表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魂喰い覚醒で最強へ成り上がるFランク少女、意識を奪う闇と共に歩む  作者: beck2026
第二章:少年の探索者編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
116/162

第116話:過保護なき揺籃(ようらん)、死線で踊る刃

【新生パーティ & 司令塔】

如月きさらぎ 拓也たくや

本作第二章の主役。秀才の迷宮学徒。昏睡状態となった姉・三月を救うため、高校受験という平穏な未来を捨てて探索者となった。姉を「最初から完璧だった別次元の天才」と神格化しており、その裏にあった血反吐を吐くような苦労を知らない。凡人である自分が一歩でも近づくため、プロの技術を貪欲に貪り喰おうと死線を駆ける。

神宮寺じんぐうじ 蒼太そうた

鉄山が手配した、日本の最高峰を誇るプロ探索者。パーティの前衛(盾)を担う。聖職者のような穏やかな雰囲気を纏うが、その実力は圧倒的。拓也を過保護に隠し守るのではなく、実戦を通じて一人前の探索者へ「育てる」ため、完璧な盤面統制で戦場をコントロールする。

風間かざま れん

パーティのアタッカー(槍)。不敵な笑みを絶やさない、超一流の技量を持つ青年。神速の槍術で敵を蹂躙する。ぶっきらぼうながらも拓也の貪欲な成長意欲を認めており、戦闘中も実践的な指導を容赦なく叩き込む。

瀬戸せと 玲奈れな

パーティの回復・支援の要(杖)。慈愛に満ちた瞳をした女性。高度な魔力循環サポートと治癒魔法で拓也の安全を担保し、戦いの中で昂る彼の精神を冷徹なまでに安定させる。

【如月家(家族)】

如月きさらぎ 三月みつき

本作の主人公。Fランクを装う深層の捕食者。家族の平穏を守るためなら全てを蹂躙する圧倒的な実力を持つ。現在は魔力枯渇による休眠(植物状態)に陥り、鉄山の極秘施設へと移送されている。

如月きさらぎ 昭雄あきお

拓也と三月の父親。かつては大病を患っていたが、現在は完全に回復。自力で歩き、食卓で笑い合えるまでに健康を取り戻した。一家の大黒柱として、命を懸けて家族を守ろうとする拓也の覚悟を認め、苦渋の決断の末に彼を送り出す。

如月きさらぎ 由美子ゆみこ

拓也と三月の母親。三月の最大の精神的な支えであり、彼女の温かい家庭と手料理が、怪物化しつつある三月の人間性を現世に繋ぎ止めている。子供たちが世界の裏側へ巻き込まれていくことに心を痛める。

【同盟者 & 協力者】

鉄山てつやま げん

『黒鉄堂』店主。国宝級の鍛冶師であり三月の同盟者。三月の身柄を協会の魔手から守り抜き、拓也の覚悟に応えて最高峰のパーティと専用の防備を手配した。

東雲しののめ けい

迷宮学者。三月の規格外な戦果や偽装工作を、学術的見地から隠蔽・サポートする協力者。

斎藤さいとう

警護組織「護民の盾イージス」のプロボディガード。如月家の平穏を脅かさぬよう、その周辺を裏から完璧に警護している。

【探索者協会】

セバスチャン

探索者協会の監察局長。三月の真の実力と、その奥にある底知れない「狂気」にいち早く気づき、恐怖している。協会が彼女の逆鱗に触れて滅ぼされないよう、「非敵対・腫れ物扱い」を組織内で徹底させている。

佐藤さとう 結衣ゆい

探索者協会の受付嬢。Fランクのはずの三月が持ち帰る、あまりにも異常な戦果と冷徹な雰囲気に恐怖を抱きつつも、プロとして事務的に応対を続けている。

現代の新宿。その華やかな摩天楼の地下深く、一般の人間が決して近づかない一画に、世界で唯一の迷宮への入り口は存在していた。

防魔隔壁の向こう側から漏れ出てくる空気は、ひどく冷たく、そして肌を刺すような濃密な魔力を孕んで澱んでいる。

「……ここが、姉ちゃんの戦っていた場所」

如月拓也は、鉄山から授かった銀光を放つ短剣の柄を握り締め、小さく息を吐いた。

数日前まで、自分は机に向かって教科書や対策問題集を開いていたただの受験生だった。だが今、その背中にあるのは学徒のリュックではなく、鉄山が突貫で仕上げてくれた軽量の防魔インナースーツと、家族を救うという狂気的なまでの決意だけだ。

