へと変貌してしまいました!

強敵であるはずのSランクの炎サソリも、氷の上でツルツル滑って無様に転んだところを、三月お姉ちゃんの「大剣カーリング(物理)」で彼方へ吹っ飛ばされて即死という理不尽な最期を遂げました(笑)。

そして、戦士としてのプライドを完全に捨て去り、「ルルちゃん専用の命のストーブ(暖房器具)」として謎の使命感に燃え上がるザイオンお兄ちゃん。すっかり如月家の立派なモフモフ枠に収まっています。

外のSランクたちも絶対零度のバフで炎の魔獣に大逆転を果たし、爆睡中の拓也を『氷の絶対神』と崇めていますが……当の拓也は「冷えすぎたから温度を上げるか」と寝言を言ってエアコンをポチッと操作しています。

果たして、この何気ない「温度変更」の寝言が、凍りついた階層にどんなカオスを引き起こすのか!?

よろしければ、ページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、今後の執筆の大きな励みになります!

次回(第323話)もどうぞよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。