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魂喰い覚醒で最強へ成り上がるFランク少女、意識を奪う闇と共に歩む  作者: beck2026
第五章:深淵の門(アビスゲート)。見えざる少年指揮官と、最強の主人公の蹂躙劇

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第300話:最深層『深淵の核(コア)』。完全崩壊と、約束のパンケーキ

次元の壁を物理的に引き裂き、忘却の呪いを粉砕した第九階層の奥底。

そこにそびえ立っていた巨大な黒い扉を、如月三月(きさらぎ みつき)は「お邪魔しまーす」と軽い調子で蹴り飛ばした。

ドゴォォォォォォォォンッ!!!!!

厚さ数十メートルはある強固な魔界の扉が、覚醒した【怪力(極)】の前に紙くずのように吹き飛び、最深部への道が開かれる。

三月が足を踏み入れたその場所は、もはや迷宮の『部屋』と呼べるような空間ではなかった。

「わぁ……。星空みたい。でも、真ん中にあるあの大きな石、すっごく嫌な感じがする」

漆黒のロングコートを靡かせながら、三月は目を細めた。

見渡す限りの宇宙空間のような漆黒の闇。その中央に、東京ドームほどもある巨大な『漆黒の結晶体』が、まるで心臓のようにドクン、ドクンと不気味な脈動を繰り返しながら浮遊していた。

それこそが、東京の空に絶望の大穴を開けたSSSランクアビスゲートの心臓部――『深淵の核(アビス・コア)』であった。

『……ハァッ、ハァッ。ねえさん……気を抜くな……』

インカムから、弟である拓也(たくや)の、今にも消え入りそうな掠れ声が響く。

拓也のいる自室。

胃薬の在庫が尽き、激しい魔力酔いと処理落ちによる頭痛で視界が点滅する中、魔力ゼロの少年指揮官は、それでも最後の力を振り絞って右眼の『深層言語・限定解析』をコアへと向けた。

『俺の右眼の……最終解析データだ。あのコアは、迷宮そのものの意思であり、概念の集合体だ。物理的、魔法的を問わず、受けたあらゆるエネルギーを【吸収】して自身の生命力に変換する、絶対的な不死性を持っている』

拓也は、血の味がする口内を噛み締めながら指示を出す。

『中途半端な攻撃じゃ、奴を回復させるだけだ。それに、奴の内部には数億トンの魔力が圧縮されてる。もし下手に刺激してコアが暴走・自爆すれば、東京どころか日本中の空間が消し飛ぶぞ。……安全に処理するには、奴の吸収速度を上回る、一撃必殺の超極大ダメージを叩き込むしかない』

「吸収……一撃必殺……」

三月は、巨大なコアを見上げながら、自身のコートのポケットをポンポンと叩いた。

「あのね、拓也。あの子が何でも吸収するっていうなら、私が『魂喰い』でパクって食べちゃえば、一瞬で終わるんじゃないかな?」

『絶対にダメだッ!!!!』

拓也が、残されたすべての体力を振り絞って絶叫した。

その声の剣幕に、三月はビクッと肩を揺らす。

『言っただろ!? ねえさんの器はまだ未熟なんだ! あんなSSSランクの迷宮そのもののエネルギーを直接喰ったら、絶対に自我が崩壊して化け物になっちまう!! 約束しただろ、俺を置いていかないって……!! パンケーキ、一緒に食べるって言っただろ!!』

弟からの、悲痛で、愛に満ちた叫び。

それを聞いた三月は、ハッとして深緑色の瞳を優しく細めた。

「……うん。ごめんね、拓也。お姉ちゃん、ちょっと楽をしちゃおうと思っただけ。拓也との約束は、絶対に守るよ。……だから、あんな石っころ、私の『物理(チカラ)』だけで叩き割ってあげる!」

