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ターニングポイント 外岡士郎と天羽家の初陣  作者: 房総半島
第二章大士家の戦い
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第四十七話

数日後、ぴーが駿河から届いた手紙を手に、麒麟――大士のもとへ駆け寄った。

「おい、駿河から手紙が来てるぞ」

「おっ、ぴー君ありがとうございます」

 手紙の差出人は、南平家の当主・南平亮輔だった。

 手紙の内容には

「麒麟様、忠清様、元気にしていますか?こちらはよく飲み会を開いて親睦を深めている所です。今度尾張の八坂家と戦をする事になりました。その為、麒麟殿も軍勢を率いて出陣してください。戦の詳細をお話したいので南平館までお越しください。よろしくお願いします。南平亮輔」

 大士は手紙を読み終えると松風の部屋に向かった。

 大士は松風に手紙を見せて

「忠清殿、明日南平館に向かう。留守をお願いしたい」

「誰を連れて行くつもりか?」

「わっしーとぴーと剣真君」

「若手に戦の経験をさせるって事か」

「そうです、せっかくなので」

「わかった!留守は任せろ‼気を付けて行けよ」

「ありがとうございます」

 

 翌日の朝大士は鷲雪とぴーと剣真を連れて南平館に向かった。


 南平館

「殿、お久しぶりです」

 南平は満面の笑みで

「おう、よく来たな!よく来たな‼待ち遠しかった今夜そなたと飲みかわす為に上等な酒用意してあるからな」

「ありがとうございます」

 その横で、側近の飯岡が苛立ったように強い口調で

「殿、下らん話は後にしてもらっていいですか」

「おう、すまぬすまぬ」

 飯岡は表情を引き締めて

「いいか!此度は格下八坂家と戦う。敵の大将八坂翔平はまだ、家督を継いで一年も立っていないと言う。それにうちの殿と同じ大バカ者と言われている。敵としては最弱だ!ボコボコにするぞ‼」

