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魂喰い覚醒で最強へ成り上がるFランク少女、意識を奪う闇と共に歩む  作者: beck2026
第五章:深淵の門(アビスゲート)。見えざる少年指揮官と、最強の主人公の蹂躙劇

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第291話:盤上の新宿。破壊不可の門と、長き深淵への宣戦布告

東京・新宿上空。

本来ならば夏の青空が広がっているはずの頭上は、特異点の残滓が凝縮した『深淵の門(アビスゲート)』によって、どす黒い赤色に塗り潰されていた。

「シィィィィィィッ!!」

空間のヒビ割れから、巨大な皮膜の翼を持つ変異種のワイバーンが鼓膜を裂くような咆哮を上げる。その数は十や二十ではない。空を黒く埋め尽くすほどの、数千という大群である。

さらに最悪なことに、それらは全て過去に崩壊した『特異点』の膨大な魔力を吸い込んで変異しており、個々の強さがAランクのボス級にまで跳ね上がっていた。

「チィッ……! 冗談じゃねえぞ! 湧いて出るペースがおかしすぎる!」

新宿のビルの屋上を蹴り飛びながら、アメリカのSランク探索者であるレオン・カーターが、雷光を纏った拳でワイバーンの頭部を粉砕する。

しかし、一匹倒したそばから、三匹の魔獣が彼に襲いかかってくる。

「レオン! 深追いするな、防衛線を下げるぞ! 街への被害を最小限に食い止めるんだ!」

日本ギルドの最高戦力であり、『極星』のリーダーである神宮寺(じんぐうじ)が、愛刀を振るって空間ごと魔獣を両断しながら叫んだ。

彼らSランク探索者の実力をもってすれば、この大群を殲滅すること自体は不可能ではない。だが、それは『出し惜しみせず、広域殲滅魔法や地形を破壊するレベルの絶技を撃ち放てば』の話だ。

眼下には、逃げ惑う市民と日本の首都機能が密集している。全力が出せないSランクたちは、ジリ貧の防衛戦を強いられていた。

(……くそっ! このままでは防衛線を突破される。やはり、あの『少年』の指揮がなければ……!)

神宮寺が焦燥に駆られ、奥歯を噛み締めた、その時だった。

『――レオンさん、そこから右へ3メートル後退。上空からのブレスを躱して、反撃せずに防御(シールド)を展開してください』

極星のメンバーだけが繋いでいる暗号通信のインカムから、ひどく冷たく、しかし絶対的な安心感をもたらす『あの声』が響き渡った。

「ッ!?」

レオンは条件反射で指示通りに右へ3メートル跳躍した。

直後、彼が先ほどまでいた空間を、極太の火炎ブレスが通過していく。もし反撃しようと立ち止まっていれば、直撃は免れても街に火の粉が降り注いでいたはずの絶妙な軌道だった。

『神宮寺さんはそのまま動かず、正面に【空間断絶】の結界を張ってください。出力は40パーセントで足ります。他のSランクメンバーも、攻撃の手を止めてください』

「如月、拓也くん……ッ!」

神宮寺の顔に、希望の光が差す。

特異点での死闘において、彼ら最強の探索者たちの動きをコンマ一秒の狂いもなく支配し、最適化した『見えざる指揮官』。

魔力ゼロの少年が、今、再び盤上の支配者として帰還したのだ。

『俺の部屋のモニターで、戦場の状況は全て把握しています。……さて、皆さん。これより作戦のフェーズを移行します』

通信機越しに聞こえる拓也の声には、中学生の幼さは微塵もない。

あるのは、戦場における絶対的かつ冷酷な『神の頭脳』だけであった。

『皆さんは一切の攻撃を放棄し、市街地を守るための防御に全魔力を回してください。もう、皆さんが敵を倒す必要はありません。――うちの【主人公】が、今そっちに着きました』

その直後だった。

ヒュォォォォォンッ……!!!

赤く染まった新宿の上空、数千の魔獣が渦巻く空の中心に。

一人の少女が、音もなく『出現』した。

淡い黄色のサマードレスを風に揺らし、艶やかな黒髪をなびかせる絶世の美女。

本作の最強の主人公――如月三月(きさらぎ みつき)である。

「うわぁ……。近くで見ると、すっごく気持ち悪いのがウジャウジャいるね」

三月は、まるで休日のショッピング中に小さな虫を見つけたかのような、ひどく無関心で冷ややかな視線で、上空のゲートと魔獣の群れを見回した。

彼女は飛行魔法など使っていない。ただの『物理的な跳躍力』と『空間の摩擦係数の操作』だけで、東京の空に留まり続けているのだ。

「グルルルルルッ!!」

突如現れた無防備な少女に対し、数百匹のワイバーンが一斉に殺意を向け、鋭い牙と爪を剥き出しにして四方八方から襲いかかってくる。

「ねえ、拓也。お掃除の準備、できたよ」

三月は、迫り来る死の群れを完全に無視して、耳元の小型インカムに向かって優しく語りかけた。

『ああ。俺の右眼(システム)と、アーヴィングさんの端末からの観測データをリンクさせる。……ねえさん、出力制限0.001パーセント。使用属性は【純粋な熱】。そのまま、あの黒い穴ごと全部――』

拓也が、いつものように姉の圧倒的な暴力で全てを終わらせようと、射撃の座標を固定しようとした。

その、瞬間だった。

ジリィィィィィィィィィッ!!!!

