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魂喰い覚醒で最強へ成り上がるFランク少女、意識を奪う闇と共に歩む  作者: beck2026
第五章:深淵の門(アビスゲート)。見えざる少年指揮官と、最強の主人公の蹂躙劇

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第308話:第十七階層『海神の深淵』。モーゼの海割りと、絶品イカ焼き(おやつ)

第十六階層の廃都で、お腹を空かせた猫耳幼女・ルルを保護した如月三月(きさらぎ みつき)。

「ルルちゃんを怖がらせないように」という底なしの母性(お姉ちゃん属性)から、無音の真空斬りという神技を披露した彼女は、ルルを背中におんぶしたまま、次なる第十七階層へと続く階段を蹴り開けた。

「ルルちゃん、しっかり掴まっててね。次のお部屋に行くよー!」

「にゃっ! うん、三月お姉ちゃん!」

背中の小さな温もりを感じながら、三月が第十七階層へと足を踏み入れた途端。

彼女の視界を覆い尽くしたのは、上も下も見えないほどの圧倒的な『青』であった。

「わぁ……。今度は海の中みたいだね。お魚さん、いるかな?」

三月は、漆黒のロングコートを靡かせながら、不思議そうに周囲を見渡した。

第十七階層――そこは【海神の深淵】と呼ばれる、階層全体が数億トンの海水で満たされた『完全な水中エリア』であった。

本来であれば、足を踏み入れた瞬間に深海の凄まじい水圧で肉体がペシャンコに潰れ、さらに呼吸すらできずに溺死する絶望のトラップ階層である。

だが、三月は覚醒した【堅牢(極)】によって水圧を完全に無視し、さらに【磁力操作(極)】による反発フィールドを自身の周囲に展開することで、海の中に『球状の空気のドーム』を作り出していた。

しかし、三月の背中におんぶされているルルは、周囲を取り囲む膨大な水を見て、猫特有のパニックを起こしそうになっていた。

「ふにゃああぁぁぁッ!? み、みず! 水がいっぱいにゃ! わたし、お水はキライなのぉぉッ!!」

ルルが、三月の首にギュッとしがみついて涙目で震え出す。

猫耳がペタンと後ろに倒れ、尻尾が股の間に完全に巻き込まれていた。アビス・ケットシーである彼女にとって、水に濡れることは本能的な恐怖なのだ。

『お姉様ッ!! 状況、確認いたしましたッ!!』

インカムの向こうから、爆睡中の拓也(たくや)に代わってナビを務める狂信者、クロエ・アーヴィングの元気な声が響き渡る。

『私のデータによれば、そこは第十七階層【海神の深淵】! 水中での呼吸と水圧への耐性が必須となる極悪エリアです! さらに、水中戦に特化した巨大な水棲魔獣が多数潜伏しております! お姉様ならば息継ぎなしでも数日は戦えましょうが、背中のルル殿には過酷な環境かと!』

「うーん……。そうだね」

三月は、背中でガタガタと震えるルルを優しく撫でながら、ぐるりと周囲の海を見渡した。

ルルを水に濡らすわけにはいかない。だが、このままでは先へ進むのが遅れて、拓也のパンケーキが冷めてしまう。

「ルルちゃん、お水嫌いなんだよね?」

「にゃ、にゃ……。毛がベチャベチャになるの、すごくイヤなの……」

「わかった! じゃあ……【お水を全部、なくしちゃえばいい】んだよね!」

『…………はい?』

インカムの向こうで、クロエがまたしても一瞬だけ理解を追いつかせられずに思考停止する。

「お水さん、ちょっとどいててね!」

三月は、右手で『魔鉄の塊剣』をスッと構えると、目の前に広がる数億トンの海に向かって、覚醒した【怪力(極)】を込めた『ただの横薙ぎ』を放った。

ゴバァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!!

