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魂喰い覚醒で最強へ成り上がるFランク少女、意識を奪う闇と共に歩む  作者: beck2026
第四章:極星たちの休息と最強の姉編

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第276話:戦慄の三者面談と、保護者(最強の姉)の進路指導

期末テストが終わり、梅雨の足音が近づき始めた六月の半ば。

中学校の教室では、放課後のホームルームで担任の教師から一枚のプリントが配られていた。

「――来週から、期末テストの結果と進路希望調査をもとにした『三者面談』を行う。保護者と日程を調整して、週末までに希望日を提出するように」

その言葉を聞き、如月拓也(きさらぎ たくや)はプリントをファイルにしまいながら、静かに息を吐いた。

(……三者面談か。俺の進路は『普通科の高校に進学して市役所職員になる』で完全に固まっているし、テストも全教科満点だった。親父か母さんに来てもらって、判子を押すように承認してもらえば、平穏な進路は確定だな)

先日、応接室で神宮寺や九条といった過保護なSランクたちが乱入してくるという事故はあったものの、結果的に彼らも「市役所最高!」と公務員への道を(泣きながら)応援してくれている。

あとは両親と共に、ごく一般的な面談をこなすだけだ。

そう、拓也は完全に油断していたのである。

その日の夕食時。

如月家の食卓には、姉の三月(みつき)が腕によりをかけた絶品のハンバーグが並び、家族四人で和やかな時間を過ごしていた。

「あ、そうだ父さん、母さん。来週のどこかで、学校で三者面談があるんだけど……。進路の確認だから、どっちか来てくれないかな?」

拓也が、味噌汁を飲みながらプリントを差し出す。

すると、両親は顔を見合わせて、少しだけ気まずそうに笑った。

「ごめんね、拓也。実は来週、お父さんの会社の慰安旅行で、夫婦同伴でハワイに行くことになっちゃってね……」

父親が、申し訳なさそうに頭を掻く。

「そうそう。本当は断ろうかと思ったんだけど、お父さんの社長さんがどうしてもって言うものだから。三者面談の期間、まるまる家を空けることになっちゃうのよ」

母親も両手を合わせて謝ってくる。

「えっ? ハワイ? 慰安旅行って、そんな急に……」

拓也が驚いていると、三月がハンバーグを頬張りながらニコニコと手を挙げた。

「はーい! 大丈夫だよ拓也! お父さんたちの代わりに、お姉ちゃんが保護者として学校に行ってあげるから!」

「…………ッ!!」

拓也の箸が、ピタリと止まった。

(……待て。ねえさんが、保護者として学校に来る……? 先日の進路希望調査の時、応接室の鋼鉄のテーブルを『傘の先でコツンと叩いて砂に変えた』あの姉さんが……!?)

拓也の脳裏に、白目を剥いて気絶していた担任の教師の姿が鮮明にフラッシュバックした。

「いや、駄目だ!! ねえさんが来たら、先生がショック死するかもしれない!!」

拓也が血相を変えて立ち上がる。

「えー? どうして? 私、ちゃんとスーツ着て、真面目なお姉さんとして行くよ? それに、拓也の進路を応援するのは家族の役目でしょ!」

三月が、ウサギのぬいぐるみを抱きしめながら少しだけ不満そうに唇を尖らせる。

「それはそうだけど……! お願いだから、学校の備品だけは壊さないって約束して!」

「うんっ! 約束する! 拓也のためだもん、お姉ちゃん完璧な保護者を演じてみせるよ!」

満面の笑みで宣言する三月。

拓也は、激しい胃痛を覚えながらも、もはやこの流れを止めることはできないと悟り、静かに天を仰いだ。

そして迎えた、三者面談の当日。

放課後の二年B組の教室。

担任の鈴木(すずき)先生は、教卓の前に置かれたパイプ椅子を見つめながら、滝のような冷や汗を流していた。

(……来る。ついに今日、あの『規格外のバケモノ(如月三月)』が保護者としてやって来る……ッ!!)

鈴木は、先日の応接室での出来事を決して忘れてはいなかった。

神宮寺や九条といった、テレビで見るようなSランクのトップ探索者たちが、あの中学生の少年(拓也)に向かって土下座をして泣き縋り。

そして、その姉である三月が、鋼鉄のローテーブルを物理法則を無視して『砂』に変え、彼らを恐怖で服従させた光景を。

(あの姉弟は、絶対にギルドが隠している国家機密レベルの存在だ。もし今日の面談で、私が少しでも彼女の機嫌を損ねるようなことを言えば……この教室ごと、私が砂に変えられてしまうかもしれない……!!)

鈴木の胃壁は、すでにストレスでボロボロであった。

彼は今日のために、わざわざ教卓の上に『絶対に壊れないように、あらかじめクッション材を敷いた柔らかい下敷き』を用意し、さらに自身のスーツの下には、通販で買った防刃ベストを着込んでいるという徹底ぶりだった。

