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魂喰い覚醒で最強へ成り上がるFランク少女、意識を奪う闇と共に歩む  作者: beck2026


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第十四話:水晶の巨兵と、鋼の素肌

新宿の探索者協会と武器屋での用事を済ませた三月は、

再び迷宮の薄暗い縦穴を、迷うことなく降りていた。

ヒュガアアアッ! と猛烈な風を切って落下し、

『俊敏(中)』の完璧な身体制御で、音もなく第三層の岩盤へと着地する。

青白く発光する巨大な水晶の柱が立ち並ぶ、猛毒の魔力に満ちた森。

昨日と全く同じ過酷な環境だが、

漆黒のコートを翻して歩く三月の足取りは、まるで自分の庭を散歩するかのように軽やかだった。

新しい黒のインナースーツは伸縮性に優れ、三月の極限の身のこなしを一切邪魔しない。

特殊繊維のロングコートも、水晶の破片から身を守りつつ、

彼女の気配を暗闇へと見事に溶け込ませてくれていた。

「さて、今日は……」

三月は目を閉じ、スキル『気配察知(微)』のレーダーを脳内に広げた。

(右斜め前、距離五十メートル……小さな命の気配が三つ。

 左の奥、距離百メートル……これは、群れかな)

周囲に潜む魔獣たちの位置、数、そしておおよその「強さ」が、

微かな熱のような感覚として手にとるように分かる。

今の彼女は、己の強化に繋がらないような低ランクの魔獣の魂を、

わざわざリスクを冒してまで喰らう必要はない。

三月は無駄な戦闘を避けるように、気配の薄いルートを選んで森の奥深くまで進んでいった。

しかし。

歩みを進めてから一時間ほどが経過した頃。

三月の『気配察知』が、これまでにない異質な反応を捉えた。

(……重い。なんだろう、これ)

前方、距離にしておよそ三十メートル。

そこにあるのは、生命の熱というよりも、もっと無機質で、

圧倒的な「質量」を感じさせる巨大なプレッシャーだった。

隠れる様子もなく、堂々とその場に鎮座しているような気配。

三月は足音を完全に殺し、巨大な水晶の柱の陰から、そっと前方を覗き込んだ。

「……なるほど。あれは、気配を隠す必要なんてないね」

三月の視線の先、開けた広場のような空間の中央に「それ」はいた。

身長は優に四メートルを超えている。

全身が、第三層の硬質な青白い水晶だけで構成された、巨大な人型の魔獣。

『クリスタル・ゴーレム』。

探索者協会の図鑑には、第三層の「動く壁」として恐れられていると記されていた。

その圧倒的な防御力と質量の前に、並の武器はすべてへし折られ、

魔法すらも水晶の表面で乱反射して無効化されてしまうという、難攻不落の巨大兵器だ。

ズズン、ズズン、と。

クリスタル・ゴーレムが、巡回するようにゆっくりと歩き始めた。

その足が地面を踏みしめるたびに、第三層の強固な岩盤が悲鳴を上げて震える。

(スピードはない。でも、あの硬さと重さは……今の私でも、一撃で斬り伏せられるか分からない)

だが、三月の瞳に恐怖の色はなかった。

あるのは、自らの進化した『怪力(中)』が、あの巨大な水晶の塊にどこまで通用するのかという、

純粋な探究心と、理知的な狩猟への渇望だった。

三月は深く息を吸い込み、右手に握る黒鉄の剣の柄を強く握り直す。

「……行こう」

隠れるのをやめ、三月は広場へと堂々と足を踏み出した。

カツン、とブーツが岩を叩く音が響く。

その小さな音に反応し、巨大な水晶の巨兵が、ゆっくりと首を三月の方へと向けた。

顔面にあたる部分で、二つの赤い光が不気味に明滅する。

『ゴォォォォォ……ッ!!』

地鳴りのような唸り声と共に、クリスタル・ゴーレムが三月を「排除すべき敵」として認識した。

巨体が動く。

鈍重に見えたその動きだが、一歩のストライドが大きいため、

あっという間に三月の頭上へと到達する。

丸太のような水晶の右腕が、三月を押し潰すべく、無慈悲に振り下ろされた。

空気が圧縮され、凄まじい風圧が漆黒のロングコートを激しく揺らす。

だが、三月はその場から一歩も動かなかった。

(遅い……!)

『俊敏(中)』の極限の反応速度を持つ彼女にとって、

ゴーレムの攻撃は、まるでスローモーションのビデオを見ているかのようだった。

水晶の拳が頭上から迫る。

激突するほんのコンマ数秒前。

三月は、最小限の動きで真横へと滑るようにステップを踏んだ。

ドゴォォォォォンッ!!

