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魂喰い覚醒で最強へ成り上がるFランク少女、意識を奪う闇と共に歩む  作者: beck2026
第二章:少年の探索者編

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第135話:沈黙の大書庫、編み込まれる魔の陣列

【主要登場人物・勢力まとめ】

■ 如月姉弟

如月三月(主人公): Fランク探索者を装いながら、深層で圧倒的な武力を振るう捕食者。第三十五層にて規格外の魂を『魂喰い』した代償により、魂を喪失し現在は植物状態。鉄山が運営する極秘医療施設にて厳重に秘匿・保護されている。

如月拓也(弟): 秀才の迷宮学徒。空っぽとなった姉の魂を取り戻し、救い出すために探索者となった。姉が到達した深層の地獄へ突き進み、姉を元の姿に戻すことを唯一の目的としている。

■ 家族・協力者(「護民の盾 イージス」関係)

鉄山厳: 警護組織「護民のイージス」創設者であり、凄腕鍛冶師。三月の極秘医療施設を管理・秘匿し、如月家周辺の警護や三月の装備開発を一手に行う同盟者。

如月昭雄(父): 大病から完全に回復。家族と穏やかな生活を送っている。

如月由美子(母): 三月の精神的な支え。彼女の存在と温もりが、今も植物状態の三月の生命を繋ぎ止めるアンカーとなっている。

東雲慧: 迷宮学者。三月の行動を学術的に補完・偽装する協力者。

斎藤: 「護民のイージス」所属のプロボディガード。如月家の周辺を裏から警護し、侵入者を物理的に排除している。

■ 探索者協会

セバスチャン(協会監察局長): 三月の圧倒的実力に恐怖し、敵対は組織の破滅と判断。「非敵対・腫れ物扱い」を徹底している。

佐藤結衣(受付嬢): 三月の異常な戦果を恐れつつも、事務的に応対を続ける窓口担当。

■ 拓也のパーティ(深淵攻略チーム)と装備

神宮寺蒼太(盾役): 絶対防壁**『絶氷大盾・銀嶺ぎんれい』**を操り、パーティの命を守る壁。

風間蓮(攻撃役): 極低温を圧縮して放つ**『銀牙槍ぎんがそう』**を手に、戦場を蹂躙する。

瀬戸玲奈(支援役): 冷却杖**『白銀杖・六花りっか』**を用い、過酷な環境下でもパーティを清浄に保つ。

如月拓也(指揮): 短剣**『絶理の銀刃ぜつりのぎんじん』**を装備。魔力回路の切断に特化し、戦術の核となる。

第七層の広間に静寂が戻っていた。

拓也は、敵将であるアビス・コマンダーが遺した、一際大きく黒光りする魔石を拾い上げ、リュックへと収めた。

知能と戦術を持った正規軍。第五層までの、ただ力任せに暴れ回る魔獣とは明確に異なる質の脅威だった。

「……怪我はありませんね、皆さん」

「ああ。拓也殿の完璧な指揮のおかげで、かすり傷一つない」

神宮寺蒼太が、大盾『絶氷大盾・銀嶺』に付着した魔獣の返り血を払い落としながら頷いた。

風間蓮も、軽く肩を回しながら『銀牙槍』を背中に収める。

「それにしても、嫌な空気になってきやがったな。階層を下るごとに、肌にまとわりつく魔力がドロドロに濃くなってやがる」

風間の言う通りだった。

広間の奥、第八層へと続く黒い石階段の入り口からは、目に見えるほどの『青い魔力のもや』が漏れ出している。

ただそこに立っているだけで、肺が重く圧迫され、目眩すら覚えるほどの異常な高密度空間。

並の探索者であれば、この魔力にあてられて急性の中毒症状を起こし、血を吐いて倒れてしまうだろう。

「瀬戸さん。防壁の出力は維持できますか?」

「はい。鉄山殿に打っていただいた『白銀杖・六花』が、周囲の魔力を自動で中和してくれています。……ですが、ここはまだ精々『中層』の入り口に過ぎません。それなのにこの重圧……油断はできません」