三月の細い腕から放たれたデタラメな剣圧と、それに連動して発動した【磁力操作(極)】による極大の反発フィールド。

それらが凄まじい衝撃波となって直進し、第十七階層を満たしていた海水を、文字通り『真っ二つ』に引き裂いたのである。

旧約聖書に記された、海を割るモーゼの奇跡。

それを、魔法でも神の力でもなく、ただの『物理的な腕力(風圧と磁力)』だけで強引に成し遂げてしまったのだ。

「ギ、ギョェェェェェェッ!?」

海が真っ二つに割れ、海底の岩盤がむき出しになった一本道。

そこに、大量の海水と共に『ポイッ』と投げ出された巨大な影があった。

第十七階層のボス魔獣『アビス・クラーケン(Sランク)』である。

数十メートルに及ぶ巨大な触手を持つ深海の悪魔は、突如として自分の周囲から海が消え去ったことに完全にパニックを起こし、乾いた岩盤の上でビチビチと無様に跳ね回っていた。

「あ! すっごくおっきなイカさんだ!」

三月は、割れた海(左右にそびえ立つ水の壁)の間を一直線に走りながら、ビチビチ跳ねるクラーケンを見て目を輝かせた。

「ルルちゃん! お腹空いてるんでしょ? パンケーキの前に、イカ焼きのおやつにする?」

「いか……やき……? イカさん、おいしいの?」

ルルが、三月の背中から恐る恐る顔を出して小首を傾げる。

「うん! お醤油マヨネーズがないのが残念だけど、新鮮だから絶対美味しいよ!」

三月は、ビチビチと跳ねるSランクのクラーケンに向かって一直線に跳躍した。

「ギ、ギュルルルルッ!!」

クラーケンは陸に上げられながらも、必死に巨大な触手を振り回して三月を叩き潰そうとする。

しかし、神域の【俊敏(極)】を持つ三月にとって、それは止まっているのと同じだった。

「新鮮なうちに、サッと焼くのがコツなんだよね!」

三月は空中で【爆熱の魔力回路(真)】を起動。

剣の刀身に数千度のプラズマを纏わせ、クラーケンの最も美味しそうな(?)胴体部分を、完璧な焼き加減になるよう計算された速度で一刀両断した。

ジュワァァァァァァッ……!!

香ばしい、海鮮を焼く極上の匂いが、割れた海の中にフワリと漂う。

Sランクのボス魔獣は、反撃の暇も、水中に逃げ込む暇も与えられず、ただの『完璧に火が通った超巨大なイカ焼き』へと変貌して光の粒子となり……その跡には、Sランクの魔核と、三月が【怪力(極)】の余波で『おやつサイズ』に切り分けた、一切れのイカ焼き(ドロップアイテム扱い)だけがポツンと残された。

「はい、ルルちゃん! あーん!」

「あー……はむっ!」

三月が差し出したイカ焼きを、ルルが小さな口でパクリと咥える。

「……にゃあっ!? お、おいしい……! すっごくおいしいの、三月お姉ちゃん!!」

ルルの尻尾が、パタパタパタッ! とちぎれんばかりに勢いよく揺れた。

「ふふっ、よかった! お水にも濡れなかったし、おやつも食べられたし、最高だね!」

『おおおおおおおおッ!!! す、素晴らしいッ!! 素晴らしすぎます、三月お姉様ァァァッ!!!』

インカムの向こうで、クロエがまたしても感涙にむせび泣いていた。

『愛らしき妹君のために海を割り、立ち塞がる深淵の悪魔すらも「絶品のおやつ」へと変えてしまう! これぞ無敵のお姉ちゃん力(ぢから)! 拓也様が起きておられれば、きっとこの光景にスタンディングオベーションを送られていたことでしょうッ!!』

(※拓也が起きていれば、間違いなく胃を抱えて「生態系と物理法則を壊すな!」と絶叫していたはずである)

一方その頃。

アビスゲートの外、東京・新宿の上空で防衛戦を死守していたSランク探索者たちの間では、彼らの命を救う『究極のバフ』が展開されていた。

「ゴホッ、ゲホォォォッ……! クソッ、なんだこの霧は……!」

レオン・カーターが、空中で激しく咳き込みながら血を吐いていた。

彼らを取り囲んでいたのは、紫色の有毒ガスを撒き散らす『アビス・ポイズン・バット(Aランク)』の群れであった。

いくらスタミナが無限にあり、絶対治癒のバフがかかっていようと、肺に直接侵入してくる『猛毒』には対応しきれず、Sランク探索者たちの動きが目に見えて鈍り始めていたのだ。

