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魂喰い覚醒で最強へ成り上がるFランク少女、意識を奪う闇と共に歩む  作者: beck2026
第五章:深淵の門(アビスゲート)。見えざる少年指揮官と、最強の主人公の蹂躙劇

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第297話:第六階層『重圧の煉獄』。超重力と、特大ホームラン(物理)

第五階層の『鏡界の水晶洞』を、愛する弟へのブラコン・パワー(ただのデコピン)で粉砕した如月三月(きさらぎ みつき)。

彼女が次なる階段を下りて足を踏み入れた第六階層は、視覚的な異常こそないものの、これまでのどの階層よりも明確な『死の気配』が充満する空間であった。

「うーん……? なんだか急に、体が重たくなったような気がするね」

三月は、身に纏った漆黒のロングコートの肩を少しだけ回しながら、小首を傾げた。

第六階層は、無機質な灰色の岩肌に覆われた広大な空間だ。だが、その床面は異常なまでの圧力によってツルツルに圧縮され、鏡のように磨き上げられていた。

『……ねえさん、止まれ。不用意に足を動かすな』

インカムから、弟である拓也(たくや)のひどく緊迫した声が響く。

拓也のいる自室。

彼は鉄山厳特製の『絶対防御パーカー』を着込み、机の上のモニターを睨みつけながら、右眼のチート能力『深層言語・限定解析』をフル稼働させていた。

青い演算陣が限界速度で回転し、この無機質な空間の『見えない異常』を暴き出していく。

『いいか、ねえさん。そこは第六階層【重圧の煉獄】だ。フロア全体の重力が、地上の約百倍に設定されている。普通の探索者なら、足を踏み入れた瞬間に内臓が破裂して、床の染みに変わる絶圧空間だ』

拓也は、ズキズキと痛む胃を押さえながら、必死にナビゲートを構築する。

『しかも、重力の波がランダムに変動している。俺の右眼で、重力が比較的薄い【安全なルート】を計算するから、ねえさんは絶対に俺の指示した座標だけを歩いて――』

「えーっ。そんなチマチマ歩いてたら、お家に置いてあるパンケーキが完全に冷めきっちゃうよ!」

三月は、弟の完璧なルート構築を待つことなく、ドスンッ! と無造作に一歩を踏み出した。

地上の百倍の重力が、彼女の細い体に容赦なくのしかかる。

しかし、特異点のエネルギーを喰らって覚醒した【堅牢(極)】によって守られた彼女の肉体は、百倍程度の重力では骨の一本、血管のひと筋すら軋まない。

さらに、彼女は自身の持つ【磁力操作(極)】を起動した。

かつては微弱だったそのスキルは、今や周囲の磁場を完全に支配し、星の引力(重力)すらも相殺する絶対的な力へと進化している。

「よいしょっと。磁力で体をフワフワさせれば、重たくないね!」

三月は、百倍重力の世界で、月面を歩く宇宙飛行士のように軽やかなスキップを踏み始めた。

『ぶふっ!? ねえさん、ちょっと待て!! お前、いや、ねえさん! 今、磁力操作で空間の重力場そのものを強引に捻じ曲げたのか!? 俺の右眼の重力分布データが、ぐちゃぐちゃにバグり始めたぞ!!』

自室で絶対防御のパーカーを着込んだ魔力ゼロの少年指揮官は、最強の主人公が引き起こした『重力場の物理的破壊』のせいで、激しい魔力酔いとエラー処理に追われて頭を抱えた。

「拓也様ッ!! お気を確かにッ!! ああ……お姉様は、星の理(重力)すらもその御足でねじ伏せ、軽やかに舞い踊っておられるのですね……ッ!!」

狂信者のクロエが、モニターに向かってうっとりと祈りを捧げている。

『……ゲホッ。いい加減にしてくれ……。ナビが追いつかない……ッ!』

拓也が血の涙を流しそうになった、その時だった。

ゴゴゴゴゴゴゴゴッ……!!

三月が重力場を乱したことで、第六階層の防衛システムが起動した。

灰色の岩肌を突き破り、地中から姿を現したのは、体長三十メートルを超える巨大な岩の巨人――いや、岩ではない。それは、中性子星にも匹敵する超高密度の特殊金属で構成された、第六階層のボス魔獣『アビス・グラビティ・タイタン(Sランク)』であった。

『……マズいぞ、ねえさん! 奴の体は超高密度の重力金属だ! 中途半端な打撃じゃ傷一つつかない!』

拓也の右眼が、瞬時に敵のステータスと危険度を解析する。

アビス・グラビティ・タイタンは、侵入者を排除すべく、その巨大な両腕を前に突き出した。

巨人の両手の間に、周囲の光すらも吸い込む『漆黒の球体』が生成されていく。空間が歪み、極限まで圧縮された重力の塊。

『ねえさん、避けろ!! あれは【局地的なブラックホール】だ!! 触れれば空間ごとミンチにされるぞ!!』

拓也が絶叫する。

放たれた漆黒の重力球が、音を置き去りにして三月へと迫る。

だが、三月は全く動じることなく、右手に握った身の丈ほどもある『魔鉄の塊剣』を、まるで野球のバットのように背後へと構えた。

「ブラックホール? そんなの、お姉ちゃん前に『特異点』でもっとおっきいのを食べたことあるもん! あんなちっちゃいの、怖くないよ!」

三月は、迫り来るブラックホールに向かって、大きく踏み込んだ。

覚醒した【怪力(極)】が、彼女の腕の筋肉を爆発的に収縮させる。

さらに、【磁力操作(極)】によって魔鉄の塊剣に強烈な磁場の加速(レールガン効果)を上乗せし、剣の軌道を神速へと引き上げる。

「特大ホームランッ!!」

カキィィィィィィィィィィンッ!!!!!!!

