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魂喰い覚醒で最強へ成り上がるFランク少女、意識を奪う闇と共に歩む  作者: beck2026
第四章:極星たちの休息と最強の姉編

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第272話:キノコの森と、奇妙な接待パーティ

翌日の放課後。

東京郊外に位置するEランク指定迷宮『キノコの森』のエントランス前に、即席の五人パーティが集結していた。

「す、すげえ……! これが本物の迷宮の入り口か!」

昨日Fランクのライセンスを取得したばかりのクラスメイト、健太が、レンタルした真新しい革鎧を着込み、興奮と緊張の入り混じった声を上げている。

その隣には、見た目は二千円の無地の黒パーカー(中身は戦車砲を弾く鉄山厳の最高傑作)を着た如月拓也(きさらぎ たくや)と、ピクニック用のバスケットを持ったワンピース姿の姉、三月(みつき)が立っていた。

「緊張してるね、健太。でも今日はリョウタさんたちがいるから、指示通りに動けば大丈夫だよ」

拓也が、一般の友人として優しく声をかける。

「おう! 頼りにしてるぜ、如月!」

健太が笑った、その時だった。

「お、おおおお待たせいたしましたァッ!!」

エントランスの奥から、大剣使いのリョウタ、弓使いのケン、魔法使いのアオイの三人組が、まるで軍隊の行進のようなガチガチの足取りで駆け寄ってきた。

そして、彼らは拓也と三月の姿を見るなり、踵を揃えて直立不動の姿勢をとり、深々と九十度のお辞儀をしたのである。

「本日は! 我々のような未熟者のパーティに同行していただき、誠にありがとうございます!! 荷物持ちだなんてとんでもない、どうか我々の戦いぶりを後ろからご指導・ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします!!」

リョウタが、額に滝のような冷や汗を流しながら大声で叫んだ。

「…………えっ?」

健太が、ポカンと口を開ける。

無理もない。健太の認識では、リョウタたちは「中ボスを討伐した期待の若手」であり、拓也たちは「ただの荷物持ちの素人」のはずである。

それなのに、先輩であるはずのリョウタたちが、拓也たちに向かって完全に『弟子が師匠を崇めるような態度』を取っているのだ。

(マ、マズい……ッ!! こいつら、俺たちがバケモノだって知ってるから、健太の前で態度が隠しきれてない!!)

拓也は、激しい胃痛を覚えながら、右眼の眼帯越しにリョウタに向かって『ふざけるな、俺はただの素人だ! 話を合わせろ!』という強烈な殺気(アイコンタクト)を飛ばした。

「ヒッ!?」

リョウタは、指揮官の無言のプレッシャーにビクゥッと肩を震わせ、一瞬で状況を察した。

「あ、あーっ! ゴホン! い、いやあ、今日はわざわざ荷物持ちのバイトに来てくれてありがとな、眼帯! お前ら素人は、俺たちプロがしっかり守ってやるから、後ろで大人しく見てるんだぞ!! な、なあケン! アオイ!」

リョウタが、声と足の震えを必死に隠しながら、わざとらしく尊大な態度を取り繕う。

「そ、そうそう! リーダーの言う通りだぜ! 俺たちの足を引っ張るなよ!」

「う、うん! 私たちの魔法を見せてあげるからね!」

ケンとアオイも、顔を引き攣らせながら必死に追従した。

「ははは。はい、リーダー。俺と姉さんは、しっかり荷物持ちに徹しますから、よろしくお願いします」

拓也は、完璧な愛想笑いを浮かべてペコペコと頭を下げた。

「なんだ、びっくりしたぜ。リョウタさんたち、如月にすごく丁寧にお辞儀するから、なんか裏があるのかと思ったよ」

健太が、緊張の糸が切れたように笑う。

「は、ははは……! 最近、礼儀作法に凝っててな! よ、よし! それじゃあ行くぞ!!」

リョウタは、健太にバレなかったことに心底安堵の息を吐き、五人は『キノコの森』の内部へと足を踏み入れた。

ダンジョン内は、その名の通り巨大なキノコが乱立する、薄暗く湿った空間だった。

空中に漂う微小な胞子が、ヒカリゴケのように淡く発光し、幻想的な雰囲気を醸し出している。

「わぁ! すごく綺麗な森だね! 拓也、あそこに美味しそうなキノコがあるよ!」

最後尾を歩く三月が、早速バスケットを片手にキノコ狩りを始めようとする。

「ねえさん、勝手に触っちゃ駄目だよ。毒があるかもしれないし……」

拓也が注意しようとしたが、三月はすでに赤に白斑点の怪しげなキノコを素手で引っこ抜いていた。

「ああっ! 三月さん、それは『痺れダケ』です! 素手で触ると全身が麻痺して……ッ!?」

前方を歩いていたアオイが慌てて振り返る。

しかし、三月は何の異常もきたすことなく、そのキノコの笠を指先でツンツンと突いていた。

「へえ、これ痺れるんだ! でも私、全然平気だよ?」

(……そりゃそうだ。ねえさんの皮膚(魔力耐性)は、始源の迷宮の猛毒すら弾き返すんだから、Eランクの痺れ毒なんて空気みたいなものだ)

拓也は心の中で溜め息を吐いた。

「ええっ!? なんで平気なの!?」

健太が目を丸くする。

「あ、あーっ! き、きっと三月さんが昨日食べたご飯に、たまたま麻痺耐性の成分が入ってたんだよ! ははは、よくあることさ!」

リョウタが、あまりにも苦しすぎるフォローを入れる。

ケンもアオイも、無言でコクコクと激しく頷いた。

「そ、そうなのか? 迷宮って不思議だな……」

健太は、一般人特有の大雑把な理解で何とか納得してくれた。

(……この接待迷宮、健太の純粋さ(無知)に助けられてるな……)

拓也は、胃薬を飲むような仕草で胸元を押さえた。

やがて、一行はキノコの森の少し開けた湿地帯へと到着した。

本日の依頼である『特選・魔導キノコ』の群生地である。

「よし、みんな! あそこに生えてる青く光るキノコが目的の品だ! 健太、採取を手伝ってくれ!」

「はいっ!」

リョウタの指示で、健太が意気揚々とキノコを摘み始めた。

しかし、その時。

ズズズズズズッ……!!

