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魂喰い覚醒で最強へ成り上がるFランク少女、意識を奪う闇と共に歩む  作者: beck2026
第四章:極星たちの休息と最強の姉編

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第229話:最速の帰還とAランクの魔核、Fランクへの言いがかり

東京郊外の山中に出現したAランク相当の『炎渦の迷宮』。

本来であれば、熟練のAランクパーティが数日がかりで準備を整え、決死の覚悟で挑むべきその高難易度迷宮は、如月姉弟が足を踏み入れてからわずか十数分で「完全な更地」と化していた。

「お疲れ様、拓也! あー、いい準備運動になったね!」

「……姉さん、一滴も汗かいてないでしょ」

協会が手配した専用ヘリに乗り込み、東京の探索者協会本部へと帰還する機内。

如月三月きさらぎ みつきは上機嫌で鼻歌を歌いながら、持ち帰ってきた討伐証明部位――フレイム・ミノタウロスのドロップ品である巨大な『炎牛の魔核』を、ポンポンとお手玉のように放り投げて遊んでいた。

通常、Aランク魔獣の魔核ともなれば、触れるだけで火傷を負うほどの超高温を発している危険物だ。

しかし、かつて『魂喰い』の覚醒を経て世界最強へと成り上がった三月の肌にとっては、少し温かいホッカイロ程度の熱でしかないらしい。

「それにしても、ヘリのパイロットさん、すごくびっくりしてたね。『えっ!? もう帰るんですか!? 到着してまだ十五分しか経ってませんよ!?』って」

三月がくすくすと笑う。

「そりゃあ驚くよ……。討伐対象の群れを、戦術も魔法の弱点もガン無視して、ただの『パンチの風圧』で迷宮ごと消し飛ばしたんだから。……俺の指揮ナビゲート、本当に必要なのかな……」

如月拓也は、ヘリの窓から遠ざかる山を眺めながら、深い深いため息を吐いた。

第一魔卿バエル戦のような、コンマ一秒の判断ミスが全滅に繋がる極限の戦場。そこでは拓也の右眼『深層言語・限定解析』と天才的な戦術が必須だった。

しかし、最強に返り咲いた姉の前では、Aランク迷宮すら「ただの障害物」に過ぎないのだ。

「そんなことないよ! 拓也が隣にいてくれないと、お姉ちゃん寂しくて実力の半分も出せないもん!」

「さっきの更地パンチで半分なの……?」

拓也は、自分の今後の存在意義について少しだけ悩みつつも、無事に帰還の途についた。

――探索者協会本部、一階ロビー。

「お、お待ちしておりましたぁぁっ……!」

自動ドアを抜けてロビーへと足を踏み入れた二人を、受付嬢の佐藤結衣さとう ゆいが涙目で出迎えた。

彼女の手元には、すでに迷宮周辺の観測ドローンからの報告書が届いているはずだ。

「結衣ちゃん、ただいまー! はいこれ、お土産のミノタウロスさんの魔核!」

ゴトリ、と。

三月が受付カウンターに巨大な『炎牛の魔核』を置くと、その圧倒的な熱量と魔力に反応し、カウンターの防魔ガラスがピキピキと音を立ててヒビ割れた。

「ひぃっ!? す、すぐに耐熱保管庫へ移します!! ……それにしても、出撃からわずか一時間半でのAランク迷宮鎮圧。しかも、迷宮そのものが『何らかの物理的な衝撃』によって消滅しているという異常事態……。さすがは三月様でございますぅぅ……」

結衣は、震える手で魔核を専用のアタッシュケースに回収しながら、もう慣れっこだとばかりに乾いた笑いを浮かべた。

「でも結衣さん。俺たち、書類上は『Fランクパーティ』ですよね? このAランクの依頼達成って、システム上どう処理されるんですか?」

拓也が、もっともな疑問を口にする。

「はい! もちろん、特例中の特例として処理させていただきます! セバスチャン局長から『如月デュオの行動はすべてSランク案件として最優先処理せよ』と厳命されておりますので、お二人のギルドカードには、莫大な報酬と貢献度ポイントが……」

結衣が端末を操作しようとした、その時だった。

「おいおい。待てよ受付のネエチャン」

ロビーの奥から、ガシャン、ガシャンと重々しい金属鎧の足音を鳴らしながら、一組の探索者パーティが近づいてきた。

先頭を歩くのは、顔に大きな傷跡を持つ、大柄な戦士風の男だ。

彼の胸元には、誇らしげに『Aランク』のバッジが輝いている。

「Aランクパーティ『紅蓮の牙』のリーダー、とどろきさん……。本日はどのようなご用件でしょうか?」

結衣が、営業スマイルを作って対応する。

「用件も何もねえよ! 俺たちはさっき出現した『炎渦の迷宮』を攻略するために、高価な耐熱装備とポーションを買い込んで準備してたんだぞ! なのに、いきなり『別の探索者によって鎮圧された』って通知が来たじゃねえか!」

