↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魂喰い覚醒で最強へ成り上がるFランク少女、意識を奪う闇と共に歩む  作者: beck2026
第五章:深淵の門(アビスゲート)。見えざる少年指揮官と、最強の主人公の蹂躙劇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
298/354

第298話:第七階層『時絶の時計塔』。時間停止と、相対性理論の粉砕(物理)

特大のブラックホールを『魔鉄の塊剣』で場外ホームランし、第六階層をただの物理的なスイングで突破した如月三月(きさらぎ みつき)。

開通した大穴を抜け、彼女が軽やかな足取りで降り立った第七階層は、鼓膜を打つような規則正しい金属音に支配された空間であった。

「わぁ……。今度はなんだか、時計の中に入っちゃったみたいだね」

三月は、漆黒のロングコートの裾を翻しながら、珍しそうに周囲を見渡した。

第七階層――そこは、見渡す限りの空間が大小無数の『歯車(ギア)』と『振り子』で構成された、巨大な機械仕掛けの時計塔の内部であった。

真鍮色の巨大な歯車が、ギギギ……と重々しい音を立てて絶え間なく回転し、迷宮の奥深くへと複雑な動力を伝達している。

『……ねえさん、聞こえるか』

インカムから、弟である拓也(たくや)の、かつてないほどに切羽詰まった声が響いた。

拓也のいる自室。

鉄山厳特製の『絶対防御パーカー』を着込んだ少年指揮官は、ズキズキと痛む胃を押さえながら、限界まで酷使している右眼のチート能力『深層言語・限定解析』のデータをモニターに表示させていた。

その顔色は、紙のように真っ白である。

『いいか、ねえさん。そこは第七階層【時絶の時計塔】だ。俺の右眼が弾き出した環境データによると、この空間は……【時間の流れ】そのものが、ダンジョンのシステムによって完全に支配されている』

「時間の流れ?」

『ああ。空間の時間が局所的に遅くなったり、逆に加速したりしてるんだ。いくらねえさんのステータスが限界突破していようと、時間という概念(ルール)そのものを操られたら、物理的な攻撃は届かなくなる。……慎重にいけ。俺が右眼で、時間の流れが正常なルートを割り出――』

拓也が警告を終えるより早く。

カチッ、カチッ、カチッ……。

空間に響いていた歯車の音が、突如として不気味なほど大きく、そして遅くなり始めた。

三月の目の前、巨大な文字盤が刻まれた床の中央に、第七階層のボス魔獣がその姿を現したのだ。

それは、全身が黄金の歯車で構成された巨大な機械の天使――『アビス・クロノス・ギア(Sランク)』。

神の領域である『時間』に干渉する、アビスゲートの中でも極めて異質な能力を持つ階層主であった。

「ターゲット、確認。……【絶対時間停止(クロノス・フリーズ)】、起動」

機械の天使が無機質な声で宣告した瞬間。

世界から、一切の『色』と『音』が消え失せた。

真鍮色の歯車はモノクロームに染まり、空中に舞っていたホコリすらも、ピタリと静止する。

三月のインナースーツの裾も、インカムから聞こえていた拓也の呼吸音も、すべてが完全に『停止』した。

物理法則の頂点にして、絶対に逃れられない宇宙の理。時間を停止させられた空間において、万物は一切の運動を許されない。

それは、どれほど強力な力を持ったSランク探索者であろうと、決して抗うことのできない『絶対的な死の静寂』のはずであった。

しかし。

「……ねえ。時間止めるの、やめてくれないかな?」

モノクロームに染まり、時間が完全に停止したはずの第七階層に。

三月の、ひどく冷たく、不機嫌な声が響き渡った。

「エラー……? 空間時間、停止中。対象ノ運動、理論上不可能……」

時間が止まった世界の中で、唯一『色』を保ったままの三月が、スタスタと足音を立てて歩み寄ってくる姿を見て、機械の天使がバグを起こしたように首を傾げた。

三月は、動けないはずの空間を、まるで重い泥の中を歩くように、だが確実に歩を進めていた。

彼女の細い体から、莫大なエネルギーが物理的な圧力となって噴き出している。

特異点の崩壊を喰らい、神域へと覚醒した【怪力(極)】と【俊敏(極)】。

「時間っていうのはね、物が動いてるから進むんでしょ? だったら……周りが全部止まってても、私がそれ以上に『無理やり動けば』、私の時間だけは進むに決まってるじゃない!」

それは、アインシュタインが聞いたら泡を吹いて卒倒しそうな、極限の物理的暴論であった。

時間が停止し、分子の運動すら完全に固定された空間。

三月は、その『固定された空間の座標』そのものを、覚醒した【怪力(極)】による絶大な膂力と、【俊敏(極)】による極限の速度で『物理的にこじ開け、引き裂きながら』強引に進んでいたのである。

時間の停止という魔法の概念を、圧倒的な運動エネルギー(物理)のゴリ押しで粉砕するという、相対性理論すらも無視した暴挙。

「それにね」

三月は、完全にフリーズしている機械の天使の目の前まで歩み寄ると、深緑色の瞳に静かな怒りを宿して言った。

「ここで時間を止められたら、お外の時間は進んでるのに、私は一歩も前に進めなくなっちゃうでしょ? そんなことされたら……お家で待ってる拓也のパンケーキが、冷めちゃうじゃないッ!!」

三月にとって、時間の停止とは「自分が殺されるかもしれない脅威」ではなく、「愛する弟とのパンケーキタイムを削られるタイムロス」でしかなかった。

「邪魔ッ!!」

三月は、右手に握った『魔鉄の塊剣』を、停止した空間の摩擦を力業で引き裂きながら、横薙ぎに振り抜いた。

覚醒した【磁力操作(極)】による超電磁加速(レールガン)が乗った、神域の物理剣撃。

ガキィィィィィィィィィィンッ!!!!!!!