自生する発光苔の青白い光によって、不気味なほど静かに照らされた迷宮の第一層。坑道の冷え切った空気を吸い込みながら、拓也は一歩一歩、その暗闇を進む。

「――拓也殿。ここからが、君の本当の教育トレーニングだ」

最前線を歩く神宮寺蒼太が、重厚な大盾を微動だにせず構えたまま、低く、しかし驚くほど落ち着いた声で告げた。

その直後、薄暗い坑道の奥から、発光苔の光を反射する無数の赤い眼光が浮かびあがった。

ガルルルル……と、地を這うような低い唸り声。

姿を現したのは、成犬ほどの大いさを持つ灰色の魔獣――『グレーウルフ』の群れだった。正面に五匹、そして拓也の鋭い視線が捉えた天井の岩の亀裂に、息を潜めて奇襲を狙う隠密個体が三匹。計八匹の群れ。

普通の初心者であれば、この数に圧倒され、恐怖で足が竦む局面だろう。

だが、鉄山が選りすぐった日本の最高峰のプロたちにとって、第一層のウルフなど、一瞬で消塵にできるただの雑魚に過ぎない。彼らが本気を出せば、拓也が武器を構える暇すらなく戦闘は終わる。

しかし、彼らがここにいる理由は、拓也を過保護に守るためではなかった。

彼らの目的は、拓也を一人前の探索者として「育てる」ことだ。

「蓮、天井の三匹を叩き落とせ。殺すなよ、体勢を崩すだけでいい」

神宮寺の冷静な指示に、アタッカーの風間蓮が不敵に口角を上げた。

「へっ、分かってるよ。坊主! よく見てろ、これがプロの間合いと肉体の使い方だ!」

風間の身体が、爆発的な踏み込みとともに弾丸のような速度で翻った。

彼の背にある長槍の先が、流れるような神速の三連突きとなって空気を切り裂く。それはウルフの命を奪う突きではない。跳躍しようとした魔獣の関節と前足を正確に弾き、その行動自由を奪うための極小の精密攻撃だった。

キャン、と短い悲鳴を上げて、天井から奇襲を仕掛けるはずだった三匹のウルフが、無様に地面へと叩きつけられ、その場に転がった。

それと同時に、正面から突っ込んできた五匹のウルフに対し、神宮寺が静かに大盾を地面へと突き立てた。

「聖なる盾よ、我らを護れ――『プロテクション』!」

神宮寺の詠唱とともに、半透明の強固な魔力の防壁が、拓也たちの周囲を完璧に遮断する。正面の五匹がどれほど鋭い牙を剥き、爪を振るおうとも、日本の最高峰の盾が展開した防壁は、髪の毛一本分の侵入すら許さない。魔獣たちの突進は完全にその勢いを止められ、衝撃で体勢を大きく崩した。

完璧な盤面の統制。敵の攻撃力はゼロにされ、逃げ道すら塞がれている。

しかし、プロたちは追撃を行わない。神宮寺も風間も、あえて一歩を引き、拓也のために道を空けた。

「拓也殿、前へ」

後方から、調律杖を握る瀬戸玲奈の、慈愛に満ちた、しかし厳格な声が響いた。

「私が魔力循環をサポートします。身体強化の感覚を掴んでください。……目の前の敵を、貴方の刃で討ち取るのです」

瀬戸の杖から放たれた淡い光の粒子が、拓也の防魔インナースーツへと吸い込まれていく。瞬間、拓也の全身の細胞が沸き立つような、圧倒的な身体能力の底上げ――『魔力身体強化』の感覚が、脳髄へとダイレクトに伝わってきた。

(守られているんじゃない……。みんな、俺に戦い方を教えるために、この場を作ってくれているんだ!)

拓也は、秀才の迷宮学徒として頭の中に叩き込んってきた膨大な知識を、急速に回転させた。

グレーウルフの弱点は、眉間のやや下、魔力の結節点。あるいは、体勢を崩した瞬間の喉元。

(姉ちゃんは、鉄山さんが『深層を一人で蹂躙していた怪物』と評するほどの存在だ。きっと、こんな浅層の魔獣なんて、最初から一瞥するだけで吹き飛ばすような、圧倒的な才能を持っていたんだろう。……だけど、俺にはそんな理外の才能はない。凡人の俺が姉ちゃんに追いつくには、ここで死に物狂いでプロの技術を貪り喰うしかないんだ!)

