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魂喰い覚醒で最強へ成り上がるFランク少女、意識を奪う闇と共に歩む  作者: beck2026
第三章:世界崩壊と魂の誓い

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第210話:死の猛吹雪と水晶獣、不可視の雪中行軍

マイナス162度。

あらゆる生命活動を停止させ、魔力すらも物理的な「氷」へと上書きしてしまう、第六魔卿グラキエスが支配する絶対零度の南極大陸。

視界を数メートルにまで奪う猛烈な魔力嵐ブリザードが吹き荒れる中、日米南米の合同遠征軍は、透明な『絶対零度の防壁』に守られながら、雪原をジリジリと進んでいた。

「……ッ、ハァ……ハァ……!」

陣形の先頭で、風間蓮と神宮寺蒼太が、額に汗を滲ませながら魔力を放出し続けている。

彼らは、瀬戸玲奈が展開した結界の表面に、自らの『絶氷領域』を完全に同調させていた。

外気温よりもさらに純度の高い、絶対的で完璧な「氷の魔力」で結界をコーティングすることにより、グラキエスの『絶魔の氷』による侵食をギリギリで防ぎ切っているのだ。

「すまねえな、指揮官殿。……この結界の維持に全力を注いでる間は、俺とオッサンの二人は、攻撃に回る余裕がねえ」

風間が、歯を食いしばりながら苦笑いを浮かべる。

「十分すぎるほどの働きだ、風間。……我々がこの空間を維持している間に、周りの雑魚は他の連中に一掃してもらおう」

神宮寺もまた、重厚な大盾を構え、結界の構造を安定させることに全神経を集中させていた。

「ええ、問題ありません。……二人が作ってくれたこの『動く安全地帯』があれば、俺たちはいくらでも戦えます」

陣形の中央で、如月拓也は青く発光する右眼の『深層言語・限定解析』を猛吹雪の向こう側へと向けていた。

鉄山厳が打ち上げた極限耐熱・魔力炉心鎧『天照アマテラス』。

拓也の背中に搭載されたバッテリーから、九条と瀬戸の極上の魔力が熱となって循環し、絶対零度の環境から彼を完全に守り抜いている。

寒さによる震えも、思考の低下も一切ない。

「……前方、距離二十メートル! 猛吹雪に紛れて、無数の魔力反応が急接近してきます!」

拓也の鋭い声が、通信機を通じて全員の耳に届く。

「形状は狼に似た四足歩行、数は三十! 敵は環境と同化した『水晶の氷獣』……光学迷彩のように吹雪に溶け込んでいます!」

「ハッ! 見えなかろうが関係ねえ! テメェの眼が捉えてるなら、そこに向かってぶった斬るだけだ!」

アメリカ最強のSランク、レオン・カーターが、ドーム状の結界のギリギリ縁に立ち、巨大な魔剣を大上段に構える。

「南米のジャングルじゃあ、俺たちの物理攻撃を適応して防ぎやがったが……こいつらも同じように硬えのか、若大将!?」

カルロス・リベラが、巨大な戦斧を振り回しながら尋ねる。

「いえ、敵はただの純粋な『氷の塊』です! アスタロトのような超適応はありません! 純粋な物理的破壊で粉砕できます!」

「なら話はえれえ簡単だぜ!! オラァァァァッ!!」

レオンとカルロスが同時に得物を振り抜き、結界の外側へと凄まじい衝撃波を叩き込んだ。

ガシャァァァァァァンッ!!

猛吹雪の中、見えないはずの空間で、巨大なガラスが砕け散るような派手な音が響き渡った。

拓也の指定した座標をコンマ一秒の狂いもなく攻撃したことで、襲い掛かってきていた『水晶の氷獣』たちが、結界に触れる前に文字通り粉々に粉砕されたのだ。

「カッカッカ! 手応えが軽すぎるぜ! これなら何百匹来ようが散歩みてえなもんだ!」

カルロスが豪快に笑う。

だが、拓也の右眼は、砕け散った氷獣たちの『魔力の残滓』が消えていないことを正確に捉えていた。

「……カルロス司令、油断しないでください! 砕け散った氷の破片が、吹雪を接着剤にして再結合しようとしています!」

「なんだと!?」

拓也の言葉通り、雪原に散らばった無数の氷の破片が、まるで意志を持っているかのように集まり、再び狼の形へと組み上がっていく。

「チィッ! アマゾンの植物どもと同じで、無限再生のギミック持ちかよ!」

レオンが忌々しげに舌打ちをする。

「どうする指揮官殿!? また中枢のコアを俺の炎で焼くか!? ……いや、結界の外に出た瞬間に、俺の炎は凍らされちまう!」

日本のトップ魔術師・九条炎樹が、焦燥に駆られたように声を上げる。

自身の最大の武器である『炎』を封じられている九条にとって、この南極大陸は最も相性の悪い最悪の戦場であった。

「九条さん、敵には『個別のコア』が存在していません。奴らはこの吹雪そのものから生み出される、ただの環境の傀儡です。……大元を断つには、この吹雪を発生させている『魔力の中継塔』を破壊するしかない」

