第四十五話
岡崎城城主になった麒麟に忠清が
「まずは家臣を集めないと」
「確かに」
鷲雪が
「岡崎城の前に立札でも立てますか?」
鷲雪のことばに大士は
「素晴らしい案ですね。そうですね!そうしましょう」
松風は慌てて
「おい、そんな事したらろくでもないのとか入って来るかもよ」
「そんなの面接すればいいじゃないですか」
「そうですよね、まずは募集ですよ」
と鷲雪もにこやかに賛同した。
大士と鷲雪は張り切って岡崎城の前に立札を立てた。
「家臣募集中!経験不問!どなたでも歓迎!※戦で討死する可能性はありますが、みんな優しい人たちです。」
松風はその内容を読んで頭を抱える。
「ホントにこんなので来るのかよ.。来たとしてもまともな奴は来ないだろ」
大士は真っすぐな目で松風を見て
「松風殿、私面接してみたいんですわがまま聞いてくれませんか?」
「ずりぃなぁ」
と松風は呟く。
「ずりぃなぁ?」
と聞き返す大士に松風は
「何でもないよ」
大士は張り切って
「まずは面談会場を整えましょう」
「私が質問等するので麒麟様は上座で大きくどんと構えていてください」
「おう」
「俺は?何すれば」
鷲雪が
「来た方にお茶を出したり話しやすい雰囲気を作って寄り添ってください」
「俺の仕事大変じゃね?」
鷲雪は上目づかいで松風の右手を両手で優しく包み込むように握って
「優しい、忠清様にしか出来ない仕事です。どうか頼まれてくれないですか?」
松風は優しい口調で
「鷲雪ちゃんの頼まれごとを俺が断わるわけないでしょ」
鷲雪は笑顔で
「ありがとうございます」
その数刻後。門前に立札を見たという少年が、ずかずかと面談会場に現れた。童顔で背は低く、可愛らしい顔をしているが、態度はどこか偉そうだった。
「表の看板見て来た」
鷲雪が軽く一礼しながら応じた。
「応募者の方ですね。今すぐ準備しますので、少々お待ちください。」
三人はすばやく持ち場に着く。大士は上座に、鷲雪は質問係として前に立ち、松風は無言でお茶を準備し始めた。
少年は、ためらいもなくその場であぐらをかいた。
「私が麒麟様の家臣鷲雪です。こちらの方も麒麟様の家臣の忠清様そして上座にドンと座られておられるのが我らの主麒麟様でございます」
「ほう~」
「お名前を伺ってもよろしいでしょうか」
少年は偉そうな口調で
「まだ、あなた方を信用出来てないんで名乗るはやめとく」
松風が
「お前!鷲雪ちゃんが丁寧に言ってるのになんて態度だ‼」
鷲雪は優しい口調で
「忠清さん、寄り添いですよ。寄り添い」
と諫める。
松風は男に近づき、めちゃくちゃ睨みつけながら
「お茶を入れて来る。」
鷲雪は淡々とした口調で
「じゃあ、名前はないのでぴーと呼ぶことにします」
ぴーは少し怒りを含んだ口調で
「はぁ?ダサい呼び方するなよ」
鷲雪は淡々とした口調で
「名乗らない人には仕方がないと思いますが」
「まぁ、じゃあ、ぴーでいいけど」
「意外と素直なんですね」
ぴーは少し怒りを含んだ口調で
「はぁ?」
鷲雪は流し、淡々とした口調で
「ぴー君は何で麒麟様の家臣になりたいのかな?」
「まぁ、俺自身たいして身分も良くなく、変な働き口に着くぐらいなら武士になった方がましかと農民より稼げそうだし」
「なるほど、確かに身分が低いから敬語も使えないので頭も良くなさそうですもんね」
ぴーは少し怒りを含んだ口調で
「はぁあああ?」
鷲雪は淡々と
「戦となると死ぬ可能性もあります。死ぬ覚悟を持って戦に望むことは出来ますか?」
