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魂喰い覚醒で最強へ成り上がるFランク少女、意識を奪う闇と共に歩む  作者: beck2026
第三章:世界崩壊と魂の誓い

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第197話:タイムリミットの真実、赤紫の絶壁と果てなき遠征の幕開け

日本探索者協会でのブリーフィングから数時間後。

如月拓也をはじめとする『特務遊撃パーティ』の四人は、専用の超大型輸送機に乗り込み、太平洋を越えて南米大陸へと向かっていた。

「……あーあ。ケツが痛え。エジプトの時は一瞬で転移できたってのに、なんで今回は二十時間も輸送機に揺られなきゃなんねえんだよ」

風間蓮が、機内の座席で大きく背伸びをしながらボヤいた。

「文句を言うな、風間。……ポータルが『使えない』のだから仕方がないだろう」

向かいの席で、神宮寺蒼太がテーブルに広げられた無数の支給品――大容量の魔力バッテリー、特殊な携帯野営テント、長期保存型の戦闘糧食などを確認しながら、重々しい声で返した。

「ええ。第五魔卿アスタロトが支配する『暴食の樹海』は、大地の魔力脈レイラインそのものを喰らい尽くしながら増殖しています。その強烈な魔力干渉により、南米周辺の空間座標が完全に狂い、国際転移ポータルの受信設備はすべて機能停止に陥りました」

同行しているセバスチャンが、手元のタブレットを操作して機内のモニターに映像を映し出す。

「ていうかよ、東雲のダンナ」

風間が、同乗している迷宮学者の東雲慧へ向けてジロリと視線を向けた。

「アンタ、前の会議で『あと四十八時間で南米大陸が完全に消失する』とか言ってなかったか? 輸送機でのんびり二十時間も飛んでたら、もう半分近くタイムリミットを消費しちまってるじゃねえか。間に合うのかよ?」

その痛い指摘に、東雲は苦笑しながら眼鏡を押し上げた。

「落ち着きたまえ、風間くん。あの『四十八時間』というのは、我々人類が指を咥えて何も抵抗しなかった場合の、最も悲観的な計算に過ぎない」

東雲はモニターの映像を切り替え、樹海の外縁部で戦う探索者たちのデータを示した。

「現在、レオンくんや九条くんたち同盟軍が、防衛線で不眠不休の『焦土作戦(伐採と焼却)』を行ってくれているおかげで、樹海の増殖スピードは劇的に削がれている。……そして何より、君たち特務遊撃パーティが樹海の『内部』に侵入して前線基地キャンプを作り、魔力脈の太い根を一つずつ断ち切っていけば、大陸消滅までのタイムリミットを数週間、あるいは一ヶ月単位まで力技で引き延ばすことができるんだ」

「なるほどな。同盟軍が外から火を放ち、俺たちが中から根をぶった斬ることで、無理やり時限爆弾のタイマーを遅らせるってわけだ。……そいつは俺たち向けの泥臭い仕事だぜ」

風間がニヤリと笑って納得する。

「ええ。ですがその代わり……今回はこれまでのような『点』の強襲作戦にはなりません。何日、あるいは何週間にも及ぶ、過酷な『面』の制圧戦になります」

拓也は、機窓から見える雲海を見つめながら、静かに口を開いた。

「俺の『深層言語・限定解析』の視界レンジにも限界がある。中枢へ辿り着くためには、樹海の中にいくつものキャンプを設営し、ジリジリと安全圏を確保しながら進むしかない。……皆さんに、多大な負担をかけることになります」

広大な未知の樹海を開拓する、途方もないスケールの遠征エクスペディション

「負担だなんて、そんなこと言わないでください。私たちはそのために、こうして一緒にいるんですから」

瀬戸玲奈が、拓也の肩に優しく手を置いた。

「長期戦なら、私の治癒と結界が一番役に立つはずです。……美味しい野戦食の作り方も、母からしっかり教わってきましたよ!」

「ハッハッハ! そりゃあ楽しみだ! 泥水すすって野宿するより、可愛い嬢ちゃんの手料理が待ってると思えば、バケモノどもを狩るモチベーションも上がるってもんだぜ!」

頼もしい大人たちの笑顔に毒気を抜かれ、拓也もふっと柔らかい笑みをこぼした。

『――皆様、まもなく当機はブラジル・マナウス郊外の「連合防衛線フロント・ライン」へ到着いたします。降下の準備をお願いします』

パイロットからのアナウンスが響く。

輸送機が高度を下げ、雲海を抜けた瞬間。

四人の視界に飛び込んできたのは、息を呑むような「絶望の光景」だった。

眼下に広がる大地。そこにあるはずのアマゾンの緑豊かなジャングルは跡形もなく消え去り、代わりに**「赤紫色の不気味な植物群」**が、まるで蠢く内臓のように大陸を覆い尽くしていた。

そして、その赤紫の樹海の境界線――膨張を食い止めようと人類が築き上げた巨大なコンクリートと魔力防壁の壁が、地平線の彼方まで延々と続いている。

ゴォォォォォォォッ!!

