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魂喰い覚醒で最強へ成り上がるFランク少女、意識を奪う闇と共に歩む  作者: beck2026
第五章:深淵の門(アビスゲート)。見えざる少年指揮官と、最強の主人公の蹂躙劇

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第295話:第四階層『絶対零度』。覚醒したスキル群と、魂喰いの制約

海が真っ二つに割れ、完全に干上がった第三階層の海底。

そこに出現した第四階層へと続く巨大な階段を下りた先は、これまでの過酷な環境すら生ぬるく思えるほどの『死の世界』であった。

「うー、さむさむ。急に冷え込んできたね」

本作の主人公、如月三月(きさらぎ みつき)は、身に纏った『漆黒のロングコート』の襟を少しだけ引き上げた。

彼女はその下には動きやすさを重視した漆黒の『インナースーツ』を着用し、右手には自身の身の丈ほどもある無骨な大剣――『魔鉄の塊剣』を軽々と握っている。

弟にパンケーキを焼いていたサマードレス姿から、迷宮突入の直前に一瞬で着替えてきた、彼女の本来の戦闘スタイル(お気に入りのお出かけ服)であった。

彼女が降り立った第四階層は、見渡す限りの氷と雪に覆われた白銀の世界であった。

吹き荒れる猛吹雪は視界を真っ白に染め上げ、氷の結晶が刃のように大気を舞っている。足元の氷河は、数万年の時を経て青黒く透き通っていた。

『……ゲホッ。ねえさん、止まれ。そこは動かず、俺のナビを待て』

三月の耳元のインカムから、弟である拓也(たくや)のひどく疲労した声が響く。

拓也のいる自室。

鉄山厳特製の『絶対防御パーカー』を着込み、魔力ゼロの肉体を守りながら、彼は右眼のチート能力『深層言語・限定解析』を限界まで酷使し続けていた。

『いいか、ねえさん。そこは第四階層【極寒のコキュートス】だ。空間全体の気温がマイナス二百数十度という、ほぼ絶対零度に近い状態に固定されている。普通の探索者なら、防寒魔法を展開する前に、魔力回路ごと細胞が瞬時に凍りついて砕け散る絶死のフロアだ。……だが』

拓也は、右眼のモニターに映る姉の凄まじいステータスを確認し、小さく息を吐いた。

『ねえさんの体内には、かつて喰らった強敵から獲得した【氷結の魔力回路(真)】が組み込まれている。だから、その絶対零度の環境ダメージは、ねえさんには完全に無効化されるはずだ』

「うん! 全然寒くないよ! 氷の魔力回路が、冷たい空気を全部シャットアウトしてくれてるみたい!」

三月は、足元の青黒い氷をツンツンとつま先で叩きながら、ケロリとした顔で笑った。

第一階層の瘴気を無効化した【毒耐性(極)】に続き、この第四階層の絶対零度すらも、彼女の持つ回路の前には全く意味を成さない。

かつて『(中)』や『(微)』だった彼女の獲得スキルたちは、特異点の膨大なエネルギーを吸収したことで、軒並み『(極)』や『(真)』といった限界突破の領域へと覚醒していたのだ。

しかし、三月は別のことを危惧して眉をひそめていた。

「でもさ、拓也。こんなに寒い場所の扉を開けっ放しにしてたら、冷たい空気がお外に漏れちゃうかもしれないよ? そしたら、お家に置いてある焼きたてのパンケーキが、カチカチに冷たくなっちゃうじゃない!」

『いや、ゲートと家は数キロ離れてるし、空間が違うからパンケーキには影響ない! いいから俺が安全なルートを計算するまで――』

拓也の悲痛な制止の言葉は、またしても主人公の斜め上の思考によって遮られた。

「ダメだよ! パンケーキは温かいうちに食べるのが一番美味しいんだから! お姉ちゃん、ちょっとこのお部屋の『暖房』をつけてくるね!」

『だ、暖房……!? ねえさん、まさか……ッ!!』

三月は、左手を前にかざし、自身の体内にあるもう一つの回路――かつては『(微)』であったが、今や神域へと進化した【爆熱の魔力回路(真)】を起動した。

三月には『魂喰い』の進化によって得た【魔力許容量の拡張】と、相反する魔力すら完璧に制御する【精密魔力循環】が備わっている。

彼女が魔力を循環させた瞬間。拡張された規格外の魔力タンクから、膨大なエネルギーが爆熱の回路へと注ぎ込まれ、限界突破の超高熱プラズマとなって空間に解き放たれた。

ゴォォォォォォォォォォォッ!!!!!!!

