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魂喰い覚醒で最強へ成り上がるFランク少女、意識を奪う闇と共に歩む  作者: beck2026
第四章:極星たちの休息と最強の姉編

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225/229

第225話:探索者協会への来訪者、極星たちと最強のブラコン姉

東京・霞が関。

日本探索者協会の本部ビル、その最上階に位置するVIP専用ラウンジでは、人類を救った英雄たちが、最高級の酒と食事を前に至福の休息を貪っていた。

「カッカッカ! やっぱ戦いの後の酒は最高だぜ! なぁレオン、この日本の『SUSHI』ってやつ、信じられねえくらい美味えな!」

南米の総司令カルロス・リベラが、大トロの握りを豪快に口へ放り込みながら上機嫌に笑う。

「ああ、アメリカのジャンクフードも悪くねえが、たまにはこういう繊細なメシも五臓六腑に染み渡るぜ。……にしても、平和ってのはいいもんだな」

アメリカ最強のSランク探索者、レオン・カーターが、高級な日本酒をワイングラスに注いで喉を鳴らす。

彼らは、第一魔卿バエルを討ち果たし、七つの特異点すべてを破壊した『日米南米合同遠征軍(極星)』のトップランカーたちだ。

世界中が彼らの偉業に沸き返り、連日のようにメディアが彼らの姿を求めていたが、彼ら自身はそういった喧騒を嫌い、日本の協会本部に居留守を決め込んで身を隠していた。

「まったく、騒々しい筋肉ダルマどもだ。少しは静かに味わえねえのか」

日本のトップ魔術師・九条炎樹が、ソファに深く腰掛けながら呆れたようにため息を吐く。

「まあいいじゃないですか、九条さん。世界が救われたんですから、今日くらいは思いっきり羽を伸ばしましょうよ」

瀬戸玲奈が、色とりどりのマカロンを頬張りながらニコニコと微笑む。

「……それにしても、拓也くんの具合はどうだろうか。三日間も眠り続けていたと聞いて、心配なのだが」

神宮寺蒼太が、グラスの水を飲みながら、窓の外の平和な東京の景色を見下ろして呟いた。

「なに、あの若大将のことだ。今頃、目を覚まして家族水入らずで泣いて喜んでる頃だろ。……あいつの頭脳ナビゲートがなけりゃ、俺たち今頃バエルの玉座で綺麗さっぱり消滅してたからな。ゆっくり休ませてやらねえとバチが当たるぜ」

風間蓮が、ソファの背もたれに腕を回しながらニヤリと笑う。

激闘を終え、互いの実力を認め合った最高峰の大人たち。

彼らの間には、国境や派閥を超えた、確かな『戦友』としての絆と、穏やかな空気が流れていた。

しかし。

その平和な空気は、一階のロビーから上がってきた「一本の電話」によって、無惨にも打ち砕かれることになる。

――同時刻、探索者協会本部、一階ロビー。

受付嬢の佐藤結衣さとう ゆいは、平和を取り戻した静かなロビーで、溜まっていた事務作業をのんびりと片付けていた。

(ああ……平和って素晴らしい。空から魔王のお城が降ってくる心配もないし、恐ろしい魔獣の報告書を処理する必要もない。……なにより、胃に穴が空くような理不尽な対応をしなくて済むんだから……)

