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魂喰い覚醒で最強へ成り上がるFランク少女、意識を奪う闇と共に歩む  作者: beck2026
第三章:世界崩壊と魂の誓い

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205/240

第205話:暴食の胃袋、魔境の最深部と第五魔卿の顕現

アマゾン大遠征、第四日目の朝。

第三キャンプの堅牢な防壁のゲートが、重々しい駆動音を立ててゆっくりと開かれる。

そこから外へと足を踏み出した日米南米の合同遠征軍の前に広がっていたのは、昨日までの「樹海」とは明らかに次元の異なる、異様でグロテスクな光景だった。

「……こいつは、ひでえな。まるで巨大な化け物の腹のハラワタじゃねえか」

先頭に立つ風間蓮が、周囲を見渡しながら顔をしかめた。

赤紫色の植物群は、もはや木やつるといった植物の形状を保っていなかった。

地面はブヨブヨとした粘膜のような肉塊に覆われ、周囲を囲む巨大な幹は、まるで本物の血管のようにドクン、ドクンと不気味な脈動を打っている。

空気中には、強酸を思わせるツンとした刺激臭と、むせ返るような生臭さが充満していた。

「ええ。ここはすでに、第五魔卿アスタロトの『消化器官』の真っ只中です」

陣形の中央で、如月拓也が青く発光する右眼で周囲の壁を視据えながら告げた。

「十キロ地点の中枢防衛圏……。アスタロトは、ここから先の三キロメートルを、完全に自らの肉体と同化させています。足を踏み入れた瞬間から、この空間すべてが俺たちを『消化』しようと牙を剥いてくるはずです」

拓也の言葉を証明するかのように、頭上のドス黒い天蓋キャノピーから、ポタポタと黄色い液体が降り注ぎ始めた。

それが地面の肉塊に触れた瞬間、ジュウジュウと白い煙を上げて周囲を溶かしていく。

「ヒュッ……! 強酸の雨かよ! 瀬戸の嬢ちゃん、結界を頼む!」

レオン・カーターが大剣を盾にして頭上を庇いながら叫ぶ。

「はいっ! 『白銀の浄化陣・聖域のホーリー・アンブレラ』!!」

瀬戸玲奈が即座に杖を天に掲げ、部隊全体を覆う強固なドーム状の結界を展開する。

降り注ぐ強酸の雨が結界に触れ、激しい音を立てて弾き返されるが、その酸の威度はこれまでの瘴気とは比べ物にならず、結界の表面でバチバチと激しい魔力の火花が散っていた。

「……マズいですね。この酸性雨、結界の魔力そのものを『消化』しようとしています。長くは持ちません」

瀬戸が、顔に汗を滲ませながら杖を握り直す。

「立ち止まるな! 瀬戸の結界が保っている間に、一気にこの胃袋を駆け抜けるぞ!」

神宮寺蒼太が大盾を構え、装甲車のような推進力でぬかるむ肉の地面を蹴り飛ばして前進する。

『ギュルルルルルルルォォォォォォッ!!』

侵入者の前進に呼応し、周囲の脈打つ肉壁が大きく波打った。

そして、壁の中から、無数の巨大な『牙を持った触手』が、まるで寄生虫のように飛び出し、四方八方から合同遠征軍へと襲い掛かってきた。

「魔力を吸収する抗体を持った触手です! まともに魔法を当てれば、奴らの養分になるだけだ!」

拓也が、コンマ一秒の狂いもなく触手の軌道を視抜き、叫ぶ。

「なら、吸収される前に『物理的な衝撃』だけで粉砕してやるよ!」

九条炎樹が、不敵な笑みを浮かべて両手に炎を集束させた。

「風間! お前の氷でヤツらの表面をカチコチに凍らせろ! その後、俺が『炎の爆風』だけをぶつけて粉砕する! 炎そのものを食わせなきゃいいだけの話だ!」

「ハッ! 繊細なコンビネーションを要求してきやがる! ……やってやるよッ!」

風間が『銀牙槍・改』を振り回し、極低温の冷気を放射状に放つ。

狙い違わず、襲い掛かってきた数十本の触手が一瞬にして凍りつき、その動きを完全に停止させた。

「もらったぜ! 『爆砕炎波ブラスト・ウェイブ』ッ!!」

九条が、凍結した触手の『足元』の地面へ向けて、凝縮した炎の塊を放つ。

着弾と同時に発生した凄まじい「爆風の衝撃波」が、カチコチに凍りついていた触手たちを、魔力を吸収する暇すら与えずに木端微塵に粉砕した。

魔術を無効化する環境において、氷と炎という相反するSランク魔術師二人が生み出した、物理破壊の極致とも言える神業の連携。

「カッカッカ! 後ろの魔術師どもに負けてられねえな! 前衛オレたちは、ひたすら壁をぶち抜いて道をこじ開けるぞ!!」

南米の総司令カルロス・リベラが、凄まじい跳躍で肉壁へと飛び込み、巨大な戦斧で脈打つ壁を深く抉り取る。

「オラァァァァッ! 邪魔だアスタロト! 腹の肉を全部削ぎ落としてやるぜ!」

レオン・カーターもまた、大剣を力任せに振り回し、再生しようとする肉壁を周囲の酸性雨ごと薙ぎ払っていく。

「拓也くん、次だ! どこを突けばこの空間を抜けられる!?」

神宮寺が、カルロスとレオンが削った壁の隙間に大盾を叩き込みながら、拓也へと指示を仰ぐ。

「……右斜め前方、仰角二十度! この肉壁には『血流のバルブ』のような、魔力が極端に薄くなる継ぎ目があります! 次の脈動の瞬間、そこを三人で同時に貫いてください!」

