第四十二話
岡崎城を出ると松風が優しい口調で
「美味いもんでも食いに行くか」
大士が
「いや、今日は剣真君も連れて家に来てくれませんか?」
「えっ?大士の家に?」
「妻が松風殿にお礼をしたいって張り切ってって戦勝報告が終わったら家にご招待して欲しい言って言われてますんで」
松風はめちゃくちゃ嬉しそうな顔で
「いいのか‼」
「はい、是非」
大士と松風は松風の家によって剣真を連れて大士の家に向かった。
「ただいま~」
「お帰りなさい」
「ちゃんと松風殿と剣真殿も連れて来ました」
美鷹は膝を付き
「この前の戦本当にありがとうございました。松風様は命の恩人です」
と頭を下げると
「いや、命の恩人だなんて私は何も」
「いや、松風殿が共に戦ってくださらなかったら麒麟様は死んでましたから」
松風は照れ臭くなって少し笑いながら
「大袈裟ですよ」
十歳の可愛らしい顔をした少年剣真は元気よく
「この度は私までお食事にお招きいただきありがとうございます」
美鷹は笑顔で
「凄く礼儀正しいお方ですね。心からお待ちしておりましたよ」
松風は剣真をからかうように
「普段こんな事言わないからぎこちないでしょ(笑)」
「父上‼」
美鷹は優しい口調で
「そんな事ないですよ。立派な挨拶でしたよ」
松風がパッと剣真の右手を取ると
「あっ、父上‼」
松風はニヤニヤしながら右手のひらを美鷹に見せて
「ほら、手に書いてたんですよ(笑)」
剣真は恥ずかしくて少し怒りを含んだ口調で
「父上‼」
「普段父上なんて呼ばない癖に父ちゃんって呼ぶのにな‼」
美鷹は優しく剣真の頭をなぜながら
「一生懸命覚えてきてくれたんですね。ありがとうございます」
松風はニヤニヤしながら剣真をからかうように
「この短い言葉を手に書かないと覚えられないとは・・・」
剣真はグッと松風を睨みつける。
美鷹は優しい口調で
「これ以上剣真殿をからかうようでしたら食事抜きに致しますよ」
松風は慌てて
「えぇ‼俺命の恩人じゃないんですか‼」
美鷹は笑いながら優しい口調で
「冗談です。たくさん食べて行って下さい」
家に入ろうとした時剣真はわざと思いっきり松風の足を踏んだ
「いてぇ‼」
と叫ぶ松風を見て皆で笑った。
松風は笑いながら激しく剣真の頭をなぜた。
そして、囲炉裏を囲んで食事が始まった。
美鷹が用意した料理は、戦場での粗食とは違い、心を満たす温かいものばかりだった。
•玄米と香ばしい焼き魚——戦での疲れを癒す、滋養たっぷりの一品。
•山菜の味噌汁——味噌の香りが広がり、心まで温まる。
•焼き餅——剣真が頬張る姿に、場は和やかになる。
大士は自分の膝の上に抱えている晴虎を見て頬を指でツンツンしながら
「可愛いなぁ~、寝ちゃったか」
松風が
「麒麟、いい顔してんなぁ~」
大士は照れ臭そうに
「ありがとうございます」
「ホントに地獄から天国に来た顔してるよ」
大士は優しく、寝ている晴虎の頭をなぜながら
「もう、しばらくはこの幸せに浸らせて欲しいですよ」
「そうだよな・・・」
二人の会話を聞いて美鷹は思わず涙する。
剣真が松風を見上げて言った。
「父上、戦ってどんな感じなのですか?」
松風は苦笑し、子どもたちの前では語るべきことと語らぬべきことを考える。だが大士は微笑み、
「剣真君、戦は厳しいが、こうして帰ってきて、家族と食卓を囲める。それが何よりの勝利だ」
と静かに答えた。
食事は穏やかに進み、剣真は満腹になると眠そうに目をこすった。大士と松風は、互いに視線を交わす——戦場では感じられなかった心の安らぎが、ここにある。
今夜は戦ではなく、ただ家族として過ごす夜——それこそが、真の勝利の証だった。
ここ大樹寺の広間で
黒髪ロングの美しく品のある女性美鷹は透明感ある優しい声で
