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魂喰い覚醒で最強へ成り上がるFランク少女、意識を奪う闇と共に歩む  作者: beck2026
第四章:極星たちの休息と最強の姉編

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第244話:ギルドへの帰還と大吾の恩義、そして新たな異変の予兆

「――緊急報告だ!! 『木霊の廃坑』の第三セクター付近で、Bランク相当の変異種……ジェネラル・ゴブリンと、鉄武装したホブゴブリンの軍隊スタンピードに遭遇した!!」

夕刻。

東京・霞が関にある探索者協会本部のロビーに、Cランク重戦士の大吾だいごの怒号のような大声が響き渡った。

その声に、周囲にいた探索者たちや職員たちが一斉にざわめき立つ。

本来、Dランク迷宮である廃坑には出現するはずのない強大な魔獣。しかもそれが『軍隊のように統率されていた』となれば、一歩間違えれば近隣の街に甚大な被害をもたらしかねない大事件である。

「だ、大吾さん!? 皆さん、ご無事で……っ!? 詳しい状況を伺います!!」

受付カウンターの奥から血相を変えて飛び出してきたのは、拓也たちの正体を知る数少ない協会職員の一人、受付嬢の佐藤結衣さとう ゆいだった。

ボロボロになった大吾、そして疲労困憊の斥候スカウトのリクと魔術師のミキ。

しかし、結衣の視線は、彼らのさらに後ろを歩いてきた『無傷の二人組』に釘付けになった。

無地のパーカーの上に漆黒のコートを羽織った眼帯の少年と、巨大なリュックを背負ってニコニコと笑っているワンピース姿の絶世の美女。

書類上はFランクでありながら、特異点を更地に変えた最強にして最凶の姉弟、如月拓也きさらぎ たくや如月三月きさらぎ みつきである。

(た、拓也さま……三月さま……っ!? どうして大吾さんのパーティと一緒に……!? まさか、ただのポーターのアルバイトに行った先で、また災害を引き起こしたんですか!?)

結衣の顔が、恐怖と絶望でみるみるうちに土気色に変わっていく。

しかし、大吾はそんな結衣の内心など知る由もなく、拓也の肩をバンッと力強く叩いた。

「俺たちが生きて帰ってこられたのは、ここにいる二人の『ポーター』のおかげだ!!」

「えっ……? ポ、ポーターのおかげ、ですか?」

結衣が、引き攣った笑いを浮かべながらオウム返しにする。

「ああ! この如月の坊主……いや、如月の『兄ちゃん』は凄えぞ。俺たちを逃がすために、自ら盾になってジェネラル・ゴブリンの戦槌ウォーハンマーの直撃を食らったんだ! なのに、傷一つ負わずにケロッとしてやがった!!」

「は、はい……(そりゃあ、拓也さまの着ているそのコート、銀座の老舗店長が泣いて喜んだ『始源の迷宮』の国宝級素材ですからね……)」

結衣は心の中で突っ込みを入れながら、死んだ魚のような目で頷いた。

「それだけじゃねえ! その後、この兄ちゃんは俺たちに完璧な指示を飛ばして、一瞬でゴブリンの陣形を崩しちまった! まるで、戦場全体を上から見下ろしている軍神みたいな采配だったぜ!」

「……ええ(それもそのはずです。その方、人類最高峰のSランクたちを意のままに動かして世界を救った、本物の戦術指揮官ですから……)」

大吾の興奮冷めやらぬ報告に対し、結衣の胃はキリキリと音を立てて痛み始めていた。

「そして何よりヤバいのは、そっちのネエチャンだ! 突進してきたジェネラル・ゴブリンの戦槌を、指二本でつまんで粉々に砕きやがったんだぞ!? どんなジムに通えば、指先だけでBランク魔獣の骨をへし折れるようになるんだ!?」

「………………」

結衣は、ついに言葉を失い、完全に魂の抜けた顔で拓也を見つめた。

その目には、『極秘裏に普通のポーターをやるって言ってたじゃないですかぁぁっ!!』という無言の抗議がありありと浮かんでいた。

拓也は、気まずそうにスッと目を逸らし、天井の模様を数え始めた。

三月は「あはは〜、筋トレの成果かなぁ〜?」と、可愛らしく後頭部をかきながらすっとぼけている。

「……大吾さん。報告は以上でよろしいですか」

騒ぎを聞きつけ、奥のオフィスから監察局長のセバスチャンが姿を現した。

彼もまた、拓也たちの姿を見るなり全てを察し、こめかみを押さえて深い溜め息を吐いていた。

「ああ。俺たちからの報告は以上だ。この後すぐに、討伐隊を編成して廃坑の奥を調査してくれ。あそこにはまだ、何か得体の知れない気配が残ってた」

大吾は真剣な表情でセバスチャンに告げた後、拓也と三月の前へと向き直った。

そして、歴戦の重戦士は、自分よりもずっと年下の少年と女性に対し、深々と頭を下げたのである。

リクとミキもまた、大吾に倣うようにして頭を下げた。

「如月の兄ちゃん。三月さん。……あんたたちが、どうしてFランクなんかに甘んじてポーターの真似事をしてるのか、俺には分からない。何か、協会や世間にバレちゃマズい深い事情があるんだろう」