三月は、右手で『魔鉄の塊剣』を力強く握り直し、コアに向かって真っ直ぐに構えた。

吸収速度を上回る一撃必殺。それも、ただ殴るだけでは足りない。概念の塊であるコアの防御を崩す必要がある。

「なら、吸収する暇もないくらい、脆くしてあげればいいんだよね!」

三月は、左手をコアに向けて突き出した。

そして、神域へと覚醒した【精密魔力循環】をフル稼働させ、体内に眠る二つの相反する魔力回路を『同時』に、かつ『限界突破』の出力で起動した。

「まずは、カチカチに冷やしてあげる!!」

【氷結の魔力回路(真)】が唸りを上げる。

絶対零度の冷気が、一直線にコアへと放射され、巨大な漆黒の結晶体を一瞬にしてマイナス二百数十度の極低温へと封じ込めた。コアの表面が凍りつき、分子の運動が完全に停止する。

「次は、アツアツに燃やしてあげる!!」

間髪入れず、今度は【爆熱の魔力回路(真)】が爆発する。

絶対零度に凍りついたコアに対し、今度は数千度に達する超高熱のプラズマが叩き込まれた。

急激な極低温からの超高温。

それは、いかに概念の集合体であろうと逃れることのできない物理現象――『熱衝撃(サーマルショック)』である。

強固なコアの表面に、ピキピキピキッ! と無数の亀裂が走った。エネルギーを吸収するシステム自体が、凄まじい温度差による膨張と収縮に耐えきれず、完全にバグを引き起こしたのだ。

『す、すげえ……! 魔法を攻撃じゃなく、ただの熱膨張と収縮の【物理デバフ】として使って、コアの絶対防御を脆くしたのか……!!』

モニター越しの拓也が、姉の野生の戦闘センスに驚愕の声を上げる。

「トドメッ!!」

亀裂だらけになったコアに向かって、三月は空の彼方へ飛ぶような跳躍を見せた。

覚醒した【怪力(極)】【俊敏(極)】【堅牢(極)】、そのすべてのステータスを右腕の一撃に集約させる。

さらに、【磁力操作(極)】によって周囲の空間の磁場を完全に支配し、魔鉄の塊剣を『超弩級の電磁砲(レールガン)』の弾丸として極限まで加速。

「拓也の! パンケーキが! 待ってるのぉぉぉぉぉッ!!!!」

ドバキィィィィィィィィィィィィィィンッ!!!!!!!!

星が砕けるような、絶望的な轟音が最深層に響き渡った。

三月のフルスイングによって放たれた魔鉄の塊剣が、熱衝撃で脆くなっていたコアの中心へと深々と突き刺さる。

「ギ、ギギギギギギギギギッ……!! エラー、エラー!! 吸収限界、超過……!!」

コアが断末魔のような機械音を上げた。

だが、遅い。三月が叩き込んだのは、魔法でもエネルギーでもない。ただの『圧倒的すぎる純粋な物理の運動エネルギー』である。

数億トンの魔力を圧縮していたコアは、三月の神域の物理打撃に耐えきれず、内側から完全に圧壊。

パァァァァァァァァァンッ!!!!

まるで巨大なガラス玉が弾けるように、SSSランク迷宮の心臓部は、光の粒子となって完全に粉砕された。

同時に、迷宮の空間を維持していた力が消滅し、最深層の宇宙空間がガラガラと音を立てて崩壊していく。

『……やった。やりやがった……。コア、完全破壊……』

自室の椅子で、拓也はその観測データを見届けた瞬間、全身の糸が切れたように机に突っ伏した。

彼の右眼のチート能力も限界を迎え、青い光を失って静かに機能停止する。

「拓也様ッ!! おお、ついに深淵が討ち払われました!! お姉様の愛と、拓也様の完璧なる導きが、世界を救ったのですッ!!」

狂信者クロエの歓喜の声が響く中、拓也は静かに意識を手放していった。

一方その頃。

アビスゲートの外、東京・新宿の上空。

激戦を繰り広げていたSランク探索者たちの頭上で、信じられない光景が広がっていた。

「……おい、見ろ! ゲートが……!!」

神宮寺(じんぐうじ)が、空を指差して叫んだ。

新宿の空を覆い尽くしていた巨大な漆黒の大穴――アビスゲートの表面に、巨大な亀裂が走ったのだ。

そして次の瞬間。

パァァァァァァァァァァンッ!!!!