絶対零度だった第四階層の空間が、瞬時に赤熱し、一気に沸騰を始める。

周囲の氷河がドロドロに溶け出し、極寒のフロアは数秒にして『超高温の巨大なサウナ(蒸し風呂)』へと変貌してしまった。分厚い水蒸気が立ち込め、視界が完全に白く染まる。

『…………ゲハッ、ゴホォォォッ!!』

インカムの向こうから、拓也が激しく血を吐くような音が響き渡る。

「あっ、拓也!? また胃が痛いの!?」

『痛いなんてもんじゃない……ッ!! 俺の右眼は今、絶対零度の熱力学を計算してたんだぞ!? それがいきなり相反する【爆熱(真)】で【熱帯雨林の蒸し風呂】に書き換えられたせいで、サーモグラフィの解析システムが真っ赤なエラーを吐いてフリーズした……ッ!!』

自室で頭を抱える指揮官の苦悩をよそに。

濃密な水蒸気の中から、突如として巨大な殺意が三月へと襲いかかった。

「グルルルルルッ……!!」

かつての『(微)』から飛躍的に進化した【気配察知(極)】が、三月の脳にコンマ一秒の狂いもなく警告を鳴らす。

蒸気の奥から飛び出してきたのは、第四階層のボス魔獣『アビス・フェンリル(Sランク)』であった。絶対零度を操るはずの氷の巨狼が、住処をサウナに変えられた怒り狂い、三月を食い殺そうと巨大な顎を開いている。

「あ、ワンちゃんだ。でも、お洋服に毛がつくから近寄らないでね」

三月は全く慌てることなく、限界突破した【堅牢(極)】によって鋼の強度を超えた肉体で、フェンリルの氷の爪をガキィッ! と無傷で弾き返した。

そして、光の速度すら錯覚させる【俊敏(極)】のステップでフェンリルの懐へと潜り込むと、両手で構えた『魔鉄の塊剣』を高く振り上げる。

【怪力(極)】。

ただでさえ規格外の彼女の筋力が、覚醒したスキルの補正を受けて爆発的に跳ね上がる。

さらには、かつての微弱な磁力から絶対的な引力・斥力へと進化した【磁力操作(極)】を応用し、魔鉄の塊剣に強烈な磁場の加速(超電磁砲レベルのレールガン効果)を上乗せして振り下ろした。

ドバキィィィィィィィィィンッ!!!!!!!

「アギャァァァァァァッ!?」

鋼の毛皮を持つSランクの巨狼は、覚醒したスキル群の全てを乗せた物理的な剣撃によって、脳天から真っ二つに両断され、一撃で絶命した。

ボスの肉体が光となって消滅し、その場には巨大な『Sランクの魔核』と、青白く輝く莫大なエネルギーの塊――『強大なボスの魂』がフワフワと浮かび上がった。

三月の固有スキル『魂喰い』が、本能的にその極上の魂を欲し、彼女は無意識に口を開きかけた。

その瞬間。

『ストップ!!! ねえさん、待て!!! そのSランクボスの魂は、絶対にそのまま一気に喰うなよ!!!』

インカムから、拓也の悲痛な、しかし絶対に譲れない鋭い警告が飛んだ。

三月はハッとして動きを止める。

『ねえさんの器は、神の領域に片足を突っ込んでるとはいえ、まだ【未熟】なんだ! 強大な魂を一気に喰らうと自我が崩壊し、ただの獣になる危険があるっていう【制約】を忘れたのか!?』

拓也は、右眼で姉の魂の許容量(キャパシティ)のゲージを睨みつけながら叫んだ。

『お前の力は、地道な調律と拡張を繰り返して、少しずつ制御していくしかないんだ。あの特異点の時みたいに無茶をして、もしねえさんの自我が崩壊して獣になっちまったら……俺は、誰と一緒にパンケーキを食べればいいんだよ!』