瀬戸玲奈が杖を握り直し、決意を込めて頷く。

拓也は一つ深呼吸をし、仲間たちを率いて第八層へと続く階段を下り始めた。

彼が迷宮に潜る理由は、ただ一つ。

第三十五層という途方もない地獄で、規格外のバケモノの魂を喰らい、その代償として自らの魂を失ってしまった姉・三月。

鉄山の極秘施設で植物状態となって眠る姉の『空っぽの身体』に、奪われた魂を連れ戻すこと。

(中層の入り口で、すでにこの魔力密度。……なら、姉ちゃんがたった一人で辿り着いた三十五層は、どれだけの地獄なんだ)

姉が歩んだ道のりの遠さと理不尽さを肌で感じながらも、拓也の歩みは決して止まらない。

階段を下りきった彼らの前に、巨大な両開きの木扉が現れた。

神宮寺が大盾を構えながら、ゆっくりとその扉を押し開ける。

ギギギギギ……。

「……これは、また随分と悪趣味な場所に出たな」

風間が、油断なく周囲を見渡しながら低く唸った。

扉の向こうに広がっていたのは、見渡す限り続く『巨大な書庫』だった。

天井が見えないほど高くそびえ立つ、何千、何万という本棚。そこに収められているのは、古びた羊皮紙の魔導書や、不気味な光を放つスクロールの山。

通路には青白い魔力が結晶化した埃がふわりふわりと舞い、足音すらも魔力の重圧に吸い込まれて消えてしまう。

『沈黙の大書庫』。

それが、第八層の全容だった。

「物理的な気象の脅威はありません。……ですが、空間そのものが『罠』です。不用意に本棚や床の石板に触れないでください。至る所に、高密度の魔力で編まれたトラップが仕掛けられています」

拓也は、常時起動している『深層言語・限定解析』の視界を通じて、冷や汗を流した。

青いコードの世界で見ると、この書庫の床、壁、本棚のすべてに、致死性の魔力回路(地雷)がびっしりと張り巡らされているのだ。

「なるほど、第七層の軍隊の次は、魔導の罠か。……拓也殿の眼がなければ、一歩歩くごとに爆死していただろうな」

神宮寺が、拓也の指示に従って安全なルートだけを慎重に歩む。

だが、迷宮の悪意は、ただ罠を避けて通らせてくれるほど甘くはない。

カサカサカサ……。

静寂の書庫に、微かな、しかしおびただしい数の『足音』が響き始めた。

本棚の影から、そして高い天井の暗がりから、ぞろぞろと這い出てきたのは、体長一メートルほどの巨大な蜘蛛の群れだった。

しかし、ただの蜘蛛ではない。

その腹部には不気味な魔法陣が刻まれ、八本の足の先からは、粘着糸ではなく『魔力で構成された光の糸』が紡ぎ出されている。

「熱源反応、多数! 『グリモア・スパイダー』の群れです!」

拓也が叫ぶと同時に、蜘蛛たちは一斉に光の糸を空間に張り巡らせ始めた。

それは巣を作るための行為ではない。

空中に魔法陣を『直接編み込んでいる』のだ。

「チッ、虫ケラの分際で魔法を使いやがるのか!」

風間が銀牙槍を構え、一番近くにいた蜘蛛へ向けて突きを放つ。

しかし、蜘蛛が編み上げた光の糸が障壁となり、槍の穂先が空中で弾き返された。

「物理的な糸じゃない! 魔力の防壁です!」

瀬戸が叫ぶ。

「ギチチチチ……!」

蜘蛛たちが鳴き声を上げると、空中に編み上げられた巨大な魔法陣が、赤黒い光を放ち始めた。

周囲の高密度な魔力を強制的に吸い上げ、超高熱の爆炎魔法へと変換しようとしている。このまま発動されれば、書庫の通路ごと全員が消し炭にされる。

「瀬戸の防壁でも、あの規模の魔法は防ぎきれんぞ!」

神宮寺が盾を構えながら、危機感を露わにする。

だが、拓也の『解析』の瞳は、すでに空中の魔法陣のシステム(構造)を完全に丸裸にしていた。

(編み込まれた魔法陣。三層構造の遅延発動型。……なら、システムを崩壊させる『エラー』を叩き込めばいい!)

