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ターニングポイント 外岡士郎と天羽家の初陣  作者: 房総半島
第三章大名達の登場
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第五十九話

決戦の地・八幡原へ

信一は一呼吸置き、重々しく言い放つ。

「では、虎太郎、疾風殿、優…共に軍を率いて八幡原で金崎を迎え討つぞ!」

疾風と優は声を揃えて叫ぶ。

「はい‼」

川中島の風が、戦の始まりを告げるように吹き抜けた。


 天羽軍と金崎軍とは決戦の地川中島に向かった。この川中島は金崎家と不動家の領地の間にあり中心に三本の川が流れている盆地ある。川中島の中心から東に不動軍の陣営となっている海津城がある。

 不動軍陣営では温泉に家臣と共に浸かっている不動信一の元に伝令が

「お屋形様、金崎軍が遂に動き始めました」

「そうかぁ、やっと動いたかぁ、敵兵の数は」

「ざっと一万三千にございます」

 不動信一は兵の数を聞いてビックリして

「一万三千⁉、我らより七千も少ないのか」

 周りにいた家臣達が

「我ら最強の騎馬軍団を舐めてるのか金崎は!」

 騒ぎ立てる家臣達に不動信一は低い声で

「一旦落ち着け」

 この一言で家臣達は静まり返った。

「先に上がる。虎太郎、疾風殿、優、大ついて来てくれ」

「はい」 

 不動信一は家臣で二つ年下の三十五歳でやんちゃな顔つきの弟の虎太郎、家臣の四十代でイカツイ顔の武士疾風と武士疾風の息子で金髪の賢そうで名前の通り優しそうな顔をしている士郎と同い年の武士優と優の家臣で背が小さく人懐っこそうな顔の大を自室に連れて行った。

「金崎軍はここ海津城に必ず攻めてくる、ここで籠城すれば兵の少ない金崎軍など返り討ちにできると思っているが四人はどう思う」

「一か月も前から海津城で待機をしていた兵達は戦はまだかとイラだっています。ここで籠城を選択すれば士気は下がり家中は分裂する可能性があります」

 虎太郎の言葉に疾風も乗っかるように

「ましてや俺達最強の騎馬隊が馬鹿にされたのに決戦を挑まないとなればお屋形様を臆病者だと思い離反する者が相次ぐと思う」

 不動信一は顔をしかめながら

「ってことは決戦を挑めって事か」

「はい」

「しかし、金崎は戦の天才だ。そんな相手とまともにぶつかって大丈夫か?」

 疾風が

「お屋形様は慎重過ぎます。我らは最強の騎馬隊なんですよ、蹴散らしてやりましょうよ!!」

「虎太郎はどう思う」

「俺が付いていますよ。それに不動家は日ノ本一最強の騎馬隊もいる金崎家などビビる相手ではないと思います」

「俺、金崎なんか弱いと思ってます。俺の部隊だけでも金崎家を崩壊させられますよ」

 呼んでもいないいきなりの二十歳の自信過剰な少しナルシスト気味の信一の甥っ子、虎雲の登場に信一は少し戸惑いながら

「虎雲、何でここにいる?」

「軍議をするんだろうなと思い来ました」

 信一は少し嫌な顔をしながら

「そっかぁ」

 虎雲は信一が嫌な顔をしてることなどまったく気がつかず

「俺の部隊が先鋒を務め、金崎家を蹴散らして来てまいります」

「勝手な事をしてはならぬ、虎雲には海津城の守りを頼みたい」

「嫌です!!海津城の守りなどもっと無能な奴に頼むべきです。俺みたいな優秀な奴は前線で戦い手柄を立てさせるべきです」

 虎雲の言葉に虎太郎はイラつき

「お前!!お屋形様の意見に逆らう気か!!」

「やめろ、虎太郎」

虎太郎は信一の言葉を聞いておとなしく黙る。

 信一は虎雲を優しい口調で諭すように

「城を無能な奴に任せて落とされたら、敵に勢いづかせ壊滅の原因にもなりえない。今回の戦海津城の守りこそがこの戦の勝敗を握ると言っても過言ではない。だからその重要な任務を一番優秀な虎雲に任せたいんだ」