凄まじい轟音と共に、三月が立っていた場所の岩盤が粉々に砕け散り、

周囲にクレーターが穿たれる。

水晶の破片が散弾のように飛び散るが、三月はすでにゴーレムの懐へと潜り込んでいた。

「まずは、足元から」

三月は身を沈め、『怪力(中)』の全力を解放した。

下半身のバネと、腰の回転、そして規格外の腕力。

そのすべてを、黒く重い『魔鉄の塊剣』へと乗せ、ゴーレムの巨大な右膝の関節部分へと叩き込む。

ギィィィィンッ!!

鼓膜を破るような激しい金属音と、水晶が軋む音。

「硬っ……! でも!」

三月はさらに歯を食いしばり、強引に塊剣を押し込んだ。

どれだけ水晶が硬くとも、それを支える構造には必ず限界がある。

パキッ、バキバキバキィッ!!

圧倒的な質量と暴力に耐えきれず、ゴーレムの右膝の水晶が派手に砕け散った。

支持を失った四メートルの巨体が、バランスを崩して大きく前傾姿勢になる。

「これで、届く!」

三月は砕けた膝を足場にして、ゴーレムの身体を一気に駆け上がった。

黒いコートが空中で鮮やかに翻る。

大きく前のめりになったゴーレムの頭部。

その赤い光が明滅する「核」が存在するであろう中心部めがけて、

空中で身を捻りながら、黒い大剣を渾身の力で振り下ろした。

「砕けろぉっ!!」

ドガァァァァァァァンッ!!!

第三層の空間が揺れるほどの、壮絶な破壊音。

魔鉄の塊剣が、クリスタル・ゴーレムの強固な頭部を完全に叩き割り、

その奥に埋まっていた魔力の中枢ごと、文字通り「粉砕」した。

『ゴ、ガ、ガガガァァ……』

巨兵の全身に亀裂が走り、やがて光を失って、

その場に巨大なガラスの山のように崩れ落ちていった。

「ふぅ……」

三月は崩れる水晶の山から軽やかに飛び降り、コートの裾を払って静かに着地した。

強敵だった。しかし、今の自分の力なら、正面からでも十分にねじ伏せられる。

三月は塊剣を鞘に収め、ゴーレムの残骸の中心に両方の掌を当てた。

昨日の夜、昭雄や由美子、拓也と過ごした温かい日常の記憶を脳裏に鮮明に呼び起こす。

あの笑顔を、あの食卓を守るのだと。

そして、体内を巡る『MP』を両手に集束させ、『吸入の門』を開いた。

【固有スキル『魂喰い(ソウルイーター)』を発動します】

視界が赤く染まり、巨大なゴーレムの魂が、重く、密度の高い濁流となって流れ込んでくる。

「っ……ぐ……!」

圧倒的な質量と硬度を持った魂の圧力と、狂おしい快楽。

三月は即座に唇を噛み切り、痛みを脳に走らせる。

理性の力で必死にコントロールし、重厚なエネルギーを肉体へと定着させていく。

やがて、巨大なクリスタル・ゴーレムの残骸は完全に光の粒子となって消滅した。

【クリスタル・ゴーレムの魂の捕食を完了しました】

【身体能力が上昇します】

【スキル『堅牢(小)』が『堅牢(中)』へと進化しました】

脳内に響く冷徹なアナウンス。

その瞬間、三月の身体の奥底から、信じられないほどの強靭さが込み上げてきた。

今の彼女の皮膚や筋肉は、もはや並の鋼鉄すらも凌駕するほどの硬度と耐久力を備えている。

黒いインナースーツの下にある白い素肌は、物理的に傷つけることが不可能な領域へと至っていた。

三月は足元に転がっていた、ソフトボールほどもある巨大な黄色い魔石を拾い上げた。

間違いなく、これ一つで数十万円の価値はある。

「……よし」

魔石をポケットにしまい、三月は漆黒のコートの袖を軽く握り込んだ。

理性を保ったまま、確実に人間の枠を越え続ける少女。

「まだ、いける。もっと深くへ」

三月は、第三層のさらに奥、魔力の濃度がより色濃くなる深淵へと向けて、

迷いのない歩みを進めていった。

第十四話をお読みいただき、ありがとうございました!

新しい漆黒の装備に身を包み、再び第三層へ降り立った三月。

圧倒的な質量を誇る『クリスタル・ゴーレム』との激闘を制し、その重厚な魂を喰らうことで、ついに防御の要である『堅牢(中)』へと進化を果たしました!

黒いコートとインナースーツの下の素肌は、もはや鋼鉄すら凌ぐ硬度という、まさに理知的な「化物」へと着実に成長しています。

家族の温かい記憶をアンカーに狂気を飼い慣らし、深淵を目指す彼女の前に、次なる試練は現れるのでしょうか。

少しでも「面白い!」「続きが読みたい!」と思っていただけましたら、ぜひブックマークや**評価(↓の☆☆☆☆☆)**で応援していただけると、執筆の大きな励みになります!

それでは、第十五話でお会いしましょう!

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