コンコンッ。

「――失礼します。如月です」

教室のドアが開き、拓也が静かに入ってきた。

そしてその後ろから。

「こんにちはー! 拓也の姉の、三月です! 今日は両親の代理で来ました!」

淡いベージュの清楚なパンツスーツに身を包み、髪を後ろで上品にまとめた絶世の美女――三月が、花が咲くような笑顔で一礼した。

見た目だけなら、どこからどう見ても「弟思いの優しくて美しいお姉さん」である。

「ひぃっ……! い、いらっしゃいませぇッ!! ど、どうぞ、こちらの椅子にお掛けくださいッ!!」

鈴木は、まるでヤクザの組長を出迎える下っ端のように、裏返った声でパイプ椅子を勧めた。

「ありがとうございます。先生、いつも拓也がお世話になってます」

三月が上品に微笑みながら椅子に座る。

拓也も隣に座りながら、鈴木の異常な怯えっぷりに(やっぱりトラウマになってる……ごめんなさい先生……)と、心の中で深々と土下座をした。

「え、えーと……! それでは、如月くんの面談を始めさせていただきます……!」

鈴木は、ガタガタと震える手で、拓也の成績表と進路希望調査票をファイルから取り出した。

「ま、まずは成績ですが……! ご、ご存知の通り、今回の期末テスト、如月くんは全教科で満点という……開校以来の素晴らしい成績を収められました……!」

「わぁっ! すごいね拓也! お姉ちゃん鼻が高いよ!」

三月が、パチパチと嬉しそうに拍手をする。

「は、はいッ! この学力であれば、都内のトップエリート高校はおろか、国立の探索者育成アカデミーの特待生も夢ではありません……!!」

鈴木が、教師としての本能から、つい優秀な生徒の進路の可能性を口走ってしまった。

その瞬間。

三月の拍手の手が、ピタリと止まった。

「…………先生?」

三月の深緑色の瞳から、スゥッと温かい光が消え去り、底なしの暗淵のような冷ややかさが宿った。

彼女は、教卓の上に置かれていた『柔らかいクッション下敷き』の上に、スッと右手を置いた。

「拓也はね、普通科の高校に行って、市役所のお兄さんになるの。……それ以外の進路を勧めるってことは、またあのおかしなスーツの人たち(神宮寺と九条)みたいに、拓也を危険な場所に連れて行こうとしてるのかな?」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ……!!

三月の背後から、一切の魔力を伴わない、純粋な『生物としての絶対的なプレッシャー』が教室中に溢れ出した。

窓ガラスがビリビリと共鳴して震え、黒板のチョークがカタカタと音を立てて踊り出す。

「ひぃぃぃぃぃぃッ!!!」

鈴木は、防刃ベストを着ていることなど何の意味もない死の恐怖を感じ、教卓の裏に勢いよく土下座をした。

「ち、違いますゥゥッ!! 滅相もございませんッ!! 如月くんの市役所への道は、我が校が全力を挙げて、命に代えてもバックアップさせていただきますゥゥッ!!!」

「ねえさん、ストップ!! 先生が死んじゃう!!」

拓也が慌てて三月の腕を掴んで引っ張った。

「あっ、ごめんなさい! つい、拓也の夢を邪魔する悪い人がいるんじゃないかって心配になっちゃって」

三月は、瞬時にいつもの明るい笑顔に戻り、「えへへ」と可愛らしく舌を出した。

「ほ、本当に申し訳ありませんでした三月様ァッ!! 如月くんの第一志望は『都立普通科高校』、将来の夢は『市役所職員』!! これで完全に、確定とさせていただきますッ!!!」

教卓の裏から、鈴木の涙声の絶叫が響き渡る。

「よかったね、拓也! これでお勉強に集中できるよ!」

三月が、拓也の肩を抱き寄せてニコニコと笑う。

(……先生の寿命と引き換えにな)

拓也は、教卓の裏でガタガタと震え続ける担任教師に深い同情を寄せながら、静かに胃薬を欲した。

「……あの、先生。体育のドッジボールの件も、一応……」

拓也が、なんとか場を和ませようと、別の話題を振る。

「は、はいッ!! ドッジボールですねッ!! クラスの剛田くんの魔力エンチャント球を、全て紙一重で躱し切ったという伝説の回避ッ!! 体育教師も『あれは人間の動きではない』と戦慄しておりました!! さ、流石は三月様の弟君でございます!!!」

鈴木が、土下座の姿勢のまま叫び返す。

(全然和んでないし、完全に俺がヤバい奴扱いされてる……)

「ふふっ、拓也は昔から逃げるのは上手だったもんね!」

三月が、全く的外れな方向で喜んでいる。

かくして、如月拓也の三者面談は、わずか五分という学校史上最短の記録で終了した。

彼の「一般人として普通科高校に進学し、市役所職員になる」という強固な意志(と姉の物理的な脅迫)は、学校側に完璧に承認されたのである。

「お疲れ様、拓也! 先生、すごく良い人だったね!」

夕暮れの通学路。三月が、鼻歌を歌いながら拓也の隣を歩く。

「……うん。先生、寿命が五年くらい縮んでた気がするけどね」

拓也は、深くため息を吐きながらも、どこか晴れやかな顔で夕焼け空を見上げた。

特異点の死闘を乗り越え、最強の姉や部下たちに振り回される日々。

それでも、彼が思い描く「平穏な未来」のレールは、周囲の大人たちの胃痛と犠牲を払いながらも、確実に前へと敷かれている。

「帰ったら、ハワイに行ってるお父さんたちに、面談バッチリだったよって連絡しなきゃね!」

「そうだね。お土産、マカダミアナッツチョコがいいな」

魔力を持たない少年指揮官の、規格外で、過保護で、少しだけ胃の痛い日常は、こうして賑やかな笑い声と共に明日へと続いていくのであった。

お読みいただきありがとうございます!

もし「面白かった!」「鈴木先生お疲れ様(笑)!」「三月姉さんの保護者姿見たい!」と思っていただけましたら、

ぜひページ下部にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、執筆の大きな励みになります。

次回も引き続き、如月姉弟のドタバタな日常をお楽しみに!



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