「おう‼」

 家臣たちが口々に士気を上げる中、南平亮輔の顔にはどこか浮かない影がさしていた。

 飯岡は続けて命じる。

「麒麟、お前は先陣切って速やかに鷲津砦と丸根砦を落とせ」

「はっ‼」

「その二つが落ちたのを合図に我ら本軍は進軍を開始する‼」

「はっ‼」

 飯岡は大士に詰め寄り

「麒麟、てめぇ失敗は許されねえからな‼」

「そうだぞ、死ぬ気で成功させろよな‼」

飯岡と白井の冷たく鋭い言葉に、鷲雪と剣真は肩を震わせ、怒りを堪えていた。

そこでぴーがいきなり立ち上がり大士と飯岡の間に割って入って

「てめぇ‼俺の殿になんて口の利き方してんだ‼」

「おい、なんだこのチビ助は‼」

 ぴーは飯岡を睨みつけながら

「おい、話を変えるな‼その態度・・・」

 大士がぴーの口を抑える。

大士は堂々と

「皆様方のご期待に応えるよう大士軍は必ず任務を成功させます‼」

 と言って深々と頭を下げた。


 会議が終わるとぴーは大士に詰め寄り

「おい、なぜあんな言いたい放題言われてるのに怒らず頭を下げるんだよ‼あんな奴ボコボコにしちゃえよ‼」

 ぴーは感情的になり思わず涙がボロボロと零れる。

 ぴーの涙に皆、驚く。

 ぴーは感情的にいつもと違い大声で

「あんな奴にあんな奴に殿がバカにされるなんて許せない・・・許せない・・・あいつらぶっ殺してやる‼」

 大士はぴーを力づよく抱きしめ優しい口調で

「そこまで俺の為に怒ってくれてありがとう」

「別にお前の為に怒ってるんじゃねぇし・・・あいつらがムカつくだけだし」

 大士は優しくぴーの頭をなぜる。

 鷲雪は目を真っ赤にしながら

「殿がバカにされて悔しいのはピーだけじゃないですよ。私もホントに悔しくて堪えるので精一杯でした」

 剣真が冷静な口調で

「俺も危なかったです。もう少しで刀を抜くとこでした」

 剣真の言葉にぴーが大声で

「抜けよ‼あんなの斬り捨てろよ‼何で躊躇したんだ‼」

 大士はぴーの両頬を軽く引っ張り

「やっぱり、鷲雪ちゃんの言う通り、可愛い顔してますね」

「てめぇ、ぶっ殺してやる‼」

 ぴー以外は思わず笑う。

 大士は優しい口調で

「皆に悔しい思いをさせてしまい申し訳なかった。でもね、戦前に家臣は一つにならないと家臣同士が揉めてる場合じゃないんだ‼」

「でも!あいつらはクソすぎる‼」

 剣真もぴーに同調するように

「そうですよ、ぴーさんの言う通りですよ」

 大士はゆっくりと頷きながら、語りかけた。

「私にあれこれ言って、彼らの気が済むのならそれでいいんですよ。言い返すのではなく、結果で見返すそれが、大士家のやり方にしましょう」

 そして静かに

「だからお願いします、三人とも今回の任務協力してください」

 鷲雪は泣きながら

「当り前じゃないですか、私は絶対にこれ以上麒麟様に恥をかかせませんから」

 ぴーが

「しかたねぇ、あいつらムカつくから今回は本気で戦ってやるか‼」

「僕も戦いますよ」

 剣真はニヤニヤしながら

「ぴーさんってホントはめちゃくちゃ殿の事好きなんでね」

 ぴーは剣真を睨みつけ

「剣真、そこに直れ斬り殺してやる」

 剣真はニヤニヤしながらからかうように

「あぁ~ムキになっちゃって」

「俺はまずあいつ(剣真)を殺すことにしました」

 剣真はニヤニヤしながら

「ごめんなさい~やめて~」

 鷲雪がぴーを捕まえて両頬を軽く引っ張りながら

「ぴー、暴れるなら怖い夢見させるよ‼」

 ぴーは強気に

「なんだ怖い夢ってそんなんでビビるわけないだろ‼」

 鷲雪は意地悪い口調で

「寝てる時にいきなり顔を水がたっぷり入った桶に沈めようかなぁ~」

「お前、本気でやりそうだからなぁ~やめてそれは」

「じゃあ、暴れないの」

「チェッ‼」

 と舌打ちを打つ。

 大士は三人のやり取りを見て微笑んだ。


南平亮輔の部屋

「悪いな、急に呼び出してしまって」

 大士は笑顔で

「いえいえ、お呼ばれとても嬉しいですよ。もっと頻繁に呼んで頂ければもっと嬉しいんですけど」

 南平は笑いながら

「おっ?お世辞が上手くなったか(笑)」

「私がお世辞を言えるほど器用な人間だと思っておられるんですか(笑)」

「そうだな、不器用なお前だから、俺は遠慮なく本音を話せるんだもんな(笑)」

 大士はお酌をしながら静かに

「今日は何でもお話しください」

「ありがとう」

 南平は一度、盃を見つめ、それから言った。

「実はな、俺今回の戦乗り気じゃないんだ」

「あぁ、やっぱりそうなんですね」

 南平は少し驚いたように顔を上げた。

「わかる?」

「ええ。殿が明確な理由もなく他国に攻め込むなんて、どう考えても不自然ですから」

 南平は、苦笑いしながら寂しげに

「今回の戦にはこちらに正義は全くないんだよ」

「しかし、飯岡殿と白井殿の考えは尾張の国がうつけの当主に変わったばかりで今なら商業的にとても豊かな尾張を簡単に手に入れられると思ったからの出陣ですよね」

「そうだ、それはわかるけど、わかるけどあまりに卑怯ではないかと、ここは同盟を結び尾張の若い当主を支え、共に発展していく道を選ぶのがいいと俺は思ってるんだが」

 大士は優しい口調で

「・・・殿は優しすぎますね」

「そうか」

「ええ。殿のような方がもっと多くいれば、この世はもう少し平和になっていたでしょうに」

 南平はふっと目を細めた。

「俺は、当主に向いてないよ。農業をやってる時が一番心が落ち着く。やりがいもある。あの時間が、俺にとっての幸せなんだ」

「向いてないとは思いませんが、確かに畑で土に触れている殿の顔は、本当に楽しそうです」

「はぁ~、当主の子として産まれてこなければ俺は幸せだったのかなぁ~」

 二人は盃を口にする。しばらく間が空いてから

「殿、辛い当主なんて辞めちゃいましょうよ。飯岡殿に譲っちゃえばいいんですよ」

「えっ⁉えっーーーーー⁉」

 驚く、南平に対して大士はキョトンとした顔で

「どうしたんですか?そんな驚かれて」

 南平は苦笑を交えながら

「何か、大士の事だから頑張ってくださいとか励まされると思ってたから。まさか辞めちゃえばいいなんて言われると思ってなかったから」

 それに対して大士は、いつものように優しく、そしてまっすぐに語った。

「そうですか、私は殿が必死に当主を全うしているお姿を見ていたのでそのお方が辛いとおっしゃられているので頑張ってくださいとかそんな無責任な事口が裂けても言えません」

 真剣な眼差しで

「もう十分頑張られました。だから、もうやめてもいいと思います。別の幸せに向かっていいと思うんですよ」

 と続けると

 その言葉に、南平は思わず目を潤ませながら

「おい、おい、そんな事言うなよ‼泣いちゃうだろ」

 大士は空になった南平の盃を見てゆっくりお酌する。。

「人生一度きりですよ、嫌な事を無理やりやるくらいなら辞めちゃえばいいんですよ」

 南平は目頭を押さえながら、笑った。

「……はは。よし、じゃあこの戦が終わったら、隠居して農業でもやるか。畑に囲まれてのんびり生きていくってのも、悪くないよな」

「いいですね、時々お手伝いさせてください」

 南平はその言葉を聞いて、満面の笑みを浮かべた。

「麒麟は本当にいい奴だな」

 大士は笑顔で

「殿の優しさを受け継ぐよう必死に努力してますので(笑)」

 二人は笑い合い楽しく飲み明かした。






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