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魂喰い覚醒で最強へ成り上がるFランク少女、意識を奪う闇と共に歩む  作者: beck2026
第五章:深淵の門(アビスゲート)。見えざる少年指揮官と、最強の主人公の蹂躙劇

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第319話:第二十三階層『毒沼の迷宮』。魂喰いの極致と、空間清浄(前編)

第二十二階層『獣たちの処刑場』にて、愛する妹分を殺させようとする「自爆首輪」の呪縛から、三月の0.1ミリの精密破壊によって救い出された銀狼の獣人・ザイオン。

「もう如月家の家族だよ」という三月の言葉に魂を救われた彼は、新たなモフモフのお兄ちゃん枠として、三月とルルちゃんのパーティーに正式に加入した。

二人の少女(一人は人間最強、一人は猫耳幼女)と、屈強な狼の戦士。

新たな家族を迎えた三人組は、崩壊した処刑場の奥にある階段を下り、次なる第二十三階層へと足を踏み入れた。

「わぁ……。今度はなんだか、すっごく臭いお部屋だね。生ゴミを出し忘れた時みたいな匂いがする」

三月が、漆黒のロングコートの袖で鼻をヒクヒクと覆いながら呟いた。

第二十三階層――そこは【毒沼の迷宮】と呼ばれる、果てしなく広がる紫色の泥沼と、枯れ果てた巨大な枯木が立ち並ぶ、腐敗した湿地帯であった。

空には淀んだ緑色の霧が立ち込めており、足元の沼からは、ボコッ、ボコッ……と、致死性の毒ガスを含んだ泡が絶えず湧き出している。

足場となるのは、沼に浮かぶわずかな枯れ葉や、倒木の上だけ。一歩でも沼に足を踏み入れれば、強力な猛毒によって骨の髄まで溶かされるという、完全な「初見殺し」の環境トラップエリアである。

「ううっ……。目がチカチカするのにゃ……。息が、苦しいの……」

ルルが、三月の背中でおんぶされながら、苦しそうに激しく咳き込んだ。

獣人である彼女は嗅覚が鋭いため、この空間に充満する毒ガスの影響をダイレクトに受けてしまっているのだ。

「ルルちゃん、大丈夫!? クロエちゃん、このお部屋はどうなってるの!?」

三月が慌ててインカムに叫ぶ。

『お姉様! 第二十三階層への到達、確認いたしましたッ!』

インカムの向こうから、深い眠り(気絶)についている拓也(たくや)に代わり、狂信者クロエ・アーヴィングの緊迫した声が響く。

『そこは【毒沼の迷宮】! 空間全体に、吸い込むだけで徐々に肺を溶かす猛毒の霧が充満しています! さらには、沼の中に潜む「アビス・ポイズン・トード(Aランク)」の群れが、足場を渡る探索者を泥の中に引きずり込もうと狙う、極悪な地形効果(フィールド)エリアです!』

クロエの警告が響く中、三月は自身の身体を不思議そうに見下ろした。

「猛毒の霧……。そっか、だからルルちゃんが苦しそうにしてるんだ。私は全然なんともないから、ただ臭いだけかと思ってた」

三月が全く毒の影響を受けていないのには、明確な理由があった。

彼女はかつて、底辺のFランク探索者であった頃、固有スキル『魂喰い』によって魔獣の魂を捕食し、血の滲むような努力で少しずつ能力を獲得してきた。

強大な魂を喰らいすぎれば、内なる獣の渇望に魂が飲み込まれて自我が崩壊してしまう。その代償と戦いながら、地道に『魔力許容量』を拡張し、理性を保ちながら【毒耐性(中)】や【毒の魔力回路】などを獲得していったのだ。