「いかん……! この毒霧の中にいては、じきに全滅するぞ……!」

神宮寺(じんぐうじ)もまた、着物の袖で口元を覆いながら、苦しげに顔を歪めていた。

その時だった。

上空のアビスゲートから、三月が第十七階層の海を真っ二つに割り、数億トンの海水を無理やり後退させた際に生じた『水と浄化の巨大なエネルギー』が逆流してきた。

それが、戦場全体に広域の【絶対浄化と状態異常無効(クリア・オーシャン)】のパルスとなって降り注いだのである。

「……な、なんだ!? 肺の中の毒が……一瞬で消え去ったぞ!?」

レオンが、大きく深呼吸をして驚愕の声を上げた。

彼らの体を蝕んでいた猛毒が、まるで清らかな清流で洗い流されたかのように完全に浄化されたのだ。

そればかりか、彼らの周囲にうっすらとした『水のヴェール』が形成され、ポイズン・バットが吐き出す毒霧を完璧に弾き返し始めた。

「ハッハァァァァッ!! 冗談だろオイ!? 今度は【あらゆる毒を無効化する水の結界】だとォ!?」

レオンが、歓喜の咆哮を上げ、雷撃で毒蝙蝠の群れを一網打尽にしていく。

「なんという……なんという深き配慮だ……!」

神宮寺は、完全に毒が消え去った空気の中で、空のゲートに向かって打ち震える声で叫んだ。

「彼は自室にいながらにして、我々が『毒』という見えない脅威に苦しめられていることを察知し、瞬時に解毒と予防の結界を展開してみせたのだ! 我々の状態を、まるで心電図でも見ているかのように完全に把握している!」

「ハッハァ! まるで大海原のような広くて深い心を持った指揮官だぜ!! 一生ついていくしかねえ!!」

Sランクの猛者たちが、空のゲートに向かって熱狂的な祈りを捧げ、反撃の狼煙を上げる。

もちろん、彼らは知らない。

この完璧な状態異常無効のバフが、「猫耳の幼女が水に濡れるのを嫌がったから、海を物理で叩き割った」という、三月の理不尽すぎるモーゼの海割りの残骸(余波)に過ぎないという事実を。

そして、彼らが大海原のような心を持つと崇め奉る指揮官が、現在自室の机でよだれを垂らし、完全に夢の世界で泳いでいるという事実も。

かくして。

深淵迷宮の第十七階層は、覚醒した最強スキルによる『海割り(物理)とイカ焼き』によって一瞬で踏破され、外で戦うSランクたちは、気絶中の少年指揮官への心酔をいよいよ『全能の神』の領域へと昇華させていく。

「ルルちゃん! 次の階も一瞬で終わらせるから、しっかりしがみついててね!」

「にゃっ! 三月お姉ちゃん、すごーい! もっとおやつあるかなぁ!」

『ハッ! お二人のピクニック(※SSSランク迷宮攻略)、このクロエが全力でサポートいたしますわッ!』

猫耳幼女の胃袋を満たし、パンケーキのために割れた海底を爆走する最強の姉。

そして、狂信者の実況を子守唄に深い眠りにつく魔力ゼロの指揮官。

残る33階層。真の深淵(裏ダンジョン)の攻略戦は、ツッコミ不在のまま、さらなるカオスへと突き進んでいく。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

水が嫌いな猫耳幼女・ルルちゃんのために、第十七階層の海を『物理(腕力と風圧)』で真っ二つに割るというモーゼの奇跡を起こした三月お姉ちゃんでした。

さらに陸に打ち上げられてビチビチ跳ねるSランクのクラーケンを、ルルちゃんのおやつ(イカ焼き)にするという容赦のなさ!

そして外のSランクたちは、海割りの余波を「完璧な解毒と状態異常無効バフ」と勘違いし、爆睡中の拓也をいよいよ全能の神として崇め奉っています(笑)。

ツッコミ役の拓也が起きる気配がない中、ルルちゃんを背負ったお姉ちゃんの無双はさらに続きます。

よろしければ、ページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、今後の執筆の大きな励みになります! 次回もよろしくお願いいたします。

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