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魂喰い覚醒で最強へ成り上がるFランク少女、意識を奪う闇と共に歩む  作者: beck2026
第五章:深淵の門(アビスゲート)。見えざる少年指揮官と、最強の主人公の蹂躙劇

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313/353

第313話:第二十一階層『生命錬成の研究所』。廃棄宣告と、お姉ちゃんの逆鱗

第二十一階層『生命錬成の研究所』。

そこは、アビスゲートを創造した古代魔導文明が残した、獣人たちを生体バッテリーとして大量生産するための忌まわしき工場(培養プラント)であった。

果てしなく続く銀色の金属壁。

床には冷たいフットライトが規則正しく並び、天井を這う無数の太いパイプラインからは、生命を維持するための薬液が流れる「ドクン……ドクン……」という不気味な脈動音が絶え間なく響き渡っている。

そして、広大な空間を埋め尽くすように立ち並ぶ、何万もの巨大なガラスの円筒(培養カプセル)。

その中を満たす緑色の液体は、かつてここで無数の命が「部品」として造られ、そして消費されていったという残酷な歴史を無言で物語っていた。

「ごめんなさい……ごめんなさい……っ!」

その冷たく無機質な空間の中心で、猫耳幼女のルルは床にへたり込み、両手で頭を抱えながら激しく泣きじゃくっていた。

かつてこの場所で造られ、「魔力出力が基準に満たない戦えないゴミ」として廃棄処分を宣告された彼女にとって、ここは魂に刻み込まれた根源的な恐怖の場所であった。

いつもの元気な姿は見る影もなく、銀色の猫耳はペタンと伏せられ、尻尾は股の間に完全に巻き込まれている。

「わたし、生まれてきちゃダメだったの……! わたしは、ここで造られた不良品だから……っ!」

そんな彼女を見下ろすように、研究所の奥深くにある暗がりから、鼓膜を震わせるような重い駆動音と共に「それ」が姿を現した。

第二十一階層の管理者たるボス魔獣――『アビス・マッド・アルケミスト(Sランク)』。

それは、見るもおぞましい異形のキメラであった。

下半身は巨大なムカデのような多脚の機械構造となっており、上半身は膨れ上がった肉塊と錆びた歯車が複雑に絡み合っている。

背中からは、注射器のような鋭利な針を備えた金属の触手が何十本も生えており、その先端からは、あらゆる生体をドロドロに溶かす猛毒の緑色の溶解液がボタボタと滴り落ちていた。

溶解液が銀色の金属床に落ちるたび、ジュウジュウと嫌な音を立てて床が溶け、鼻を突くような酸の匂いが周囲に立ち込める。

『ピピピ……。逃亡個体、ナンバー077。生体スキャン完了。依然として魔力出力は基準値の3パーセント未満。戦力としての価値なし。エネルギー変換効率も最低ランクです』

ボスの頭部に埋め込まれたスピーカーから、感情の欠片もない冷徹な機械音声が響き渡る。

『おとなしく回収指示に従いなさい。貴体は生命力も魔力出力も基準値に達していない不良品(ゴミ)です。生きて活動すること自体が、当迷宮におけるエネルギーの損失に他ならない。速やかに溶解槽へ入り、魔力資源として還元されなさい』

命を単なる「エネルギーの損失」と断定するその言葉は、ルルの小さな心を無残に、そして決定的に抉り取っていった。

「いやだ……いやだぁ……っ! 溶かさないで……っ!」

ルルは後ずさろうとするが、恐怖で足に力が入らず、床を這うことしかできない。

しかし、彼女はふと我に返ったように、自分の前に立ち塞がろうとしている黒いコートの背中――如月三月(きさらぎ みつき)を見上げた。

「三月お姉ちゃん、逃げて……っ!」

ルルは、涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、必死に叫んだ。

「わたしと一緒にいたら、お姉ちゃんまで溶かされちゃう……! わたしは不良品だから、壊されてもしょうがないの! だから、お姉ちゃんは拓也お兄ちゃんのところに帰って……わたし抜きで、パンケーキを食べて……っ!」

自分は不良品なのだから、処分されて当然の存在なのだ。

大好きな「三月お姉ちゃん」に、こんな忌まわしい自分と一緒にいてほしくない。巻き込みたくない。

ルルは、死の恐怖に震えながらも、最後は自らを犠牲にして三月を遠ざけようとした。

『侵入者は直ちに排除。逃亡個体は回収。これより、リサイクル・プロセスを開始します』

アビス・マッド・アルケミストの無機質な単眼が、赤く発光した。

背中から生える数本もの巨大な金属触手が、鞭のようにしなり、蹲るルルと、彼女を庇う三月に向かって、超音速で薙ぎ払われた。

ヒュンッッッ!!!!

空気を切り裂く鋭い風切り音。

触手の先端からは、生体を一瞬で溶かす猛毒の酸がシャワーのように噴出している。

ルルが、「お姉ちゃん!」と悲鳴を上げてギュッと目を閉じた、その瞬間だった。

ガキィィィィィィィィィィィンッ!!!!!!!!

研究所内に、鼓膜を破るような甲高い金属の衝突音が響き渡った。

「……え?」

ルルが恐る恐る目を開けると。

そこには、漆黒のロングコートを靡かせた三月の背中があった。

三月は、右手一本で自身の身の丈ほどもある無骨な大剣――『魔鉄の塊剣』を抜き放ち、ルルを庇うように立ち塞がって、Sランクの機械魔獣が全力で振り下ろした数本の触手を、完全に受け止めていたのだ。

ジュワァァァァァァァァッ!!