拓也の右眼『深層言語・限定解析』が、これまでにない異常な警告音を鳴らし、視界を『漆黒』のバグ表示で埋め尽くした。

『なっ……!? ねえさん!! 待て!! 撃つなッ!!』

拓也の悲痛な叫び声が、インカムを通してSランクたちの耳にも届いた。

「えっ? どうしたの拓也?」

三月は、指を鳴らそうとしていた手をピタリと止め、首を傾げる。

その間にも魔獣の群れが彼女に襲いかかろうとするが、三月の体から無意識に漏れ出す『絶対者の覇気』に触れた瞬間、ワイバーンたちは空中でボロボロと崩れ落ちていく。

『……ハァッ、ハァッ……。危なかった。もし今、ねえさんが撃ってたら……東京が、空間ごと完全に消滅してた』

通信の向こうで、拓也が荒い息を吐きながら、絶望的な事実を口にした。

「如月くん!? 東京が消滅するとは、どういうことだ!?」

神宮寺が叫ぶ。

『俺の右眼が、あのアビスゲートの深層構造をギリギリで解析しました。……あのゲート、ただ空に開いた穴じゃありません。ゲートの裏側に広がる巨大な【深淵の迷宮】の魔力根(ルーツ)が、東京の地下に走るレイライン(霊脈)と、空間の基盤そのものに『物理的に癒着』しているんです』

拓也の言葉に、神宮寺とレオンが息を呑む。

それはつまり、どういうことか。

『もし今、ねえさんの規格外の力でゲートの入り口(外側)を破壊すれば、癒着している東京のレイラインも巻き込んで連鎖爆発を起こします。間違いなく、関東一帯が空間ごと地図から消え失せる』

「…………ッ!!」

『つまり、外部からの破壊は【絶対不可能】だ。ゲートを消し飛ばすには、癒着しているレイラインへのダメージを避けるため……あの深淵の迷宮の『内側』に潜り込み、最深部にある【コア】だけを、ピンポイントで破壊するしかありません』

外部からの超火力による、一瞬の解決は封じられた。

敵は、東京という街そのものを「人質」にとったのだ。拓也が最も恐れる、「就職先の市役所の消滅」という最悪の盾を構えて。

「……そっか。じゃあ、お姉ちゃんが今からその『内側』に入って、一番奥のコアってやつを壊してくればいいんだね?」

空に浮かぶ三月が、一切の焦りも見せずに明るく言った。

『そうだ、ねえさん。……だけど、右眼の解析データを見る限り、ゲートの内側は今まで俺たちが潜ったどのSランク迷宮とも比較にならないほど巨大だ。空間が何層にも折り重なっていて、最深部までどれだけの距離があるか分からない』

拓也は、自室の椅子で冷や汗を流しながら、この事態の重さを噛み締めていた。

これは、特異点の時のような「数時間で終わる短期決戦」ではない。

何十層にも及ぶ未知の超巨大迷宮を、東京の空を維持しながら一つずつ攻略していく。

数週間、あるいは数ヶ月に及ぶかもしれない、未曾有の『長期戦(キャンペーン)』の始まりであった。

『神宮寺さん、レオンさん。そしてSランクの皆さん』

拓也の声が、さらに一段低く、研ぎ澄まされたものになる。

『状況は最悪です。ゲートからはこの先も絶え間なく、Aランク以上の魔獣が湧き出し続ける。皆さんはこの東京を、俺の指揮のもと【何週間でも、何ヶ月でも】防衛し続けてもらわなければならない』

「……フッ。言ってくれるじゃないか、ボーイ。上等だぜ。俺たちを誰だと思ってやがる」

レオンが、ニヤリと凶悪な笑みを浮かべて雷を迸らせる。

「承知した、如月指揮官(コンダクター)。我々極星の全戦力をもって、東京の空は死守しよう。……ならば、迷宮内部の攻略部隊は」

神宮寺の問いに、拓也は画面の向こうの姉を見つめた。

『――内部への突入(レイド)は、うちの主人公(ねえさん)を筆頭とする、精鋭の遊撃部隊で行います。ねえさん、悪いけど、お昼のお散歩じゃ済まなくなった。長い戦いになる』

拓也の言葉に。

東京の空に浮かぶ最強の主人公・三月は、ふわりと優しく微笑んだ。

「ううん、大丈夫だよ拓也。だって、お姉ちゃんが早くこのゴミを片付けないと、拓也が公務員試験のお勉強に集中できないもんね」

三月は、ゆっくりと右手で『手刀』の形を作った。

「それに、お家に帰れば拓也と一緒に食べるパンケーキが待ってるんだから。こんな長いトンネル、お姉ちゃんがダッシュで駆け抜けてあげる!」

三月はそのまま、手刀を虚空に向かって一閃した。

ズバァァァァンッ!!!

魔獣の群れが、三月の圧倒的な膂力から放たれた『ただの風圧』によって、真っ二つに分断され、ゲートへの道が切り開かれる。

「行ってくるね、拓也! ちゃんとナビゲートしてね!」

三月は、淡い黄色のサマードレスをはためかせ、漆黒のアビスゲートの深淵へ向かって、一切の躊躇いもなく飛び込んでいった。

魔力を持たない少年指揮官による、鉄壁の東京防衛戦。

そして、最強の主人公による、未知なる深淵迷宮への果てしない侵攻。

東京の空を真っ二つに割る、50話にも及ぶ壮大なアビスゲート攻略戦が、今ここに幕を開けたのである。

これから始まる、迷宮内部の階層バトルや東京防衛戦にご期待ください!

もし「新章の展開が熱い!」「パンケーキのために世界を救う姉(笑)!」「指揮官モードの拓也かっこいい!」と思っていただけましたら、

ぜひページ下部にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、執筆の大きな励みになります!

次回、アビスゲートの内部へと足を踏み入れた三月お姉ちゃんの無双をお楽しみに!

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