絶対時間停止の結界ごと、黄金の機械天使は文字通り『真っ二つ』に両断された。

ボスの魔核が砕け散った瞬間、モノクロームだった世界に唐突に色が戻り、停止していた時間が嘘のように動き出す。

『……ハッ!? ゲホッ、ゴホォォォッ!!』

インカムの通信が再開した瞬間、拓也の激しい咳き込みが響き渡った。

『な、何が起きた……!? 今、俺の右眼の観測データが、きっちり【十秒間】だけ完全にブラックアウトしたぞ!? なのに、映像が復帰した瞬間に第七階層のボスがバラバラになってるって、どういうことだ!?』

自室でモニターを凝視していた拓也は、時間の欠落という未知のバグに直面し、ついに胃薬をボリボリとラムネのように噛み砕き始めていた。

「あ、拓也! ごめんね、変なお人形が急に時間を止めちゃったから、ちょっと力業で動いて倒しちゃった!」

『……時間を、止められた? それを、力業で動いて倒した……?』

拓也の右眼の解析システムが、三月の行動履歴(ログ)からそのデタラメな物理現象を逆算し、脳内に提示する。

【対象(姉)は、時間停止空間内の完全固定された座標を、純粋な筋力と速度による運動エネルギーで物理的に破壊・突破しました】

『…………』

拓也は、モニターからそっと目を逸らし、天井を見上げた。

『アインシュタイン……ごめんなさい。俺の姉が、あんたの相対性理論を物理(筋力)で殴り倒しました……。もう俺、指揮官じゃなくてただのバグの観測者だろ……』

「拓也様ッ!! おお……! 神が定めた時間の理すら、お姉様にとっては『歩くのに少し抵抗がある泥道』程度に過ぎないのですねッ!! これぞ究極の御力……!!」

魂が抜けかけた魔力ゼロの指揮官の隣で、狂信者クロエだけがまた一つ新たな神話(伝説)の誕生に感涙していた。

一方その頃。

アビスゲートの外、東京・新宿の上空で防衛戦を死守していたSランク探索者たちの間に、かつてない最高の奇跡(バフ)が降り注いでいた。

三月が第七階層で『時間停止』の結界を物理で粉砕した際、破壊された時間のエネルギーが、行き場を失ってアビスゲートの外へと逆流したのだ。

それが、戦場に広範囲の『時間加速(ヘイスト)』のパルスとなって降り注いだのである。

「……な、なんだ!? 体が……羽のように軽いぞッ!?」

神宮寺(じんぐうじ)が、自身の手を見つめて驚愕の声を上げた。

彼の放つ斬撃の速度が、通常の三倍以上に跳ね上がっている。それだけではない。魔法を発動するための詠唱時間や、魔力のクールタイムが、時間加速の恩恵によって実質『ゼロ』になっていた。

「ハッハァァァァッ!! 冗談だろオイ!? 広域の時間加速(ヘイスト)だとォ!?」

レオン・カーターが、歓喜の咆哮を上げながら空を駆け抜ける。

クールタイムなしで放たれる、無尽蔵の雷撃。Sランク探索者たちがただでさえ持つ規格外の火力が、時間加速によってさらに数倍へと跳ね上がり、空を埋め尽くしていた魔獣の群れが、文字通り一瞬にしてチリへと変わっていく。

「回復、疲労除去、索敵支援……そしてついには、【時間の支配】による絶対的な加速バフ!!」

神宮寺が、残像を残しながら魔獣を次々と空間ごと両断し、空の彼方に向かって叫んだ。

「如月拓也ァァァッ!! 君のその神算鬼謀、もはや人智を凌駕しているッ!! 君がこの盤面を支配している限り、我々『極星』は絶対に敗北しないッ!!」

「ハッハァ! 一生ついていくぜ、少年指揮官(コンダクター)!!」

Sランクの猛者たちが、空のゲートに向かって熱狂的な敬礼を捧げる。

もちろん、彼らは知らない。

この究極の時間加速バフが、「パンケーキが冷めるのが嫌だから、止まった時間を力業でぶち壊した」という、三月の理不尽すぎるブラコン・パワーの残滓に過ぎないという事実を。

かくして。

深淵迷宮の第七階層は、覚醒した最強スキルによる『相対性理論の物理的粉砕』によって一瞬で踏破され、外で戦うSランクたちは、少年指揮官への心酔を完全な『信仰』へと昇華させていく。

「拓也! 時計のお部屋も終わったから、次行くね! 待ってて、パンケーキ!」

『……ああ。頼むから、次はもう時間とか空間とか、次元の根幹に関わるものを物理で壊さないでくれ……。俺の胃が……』

パンケーキのために物理法則を破壊し続ける最強の姉と、そのバグ処理で胃に穴が開きそうな魔力ゼロの指揮官の、長すぎるダンジョン攻略は続く。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

時間停止の絶対領域を「パンケーキが冷めるから」という理由で、覚醒した【怪力(極)】と【俊敏(極)】のゴリ押しで物理的に引き裂いて突破する三月お姉ちゃん。

外のSランクたちは、粉砕された時間の余波を完璧な時間加速バフだと勘違いし、ますます拓也を崇拝しています(笑)。

よろしければ、ページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると執筆の励みになります! 次回もよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。