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魂喰い覚醒で最強へ成り上がるFランク少女、意識を奪う闇と共に歩む  作者: beck2026
第五章:深淵の門(アビスゲート)。見えざる少年指揮官と、最強の主人公の蹂躙劇

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第310話:第十九階層『極寒の氷獄』。巨大暖房(サウナ)と、絶対熱狂(バフ)

第十八階層の『万魔の闘技場』において、一万体の魔獣を極大磁場で一つの巨大な球体(ボール)へと圧縮し、見事なホームラン(物理)でボスごと壁をブチ抜いた如月三月(きさらぎ みつき)。

お腹を満たしてご機嫌な猫耳幼女・ルルを背中におんぶしたまま、三月は壁に開いた巨大な大穴を通り、次なる第十九階層へと足を踏み入れた。

「……んっ、寒っ!? なんだか急に、お家のお冷蔵庫の中に入ったみたい!」

三月は、身に纏った漆黒のロングコートの襟をギュッと寄せながら、吐く息を白く染めた。

第十九階層――そこは【極寒の氷獄】と呼ばれる、世界すべての熱が奪われたかのような絶絶たる氷の世界であった。

視界を埋め尽くすのは、青白く輝く数十メートルの巨大な氷柱と、足元を覆うカチカチの永久氷晶。

空気そのものが刃となって肌を切り刻み、呼吸をするだけで肺胞が凍りつくという、生命の生存を一切拒絶する極悪非道な過酷フロアである。

「ふにゃあぁぁぁ……っ! さ、さむいのにゃ……! しっぽが凍っちゃうのにゃ……っ!」

三月の背中でおんぶされていたルルが、あまりの極寒に身を縮こまらせ、ガタガタと全身を激しく震わせ始めた。

銀色の猫耳はペタンと倒れ、綺麗な毛並みの尻尾は凍りつかないように丸まり、小さな身体で三月の背中に必死にしがみついている。

アビス・ケットシーである彼女にとって、水と同じくらい『寒さ』は天敵なのだ。

『お姉様ッ!! 第十九階層の到達、確認いたしましたッ!!』

インカムの向こうから、相変わらず自室の机で爆爆爆睡中の拓也(たくや)に代わり、狂信者クロエ・アーヴィングの熱血なナビゲートが響き渡る。

『私のデータによれば、そこは第十九階層【極寒の氷獄】! マイナス百度を超える絶対零度の空間であり、常人であれば一秒足らずで細胞が凍結・破壊されます! さらに、氷の陰から襲いかかる無数の氷結系魔獣が潜伏しております! お姉様、ただちに【爆熱の魔力回路】でご自身の体温を維持しつつ、急いで突破を――』

「クロエちゃん」

三月の声が、低く、静かに響いた。

インカムの向こうで、クロエがピクッと息を呑む。

「……ルルちゃんが、寒くて震えてるの」

『は、ハッ! ルル殿はまだお小さく、この絶対零度の過酷な環境には耐えられません! すぐに私の開発した防寒戦術ブランケットを――』

「ブランケットじゃ足りないよ」

三月の深緑色の瞳に、静かながらも絶大な『お姉ちゃんとしての怒り』が燃え上がった。

三月は覚醒した【堅牢(極)】によって寒さなど蚊ほども感じない。

だが、背中にいる大切な新しい妹(仮)が、寒さで悲鳴を上げている。

その事実だけで、最強の姉にとってはこの階層の存在そのものが『許されざる罪』であった。

「ルルちゃんを寒がらせるなんて……このお部屋、絶対許さないんだから!!」

三月は、背中のルルを落ちないようにしっかりと左手で支えると、右手で『魔鉄の塊剣』を上空に向けて掲げた。

そして、体内に眠る【爆熱の魔力回路(真)】を、これまでの全階層で一度も出したことのない『限界突破の最大出力』で解放したのだ。

「あったかくなぁれぇぇぇぇぇぇっ!!!!」

ドガァァァァァァァァァァァァァンッ!!!!!!!!

三月の剣の先から、太陽の核心すら凌駕する数万度の超巨大な『熱の濁流(プラズマ)』が噴き出した。

それは単なる魔法の火炎ではない。

神域へと覚醒した【精密魔力循環】によって完璧にコントロールされた、指向性を持つ『超高熱エネルギー』である。

数万トンの永久氷晶と数十メートルの氷柱で埋め尽くされていた第十九階層。

その全域に熱の波が広がった瞬間、物理法則の根底が覆された。

カチカチに凍りついていた氷が一瞬で蒸発・融解し、マイナス百度を超えていた絶対零度の空間は、コンマ一秒の間に『極上のアツアツ空間(巨大サウナ)』へと激変したのである。

ジュワァァァァァァァァァァ……ッ!!