「ここ読める人」
元気いっぱいの少女鷲雪八歳は大きな声で右手を挙げながら
「はい!読めます」
鷲雪は元気いっぱいに本の内容を音読する。
鷲雪が読み終えると美鷹は笑顔で
「いいね鷲雪ちゃん、ちゃんと勉強してるね」
鷲雪は褒められて笑顔で
「はい!ありがとうございます」
授業が終わると美鷹の迎えに大士が晴虎を抱えながら来る。
「今日もお疲れ様です」
「お迎えありがとう」
美鷹は晴虎を優しくなぜながら
「晴ちゃんいい子にしてた?」
大士は晴虎に優しい口調で問いかけるように
「いい子にしてましたよねぇ~」
晴虎はニコニコして美鷹の右手人差し指を掴む。
美鷹は幸せそうな顔で
「偉かったねぇ~晴ちゃん」
そうして三人は帰って行く。
その姿を陰から見ている鷲雪は
「いいなぁ。美鷹先生は綺麗で美しくてそれにあんなカッコイイ大士殿とお付き合いされてて」
「私も美鷹先生みたいになりたいなぁ~」
と呟く。
そして鷲雪も帰ろうとすると後ろから
「おい、お前」
と言っていきなり右腕を引っ張られる。
鷲雪は驚きながらも右腕を引っ張った年上の男の子を睨みつけ
「何よ!いきなり」
鷲雪は年上の男の子達に囲まれ
「お前、おなごの癖に生意気なんだよ」
「何が?」
「おなごの癖に読み書きができるのが生意気って言ってるんだよ」
「何でよ!おなごが読み書き出来るのの何が悪いって言うのさ」
「こいつ!おなごの癖に言い返しやがる!生意気だ‼こんな生意気なおなご退治してやる」
年上の男の子達が鷲雪に暴行を加える
「やめて!やめてよ‼」
「生意気なおなごは世の中の悪じゃ‼」
「そうだ!そうだ!」
皆で寄ってたかって鷲雪を袋叩きにしているとたまたま忘れ物を取りに戻って来た美鷹が
「何をやってんの‼」
「こいつが生意気だから退治してんだ」
「そうだ!そうだ‼」
美鷹は迷わず飛び込み鷲雪に覆いかぶさって鷲雪を守りながら
「やめなさい!やめなさい‼」
後から駆けつけて来た大士を見ると男の子達は暴行を止め、一斉に逃げ出していった。
美鷹は優しい口調で
「大丈夫?怪我はない?」
鷲雪は笑顔で
「大丈夫、あいつらのへなちょこ攻撃なんか痛くも痒くもない」
大士は鷲雪の頭を優しくなぜながら
「おっ、強いおなごだ。かっこいいぞ」
鷲雪は顔を真っ赤にしながら
「かっこいいなんて初めて言われました」
「ごめんね、先生が見てないとこであんな事になってたなんて」
鷲雪は真っすぐな目で美鷹を見て
「ううん、先生は悪くない!私、美鷹先生が好きで美鷹先生に褒められたくて勉強してきたんだ。だから今日本を読めたの」
美鷹は思わず鷲雪を抱き締め
「頑張ったんだね、偉い本当に偉い」
「私は頑張るよ!あんな奴らに負けないんだから」
大士が
「みっちゃん、どうだろう今日頑張った鷲雪ちゃんに夕飯ご馳走しないか」
美鷹は笑顔で
「そうね、じゃあ和尚さんに言わなくちゃ」
鷲雪は興奮気味に
「えっ!えっ!美鷹先生の家に行っていいの⁈夕飯ご馳走になっていいの⁉」
美鷹は笑顔で
「うん、もちろん」
「やった!やった‼」
三人は大士の屋敷に向かった。
たくさんのご馳走を目の間に並べられた鷲雪は目を輝かせながら
「凄い!凄い!こんなにもたくさんの料理いっぺんに見るの初めてです」
美鷹は笑顔で
「そう、今日は鷲雪ちゃん頑張ったから奮発しちゃった」
「私の為にありがとうございます」
大士は優しい口調で
「お礼を言いたいのはこっちだよ。鷲雪ちゃんが頑張ったおかげで俺までこんなご馳走にありつけるよ」
美鷹は笑顔で
「よかったねぇ~キーちゃん」
大士は笑顔で
「うん、よかった」
三人は笑い合った。
その日から美鷹は鷲雪を連れ帰る事が多くなった。