そして、長きにわたる眠りから目覚めた現在。

彼女の体内に蓄積されたすべてのスキルは、理性を完全に保ったまま、人間が到達し得る限界値――【極】へと至っていた。

覚醒した【毒耐性(極)】を持つ三月にとって、この階層の致死性の毒霧など、文字通り「ちょっと臭いだけの空気」に過ぎなかったのである。

「待ってくれ、三月……お姉ちゃん。いや、三月殿」

その時。

三月の隣に立っていたザイオンが、鋭い目つきで周囲の毒霧を睨みつけ、前に出た。

「俺は成功作として造られた際、様々な毒への耐性を強化されている。この程度の毒なら俺には通用しない。……ここは、俺が道を切り開く」

ザイオンは、両手に鋭い真空の刃(爪)を発生させると、屈強な狼の脚力で、前方にある巨大な倒木の上へと跳躍した。

ドシュッ!!

「ゲロッ!?」

彼が着地した瞬間。倒木の陰からルルたちを狙って飛び出してきた巨大な紫色のカエル魔獣――「アビス・ポイズン・トード」が、ザイオンの凶爪によって瞬く間に三枚おろしにされ、光の粒子となって消滅した。

「任せてくれ。俺の恩人であり、新たな家族であるルルとあなたに、魔獣どもを指一本触れさせはしない。……俺が、すべての敵を排除して進む!」

ザイオンは、これまで殺戮兵器として生きてきた己の力を、初めて「家族を守るため」に使えることに、深い喜びと使命感を感じていた。

彼は凄まじい速度で倒木から倒木へと飛び移り、沼から飛び出してくる魔獣たちを次々と引き裂いていく。

(……素晴らしい。俺の力が、誰かを守るために機能している……っ!)

彼が敵を倒すたびに、後ろから「すごいすごい!」という三月の拍手と、ルルの嬉しそうな声が聞こえる。

それが、彼の心を何よりも強く満たしていた。

しかし。

「……むにゃ。……なんだか、部屋の中が……臭いな……」

その時だった。

インカムの向こうから、今までずっと爆睡していた『魔力ゼロの少年指揮官』――如月拓也の、間の抜けた寝言が聞こえてきたのである。

『ハッ! 拓也様! お目覚めになられたのですね!』

クロエが歓喜の声を上げる。

「……んあ? クロエ、か……。俺、机で寝落ちしてたのか……?」

拓也は、自室のベッドではなく、勉強机に突っ伏したまま目を擦った。

彼の部屋の窓は少しだけ開いており、そこから、近所のゴミ収集所から漂ってきた微かな『生ゴミの臭い』が流れ込んできていた。

「……くっさ。カラスがゴミ漁ったのか……? 窓、閉めないと……」

拓也は、寝ぼけ眼のまま、よろよろと立ち上がり、窓をピシャリと閉めた。

そして、まだ完全に覚醒していない頭で、机の上のマイク(インカム)に向かって、何気なく呟いた。

「……部屋の中が臭い時は、ファブリーズ(消臭スプレー)を撒いて……換気扇を回せば、解決、だな……。むにゃ……」

パタン。

そして拓也は、そのままベッドに倒れ込み、再び深い深い二度寝の世界へと旅立っていった。

『…………ハッ!!』

インカムの向こうで、クロエ・アーヴィングの眼の奥に、狂信的な光が灯った。

『承知いたしました、拓也様ッ!! この迷宮に充満する悪臭(猛毒の霧)と害虫(魔獣)どもを、一網打尽にする究極の【空間清浄(ファブリーズ)戦術】ですね!!』

クロエは、拓也の「単に自分の部屋のゴミの臭いを消したいだけの寝言」を、第二十三階層を突破するための『完璧な神の啓示』として完全に誤認(受信)した。

『お姉様! 拓也様より、神算鬼謀の戦術指示が下りました!』

「ほんと!? 拓也、なんて言ってたの?」

三月が、目をキラキラさせてインカムに問いかける。

『はい! この階層の毒霧と魔獣どもを、まとめて吹き飛ばすよう仰っておられます! お姉様の持つ【毒の魔力回路】で毒素そのものを空間から吸収・中和(ファブリーズ)し、さらに【怪力】による剣圧で階層の空気を総入れ替え(換気扇)しろ、と!』