「風間さん! 空中の魔法陣、外周にある『赤い糸』の結節点が三箇所あります! そこは防壁ではなく、周囲から魔力を吸い上げるためのポンプです! 銀牙槍で凍らせて!」

「赤い糸だな? 了解だ!」

風間が神速で跳躍し、魔法陣の外周に広がる赤い光の糸へ向けて、三度の鋭い刺突を放つ。

『銀牙槍』から放たれた極低温の魔力が、魔力吸収のポンプを一瞬で凍結させ、粉々に砕き散らした。

「ギチッ!?」

魔力の供給を絶たれ、魔法陣の構築が僅かにブレる。

「神宮寺さん! 敵が防壁(青い糸)を再構築して時間を稼ごうとします! 『銀嶺』の冷気爆発で、糸の張力を強引に弛ませて!」

「任せろ! 我が城壁は凍てつく絶対領域!」

神宮寺が前に進み出て、大盾『銀嶺』を空中の魔法陣へ向けて強烈に叩きつけた。

ドゴォォォォンッ!

盾から放たれたすさまじい冷気の衝撃波が、空間に張り巡らされた青い光の糸を急速冷却し、その柔軟性を奪ってカチカチに硬直させる。

「今です!!」

ポンプを破壊され、防壁も硬直した。

魔法陣のシステムが最も脆弱になったその瞬間、拓也は床を蹴って跳躍した。

狙うのは、蜘蛛たちが中心に編み上げていた魔法陣のコア(中枢)。

拓也は、自らの腰に帯びた短剣――魔力回路の切断に特化した『絶理の銀刃』を抜き放ち、空中の魔法陣の中心点へ向けて真っ直ぐに突き立てた。

「落ちろッ!!」

パキィィィンッ……!!!

『絶理の銀刃』の刃が、魔法陣のコアコードを完全に切断する。

システムに致命的なエラーを引き起こされた魔法陣は、発動することなく自壊し、光の粒子となって書庫の空間に霧散した。

「ギ、ギギッ!?」

自らが構築していた巨大な魔法が逆流し、グリモア・スパイダーたちは自らの魔力ショートに耐えきれず、次々と破裂して黒い魔石へと変わっていった。

「……ふぅ。クリアです。魔力の供給路を絶ち、防壁を硬直させ、中枢を断つ。完璧な手順デバッグでした」

拓也は短剣を鞘に収め、空中で霧散していく魔力の残滓を見つめながら息を吐いた。

「ハッ! どんなに複雑な魔法を組もうが、指揮官殿の眼の前じゃただの絡まった糸クズだな!」

風間が笑いながら、床に転がった魔石を拾い集める。

「しかし、恐ろしい階層だ。敵の個体能力ではなく、この環境の魔力密度を利用して即死級の陣列を組んでくるとは。……拓也殿の指示がなければ、我々は魔法の餌食だった」

神宮寺も、周囲の静寂を取り戻した本棚を見渡しながら警戒を解かない。

「ええ。ですが、どんな理不尽な罠が待っていようと、俺が全部見破って道を開きます」

拓也は、見えないほど高くそびえる本棚の奥を見据えた。

ここはまだ、精々中層の入り口。

空っぽになってしまった姉の魂を奪い返すための戦いは、まだ始まったばかりだ。

凡人の少年は最強のプロたちと共に、沈黙に満ちた大書庫のさらなる奥へと、揺るぎない足取りで進んでいくのだった。

第135話をお読みいただきありがとうございました!

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