ぴーは吐き捨てるように
「別に人生に希望持ってるわけじゃねぇし。いつ死んでもいいやって思ってる」
鷲雪は淡々とした口調で
「捨て駒に最適と」
「はぁ?」
ピーは先ほどより更に怒りを含んだ口調だったが鷲雪は淡々とした口調で
「討死は自己責任となっております。その辺は後で文句言わないように」
「言えねぇだろ!死んでんだから‼」
鷲雪は淡々と
「確かに死人に口なしって言いますもんね」
「やかましいわ‼」
と強くツッコむ、ぴーに対して鷲雪は淡々とした口調で
「もし大士家が窮地に陥ったらどのように対応しますか?」
「それは、上の責任だろ、俺に対応するすべなんかねぇ、やめて別の所で働くだけだ」
「人質適正ありと」
「おい!」
そのやりとりを見ていた大士は、楽しげに笑った。
「殿、どうしますか?」
「うむ、採用します」
ちょうど戻って来た松風は驚きのあまりピーの頭に熱いお茶を落とし
「えっ!採用」
「アッツ‼アッツ‼」
ぴーは畳の上でのたうち回る。
鷲雪は慌てて
「大丈夫ですか!大丈夫ですか‼」
「背中さすんなくていいから冷たいもん!冷たいもん持ってこい‼」
松風はのたうち回るピーを見て大笑いしながら
「なるほど、面白枠で採用って事ね!」
ピーは松風を睨みつけながら
「てめぇ!ぶっ殺してやる‼」
大士は一切、ぴーの動きに関与せずまったりと飲み物を飲んでいると
「おい、そこの!人がのたうち回ってるのになにゆったり茶をすすってるんだ‼」
麒麟はゆったりとした口調で
「お茶じゃ、ないですよ。富士山の雪解け水ですよ」
「おーい‼それよこせ‼」
「飲みたいんですか」
「違うっ!冷やしたいんだよ!」
水を桶に入れて戻って来た鷲雪に
「麒麟様に生意気な口を聞いてはいけません」
と言われ扇子でおでこを叩かれる。
ピーは立ち上がり
「こいつら許せん‼」
麒麟から雪止め水を奪って自分の頭にかける。
「ふぅ~熱かった」
と、ぴーが安堵した瞬間、鷲雪がぴーの頭を掴んで桶に沈める
ぴーは慌ててジタバタする。
大士は驚き松風は大笑いする。
鷲雪がピーの顔を桶から出すと
ぴーはゲホゲホ咳き込みながら
「死ぬ!死ぬ!何でこんな事するんだ‼」
鷲雪は淡々とした口調で
「やけどを舐めちゃダメだよ、ちゃんと冷やさないと」
「言って!やるなら‼いきなりは溺れるから‼それに俺、水苦手だから‼やめて‼」
鷲雪は明るい口調で
「わかった!以後気を付けるよ‼」
大士はぴーに右手を差し出す
「何だよ?いきなり」
「これからよろしくって握手ですよ」
「嫌だね」
大士は不思議そうな顔で
「えっ?なんですか?」
ぴーは強い口調で
「当り前だろ!熱湯ぶっかけられて扇子で叩かれ水の中に沈められて溺れさせられたんだから」
鷲雪がピーのオデコを叩いて
「言葉遣い!」
ぴーはオデコを抑えながら
「俺、帰る」
大士が真顔で
「それは筋通ってなくないですか?」
ぴーは怒りを含んだ口調で
「はぁ?」
「自分から大士家で働きたいって言って来て、働きもせずやっぱやめるは筋が通ってないと思いますけど」
「いや、今日で分かった。ここにはろくな奴がいないって事が」
大士は真剣な口調で
「わかるわけないですよ。今日一日じゃ、一緒に一年働いて見て、それでも嫌ならやめればいいと思いますけど、今やめるのは筋も通せないだたのやな奴ですよ‼」
ぴーはイラだった口調で
「うるせぇな!わかった、一年働いてやるよ!でもな、一年で必ずやめるからな‼いいかそれで‼」
大士は笑顔で
「はい、それでお願いします」