湿地帯の泥が不自然に隆起し、巨大なミミズのような魔獣が姿を現した。

体長三メートルに及ぶ、本日の討伐対象『ジャイアント・マッドワーム』である。

「うわあっ!? で、出たぁッ!!」

キノコを摘んでいた健太が、巨大な口と鋭い牙を見て尻餅をつく。

「健太、下がれッ!」

リョウタが大剣を抜き放ち、健太を庇うように前に出た。

(さあ、見せてもらうぞ。一ヶ月間スライムを無言で狩り続けた成果を)

拓也は、最後尾から一歩も動かず、右眼の『深層言語・限定解析』を静かに起動して彼らの動きを注視した。

「ギシャァァァッ!!」

マッドワームが、巨体をうねらせてリョウタに向かって突進してくる。

しかし、リョウタは慌てない。

彼は大声で指示を出すことなく、ただ右手を小さく『パー』の形に開いた。

それは、あらかじめ決めておいた「後衛、牽制しろ」の合図。

ビュンッ!

即座に、後方のケンが放った矢が空を切り、マッドワームの左目に正確に突き刺さった。

「ギュガッ!?」

ワームが痛みにのたうち回り、突進の軌道がわずかに逸れる。

その隙を見逃さず、リョウタが踏み込んだ。

だが、彼は大剣を振り下ろすのではなく、ワームの胴体を大剣の『腹』で強烈に弾き飛ばし、その巨体を宙に浮かせた。

(……見事だ。次にアオイの魔法が来ることを完全に信頼している動きだ)

拓也の眼が、彼らの完璧な連携に感心の光を帯びる。

「――『ウォーター・ボール』!!」

アオイの放った水球が、空中に浮き上がって回避不能となったワームのどてっ腹にクリーンヒットした。

水流の衝撃でワームの体勢が完全に崩れ、柔らかい腹部が露わになる。

「これで……トドメだァァッ!!」

着地と同時に、リョウタが渾身の力で大剣を振り下ろした。

Eランクの微風の鉄剣が、マッドワームの急所である魔核を正確に両断し、巨体は泥の塊となってドロドロと溶け落ちた。

後に残されたのは、ゴロンと転がるEランクの魔石だけである。

「…………」

森に、一瞬の静寂が落ちる。

「す、すっげえええええッ!!!!」

健太が、目を輝かせて立ち上がり、歓喜の声を上げた。

「一言も喋らないで、あっという間に倒しちゃった!! さすがリョウタさんたちだ! 本物のプロの探索者だよ!!」

健太の純粋な称賛を浴び、リョウタ、ケン、アオイの三人は、照れくさそうに顔を見合わせた。

しかし、彼らの視線は、健太ではなく、最後尾にいる『ただの荷物持ちの眼帯の少年』へと向けられていた。

(……どうですか、師匠。俺たち、少しは成長しましたか?)

リョウタの無言の視線が、そう問いかけている。

拓也は、健太に気づかれないように、顔の横でそっと『親指を立てた(サムズアップ)』。

完璧な連携だった。もう彼らは、小石を蹴って助けなければ死んでしまうような、烏合の衆ではない。

「ブワッ……!!」

拓也のその小さな承認のサインを見た瞬間。

リョウタたち三人の目から、堰を切ったようにボロボロと大粒の涙が溢れ出した。

「お、おいリョウタさん!? なんで泣いてるんですか!?」

健太が慌てて駆け寄る。

「ち、違うんだ健太! これは……そう! マッドワームを倒した感動で……! 俺たち、頑張ってよかったなって……ウワァァァァンッ!!」

リョウタは、大剣を抱えて子供のように泣きじゃくった。ケンもアオイも、もらい泣きをして鼻をすすっている。

「そ、そうなんですか!? 探索者って、熱い世界なんですね!! 俺も感動してきました!!」

健太も、完全に勘違いしたまま、先輩たちにもらい泣きをして肩を抱き合い始めた。

(……なんだこの、暑苦しい青春ドラマみたいな空間は)

拓也は、涙を流す初心者四人組を見つめながら、呆れたような、しかしどこか温かい微笑みをこぼした。

「拓也、みんな仲良しでよかったね! はい、マッシュルーム!」

三月が、いつの間にかバスケットいっぱいに詰め込んだ魔導キノコを差し出してくる。

「……うん。すごく良いパーティになりそうだね」

正体を隠した少年指揮官と、真実を知りながらも成長を遂げた初心者たち。

そして、何も知らずに夢を追う親友。

魔力を持たない十四歳の放課後は、奇妙な接待と、確かな絆を育みながら、今日も騒がしく、そして平和に過ぎていくのであった。

お読みいただきありがとうございます!

勘違いしたまま感動する健太も含め、良いパーティになっていきそうですね!

もし「面白かった!」「リョウタたちよく頑張った!」「青春してる(笑)!」と思っていただけましたら、

ぜひページ下部にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、執筆の大きな励みになります。

次回も引き続き、如月姉弟のドタバタな日常をお楽しみに!


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