「なるほどー! さすが拓也! お部屋が臭い時は、ファブリーズと換気扇だよね!」

三月は、ポンッと手を打って納得した。

彼女は、前方を走ってカエルを斬り裂いているザイオンに向かって、大きく手を振った。

「ザイオンお兄ちゃーん! ストーップ! もう戦わなくていいよー!」

「……三月殿? どうした、何か問題でも……」

ザイオンが、爪の血を払いながら振り返る。

「ううん! 拓也がね、『お部屋が臭いから、お掃除しなさい』って言ってたの! だから、私がパパッとお片付けしちゃうね!」

「……お、掃除……?」

ザイオンが、その聞き慣れない単語に首を傾げた、次の瞬間。

三月は、背中のルルを下ろしてザイオンの横に立たせると、深呼吸をするように大きく胸を反らした。

そして、彼女の内に眠る原初の力――固有スキル『魂喰い』の特性と、完全に極まった【毒の魔力回路(極)】を、全開で起動した。

ズゴゴゴゴゴゴゴゴッ……!!!!

三月の身体を中心として、凄まじい『吸引の渦』が発生した。

第二十三階層の空を覆い尽くしていた緑色の猛毒の霧が、まるで巨大な掃除機(あるいは空気清浄機)に吸い込まれるかのように、凄まじい勢いで三月の体内へと吸収され始めたのだ。

「なっ……!? 三月殿、何をっ!? いくらなんでも、それほどの量の毒を直接吸い込めば――」

ザイオンが顔面蒼白になって叫ぶ。

しかし、三月はケロッとした顔で、美味しそうに毒霧を吸い込み続けていた。

かつて自我の崩壊に怯えながら地道に拡張し続けた彼女の『魔力許容量(器)』は、今や底なしのブラックホールと同義である。

猛毒の霧は、彼女の【毒の魔力回路(極)】を通過した瞬間、ただの純粋な「美味しい魔力エネルギー」へと変換され、彼女のステータスをさらに底上げする栄養分となっていたのだ。

「うんっ! ファブリーズ(吸収)完了! 空気、美味しくなったね!」

わずか数秒で、階層中の毒霧を完全に「食べて」しまった三月。

彼女は満足そうに口元を拭うと、今度は右手一本で『魔鉄の塊剣』をスッと真横に構え、極限まで圧縮された【怪力(極)】を解放した。

「次は換気扇(ウチワ)だよー! みんな、飛んでいけぇぇぇぇっ!!!!」

ゴオォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!!!!!!

三月が、巨大な大剣を超音速のフルスイングで横薙ぎに振り抜いた。

それは、純粋な『筋力』と『質量』が生み出す、デタラメな物理的暴風。

三月の剣圧によって空気が極限まで圧縮され、第二十三階層の空間そのものを捻じ曲げるような『超巨大な真空の竜巻(物理)』が巻き起こったのである!

(第319話へ続く)

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

ルルちゃんを守るために張り切っていたザイオンお兄ちゃんでしたが……外で寝ぼけた拓也の「ファブリーズと換気扇」という寝言によって、三月お姉ちゃんが規格外のお掃除を開始してしまいました。

階層中の致死性の毒霧を『魂喰い』と『毒の魔力回路』で文字通り「吸い込んで食べて」しまい(ファブリーズ)、さらに怪力の剣圧で超巨大な物理竜巻(換気扇)を発生させる。

せっかくカッコよく見せ場を作っていたザイオンですが、果たしてこのデタラメな蹂躙劇を前にどんな反応を見せるのでしょうか?(笑)

よろしければ、ページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、今後の執筆の大きな励みになります!

次回(第319話)もどうぞよろしくお願いいたします!

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