「大吾さん……」

拓也は、目を丸くした。

「あんたたちがいなかったら、俺たちは今頃、あの冷たい洞窟の中でゴブリンの餌になってた。命の恩人だ。……あんたたちの本当の実力や素性については、俺たちは今後一切、他言しないと誓う。俺たちのパーティの命にかけてな」

大吾の誠実な言葉に、リクとミキも力強く頷いている。

彼らは彼らなりに、この規格外の姉弟には「強大な力を持っているが故の事情」があるのだと察し、それを尊重してくれようとしていた。

「ありがとうございます、大吾さん。……俺たち、本当にただ平穏に暮らしたいだけの、不器用な姉弟なもので」

拓也は、安堵の笑みを浮かべて頭を下げ返した。

「ハッ、その実力で平穏ってのも無理な相談だと思うがな。……これ、受け取ってくれ」

大吾は、皮袋に入った現金の束を拓也に手渡した。

「ポーターの日給と、今日倒したマンティスの魔石の売却益だ。……それに、俺たち三人の『命の代金ボーナス』も上乗せしてある。少ないが、取っておいてくれ」

「そんな、ボーナスなんて……」

「受け取らねえなら、今ここで大声であんたたちの強さを宣伝するぜ?」

大吾がニヤリと笑うと、拓也は苦笑しながらその皮袋を受け取った。

「……大切に使わせていただきます」

「ああ。またいつか、どこかの迷宮で会おうぜ。最強のポーターさんよ!」

大吾たちは、爽やかに手を振って、協会本部を後にして行った。

ロビーに静寂が戻ると、セバスチャンが拓也たちの元へと歩み寄ってきた。

周囲の探索者たちが遠巻きに見ている手前、あくまで「Fランク探索者への労い」という体裁を取りながら、小声で話しかけてくる。

「……お怪我がなくて何よりです、指揮官殿、三月殿。普通のポーター業務だったはずが、とんだ災難でしたな」

「本当に。……でも、セバスチャン局長。大吾さんも言っていましたが、あの『木霊の廃坑』には、まだ何か嫌な気配が残っています」

拓也は、右眼の眼帯にそっと触れながら、戦術家としての鋭い顔つきに戻った。

「ゴブリンのような知能の低い魔獣が、あれほど統率された陣形を組むのは異常です。……おそらく、廃坑の最奥に、あの軍隊を指揮している『上位の存在ダンジョン・マスター』が潜んでいるか、あるいは別の迷宮と空間が繋がりかけている(ダンジョン・マージ)可能性があります」

拓也の的確な分析に、セバスチャンの顔色がサッと青ざめた。

「迷宮の融合……。もしそれが事実であれば、東京郊外にAランク相当の新たな巨大迷宮が誕生することになります。すぐに調査隊を――」

「いや、調査隊を送るのは危険です。相手が罠を張って待ち構えている可能性がある。……少し時間をください。俺が、あの迷宮の『構造の癖』を解析して、安全なルートを割り出します」

「おお……! やっていただけますか!」

「ええ。乗りかかった船ですから。……それに、大吾さんたちのような一般の探索者が、理不尽に命を落とすのは見たくないですからね」

拓也が静かに決意を語ると、隣にいた三月が嬉しそうに拓也の腕に抱き着いた。

「さっすが拓也! かっこいい! じゃあ、今度の週末は二人で『廃坑更地デート』だね!」

「更地にはしないからね!? 今回はちゃんと、マスターだけをピンポイントで『魂喰い』して処理するんだから!」

「えー、ちまちまするの面倒くさいなぁ。上からドーンって叩き潰しちゃ駄目?」

「駄目です。山が一つ消し飛びます」

世界を救った最強姉弟の、恐ろしくも微笑ましい(?)やり取りを聞きながら、結衣とセバスチャンは揃って胃薬を取り出し、水なしで飲み込んだ。

かくして。

Fランク姉弟による初めてのポーター任務は、彼らに新たな戦友(大吾たち)との絆をもたらすと同時に、東京郊外で密かに進行する『迷宮融合の危機』という次なる事件へのプロローグとなったのであった。

「よし、帰ろうか、ねえさん。今日こそ、もらったお給料で美味しいもの食べに行こう」

「うんっ! お姉ちゃん、回らないお寿司が食べたいな!」

夕暮れの霞が関。

謎の巨大迷宮の脅威が迫りつつあるというのに、最強の姉弟は呑気に夕飯の相談をしながら、その騒がしくも温かい日常へと帰っていく。

魔力を持たない少年指揮官の胃痛と、最強姉の理不尽な無双劇は、これからも賑やかに続いていくのであった。

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