猛毒の溶解液が、三月のコートや肌に大量に降り注ぐ。

しかし、神域へと覚醒した【堅牢(極)】を持つ三月にとって、それはただの「少しぬるいお湯」に過ぎなかった。

コートの繊維一本すら溶けず、肌には赤み一つ生じない。

逆に、三月の底知れぬ膂力によって、大剣に押し当てられた金属の触手の方が、メキメキとひしゃげ始めていた。

『ピピピ……? 警告。警告。侵入者の物理耐性および筋力が、当機の攻撃出力を異常な数値で上回っています。エラー。あり得ない数値です。論理演算に支障をきたしています』

巨大な機械魔獣が、理解不能な事象に直面し、困惑したようにカメラのレンズを駆動させる。

「三月、お姉ちゃん……?」

ルルが、呆然と三月の背中を見上げる。

三月は、触手を受け止めたまま、微動だにしなかった。

インカムの向こうで、クロエが息を呑む音が聞こえた。

『お、お姉様……?』

三月は、俯いていた。

顔は見えない。だが、彼女の周囲の空気が、これまでの全階層で見せていた「楽しげなピクニック」のそれとは、完全に異質のものへと変貌しつつあった。

「……ねえ。今、なんて言ったの」

三月の口から紡がれた声は。

氷点下よりも冷たく、そして、深淵の底よりも暗く、恐ろしいほどの静かな怒りに満ちていた。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ……!!!!!!!!

突如として、巨大な研究所の空間全体が、激しい地震に見舞われたかのようにガタガタと揺れ始めた。

否、地震ではない。

三月の細い体から噴き出した、神域へと覚醒した凄まじい【覇気】と、感情の爆発に連動して無意識に展開された極度に圧縮された【極大磁場】が、空間そのものを悲鳴を上げさせているのだ。

「不良品……? エネルギーの損失……? 溶かして、リサイクル……?」

三月が、ゆっくりと顔を上げた。

その深緑色の瞳には、一切の光がなかった。

これまでの階層で見せていた天真爛漫な笑顔は、完全に消失している。

そこにあるのは、愛する新しい妹(仮)を、理不尽な暴力と暴言で深く傷つけた者に対する、純度100パーセントの『お姉ちゃんとしての絶対的な怒り(殺意)』であった。

「うちの可愛い妹を……あんな冷たいガラスの筒に閉じ込めて、勝手に造って、勝手にゴミ扱いして……挙句の果てに、目の前で溶かすって言ったの?」

ギギギギギギギギッ……!!

三月が睨みつけただけで、周囲の空間の重力が狂い始めた。

銀色の金属壁が目に見えない圧力によってボコボコとひしゃげ、太いパイプラインが破裂し、中から緑色の培養液が血のように噴き出し、そして無重力空間のように宙へと浮き上がっていく。

『ピ、ピピピ……!? 警告! 警告! 対象から観測される魔力係数および物理エネルギーが、迷宮の許容限界を突破! 空間座標の崩壊が始まっています! 直ちに退避行動を――』

機械魔獣が、かつてないエラーコードを吐き出しながら、無数の触手を盾にして後退しようとする。

彼らには感情がないはずだった。だが、目の前に立つ『ただの人間』から放たれる絶対的な死のプレッシャーの前に、システムの生存本能が「逃走」を命令していたのだ。

しかし、三月は逃がさない。

これまでは「拓也のパンケーキが冷めるから」という理由で、迷宮のギミックを破壊してきた。

だが、今は違う。

彼女は今、完全に『個人的な怒り』で、この階層の存在そのものを、根本から否定し、跡形もなく消し去ろうとしていた。

「ルルちゃんはね……」

三月は、触手を受け止めていた大剣を、力任せに弾き返した。

ドゴォォォォォォォォォンッ!!

ただ剣を振っただけの風圧で、Sランクの機械魔獣の巨体がバランスを崩し、数十メートル後方の壁まで大きく吹き飛ばされる。

「ルルちゃんはね、パンケーキが大好きで、イカ焼きもすっごく美味しそうに食べるの! 高いところが怖いし、寒いのも、お水も嫌いなの! そうやって、泣いたり笑ったり、ポカポカのお布団で幸せそうに眠る子が……不良品なわけないでしょ!!!!」

三月の怒りの咆哮が、広大な研究所内にビリビリと反響する。

その声には、理不尽な運命に対する抗議と、ルルという存在への絶対的な肯定が込められていた。

「こんな、命をオモチャにするような冷たいお部屋……」

三月は、大剣を上段に構えた。

彼女の体内に眠るすべての魔力回路が、かつてない限界突破の出力で激しく明滅し、周囲の磁場が狂暴な竜巻のように渦を巻き始める。

「私が、ぜんぶ【解体(スクラップ)】にしてあげるッ!!!!」

最強の姉による、慈悲なき蹂躙(お仕置き)の時間が、ついに幕を開けた。

(第314話へ続く)

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

第313話、ルルちゃんをかばう三月お姉ちゃんのブチ切れ回でした!

「エネルギーの損失」「不良品」という、命を数値でしか見ない機械魔獣の暴言に対し、三月は「泣いたり笑ったりできる子が不良品なわけないでしょ!」と、お姉ちゃんとしての純度100%の怒りを爆発させます。

いつもは「パンケーキのため」というどこか抜けた理由で階層を破壊していましたが、今回ばかりは完全にガチギレモードです。

無意識に漏れ出した覇気と磁力だけで、すでに研究所が崩壊を始めていますが……果たして、この忌まわしい工場はどうなってしまうのでしょうか?

よろしければ、ページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、今後の執筆の大きな励みになります!

次回(第314話)もどうぞよろしくお願いいたします!

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