まるで薄いガラスの天井が割れるように、絶望の象徴であったSSSランクのゲートが、光の粒子となって東京の空から完全に砕け散ったのである。

ゲートから溢れ出していた魔獣たちも、本体である迷宮の消滅と共に、すべて砂となって風に溶けていった。

「お、終わった……。深淵の門が、消滅した……!」

レオン・カーターが、雷光を纏った拳を下ろし、呆然と空を見上げる。

回復の聖水、疲労除去の温泉、探知のダイヤモンドダスト、時間加速、絶対反射、明鏡止水。

ありとあらゆる神がかった支援(バフ)を受けながら戦い抜いた彼らは、誰一人欠けることなく、この絶望的な防衛戦を生き延びたのだ。

「……見事だ。見事としか言いようがない」

神宮寺は、静かに刀を鞘に収め、もはやゲートが存在しない青空に向かって、深く、深く一礼した。

「彼は自室にいながらにして、我々に完璧な支援を与え続け、同時に内部の別働隊を完璧に指揮してコアをピンポイントで破壊した。戦況のすべてを掌握し、最速でチェックメイトへと導く……。如月拓也。君こそが、真の救世主だ」

「ハッハァ! 全く同感だぜ! 俺たちの命、いつでもあの指揮官に預けてやるよ!!」

Sランクの猛者たちによる、見えざる少年指揮官への狂信と称賛の声が、新宿の空にこだました。

彼らは知らない。その救世主が今、胃痛と疲労で自室の机で気絶していることなど。

――そして、十数分後。

如月家のリビング。

「拓也ーっ! ただいまーっ!!」

崩壊する迷宮から、覚醒したステータスによる超絶ダッシュ(物理)で帰還した三月は、勢いよくリビングのドアを開け放った。

彼女の漆黒のロングコートには埃一つついておらず、迷宮を制覇した最強の探索者というよりは、ちょっとコンビニまでお使いに行ってきたような身軽さであった。

「……すぅ、すぅ……」

リビングの隅にある作業用デスク。

そこには、鉄山厳特製の『絶対防御パーカー』を着込んだまま、パソコンのキーボードに突っ伏してスヤスヤと眠る愛する弟の姿があった。

胃薬の空き瓶が散乱し、その過酷な激闘(バグの観測とツッコミ)を物語っている。

「あっ。拓也、寝ちゃってる」

三月は、足音を忍ばせて拓也のそばに近づくと、その安らかな寝顔を見て、ふわりと優しく微笑んだ。

そして、彼が寝る直前まで保温プレートの上に大事に置いておいてくれた、黄金色に輝く『パンケーキ』を見つける。

三月の熱衝撃や反重力のおかげ(?)で、奇跡的にまだほんのりと温かい。

「ふふっ。お姉ちゃん、ちゃんと制約を守って、お土産(魔核)だけ持って帰ってきたよ。……拓也、いっぱいいっぱいナビしてくれて、ありがとうね」

三月は、眠る弟の頭を優しく撫でると、パーカーの上にそっと毛布をかけた。

「パンケーキは、拓也が起きてから、一緒に食べよっと」

東京を滅亡の危機から救った最強の姉と、胃をすり減らしながら神算鬼謀(という名のバグ処理)を成し遂げた魔力ゼロの指揮官。

彼らの長くて過酷なアビスゲート攻略戦は、温かなパンケーキの匂いと共に、静かに幕を下ろしたのである。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございます!

ついにアビスゲート編、完結です!

相反する魔力回路を「熱膨張と収縮の物理デバフ(サーマルショック)」として使い、コアを脆くしてから物理で叩き割るという、三月お姉ちゃんらしい力技でのフィニッシュでした。

魂喰いの制約もしっかり守り、パンケーキのために無事帰還です。

外のSランクたちはゲート消滅を見て、拓也への狂信を完全に固定化させてしまいました(笑)。そして当の拓也は、胃痛と疲労でついに夢の中へ……。

ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

もし「最高の姉弟!」「お姉ちゃんの物理最強!」「拓也、ゆっくり休んで!」と思っていただけましたら、

ぜひページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、今後の執筆の大きな励みになります!

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未熟な器ということは、逆説的に弟の助力で適切な方法で器を育てれば、更に強くなるという事でしょ?やべーな。
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