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魂喰い覚醒で最強へ成り上がるFランク少女、意識を奪う闇と共に歩む  作者: beck2026
第五章:深淵の門(アビスゲート)。見えざる少年指揮官と、最強の主人公の蹂躙劇

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303/352

第303話:第十二階層『灼熱の溶岩海』。マグマの水切りと、絶対冷却(バフ)

第十一階層の暴風竜を『トランポリン』代わりにしたドロップキックで階層の床をブチ抜き、第十二階層へと到達した如月三月(きさらぎ みつき)。

彼女の音速数十倍の着地衝撃(ソニックブーム)によって、見渡す限りの赤熱した『マグマの海』はモーゼの十戒のごとく真っ二つに割れ、一時的に海底の岩盤がむき出しになっていた。

「わぁー、すっごく熱そう! サウナよりもアツアツだね!」

三月は、漆黒のロングコートの裾をパタパタと扇ぎながら、マグマが壁のようにそびえ立つ海底の道を軽やかに走り出した。

彼女の足元では、残存する超高温のマグマがドロドロと煮え滾り、常人であれば熱放射だけで灰になる絶死の空間である。

だが、神域へと覚醒した【堅牢(極)】と、体内で循環する【氷結の魔力回路(真)】の冷却効果により、三月は汗一つかかずにピクニック気分の足取りを保っていた。

『……ハァッ……ゲホッ……』

インカムの向こう側から、弟である拓也(たくや)の、もはや生命活動が停止しかけているような掠れ声が聞こえる。

自室の机に突っ伏し、「もう寝る」と宣言した魔力ゼロの少年指揮官だったが、彼の生真面目な性格と、悲鳴を上げ続ける右眼のチート能力『深層言語・限定解析』が、彼を眠らせてはくれなかった。

『ねえさん……。着地の衝撃で割れたマグマの海が、すぐに元に戻って……押し寄せてくるぞ……。熱力学的に……いや、もういい……。とにかく、左右から数万トンのマグマが迫ってくる……』

拓也は、血走った右眼でモニターを睨みつけながら、死に物狂いでナビを絞り出す。

『俺が右眼で……マグマの波が薄いルートを……計算する……。ねえさんは、そこに氷結魔法を一点集中して……突破口を……』

「大丈夫だよ、拓也! お姉ちゃん、水切りが得意なんだから!」

『……水切り?』

拓也が呆然と呟いた、その時だった。

「ゴオォォォォォォォォォッ!!!!」

割れていたマグマの海が再び合流し、高さ数十メートルの『灼熱の津波』となって三月を飲み込もうと迫り来た。

そして、そのマグマの津波を操るように、溶岩の海の中から超巨大な赤い大蛇――第十二階層のボス魔獣『アビス・ヴォルケーノ・レヴィアタン(Sランク)』が姿を現したのだ。

数千度の高熱を宿した巨大な牙が、三月を真っ向から丸呑みにしようと襲い掛かる。

「熱いのは、拓也のパンケーキだけで十分なの!」

三月は、迫り来る数万トンのマグマの津波と巨大な大蛇に向かって、足を止めるどころか、さらに加速した。

覚醒した【俊敏(極)】が、彼女の走りを『光の速度』すら錯覚させる神速へと引き上げる。

そして彼女は、自身の足の裏に【爆熱の魔力回路(真)】を起動し、それを【氷結の魔力回路(真)】と相反させることで発生する『極大の反発エネルギー』を宿した。

「そぉーいっ!!」

三月は、眼前に迫った灼熱の津波の『水面(マグマの表面)』を、全力で蹴り飛ばした。

ドゴォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!!!!!

その瞬間、第十二階層の物理法則が完全に崩壊した。

三月の覚醒した【怪力(極)】によって蹴りつけられたマグマの海は、強烈すぎる運動エネルギーを受け、なんと『石ころのように』水切り現象を起こしたのである。

数万トンのマグマそのものが、超音速で圧縮されながら、進行方向にいたボス魔獣『アビス・ヴォルケーノ・レヴィアタン』の顔面へと激突した。

「ギ、ギャァァァァァァッ!?」

自身が操っていたはずのマグマを、物理的な『超質量の弾丸(水切りの石)』としてぶつけられた大蛇は、鱗をへし折られ、断末魔の悲鳴と共に吹き飛んだ。

「まだまだぁーっ!」

三月はそのまま、マグマの表面を次々と蹴り飛ばしながら『水切り』の要領で海上を爆走していく。

タァンッ! タァンッ! タァンッ!!