壁の向こう側では、無数の火柱が上がり、爆発音が絶え間なく響いていた。

先行して到着している日米同盟軍、そして地元の南米探索者たちが、休む間もなく増殖して壁を越えようとする『暴食の樹海』を相手に、文字通り血みどろの防衛戦を繰り広げているのだ。

輸送機が防衛線の内側に設けられた巨大な軍事基地へ着陸すると、タラップを下りた四人を、むせ返るような熱気と硝煙の匂いが包み込んだ。

「よく来てくれた、日本の英雄たちよ!!」

喧騒の中、重低音のような声と共に一人の男が歩み寄ってくる。

身長二メートルを優に超える褐色の巨体に、全身の筋肉を覆うように刻まれた緑色の魔力刺青。背中には、彼自身の背丈ほどもある巨大な戦斧を背負っている。

「俺は南米探索者協会のギルドマスターにして、この防衛線の総司令官を任されている『カルロス・リベラ』だ。……アンタたちが、三つの特異点をぶっ壊したっていう極東のバケモノ部隊だな?」

カルロスが、値踏みするように四人を見下ろす。その視線は、特に陣形の中央に立つ小柄な眼帯の少年に向けられていた。

「如月拓也です。……状況は?」

拓也は、歴戦のSランク探索者であるカルロスの威圧感を前にしても、一切表情を変えずに淡々と尋ねた。

「……ハッ。なるほど、レオンの野郎がベタ褒めするわけだ。度胸が据わってやがる」

カルロスは獰猛な笑みを浮かべ、背後の巨大な防壁を親指で指し示した。

「見ての通り、最悪だ。あの赤紫のクソ植物どもは、燃やしても斬っても数分で再生しやがる。今のところ、同盟軍の圧倒的な火力でなんとか防壁の『外』への延焼は食い止めてるが……連中、地中深くにも根を伸ばしてきやがる」

カルロスは厳しい顔つきになり、懐から一枚のデータパッドを取り出した。

「これまでに、偵察を兼ねて数十のAランクパーティを樹海の『内部』に突入させた。……だが、生還率はゼロだ。一人たりとも戻ってきちゃいねえ」

その言葉に、神宮寺と瀬戸の顔に緊張が走る。

「あの樹海は、生き物だ。侵入者を感知すると、地形そのものを変化させて退路を断ち、幻覚胞子や寄生植物を使って獲物を確実に『消化』しにくる。……俺たちも、今のところ外縁から1キロメートル以上先の中の様子は、まったく掴めていねえんだ」

地図すらない、生還者ゼロの無限の魔境。

それが、第五魔卿アスタロトの創り出した『暴食の樹海』の真の恐ろしさであった。

「……問題ありません」

拓也は、眼帯の下の右眼にスッと青い魔力を通し、巨大な防壁の向こうで蠢く赤紫の瘴気を静かに見据えた。

「道がないなら、俺の眼で作ります。カルロス司令、まずは俺たち四人が突破口を開き、樹海内部の3キロ地点に最初の『第一キャンプ』を設営します。同盟軍はそこを中継地点として、物資の運搬ルートを確保してください」

たった四人で、生還者ゼロの死地に飛び込み、安全な拠点を作り上げるという常軌を逸した宣言。

だが、少年のその冷徹で確かな響きに、カルロスは一瞬言葉を失い、やがて腹の底から愉快そうに笑い声を上げた。

「カッカッカ! いいぜ、乗ってやるよ! アメ公や日本のお偉いさんが命を預ける『少年指揮官』の采配、とくと拝ませてもらおうじゃねえか!」

南米アマゾン、絶望の防衛線。

人類を喰らい尽くす暴食の樹海を切り裂き、安全圏を構築していく。かつてないスケールと過酷さを誇る長大な遠征作戦が、今ここに幕を開けた。

お読みいただきありがとうございます!


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