結衣は、温かいお茶をすすりながら、幸せそうに目を細めた。

かつて、この日本支部において、ある規格外の姉弟の暴走を一番近くで見せられ続け、幾度となく辞表を胸に忍ばせてきた彼女にとって、今のこの静寂はまさに天国であった。

ウィィィィン……。

その時、本部の自動ドアが静かに開いた。

「いらっしゃいませ、日本探索者協会へよ――」

結衣が営業スマイルを浮かべて顔を上げた、その瞬間。

彼女の背筋に、南極の絶対零度すらも凌駕するような、強烈で、圧倒的で、そしてあまりにも『見覚えのある』悪寒が走った。

「あ……え……?」

ロビーに入ってきたのは、二人の人物。

一人は、右眼の眼帯を外した、見慣れた少年の如月拓也。彼はどこか引き攣ったような、諦めきったような愛想笑いを浮かべている。

そして、彼と手を繋いで歩いてきたのは。

長く艶やかな黒髪を揺らし、透き通るような白い肌に、淡いグリーンのワンピースを身に纏った、息を呑むほどに美しい女性。

かつて世界最強と謳われ、『魂喰い』の呪いに倒れるまで、この協会本部を幾度となく恐怖のどん底に叩き落としてきた、生ける厄災。

「やっほー、結衣ちゃん! 久しぶり! ちょっと長いお昼寝から覚めたから、遊びに来ちゃった!」

如月三月きさらぎ みつきが、満面の、それはもう極上の笑顔で、受付カウンターへと歩み寄ってきた。

「ひ、ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ!?」

結衣は、椅子から転げ落ちそうになりながら、ガタガタと全身を震わせた。

魂を喰われて眠っていたはずの最強のSランク探索者が、一切の劣化なく、それどころか以前よりもさらに『得体の知れないオーラ』を纏って復活しているのだ。

「み、三月さま……っ! お、お目覚めになられたのですね……っ! お、おめでとうございます……っ!」

結衣は、涙目で必死に頭を下げる。

「うん、ありがとう! 結衣ちゃんも元気そうでよかった! ……ねえ、今日って『極星』の皆さんは上にいるんだよね?」

三月は、ニコニコと微笑みながら、最上階へと続く専用エレベーターを見上げた。

「は、はいぃっ! VIPラウンジで、皆様おくつろぎになられておりますが……っ!?」

「そっか! よかったぁ。拓也を助けてくれたお礼を、直接言いたかったんだ♪」

三月は、拓也の手を引いてエレベーターへと向かう。

しかし、その背中から立ち昇っているドス黒いオーラは、明らかに「お礼」を言う人間のそれではない。

「ねえさん……。本当に、手加減してね? あの人たちは世界を救った英雄なんだから……」

拓也が、エレベーターの中で懇願するように三月を見上げる。

「もちろん! ちょっとした『ご挨拶』と『面接』をするだけだよ! お姉ちゃんに任せなさーい!」

三月は、拓也の頭を撫でながら、ウフフと楽しそうに笑った。

チーン、という気の抜けた音と共に、エレベーターが最上階に到着する。

――VIPラウンジ。

「局長ォォォォォォォォォッ!!!」

ラウンジの扉がバンッ! と勢いよく開き、協会の監察局長であるセバスチャンが、顔面を蒼白にしながら転がり込んできた。

「ど、どうしたんだセバスチャンの爺さん。そんなに慌てて。どこかに野良魔獣でも出たか?」

カルロスが、寿司を頬張りながら不思議そうに尋ねる。

「ち、違います!! もっと、もっと恐ろしいものが……っ! あの方が、あの方が目覚めてしまわれたのです!!」

セバスチャンが、ガクガクと震えながらラウンジの入り口を指差した。

「あの方……?」

レオンたちが首を傾げた、その直後。

コツ、コツ、と。

静かな足音が、ラウンジに響いた。

「初めまして、でいいのかな? うちの可愛い可愛い拓也が、いつもお世話になってます♪」

開け放たれた扉から姿を現したのは、淡いグリーンのワンピースを着た、可憐で美しい女性だった。

隣には、苦笑いを浮かべた拓也が立っている。

「若大将!? 目が覚めたのか! ……ってことは、その隣の別嬪さんは……」

レオンが、ワイングラスを置いて目を丸くする。

「はい。俺の姉の、三月です」

拓也が紹介すると、レオンとカルロスは顔を見合わせてニヤリと笑った。

「へぇ、こいつが噂の眠り姫か! 確かにすげえ美人だが、なんつーか、か弱そうなネエチャンじゃねえか。なあに、身構えるこたぁねえよ」

カルロスが、警戒する素振りも見せずに豪快に笑う。

しかし。

彼ら海外のSランクとは違い、彼女が倒れる前にその『真の恐ろしさ』を直に知っている日本のトップランカーたち――神宮寺、風間、九条の三人は。

「な……っ」

「嘘だろ……。おいおい、冗談キツいぜ……」

ソファから弾かれたように立ち上がり、冷や汗を滝のように流して完全に硬直していた。

第一魔卿バエルの絶対的な消滅のオーラを前にしても、決して膝を屈しなかった極星の大人たちが、ただワンピース姿の女性が一人部屋に入ってきただけで、本能的な『死の恐怖』を警鐘として鳴らしまくっていたのだ。

「……あら? 神宮寺さんに、風間さんに、九条さん。皆さん、顔色が悪いですよ? どこかお加減でも?」

三月は、コテッと可愛らしく首を傾げてみせた。

だが、その深緑色の瞳の奥には、一切の笑みはなかった。

「……さて。世界を救った英雄の皆様」

三月は、ゆっくりと一歩、ラウンジの中へと足を踏み入れた。

その瞬間。

ラウンジ内の空気が、物理的な質量を持ったかのように『重く』のしかかり、室内の観葉植物が一瞬にして萎れ、高級なワイングラスがパキィィン! と音を立てて次々と砕け散った。

「な、なんだと……!?」

「この尋常じゃねえプレッシャーは……っ!」

レオンとカルロスが、ただならぬ事態にようやく気づき、咄嗟に武器を手元に引き寄せようとする。

三月は、その圧倒的で理不尽なオーラを垂れ流したまま、にっこりと、それはもう極上の笑顔を浮かべて言い放った。

「私の……魔力も持たない十四歳の可愛い可愛い弟を、あんな死地に連れ回して、ボロボロにして、挙句の果てには大砲の弾代わりにして撃ち出したんですってね?」

三月の言葉に、極星の大人たち全員の心臓が、ヒュッと冷たく跳ね上がった。

「ええっと、それは……」

神宮寺が弁明しようとするが、三月の殺気オーラの前に声が出ない。

「私は、とても心が広いお姉ちゃんです。世界を救ってくれたことには、ちゃんと感謝しています。拓也の命の恩人ですから」

三月は、自身の細い指先をポキリと鳴らした。

「でも、それはそれ。これはこれ。……貴方たちが、これからも拓也の背中を預かる『仲間』として本当にふさわしいかどうか。……かつて世界最強と呼ばれたこの私が、直々に『実力テスト』をしてあげます」

三月の背後に、ドス黒い魔力で構成された般若のような幻影が浮かび上がる。

「さあ、地下の特別訓練場に案内して。……一人残らず、泣かしてあげるから♪」

世界を救った最強のパーティ『極星』。

彼らにとっての本当の地獄テストは、第一魔卿バエルの玉座ではなく、平和な東京のど真ん中に待ち受けていたのである。

お読みいただきありがとうございます!

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