拓也の青く発光する右眼が、複雑怪奇な迷宮の「正解」を導き出し、寸分の狂いもなくナビゲートする。

「3、2、1……今ッ!!」

「「「オオオオオオオオオオオッ!!」」」

少年指揮官の号令に合わせ、世界最高峰の筋肉と質量を誇る三人のSランク探索者が、同時に渾身の物理打撃を肉壁の一点に集中させた。

ドゴォォォォォォォォォォォォンッ!!!!

凄まじい破壊音と共に、アスタロトの強固な消化器官の壁が、巨大な風穴を開けて完全にぶち破られた。

そこから溢れ出したドス黒い体液を瀬戸の結界で弾き飛ばしながら、合同遠征軍は一気にその風穴の中へと雪崩れ込む。

「……抜けました。ここが、十キロ地点」

拓也が、乱れた息を整えながら静かに告げた。

風穴を抜けた先。

そこは、これまでの狭く息苦しい消化器官の通路とは打って変わり、ドーム球場がすっぽりと収まるほどの、広大で巨大な『地下空洞』だった。

周囲の壁面には、青白く発光する無数の巨大な根が血管のように張り巡らされており、空洞の中心に向かって莫大な魔力を送り込んでいる。

そして、その空洞の中央。

「……なんだ、ありゃあ」

風間が、思わず槍を下ろして呆然と呟いた。

そこには、高さ数十メートルにも及ぶ、グロテスクな『世界樹』のような巨大植物がそびえ立っていた。

しかし、その幹は木材ではなく、無数の人間の肉と骨が複雑に絡み合ったような、冒涜的な造形をしている。

幹の中心部には、巨大な「心臓」がドクン、ドクンと鼓動を打ち、その周囲を無数の赤紫の触手が、まるで天使の羽のように包み込んでいた。

そして、その巨大な心臓のすぐ真下。

植物の幹と上半身が完全に融合した、一人の『存在』がこちらを見下ろしていた。

透き通るような白い肌に、中性的な美しい顔立ち。

しかし、その口元だけは、耳まで裂けたような異常な大きさを誇り、内側にはサメのような鋭い牙が何重にも生え揃っている。

第五魔卿にして暴食の悪魔、『樹魔卿アスタロト』。

『……ようこそ、我が愛しき胃袋へ。勇敢なる極上の魂たちよ』

アスタロトが、耳まで裂けた口をさらに大きく歪ませ、歓喜に満ちた声で笑った。

『エジプトのベリアル、ヴェネツィアのフォルネウス……同胞たちを次々と屠った貴様らの魂は、どれほど芳醇な味がするのだろうな。ああ……待ちきれない。貴様らのその絶望と恐怖を、骨の髄まで啜り尽くしてやろう』

空間そのものを震わせるような、圧倒的で濃密な魔力のプレッシャー。

Sランクの大人たちでさえ、その暴食の悪魔が放つ本物の殺意に、一瞬息を呑み、肌に粟を生じさせた。

だが。

「……絶望と恐怖を喰うって? 残念だけど、ここにはそんな美味い餌は落ちてないぜ」

陣形の中央から、一人の小柄な少年が、静かに、そして揺るぎない足取りで前へと進み出た。

「拓也くん……!」

瀬戸が心配そうに声をかけるが、拓也は振り返らずに、右手に握った短剣『絶理の銀刃』をゆっくりと構えた。

「俺たちがここへ来たのは、お前の餌になるためじゃない。……お前のその下品な胃袋を、内側から全部掻き捌いて、心臓コアを抉り出すためだ」

眼帯の下の右眼が、かつてないほど強烈な青白い閃光を放ち、巨大な暴食の魔王の『深層(急所)』を容赦なく解析し始める。

「さあ、始めようか。世界で一番タチの悪い、草刈りの時間を」

光の届かぬアマゾンの最深部。

人類の希望を背負った極星の大人たちと、彼らを導く少年指揮官が、ついに第五魔卿の本体へとその刃を突きつけた。

星の生命を喰らう悪魔と、魂の誓いを胸に秘めた者たち。

次なる特異点破壊を懸けた、正真正銘の最終決戦が、今ここに幕を開けた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

ついに10キロ地点、第五魔卿アスタロトの中枢へと辿り着きました!

酸の雨や触手を掻い潜る大人たちの連携、そして魔王を前にしても一切揺るがない拓也の宣戦布告。

いよいよ次回から、アスタロトとの総力戦がスタートします!

もし「面白かった!」「拓也のセリフがカッコいい!」と思っていただけましたら、

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