轟は、苛立たしげに受付カウンターをドンッ! と殴りつけた。

「それは……その、こちらの如月デュオのお二人が、緊急で鎮圧に向かわれたためでして……」

結衣が、チラリと三月と拓也を見る。

「ああ!? このガキどもが!?」

轟は、拓也と三月の胸元に視線を落とした。

そこには、協会に登録したばかりの、真新しい『Fランク』のバッジがつけられている。

三月はともかく、拓也はまだ十四歳の少年だ。どう見ても歴戦の探索者には見えない。

「ふざけるなよ! Fランクのヒヨッコが、Aランク迷宮を攻略できるわけがねえ! さっきのバカでかい『炎牛の魔核』……てめぇら、どこの高ランク探索者のおこぼれを拾ってきやがった!?」

轟が、拓也の胸ぐらを掴もうと手を伸ばす。

彼は完全に勘違いしていた。

特異点破壊のニュースで『少年指揮官』の存在は知れ渡っているものの、拓也の顔や名前が一般の探索者にまで広く公開されているわけではない。ましてや、長らく眠っていた三月の顔を知る者はごく一部だ。

「おいガキ。不正な手段で手に入れた魔核で、ギルドの貢献度をちょろまかそうってのか? Aランクの俺たちが、直々にその嘘を暴いて……」

轟の手が、拓也の胸元に触れる寸前。

「……ねえ」

スッ、と。

拓也の前に、三月が立ち塞がった。

「その汚い手で、私の弟に触れないでくれるかな」

三月の声は、先ほどまでの明るいお姉ちゃんのトーンとは完全に異なっていた。

まるで絶対零度の氷底から響くような、感情の一切こもっていない、底冷えのする声。

「ああん? なんだお前、少し顔がいいからって……」

轟が三月を威圧しようと見下ろした、その瞬間。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ……!!

三月の背後から、かつて世界最強と謳われた彼女の『真のオーラ』が、物理的な質量を伴ってロビー全体に膨れ上がった。

それは、魔法でもスキルでもない。ただの殺気だ。

しかし、その殺気は、第一魔卿バエルを相手に死闘を繰り広げた『極星』のトップランカーたちでさえ、数十秒で全滅の恐怖を味わった規格外のものである。

「ヒッ……!?」

轟は、呼吸を忘れた。

彼を取り巻く『紅蓮の牙』のメンバーたちも、一瞬にして顔面を蒼白にさせ、カタカタと膝を震わせ始めた。

彼らの本能が、警鐘を通り越して絶望のサイレンを鳴らし続けている。

目の前にいるのは、人間ではない。

触れれば消し飛ぶ、抗うことすら許されない『生きた災害』そのものだということに、遅まきながら気づいてしまったのだ。

「私が更地にした迷宮に、文句があるの?」

三月が、深緑色の瞳を細め、冷たく一瞥する。

「あ、あ、あああ……っ!! じ、じゅいませェェェェェェンッ!!」

轟は、泡を吹いてその場に崩れ落ち、見事な土下座の姿勢のまま気絶してしまった。

背後にいたメンバーたちも、「ひぃぃぃぃっ!」と悲鳴を上げながら、轟を置いて蜘蛛の子を散らすように逃げ出していく。

ロビーには、再び静寂が戻った。

「……ふぅ。まったく、最近のAランクは礼儀がなってないねぇ。拓也に触ろうとするなんて、万死に値するよ」

三月は、瞬時にいつもの明るいお姉ちゃんの笑顔に戻り、パタパタと自分の手を払った。

「ねえさん……。殺気だけでAランクパーティを気絶させるFランクが、この世のどこにいるのさ……」

拓也が、床に転がる轟を見下ろしながら、胃のあたりを押さえて呟く。

「えー? だって、本当のFランク(拓也)を守るのが、偽装Fランク(私)の役目でしょ? これで『如月デュオ』の強さも、ギルド中に少しは伝わったんじゃないかな!」

三月が、得意げにブイッとピースサインを作る。

カウンターの奥では、結衣が「また犠牲者が……」と合掌していた。

遠くの柱の陰からは、様子を見に来たセバスチャンが「関わらなくてよかった……」と胸を撫で下ろしている。

魔力を持たない少年指揮官と、最底辺のFランクから世界最強へと成り上がったブラコン姉。

規格外すぎる『如月デュオ』の悪名(?)は、初陣にして早くも、探索者協会の間に恐ろしい伝説として刻まれようとしていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

第四章、最強姉弟デュオの日常編!

Aランク迷宮を物理で更地にして帰ってきた直後、お約束の「低ランクだと見下してくるテンプレ的なかませ犬」が登場しましたが……相手が悪すぎましたね(笑)。

弟を侮辱されて本気でキレかけた三月姉さんの、殺気だけでAランクを気絶させる無双劇でした。

拓也の胃痛はまだまだ治りそうにありませんが、二人の騒がしくも無敵な日常はこれからも続いていきます!

もし「面白かった!」「テンプレざまぁ展開最高!」と思っていただけましたら、

ぜひページ下部にある【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして応援していただけると、執筆の大きな励みになります。

次回も引き続き、如月姉弟の活躍をお楽しみに!

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