拓也は、視界のレンジをさらに広げ、猛吹雪の奥深くを解析した。

「……ここから真っ直ぐ前方、距離三百メートル! そこに、この一帯のブリザードを制御している『巨大な水晶のオベリスク』があります! あれを壊せば、再生は止まる!」

「三百メートルか! この再生し続ける氷の狼どもを掻き分けながら、そこまで進軍しなきゃならねえってことだな!」

カルロスが戦斧を構え直す。

「ですが、倒しても数秒で再生する敵を相手に、三百メートルも歩みを進めるのはジリ貧になります。……物理攻撃で粉砕した直後、破片が再結合する前に、遠くへ『吹き飛ばす』必要があります」

拓也は、そこでクルリと九条の方を振り返った。

その眼帯の下の青い瞳は、世界最高の魔術師のプライドを完璧に信頼していた。

「九条さん。炎の『熱』が凍らされるなら、熱を伴わない『純粋な爆風(衝撃波)』だけを放つことはできますか? 結界の内側で空気を極限まで圧縮し、敵が粉砕された瞬間に、物理的な空気の弾丸として撃ち出すんです」

「……炎の熱を捨てて、爆発の『衝撃』だけを飛ばせだと?」

九条は一瞬目を丸くしたが、すぐに不敵な、そして悪魔のような笑みを浮かべた。

「ハッ! 誰に口を利いてるんだ、若大将。炎の燃焼に伴う気体の急激な膨張……そのコントロールなんて、俺に言わせりゃ初歩の初歩だぜ。熱が使えねえなら、大砲キャノンの代わりになってやるよ!」

「不知火さん! 『八咫烏』は、九条さんの爆風で吹き飛んだ氷の破片を、魔力を通さない特殊な楔で地面に縫い止めてください! 再結合までの時間を限界まで稼ぐ!」

「……承知した。八咫烏、封殺陣形」

不知火凛の静かな号令と共に、暗殺者たちが手裏剣やクナイといった物理的な暗器を手に、即座に散開する。

「風間さんと神宮寺さんは、絶対に結界を解かないでください。……行きます、全軍前進!!」

拓也の号令を皮切りに、合同遠征軍の「不可視の雪中行軍」が再開された。

「前方、十時と二時の方向! 敵数、四十!」

「オラァァァッ! 砕けろォォッ!!」

レオンとカルロスが、結界の縁から大剣と戦斧を振り回し、迫り来る見えない水晶獣たちを次々と粉砕していく。

「九条さん、今です!」

「吹き飛びなァッ!! 『不可視の空砲エア・ブラスト』ッ!!」

九条が両手を突き出し、炎の熱を完全に排除した純粋な「爆発の衝撃波」だけを放つ。

マイナス162度の外気でも凍ることのない物理的な空気の弾丸が、レオンたちによって粉砕された氷獣の破片を、数百メートル先へと豪快に吹き飛ばした。

シュパパパパパンッ!!

吹き飛んだ破片が雪原に落ちるか落ちないかの瞬間に、不知火率いる『八咫烏』が放った無数の暗器が、破片を地面の分厚い氷へと深々と縫い付ける。

物理破壊、衝撃波による撹乱、そして物理的な封殺。

魔法が凍らされる絶対零度の環境において、それぞれが自身の「専門外」の戦い方を強いられながらも、拓也の指揮のもとに完璧な歯車として噛み合っていた。

「……すげえ。本当に、ただの化け物の集まりだな、アンタら」

結界の維持に集中している風間が、その流れるような連携を見ながら、呆れたような、それでいて誇らしいような笑みをこぼす。

一歩、また一歩。

無限に襲い掛かる水晶獣の群れを弾き飛ばし、封殺しながら、極星の大人たちは猛吹雪の中を確実な足取りで進んでいく。

そして、過酷な行軍の末。

「……見えました! 前方、距離二十メートル! あの巨大な氷の柱が、ブリザードの発生源です!」

拓也が指し示した先。

猛吹雪のベールの向こう側に、高さ数十メートルにも及ぶ、禍々しくも美しい『巨大な水晶のオベリスク』がそびえ立っていた。

オベリスクの表面には、複雑な魔力回路が青白く脈打っており、周囲の空間から熱を奪い、猛烈な冷気の嵐へと変換して吐き出し続けている。

「……やっと見つけたぜ。あのデカブツを叩き割れば、この目障りな吹雪も止まるんだな!」

レオンが、大剣を肩に担ぎ直して獰猛に笑う。

「待ってください、レオンさん! あのオベリスクの装甲は、水晶獣とは比べ物にならない密度です。半端な物理攻撃では、弾き返された瞬間に武器の金属が冷気で脆化ぜいかして砕かれます!」

拓也が鋭く制止する。

「なら、どうやって壊すんだ!? オッサンたちの氷の魔術は、結界の維持で手一杯だぞ!」

カルロスが焦ったように叫ぶ。

「……俺が行きます」

拓也は、腰のホルスターから、一本の短い銀の刃――『絶理の銀刃』を静かに引き抜いた。

「皆さんがここまで繋いでくれた道です。……最後は、俺の眼と、この刃で終わらせる」

少年指揮官の青く澄んだ右眼が、猛吹雪の中でひと際強く、冷徹な光を放つ。

絶対零度のオベリスクを穿つため、魔力を持たないただの凡人が、極星たちの中心から真っ直ぐに跳躍した。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

炎が使えない九条が、純粋な「爆風の衝撃波」で支援に回るという、極限環境ならではの熱い連携が描かれました!

そして、吹雪の元凶であるオベリスクの前に辿り着いた一行。

次回、拓也の『絶理の銀刃』が絶対零度の柱を穿ちます!

もし「面白かった!」「九条の機転がカッコいい!」と思っていただけましたら、

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