第六階層の空間そのものが弾け飛ぶような、絶望的な金属音が響き渡った。

三月のフルスイングによって放たれた魔鉄の塊剣は、触れればミンチになるはずの『局地的なブラックホール』の側面を完璧なタイミングで捉え、莫大な運動エネルギー(物理)の力技で、強引に弾き返したのである。

「ギ、ガァァァァァッ!?」

弾き返された重力球は、タイタンが放った時とは比較にならない超音速の『魔球』となって、巨人の胸の中心へと突き刺さった。

超高密度を誇ったはずのアビス・グラビティ・タイタンの巨体は、自身が作り出したブラックホールと、三月の上乗せした物理エネルギーによって内部から完全に圧壊し、断末魔の悲鳴と共にチリ一つ残さず空間へと吸い込まれて消滅した。

ドゴォォォォォンッ!!

さらに、ブラックホールはタイタンを消し飛ばした勢いそのままに、背後の巨大な壁(第七階層への扉)ごと空間を抉り取り、見事な大穴(ショートカット)を開通させた。

「ふふっ! 拓也、見た!? 今のすっごく綺麗に打てたよ!」

三月は、魔鉄の塊剣を肩に担ぎながら、自慢げにVサインを作った。

『…………』

インカムの向こう側は、完全な沈黙に包まれていた。

『……ブラックホールを、バットで打ち返した……? ブラックホールを……?』

拓也は、完全に思考が停止したまま、虚空を見つめて呟いた。

魔力ゼロの少年指揮官の右眼は、「重力崩壊を引き起こす特異点を、物理的なスイングで反射する」という物理法則を根本から否定する事象を処理しきれず、完全に青い画面(ブルースクリーン)を表示してフリーズしていたのである。

『もうやだ……。俺の物理学の知識が、全部ゴミになっていく……。アーヴィングさん、もう一杯、湧き水をくれ……胃が爆発する……』

「拓也様ッ!! ああ、お労しや……! 己の常識が破壊される痛みに耐えながらも、神の御業を見届けるそのお姿、まさに殉教者……ッ!!」

一方その頃。

アビスゲートの外、東京・新宿の上空で防衛戦を死守していたSランク探索者たちの間に、またしてもデタラメな奇跡が起きていた。

「……おい、急に体が軽くなったぞ!?」

レオン・カーターが、空中で雷撃を放った反動で、本来なら地上へ落下するはずが、まるで宇宙空間にいるかのようにふわりと空中に留まり続けていることに気づいた。

三月がタイタンのブラックホールをバットで打ち返した際、重力のバランスが完全に崩壊し、莫大な『反重力波(アンチ・グラビティ・パルス)』がゲートの外へと放出されたのである。

「こ、これは……ッ!」

神宮寺が、空中に浮かび上がりながら驚愕の声を上げる。

反重力波の影響で、Sランク探索者たちは空中を地上と同じように蹴って移動できる『絶対的な空中機動力』を獲得していた。

逆に、空を飛ぶことに特化していた変異種のワイバーンたちは、突如として狂った重力場に対応できず、三半規管を破壊されて次々と墜落していく。

「ハッハァ! 凄まじいじゃねえか! あの少年指揮官、今度は【味方への飛行バフ】と【敵への対空デバフ】を同時に広域展開しやがったのか!」

レオンが、空中で自由自在に雷光の軌跡を描きながら、墜落していく魔獣たちを一方的に殲滅していく。

「なんという恐るべき戦術眼……! 敵の航空戦力を無力化し、我々に空の支配権を与えるとは。如月拓也、彼こそが真の『空の覇者』だ!」

神宮寺もまた、空中を蹴って神速の斬撃を放ちながら、見えない少年指揮官への心酔を天元突破させていた。

もちろん、彼らは知らない。

この完璧すぎる対空支援が、「家に置いたパンケーキが冷める前に、邪魔なブラックホールをホームランしただけ」という、ただの物理的なバグの余波に過ぎないという事実を。

かくして。

深淵迷宮の第六階層は、覚醒した最強スキル群による『特大ホームラン(物理)』によって一瞬で踏破され、外で戦うSランクたちは、勝手な解釈で少年指揮官への信仰をさらに深めていく。

「拓也! 扉も開いたし、次の階に行くね! 待っててね、パンケーキ!」

『……ああ。頼むから、次は俺の知ってる物理法則の中で戦ってくれ……』

パンケーキのために爆走する最強の姉と、物理法則の崩壊に胃痛を募らせる魔力ゼロの指揮官の、長すぎるダンジョン攻略は続く。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

百倍重力の世界をスキップで進み、ブラックホールを「魔鉄の塊剣+磁力加速」で特大ホームランするお姉ちゃんでした!

外のSランクたちは、その余波の「反重力波」を完璧な対空デバフだと勘違いしてさらに心酔を深めています。今日も拓也の右眼(解析システム)と胃腸は限界突破でフリーズ中です。

よろしければ、ページ下部の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると執筆の励みになります! 次回もよろしくお願いいたします。

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