弟からの、愛と心配に満ちた真剣な叫び。

それを聞いた三月は、フッと優しく微笑み、開けかけた口をゆっくりと閉じた。

「……うん、そうだね。ごめんね、拓也。お姉ちゃん、ちょっと美味しそうだったから、ついパクってしそうになっちゃった」

三月は、宙に浮かぶ強大な魂には口をつけず、代わりに『魔核』だけを拾い上げてコートのポケットにしまった。

「拓也が悲しむようなこと、お姉ちゃん絶対にしないよ。魂の調律と拡張は、お家に帰ってから、拓也に見守られながら少しずつやることにするね!」

『……ああ、頼む。俺の胃袋と精神安定のために、ルール(制約)はちゃんと守ってくれ……』

インカムの向こうで、拓也が心底安堵したように深く息を吐く音が聞こえた。

一方その頃。

アビスゲートの外、東京・新宿の上空で防衛戦を死守していたSランク探索者たちの間に、またしても奇妙な現象が起きていた。

「……む? なんだ、急に暖かくなってきたぞ……?」

日本ギルドの最高戦力である神宮寺(じんぐうじ)が、上空のゲートを見上げて目を瞬かせた。

数分前まで、ゲートからは魔獣と共に薄ら寒い瘴気が漏れ出していたはずだった。

しかし今、漆黒の巨大な穴からは、まるで高級スパのロウリュのように、心地よい『温かな蒸気(ミスト)』がモワァァァッと噴き出してきたのである。

それは、三月が第四階層の氷河を【爆熱の魔力回路(真)】で一瞬にして沸騰させた際に発生した蒸気が、ゲートの外へ押し出されてきたものであった。

「おおっ……!? なんだこれ、すげえ気持ちいいぞ!?」

レオン・カーターが、雷光を纏った拳を止め、心地よさに目を細めた。

三月の魔力によって蒸留され、完全な無菌状態となった温かな蒸気。それが新宿の上空を包み込むと、激戦を繰り広げていたSランク探索者たちの冷えた筋肉をじんわりと温め、極限の緊張状態にあった神経を優しく解きほぐしていった。

まるで、戦場全体が巨大なリラクゼーション・サウナに変化したかのようであった。

「素晴らしい……! 先ほどの『聖水の雨』による回復に続き、今度は筋肉の疲労を完璧に取り除く『温熱効果(リジェネレーション)』のバフを広域展開したというのか!」

神宮寺が、感動に打ち震えながら刀を鞘に収め、深く深呼吸をする。

「ハッハァ! あの少年指揮官、どこまで完璧な盤面管理をしてやがるんだ! 俺たちの体調(コンディション)を1ミリの狂いもなく把握してなきゃ、こんな絶妙なタイミングで温泉バフなんてかけられねえぞ!」

レオンもまた、大笑いしながら空に向かって親指を立てた。

もちろん、彼らは知らない。

この極上のリラクゼーション空間が、「家に置いたパンケーキが冷めるかもしれない」という理由で、主人公が極寒のフロアを力業でサウナに変えた際の『ただの排熱』に過ぎないという事実を。

かくして。

深淵迷宮の第四階層は、覚醒した最強スキル群と回路を駆使する主人公の無双によって一瞬で踏破され、外で戦うSランクたちは、勝手な解釈で少年指揮官への心酔を天元突破させていく。

制約を守りながらパンケーキのために急ぐ姉と、自室で胃痛と処理落ちに苦しむ魔力ゼロの指揮官・拓也の戦いは、まだまだ終わる気配がなかった。

覚醒したスキルと相反する魔力回路を使いこなし、超電磁砲のような物理剣撃でボスを一蹴する三月お姉ちゃん。そして、自我崩壊の制約を止めるための拓也の必死の指揮(ツッコミ)。

外のSランクたちの勘違いバフも絶好調です。

よろしければ、ページ下部にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると執筆の励みになります! 次回もよろしくお願いいたします。

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まだ、実質的に病み上がりだからね。
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