「後な、俺に敬語期待すんなら俺が尊敬できる人間になれ。そうじゃなきゃ俺は絶対に敬語使わねぇからな‼」
鷲雪が慌てて
「麒麟様、申し訳ございません。ぴー君、後でしっかり教育します」
大士は笑いながら
「いいですよ。敬語なんか使わなくて、私はぴー君の素直なところが素敵だと思います。これからも思った事ははっきり口に出せばいいじゃないですか」
ぴーは大士の右手を乱暴に掴んで
「まぁ、お前物分かりは良さそうだな」
大士はニコッとして
「頼みますよ。ぴー君」
松風は
「麒麟は甘すぎんだよ、俺だったらこんな奴一回ボコボコにしてから再教育するけどね」
ぴーは松風を睨みつけながら
「おい、お前熱湯かけた事しっかり謝罪しろよ」
「熱湯をかけた件はすまなかった」
と言って松風は頭を下げた
「まぁ、しっかり謝ったから許してやるわ」
鷲雪はぴーに近づきぴーのほっぺをツンツンしながら
「もしかして、ぴー君ってツンデレだろ」
「はぁ?何言ってんだ、お前」
鷲雪はぴーの頭をなぜながら
「うわぁ~よし、よし、可愛い、可愛い」
「やめろ、子犬みたいな扱いすんじゃねぇ!」
鷲雪はぴーの両頬をつねって
「うわぁ~可愛い、可愛い」
ぴーは呆れながら
「だるい、だるいって」
松風が
「こいつまんざらでもねぇぞ、鷲雪ちゃんの手を払ったりしないもん」
ぴーは松風の脛を蹴って
「当り前だろ、男が女に暴力振るうなんて最低な事するわけないだろ‼」
「こいつ、俺の脛は蹴りやがって」
「お前は男だろ」
鷲雪はぴーの顎の下を触ったりしながら
「ぴー君は女の子には優しいなんて紳士でいい子だね」
「何言ってんだ。女の子って年齢じゃねぇだろ」
ぴーの発言でその場が凍り付く。
鷲雪はぴーの首をゆっくり絞めながら冷静な口調で
「今、なんて言いましたか?もう一度言う勇気ありますか?」
ぴーはあまりの恐怖に
「すみません。今のは完全に僕の失言でした。許してください」
鷲雪はぴーの頭を優しくなぜながら
「わかればいいのよ」
「ぴー君、ただお姉ちゃんはまだ十八歳だからね。まだ、女の子ってギリ言える年齢なの」
「あっ!四つしか変わらないんですね。もう少し・・・」
鷲雪はぴーの両頬を強く引っ張りながら
「何?今何言おうとしましたか?」
「お姉ちゃんは・・・」
「お姉ちゃんは?」
「お姉ちゃんは若くて綺麗ですね」
鷲雪はぴーの頭を乱暴になぜながら
「よく言えました!よく言えました。偉いです、偉いです」
鷲雪は満面の笑みで
「麒麟様!なんか私に可愛い弟が出来たみたいです」
「良かったね。ワッシー」
松風は吐き捨てるように
「鷲雪ちゃん、そいつ可愛くないよ。めっちゃ生意気だよ」
ぴーは松風だけに見えるようにあっかんべぇーをすると
「あぁ!こいつ舌出しやがった。こいつ‼」
「ぴー君、そんなことしたの?」
「したよ、こいつが俺の事生意気って言うから」
「めっ!そんな事しちゃだめ!忠清さんすみません。私が責任もって教育しますので」
「鷲雪ちゃん、面倒見切れなかったら俺に言いな。厳しい教育するから」
「ありがとうございます。その時はお願いします」
松風に頭を下げる鷲雪に対してピーは少し強い口調で
「おい!お前最後まで投げ出さすしっかり俺を教育しろよな!途中で投げ出すって筋通ってないからな」
鷲雪はぴーの頬をグリグリしながら
「えっ!そんなに私に教育して欲しいんだ!やっぱりぴー君可愛い」
「うるせぇ!筋を通せって言いたいだけだわ」
こうしてぴーは大士家に仕えることになった。