鉄山の言葉から、姉を「最初から完璧だった別次元の天才」だと神格化し、その裏にあった泥臭い『魂喰い』での覚擁や、Fランク時代に味わったはずの本当の血反吐を吐くような苦労を、拓也はまだ何一つ知らない。知らないからこそ、凡人としての強い焦燥感が、拓也の背中を強烈に押し出した。

「――ハァッ!」

拓也は迷うことなく地を蹴った。

瀬戸の支援によって引き上げられた俊敏性が、少年の身体を未体験の速度で前方へと押し出す。

踏み込み、腰を落とし、鉄山が打った銀光の短剣を、ウルフの喉元へとまっすぐに突き立てた。

確かな肉の抵抗、および骨を断つ手応え。

魔獣が短い断末魔を上げて光の粒子へと崩壊していくのと同時に、拓也の身体に、敵の命を奪ったという生々しい感覚が刻まれる。

「いい踏み込みだ、坊主! だがまだ腰が高い! 次の個体が起き上がる、左からの反撃を想定して短剣を逆手に持ち替えろ!」

風間の鋭い指導の飛び交う声が、坑道に響く。

拓也は言われた通り、息を荒くしながらも瞬時に短剣を逆手に持ち替え、体勢を立て直した。

床を転がっていた別の個体が牙を剥いて飛びかかってくるが、その軌道は、神宮寺の目に見えない魔力圧によって、すでに拓也の正面へと限定されていた。

(見える……。敵の速度も、筋肉の収縮も、全部頭の中のデータと噛み合っていく!)

ただの机上の空論だった迷宮学が、プロたちの完璧なコントロールによって、拓也の血肉へと昇華していく。

鋭い牙をすれすれでかわし、すれ違いざまにウルフの脇腹へと短剣を深く、正確に引き裂いた。

ザシュッ、と確かな手応え。二匹目が沈む。

「素晴らしい適応力です、拓也殿。その調子で、魔力の残量を意識しながら、呼吸を止めずに」

瀬戸の優しい声が、戦いの中で昂る拓也の精神を、冷徹なまでに安定させる。

神宮寺が盾で敵を抑え、風間が攻撃の軌道を示し、瀬戸が安全を担保する。

この一連の戦闘は、プロたちによる贅沢すぎる「マンツーマンの実戦授業」だった。

数分の後、八匹のウルフの群れは、その大半を拓也自身の手によって完全に駆逐されていた。

最後の一匹が光の粒子となって消え去り、静寂が坑道を支配する。

拓也は、血に濡れた短剣を握り締めたまま、激しく肩を上下させていた。全身から汗が吹き出し、筋肉が悲鳴を上げている。だが、その瞳に宿る光は、戦闘前よりも遥かに鋭く、強靭なものへと変貌を遂げていた。

「ハァ、ハァ、ハァ……ッ!」

ただ守られるだけの足手まといでも、後ろから指示を出すだけの学者でもない。

自分の手で魔獣を屠り、命のやり取りのリアルを身体に刻み込んだという圧倒的な経験。それこそが、拓也が今、何よりも欲していた「強さ」の種だった。

神宮寺が盾を収め、満足そうに、しかし畏敬の念を僅かに込めて拓也を見つめた。

「……驚いたな。初めての実戦で、蓮の槍の軌道を見て即座に自分の踏み込みへと応用するとは。拓也殿、君の成長速度は、私たちの予想を遥かに超えている」

「ケッ、合格点だな」

風間が槍を背中に戻し、不敵に笑いながら拓也の頭を乱暴に撫で回した。

「ただ後ろで震えてるだけのガキなら、いくら鉄山のおっさんの頼みでも連れて歩く気はなかったが……お前、貪欲に俺たちの技術を盗もうとしてるな。その意気だ。1層の雑魚で基本を完璧に身体に叩き込め。すぐに次の階層へ行くぞ」

「お疲れ様でした、拓也殿」

瀬戸もまた、杖を胸元に抱えながら、慈愛の笑みを深めた。

「貴方が強くなろうとするその強い意志が、魔法の浸透率を何倍にも跳ね上げています。……お姉様を救うための力、ここで確実に掴み取りましょうね」

「皆さん……ありがとうございます」

拓也は、自分の手がもう震えていないことに気づいた。

天才である(と本人が誤解している)姉・三月の背中を追い、その領域に一歩でも近づくために。

日本の最高峰のプロたちの背中を見て、その技術を貪欲に吸収し、誰よりも早く「育つ」こと。それこそが、自分がこの深淵を生き抜き、姉ちゃんを必ず現世へと連れ戻すための、如月拓也だけの唯一の戦い方だ。

「よし、身体のブレは取れたな。指揮官殿、次のエリアの索敵とルートの指示を頼むぜ」

風間の言葉に、拓也は力強く頷いた。

「はい。……次の分岐は右です。魔力の澱みが薄い、安全な育成ルートを確保します。行きましょう」

ただの受験生から、急速に脱皮していく少年の探索者。

姉・三月を救い出すための過酷な旅路。拓也は仲間たちの確かな庇護の元、自らの足で、迷宮のさらなる暗闇へと力強く踏み進んでいった。

第116話をお読みいただきありがとうございました!

少しでも面白い、続きが気になると思ってくださった方は、ぜひページ下部から**【評価やブックマーク】**をお願いいたします!

皆様からの評価が執筆の大きな励みになります。どうぞよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