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魂喰い覚醒で最強へ成り上がるFランク少女、意識を奪う闇と共に歩む  作者: beck2026
魂喰いの少女編

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第三十二話:籠の中の捕食者、深層への渇望

協会との契約から数日。三月の日常は、奇妙な均衡の中にあった。

表向き、彼女は協会が管理する「期待の星」として、特別な装備の提供を受け、優先的に高難度階層へ向かうことを許可された。しかし、その裏では、常に誰かが彼女の動向を監視し、ギルドの端末には彼女がどこで何をしたかの詳細なログが残される。

(……管理されている。私の全てを、彼らの掌の上で)

三月は冷え切ったギルドの地下道を歩きながら、自身を追う視線を感じていた。

ガランとヴォルグは、もはや露骨に尾行などしない。彼らは、協会が設置した監視カメラの映像や、ギルド職員からの報告を通じて、彼女の「異常な成長」を数値で把握しようとしている。

しかし、彼らが把握できているのは「数値」だけだ。

彼女が、帰宅の途中で路地裏に潜む魔獣をいかに効率的に処理し、その魂を誰にも悟られぬよう回収しているか。その隠密行動の真価は、決してデータには残らない。

「三月、準備はいいか。今日の担当はガランだ」

ギルドの出入り口で、気怠げに声をかけてきたのはヴォルグだった。

協会との契約により、彼女が迷宮に入る際は、必ず調査員が一名同行することになったのだ。

「……ええ、いつでもいいわ」

三月は無機質な声で答える。

今日の同行者はガラン。ヴォルグの雷撃よりも厄介な、観察眼の鋭い男だ。彼の前で魂喰いの片鱗を覗かせるのは至難の業だが、逆に言えば、彼を騙し切れば協会の監視網は完全に形骸化する。

「それじゃあ、今日は第六層へ行くぞ。協会の意向だ。君の『真価』を見せてくれ」

ガランの静かな声が耳に届く。

第六層。そこは、これまでの第五層までとは異なり、階層主フロアボスの配下たちが徘徊する、より過酷な領域だ。

三月は何も言わず、迷宮の門をくぐった。

迷宮の中は、第六層特有の湿った冷気に満ちている。

壁面を這うのは『ポイズン・スパイダー』の群れ。彼らは神経毒を含んだ糸を張り巡らし、獲物の動きを封じる。

「……三月。君の磁力操作を見せろ。糸を弾き飛ばし、最短ルートを切り開くんだ」

ガランが、背後から淡々と指示を出す。

三月は指先を動かし、周囲に漂う微細な金属粒子を操った。

糸を強引に引き剥がし、通路を切り開く。だが、その動作の最中、三月の意識は別の場所にあった。

(……足元。右側の影に、魔力の濃い個体が潜んでいる)

気配察知が、獲物を告げる。

それは、ポイズン・スパイダーの群れを支配する、女王種クイーンの気配だった。

この階層を制圧し、その魂を喰らえば、今の彼女に必要なスキル『毒耐性』や『糸操作』が手に入る。

三月はわざと、ガランの死角となるように動き回った。

右の壁面から飛び出した女王種に対し、三月は大剣を振るうフリをして、密かに磁力操作を収束させた。

剣先が触れる直前、磁場で魔獣の殻を内側から破壊し、致命的な隙を作る。

(……喰らう。今、この一瞬だけでいい)

誰にも気づかれぬよう、倒れゆく女王種の魂に指を伸ばす。

それは、魂という名の「エネルギーの奔流」を直接喉に流し込むような、甘美で残酷な感覚だった。

【固有スキル『魂喰い』が発動しました。スキル『毒耐性(中)』を獲得しました】

脳髄が痺れるほどの悦び。

だが、同時に響くのは「もっと、もっと人間を捨てろ」という獣の遠吠えだ。

三月は、その衝動を力任せにねじ伏せた。

指先を服の裾で拭い、振り返る。その表情には、一切の綻びもない。

「……終わったわ。次はどこへ行くの?」

ガランは、魔獣の死体を検分し、満足げにメモを取る。

彼には、彼女が「何かを喰らった」ことなど露ほども分かっていない。ただ、彼女がまたしても「不可解な強さ」で魔獣を屠ったとだけ認識している。

「素晴らしい。……君は、本当に底知れないな」

ガランの賞賛には、以前のような疑念は薄れていた。

代わりに浮かんでいるのは、この「未知の存在」を自分の手で完成させたいという、歪んだ研究心に近い欲求だ。

三月は、そんな彼の背中を見つめながら、静かに心の中で呟いた。

(観察しなさい。あんたたちが私を分析しきったと思う頃には、あんたたちの見ている世界を、私が根こそぎ喰らい尽くしているんだから)

彼女の瞳の中で、紫色の光が妖しくまたたく。

迷宮の闇は、彼女の味方だ。

協会という組織を、そして調査員という駒を、自分を守るための最高級の餌に変えていく。

三月は歩き出した。

第六層のさらに奥へ。

彼女の人間としての時間は刻一刻と削られている。だが、その代わりに彼女は、何者にも屈しない「力」を手に入れているのだ。

家族の食卓を思い出し、三月は再び「完璧な少女」の演技を再開した。

調査員ガランと共に、偽りの探索行が続く。

彼女の牙は、誰にも気づかれぬよう、迷宮の深層でさらに研ぎ澄まされていく。

第三十二話をお読みいただき、ありがとうございました!

ついに第六層へ足を踏み入れた三月。調査員ガランの鋭い観察眼を相手に、いかにして「魂喰い」の秘密を隠し通し、かつ彼を「餌(利用対象)」として扱っていくのか……。

三月の狡猾さと、失われていく人間性の境界線がますますヒリヒリする展開となってきました。

家族のために強くあろうとするほど、彼女は怪物という名の「力」に近づいてしまう。

この物語の行く末を、ぜひ今後も見守ってください!

この話が面白い、続きが読みたいと感じていただけましたら、ぜひブックマークや**評価(↓の☆☆☆☆☆)**で応援していただけると、執筆の大きな励みになります!

それでは、第三十三話でお会いしましょう!

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