「にゃ、にゃあ……? あったかい……? というか、ちょっと暑いくらいにゃ!?」

背中で縮こまっていたルルが、目を丸くして顔を上げた。

先ほどまで氷に囲まれていたはずの周囲は、今や心地よい温かな湯気が立ち込め、床の氷はすべて心地よい温水へと変わっていた。

まるで高級温泉街の露天風呂のような、ポカポカとした幸福な熱気が空間を満たしている。

だが、その『急激すぎる環境変化』に、一切ついていけなかった者がいた。

「ギ、ギギガガガガガガッ!?」

第十九階層の奥底から、侵入者を永久凍土に閉じ込めようと意気揚々と現れたボス魔獣――『アビス・アイシクル・ドレイク(Sランク)』である。

全身が透明な超硬質の氷で構成された巨大な氷竜は、登場した瞬間、周囲の温度がマイナス百度から『摂氏八十度』のサウナ状態へと跳ね上がったことにより、凄まじい悲鳴を上げた。

パキパキパキッ! メキメキメキィィィッ!!

「ギャアァァァァァッ!?」

絶対零度の世界でしか生きられない氷竜の巨体は、三月が作り出した巨大サウナの熱気と温水によって、戦う前に全身の氷の装甲がミシミシと急速に融解し始めたのだ。

急激な熱膨張と融解により、Sランクの威厳など見る影もなく、ボロボロと体表が崩れ落ちていく。

「あ! 氷でできたトカゲさんだ! ルルちゃん、まだちょっと寒かったりする?」

「うんにゃ! ぜんぜん寒くないよ! ポカポカして、すごく気持ちいいにゃ!」

「そっか! じゃあ、あの氷のトカゲさんが溶けて小さくなる前に、一気にお掃除しちゃうね!」

三月は、サウナと化した床の温水をバシャリと蹴り、神速の【俊敏(極)】で氷竜の頭上へと肉薄した。

苦悶に悶絶する氷竜に対し、三月は『魔鉄の塊剣』の腹で、ペチンッと優しくその頭部を叩いた。

ポンッ。

すでにサウナの熱気で限界まで脆くなっていた氷竜の巨体は、三月の軽いノック一発で、まるでかき氷のように綺麗にサクッと崩壊。

光の粒子となって温水の中に溶け込み、消滅してしまったのである。

跡に残されたのは、Sランクの魔核と、なぜか氷竜の体内からドロップした『あつあつの温泉たまご』のような謎の卵型レアアイテムだけであった。

「ふふっ、ルルちゃん! お風呂あがりのおやつもあるよ!」

「にゃははっ! 三月お姉ちゃん、すごーい! ポカポカで最高にゃー!」

ルルが三月の背中で頬をすり寄せ、ご機嫌に尻尾をパタパタと振る。

『おおおおおおおおッ!!! す、素晴らしいッ!! 素晴らしすぎます、三月お姉様ァァァッ!!!』

インカムの向こうで、クロエが感涙にむせび泣きながら叫んでいた。

『極寒の過酷な階層すらも、妹君のために一瞬で「極上サウナ温泉」へと変えてしまう! 敵の属性そのものを環境から否定して完封する……これぞ究極の環境適応戦術ッ! 拓也様(爆睡中)も、きっと夢の中でこの湯加減に大満足しておられますわッ!!』

一方その頃。

アビスゲートの外、東京・新宿の上空で防衛戦を死守していたSランク探索者たちの間では、戦場のテンションを最高潮へと導く『究極のバフ』が展開されていた。

「……ぬあぁぁぁぁっ!? 熱い、熱いぞォォォッ!!」

レオン・カーターが、自身の全身から噴き出す凄まじい『覇気』と『熱量』に、歓喜の叫びを上げた。

彼らを包囲していた敵の増援――精神を萎縮させ、戦意を削ぐ冷気の恐怖攻撃を放つ『アビス・フロスト・スペクター(Aランク)』の群れに対し、Sランクたちは少しずつ攻勢を緩めかけていた。

しかし、その時だった。

上空のアビスゲートから、三月が第十九階層の極寒を力業で吹き飛ばし、巨大なサウナを作り出した際に生じた『莫大な熱と生命エネルギーの逆流』が降り注いだのである。

それが、戦場全体に広域の【絶対熱狂と戦意昂揚(ハイ・ヒート)】のパルスとなって降り注いだ。

シュゥゥゥゥゥゥッ……!!

