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魂喰い覚醒で最強へ成り上がるFランク少女、意識を奪う闇と共に歩む  作者: beck2026
第五章:深淵の門(アビスゲート)。見えざる少年指揮官と、最強の主人公の蹂躙劇

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第305話:第十四階層『無限増殖の森』。ちゃぶ台返しと、空間置換(バフ)

第十三階層の『無明の大迷宮』において、絶対に壊れないはずの神造の黒石を力業で粉砕し、壁をすべて一直線にぶち抜いて突破した如月三月(きさらぎ みつき)。

彼女が蹴り開けた階段を軽やかに下り、次なる第十四階層へと足を踏み入れた途端、むせ返るような湿気と青臭い植物の匂いが鼻を突いた。

「わぁ……。今度はジャングルみたいだね」

三月は、漆黒のロングコートにまとわりつく湿気を手で払いながら、薄暗い空間を見渡した。

第十四階層――そこは【無限増殖の森】と呼ばれる、鬱蒼とした不気味な巨大樹と、足元を覆い尽くす奇怪なツル草に支配された空間であった。

天井が見えないほどの高さを誇る巨木群が、まるで生き物のようにうごめき、侵入者を養分にしようと手ぐすねを引いている。

『お姉様ッ!! 状況、確認いたしましたッ!!』

三月の耳元のインカムから、弟の拓也(たくや)ではなく、狂信者であるクロエ・アーヴィングの元気な声が響き渡った。

自室の机で、極度の胃痛と魔力酔いによって完全に気絶(睡眠)している魔力ゼロの少年指揮官・拓也。

その横で、クロエは通信席を勝手に引き継ぎ、元米軍特殊部隊の知識と狂信をフル稼働させてナビゲートを行っていた。

『私のデータによれば、そこは第十四階層【無限増殖の森】! その森に生息する魔獣や植物は、物理的な攻撃を受けて【切断】されると、その断面から二体に分裂・増殖するという極悪な特性を持っております!』

クロエの報告と同時に、三月の周囲の茂みから、無数のツル草をまとった巨大な木人――『アビス・トレント(Aランク)』の群れと、その頂点に君臨する巨大な大樹の化け物『アビス・レギオン・ツリー(Sランク)』が姿を現した。

「ギギギギギ……ッ!!」

『お姉様、ご注意を! 奴らを愛剣で斬り捨てれば、瞬く間に数が倍増し、最終的には森全体が敵となって押し潰してきます! ここは細胞レベルで消滅させる極大の魔法攻撃か、あるいは――』

「斬ったら増えちゃうの? うーん、それは面倒くさいね」

三月は、迫り来る無数のトレントたちを前にしても、全く焦る様子もなく小首を傾げた。

「拓也のパンケーキが待ってるのに、草むしりなんてしてる時間ないよ。それに、魔法で燃やしたらお洋服に灰がついちゃうかもしれないし」

『ハッ! 確かにお姉様のお召し物は拓也様が選ばれた(※誤解)神聖なる戦闘服! 汚れなど断じて許されません! では、いかがなされるおつもりで!?』

「簡単だよ! 木を一本一本切るから増えちゃうんでしょ? だったら……」

三月は、右手で自身の身の丈ほどもある無骨な大剣――『魔鉄の塊剣』を、敵に向かってではなく、自分の足元の『地面(岩盤)』に向かって、ズドンッ! と深々と突き立てた。

「この森ごと、全部ひっくり返しちゃえばいいんだよ!」

『…………はい?』

通信越しのクロエが、一瞬だけ理解を追いつかせられずに思考停止する。

「そぉーいっ!!」

三月は、地面に突き立てた大剣の柄を両手でガッチリと握りしめた。

そして、神域へと覚醒した【怪力(極)】を両腕に集中させ、さらに【磁力操作(極)】を広域展開して、第十四階層の『地殻(地面のプレート)』そのものを完全にホールドした。

「ちゃぶ台返しぃぃぃぃぃぃっ!!!!」

メキッ、ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ……!!!!!!!

三月が、腰の入った見事なフォームで大剣を『上』へと跳ね上げた瞬間。

第十四階層の物理法則が、またしても完全な終焉を迎えた。

三月の細い腕から放たれたデタラメな膂力と磁力によって、なんと数平方キロメートルにも及ぶ第十四階層の『地面全体』が、上に乗っていた巨大な森や魔獣たちもろとも、空中にベリベリベリッ!! と剥がし取られ、そのまま180度ひっくり返されたのである。

「ギ、ギェェェェェェェェッ!?」

「モッ、モルァァァァァッ!?」

斬れば無限に増殖するはずだったトレントたちや、Sランクの巨大ボス魔獣は、三月に一切『触れられる』ことすらないまま。

ひっくり返った数億トンの地面(岩盤)の下敷きとなり、第十四階層の天井と地面の間に挟まれて、文字通り『ペシャンコ』に圧殺された。

斬撃ではないため、増殖する隙など1ミリも存在しない。完全なる質量(面)による圧殺である。

ドゴォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!!!!