「そんな、重要な役目なら俺にしか出来ない、じゃあ俺に任せてくれ」

「てめぇ!!調子ってんじゃねぇぞ!!」

 怒る虎太郎を信一は制しながら虎雲の手をがっちり両手で握って

「ありがとう、本当に頼むよ」

「はい」

「大」

「はい」

「お前も海津城に残ってくれ」

「えっ!」

「海津城は今回の戦のカギを握る大事な場所だ。虎雲の言う事をしっかり聞いて虎雲の手伝いをしろ」

「はい」

 不動信一は一呼吸おいて

「じゃあ、虎太郎、疾風殿、優共に軍率いて八幡原で金崎を迎え討つぞ!!」

 疾風と優は声を揃えて

「はい」

 と答えた。

信一は一呼吸置き、重々しく言い放つ。

「では、虎太郎、疾風殿、優…共に軍を率いて八幡原で金崎を迎え討つぞ!」

疾風と優は声を揃えて叫ぶ。

「はい‼」

川中島の風が、戦の始まりを告げるように吹き抜けた。

不動信一は静かに大を呼び寄せた。

「大、本当はお前も連れて行きたかったんだが…あいつを一人にしておくとろくなことをしない。虎雲の見張りとして、お前を残す。しっかり頼むぞ」

「なるほど、そういうことでしたか。わかりました」

信一の言葉に、大は深く頷いた。

 八幡原・不動軍の進軍

不動軍は海津城を出て、八幡原へと進軍。広大な原野に陣を構え、決戦の準備を整える。

その情報が金崎のもとに届くと、彼女は即座に動いた。

「よし、皆さん。今から妻女山に向かいますよ」

家臣達は驚き、声を上げる。

「妻女山は裸山です!包囲されたら終わりですよ!」

金崎は家臣の肩をポンと叩き、笑みを浮かべる。

「不動信一は慎重な男。絶対に勝てると思った戦しかやらない。だから、私が圧倒的不利な状況にならないと、決戦にはならないんですよ」

そう言って、金崎はグビッと酒を飲み干した。

「しかし…不利な状況で、最強の騎馬隊に勝てるんですか?」

「勝てますよ。私は毘沙門天の化身ですから」

家臣は不安げに尋ねる。

「殿、まさか酔っぱらってるんですか?」

金崎は笑顔で答える。

「私は酒は飲みますが、酒に飲まれたことはありませんよ」

そして、また一口。家臣たちはその姿に、さらに不安を募らせるのだった。

 海津城・虎雲の暴走

「金崎軍、妻女山に陣取った模様です!」

「そうか、なら今から俺らは攻め込むぞ!」

「虎雲様、ダメです!海津城の守りを任されているんです!」

「勝手なことじゃない!これは好機だ!」

「好機でも何でもありません!軍律違反です!」

「うるさい!臆病者は籠ってろ!俺が最強の武将だって証明してやる!」

虎雲は大の制止を振り切り、兵を率いて妻女山へと進軍。

「皆の者!我ら虎雲軍の存在感を示すため、大声で敵を威嚇しながら進め!」

「はっ!」

怒号が山を揺らす。

 妻女山・金崎軍の逆襲

その怒号を聞いた金崎軍と天羽軍。

経丸が金崎に耳打ちする。

「敵が攻めて来ますね」

「奇襲かと思いきや…怒号を上げて来るとは」

「山の上から迎え討ちますか?」

「いや、反対側からも敵が来るはずです」

凛が鋭く言う。

「挟み撃ちですね」

士郎が慌てて叫ぶ。

「先生!最強の騎馬隊に挟まれたらヤバいじゃないですか!」

金崎は落ち着いた声で言う。

「士郎君、作戦通りですよ」

「どういうことですか?」

「今から敵の怒号と逆方向に山を下る。そしてその勢いのまま、不動軍本陣に攻めかかる」

「二手に分かれた不動軍に、我ら連合軍が一点突破で襲いかかれば…不動武虎の首を取れる!」

皆の目に光が宿る。

「ここからは時間が勝負です。一気に攻めかかりますよ!」

「はい!」

天羽・金崎連合軍は、山を駆け下りた。風を切り、地を揺らし、戦の火蓋が今、切られようとしていた。




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