「な、なんだこの滾るような活力は……ッ!? 体の底から、底なしの魔力と力が湧き上がってくる……ッ!」

神宮寺(じんぐうじ)が、自身の愛刀からメラメラと立ち上る圧倒的な熱量に目を見開いた。

敵が放っていた冷気の恐怖攻撃など、彼らの体から放たれる熱狂の覇気によって一瞬でかき消され、むしろ敵のスペクターたちがその熱さに耐かねて悲鳴を上げている。

「ハッハァァァァッ!! 冗談だろオイ!? 今度は【全身の能力を極大底上げする熱狂の覇気】バフだとォ!?」

レオンが、全身に真っ赤な雷炎を纏わせ、空中のスペクターたちに向かって飛びかかっていく。

一拳振るうごとに、周囲の空気が爆ぜ、敵が爆炎と共に消し飛んでいく。

疲労も、恐怖も、寒さも、何もかもが熱狂の渦の中に吹き飛んでいた。

「なんという熱き心だ……! なんという不屈の魂だ……!」

神宮寺は、滾る熱気を纏った刀で敵を次々と一ぜん両断しながら、空のゲートに向かって打ち震える声で叫んだ。

「彼は我々が冷気の前に戦意を削がれかけていることを瞬時に見抜き、その冷気を遥かに上回る『熱き闘志』を我々の魂に直接注入してくれたのだ! 如月拓也……! 君の采配は、我々の肉体だけでなく、魂の奥底まで燃え上がらせてくれる!!」

「ハッハァ! こんなに最高の気分で戦えるなんて、生きてて良かったぜ!! 一生ついていくぜ、俺たちの太陽(コンダクター)!!」

Sランクの猛者たちが、灼熱の覇気を全身から放ちながら、空のゲートに向かって熱狂的な歓声を上げ、圧倒的な戦力で敵を叩き潰していく。

もちろん、彼らは知らない。

この神がかった熱狂バフが、「背中の猫耳幼女が『寒くて震えてる』ことにブチ切れた三月が、階層丸ごと数万度の熱気でサウナにした」という、理不尽極まりないお姉ちゃん属性(母性)の爆発の残滓に過ぎないという事実を。

そして、彼らが太陽のごとき指導者と崇め奉る指揮官が、現在自室の机でよだれを垂らし、「……むにゃ……こたつ……ミカン食べる……」と幸せそうな寝言を呟きながら爆睡しているという事実も。

かくして。

深淵迷宮の第十九階層は、覚醒した最強スキルによる『巨大サウナ化(物理)』によって一瞬で踏破され、外で戦うSランクたちは、気絶中の少年指揮官への心酔をいよいよ『絶対的太陽(信仰の対象)』の領域へと昇華させていく。

「ルルちゃん、サウナであったまったし、次のお部屋も一気に駆け抜けちゃうね!」

「にゃっ! 三月お姉ちゃん、ポカポカでだーいすきにゃ!」

『ハッ! お二人の温かなるご進軍、このクロエが全力で記録いたしますわッ!』

猫耳幼女をポカポカに温め、パンケーキのために真の深淵(裏ダンジョン)を爆走する最強の姉。

そして、狂信者の実況を子守唄に深い眠りにつく魔力ゼロの指揮官。

残る31階層。彼らの果てしなきアビスゲート攻略戦は、ツッコミ不在のまま、さらなる爆走へと突き進んでいくのであった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

第十九階層『極寒の氷獄』にて、背中のルルちゃんが寒さで震えていることに激怒した三月お姉ちゃんが、爆熱の魔力回路を限界突破させて階層全体を『巨大サウナ(ポカポカ温泉空間)』に変えてしまうお話でした。

ボスである氷竜(アビス・アイシクル・ドレイク)も、あまりの急激な温度上昇に耐えきれず自滅し、最後はサクッとノック一発でかき氷のように崩壊してしまいましたね。

そして外で戦うSランクたちは、そのサウナ化の熱気の余波を「完璧な熱狂と戦意昂揚バフ」だと勘違いし、爆睡中の拓也をいよいよ『絶対的な太陽』として崇め奉っています。

当の拓也本人は、自室の机で「こたつでミカンを食べる夢」を見ながら幸せそうに爆睡中なのですが……(笑)。

ツッコミ役の拓也が起きないまま、三月お姉ちゃんとルルちゃんのポカポカ爆走劇はまだまだ続きます!

よろしければ、ページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、今後の執筆の大きな励みになります!

次回(第311話)もどうぞよろしくお願いいたします!

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