彼女がマグマを蹴るたびに、超音速の衝撃波と絶対零度の冷気が同時に叩き込まれ、蹴られたマグマは瞬時に『黒曜石』へと変貌して固まっていく。

三月が通り過ぎた後には、数千度のマグマの海が完全に凍りつき、一本の真っ直ぐな黒曜石の道が完成していた。

そして、水切りの弾丸として吹き飛ばされたボス魔獣は、三月が蹴り放った冷気と衝撃の連鎖によって完全に凍結・粉砕され、チリ一つ残さず消滅したのである。

『…………』

インカムの向こう側は、例のごとく完全な沈黙に支配されていた。

『……マグマを……水切りの石にして……蹴り飛ばした……?』

拓也は、ついに机からズルズルと崩れ落ち、床に大の字になって天井を見上げた。

彼の右眼の解析システムは、「数万トンの流体を物理的な蹴りで個体として弾き飛ばす」という事象を処理しきれず、完全にブラックアウトしてしまった。

『アインシュタインどころか、ニュートンもアルキメデスも全員泣いてるぞ……。俺のナビ、一回も役に立ってない……。もうダメだ、俺の意識が……』

「拓也様ッ!! おお、なんという力強き踏破!! マグマの海すらも、お姉様にとってはただの水たまり(遊び場)に過ぎないのですね!!」

意識を手放しかけている魔力ゼロの指揮官の隣で、狂信者クロエだけがまた一つ新たな神話を記録し、歓喜の涙を流していた。

一方その頃。

アビスゲートの外、東京・新宿の上空で防衛戦を死守していたSランク探索者たちの間でも、かつてない最高の奇跡(バフ)が降り注いでいた。

「……な、なんだ!? 急に周囲の空気が涼しくなったぞ!?」

レオン・カーターが、額の汗を拭いながら驚愕の声を上げた。

三月が第十二階層でマグマの海を『氷結と物理の衝撃』で一瞬にして黒曜石に変えた際、行き場を失った莫大な熱エネルギーと冷気が反発し合い、ゲートの外へと逆流したのだ。

それが、戦場全体に広域の【絶対冷却(ヒートダウン)】のパルスとなって降り注いだのである。

「ギィェェェェッ!!」

上空から、変異種の魔獣たちが放った極太の火炎ブレスがSランクたちを襲う。

しかし。

シュゥゥゥゥゥゥッ……!!

火炎ブレスは、彼らの数メートル手前で『見えない冷気の壁』に衝突し、一瞬にしてただの水蒸気へと変換され、無害なミストとなって消え去ってしまった。

「こ、これは……ッ! 敵の炎属性攻撃を完全に無効化する、広域の熱耐性バフか!」

神宮寺(じんぐうじ)が、自身の刀に冷気が纏われているのを見て戦慄の声を上げた。

「ハッハァァァァッ!! 冗談だろオイ!? 無限のスタミナに続いて、今度は【絶対的な属性無効】の広域バフだとォ!?」

レオンが、もはや避けることすらやめ、敵の火炎ブレスを正面から受け止めながら(そしてノーダメージのまま)雷撃を叩き込んでいく。

Sランク探索者たちの規格外の戦闘力が、この無敵の耐性バフによってさらに跳ね上がり、空の魔獣たちを一方的な作業で殲滅していく。

「なんという恐るべき盤面支配力……! 敵の最大火力を無に帰し、我々に完全なる安全地帯(セーフティゾーン)を提供するとは! 如月拓也、彼は自室にいながらにして、この戦場を文字通り『冷徹』に支配しているに違いない!」

神宮寺が、完全に予知したかのような動きで敵を次々と両断し、空の彼方に向かって叫んだ。

「ハッハァ! お前の指揮があれば、マグマの中に飛び込んでも火傷一つしねえぜ!! 一生ついていくぜ、コンダクター!!」

Sランクの猛者たちが、空のゲートに向かって熱狂的な敬礼を捧げる。

もちろん、彼らは知らない。

この究極の絶対冷却バフが、「マグマの海を水切りの要領で蹴り飛ばしながら走り抜けた」という、三月の理不尽すぎるゴリ押し物理の残骸(排熱)に過ぎないという事実を。

かくして。

深淵迷宮の第十二階層は、覚醒した最強スキルによる『マグマの水切り(物理)』によって一瞬で踏破され、外で戦うSランクたちは、少年指揮官への心酔を完全な『狂信』へと昇華させていく。

「拓也ー! マグマのお部屋も終わったから、次の階に行くね! 待ってて、パンケーキ!」

『…………(気絶中)』

「拓也様は現在、大いなる演算の果てに深い瞑想(気絶)に入られました! 拓也様に代わり、このクロエが応援の祈りを捧げますわッ!」

パンケーキのために物理法則を破壊し続ける最強の姉と、ついに限界を超えて気絶した魔力ゼロの指揮官。

残る38階層。果てしなき真の深淵(裏ダンジョン)の攻略戦は、まだまだ続くのであった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

マグマの海を「水切り」の要領で蹴り飛ばし、数万トンのマグマを物理的な弾丸(石ころ)にしてボスを粉砕する三月お姉ちゃんでした!

外のSランクたちは、その余波である絶対冷却を「完璧な熱耐性バフ」と勘違いし、いよいよ拓也への狂信を深めています(笑)。

ついに限界を超えて気絶してしまった拓也ですが、クロエの熱い実況(祈り)をバックに、残り38階層の真の深淵(裏ダンジョン)攻略はまだまだ続きます!

よろしければ、ページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、今後の執筆の大きな励みになります! 次回もよろしくお願いいたします。

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