森全体が天井に激突して粉砕され、第十四階層は一瞬にして『土と木の破片が散乱するだけの更地』へと変貌した。

そして、ボスの圧死によってドロップしたSランクの魔核だけが、コロコロと三月の足元へと転がってくる。

「ふふっ! ほらね、草むしりより、お庭ごとひっくり返した方が早いでしょ!」

三月は、魔核を拾い上げてコートのポケットにしまいながら、自慢げにピースサインを作った。

『おおおおおおおおッ!!! す、素晴らしいッ!! 素晴らしすぎます、三月お姉様ァァァッ!!!』

インカムの向こうで、クロエが感涙にむせび泣いていた。

ツッコミ役である拓也が気絶しているため、三月の理不尽極まりない物理バグを止める者はおらず、ただ狂信者による全肯定のフィードバックが響き渡る。

『増殖する敵を、地形ごと反転させて圧殺する……! これぞ神の御業! 拓也様がこの光景をご覧になれないのが口惜しいですが、このクロエがしっかりと「新約・如月聖典」に記録しておきますわッ!!』

「うんっ! 拓也が起きたら、お姉ちゃんすっごく頑張ったよって伝えておいてね! じゃあ、次の階に行くね!」

一方その頃。

アビスゲートの外、東京・新宿の上空で防衛戦を死守していたSランク探索者たちの間では、これまでの常識を覆す『究極のバフ』が展開されていた。

「ギガァァァァッ!!」

レオン・カーターの背後から、光学迷彩で姿を消していた変異種の魔獣が、死角を突いて毒の爪を振り下ろした。

回避は間に合わない。レオンが舌打ちをした、その瞬間だった。

シュガッ!!

突如として、空間が『反転』した。

レオンの背後にいたはずの魔獣が、一瞬にしてレオンの『真正面』へと座標を強制的に入れ替えられ、その振り下ろした爪は、なんと魔獣自身の急所(胸部)に深く突き刺さっていたのだ。

「ギ、ゲァ……!?」

自爆した魔獣が、光となって消滅する。

「な、なんだ!? 今、一瞬空間が歪んで、俺と敵の【位置(座標)】が入れ替わったぞ!?」

レオンが、自身の両手を見つめて驚愕の声を上げた。

それは、三月が第十四階層で『数平方キロメートルの空間(地面)をまるごと反転させた』際に生じた、莫大な次元の歪みが行き場を失い、ゲートの外へ逆流したものであった。

それが、戦場全体に広域の【空間反転(ショート・テレポート)】のパルスとなって降り注いだのである。

「こ、これは……ッ! 敵の攻撃が命中する直前に空間を反転させ、敵を自滅へと誘導する【絶対回避と座標置換】のバフだというのか!!」

神宮寺(じんぐうじ)が、自身に向かって放たれた火炎ブレスが、空間反転によって魔獣自身の顔面へと跳ね返っていくのを見て戦慄した。

「ハッハァァァァッ!! 冗談だろオイ!? 回復、スタミナ、貫通に続いて、今度は【空間の支配(テレポート)】だとォ!?」

レオンが、歓喜の咆哮を上げる。

ただでさえ無双していたSランク探索者たちに、任意のタイミングで敵と自身の位置を入れ替える能力が備わったのだ。もはや戦闘ではなく、一方的なイリュージョン・ショーであった。

「なんという恐るべき神算鬼謀……! 彼は自室にいながらにして、この三次元の空間座標すらもチェス盤のように並べ替えているのだ!」

神宮寺が、完全に心酔しきった表情で空のゲートに向かって叫ぶ。

「敵の行動を完全に掌握し、その力をそっくりそのまま敵自身に叩き返す! 如月拓也……君という男は、もはや戦術の神そのものだ!!」

「ハッハァ! 空間ごと俺たちを導いてくれる指揮官なんて、世界中探してもいねえぜ!!」

Sランクの猛者たちが、空のゲートに向かって熱狂的な信仰を叫び、空気を震わせる。

もちろん、彼らは知らない。

この神がかった空間置換バフが、「一本ずつ斬るのが面倒だから、地面ごとひっくり返した」という、三月の横暴すぎる『ちゃぶ台返し(物理)』の残骸に過ぎないという事実を。

そして、彼らが崇め奉る戦術の神が、現在自室の机でよだれを垂らして爆睡しており、すべては狂信者(クロエ)の全肯定ナビによって引き起こされている二次災害だという事実も。

かくして。

深淵迷宮の第十四階層は、覚醒した最強スキルによる『地形の反転圧殺』によって一瞬で更地となり、外で戦うSランクたちは、気絶中の少年指揮官への心酔を完全な『宗教』へと昇華させていく。

「クロエちゃん! つぎのお部屋もドンドン壊していくねー!」

『ハッ! 障害はすべて物理で粉砕なさいませ、お姉様! 拓也様(すやすや)も、きっと夢の中で応援しておりますわ!』

パンケーキのために迷宮の構造を地形ごとぶち壊す最強の姉と、狂信者の実況を子守唄に深い眠りにつく魔力ゼロの指揮官。

残る36階層。真の深淵(裏ダンジョン)の攻略戦は、ツッコミ不在のまま、さらなるカオスへと突き進んでいく。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

斬ると無限に増殖する厄介な森のギミックに対し、「斬るのが面倒なら、地面ごとひっくり返して潰せばいいよね!」という発想で、数平方キロメートルの地殻ごと『ちゃぶ台返し(物理)』で粉砕する三月お姉ちゃんでした。

最大のストッパーでありツッコミ役である拓也が爆睡しているため、狂信者クロエの全肯定ナビによってお姉ちゃんの物理バグはさらに加速していきます。

そして外のSランクたちは、地面がひっくり返った空間の歪みの余波を「完璧な空間置換(テレポート)バフ」と勘違いし、いよいよ拓也を戦術の神として崇め奉っています(笑)。

よろしければ、ページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、今後の執筆の大きな励みになります! 次回もよろしくお願いいたします。

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