第二十九話
横たわっている片倉の横で士郎は泣きながら
「おい、片倉さん、起きろ!まだ死ぬのは早いぞ‼」
士郎が泣いている横で凛は泣きじゃくりながら
「片倉さん!死んじゃ嫌です‼死んじゃ嫌です‼」
ひのは凛の背中を優しくさすりながら
「片倉さん、死んでないですよね。生きてますよね!元気ですよね‼」
河野は大声で
「片倉さん、死なないでください‼僕まだ片倉さんと一緒に遊んだりしたいです‼」
稲荷は黙って見張りをしている。
経丸は片倉の手をギュッと握って
「片倉さん、私には片倉さんが必要です」
そう言って涙を流す。
経丸の涙が片倉の頬に落ちる。
片倉は小さい声で
「俺はあの日誓ったんだ!どんなことがあっても大切な人は守ると‼」
皆は目を丸くして驚く。
「かっ、片倉さん‼」
「殿、なぜ泣いておられるのですか!殿を泣かした奴はどこの輩ですか成敗いたしましょう」
士郎が泣きながら
「あんただよ」
とツッコむ。
経丸は片倉を抱き締め泣きながら
「片倉さんが死んじゃったと思ったじゃないですか‼」
片倉は優しい口調で
「これから天羽家は更に楽しくなっていくのに死んでられないですよ」
経丸は更に抱きしめる力が強くなり
「ホントによかった!片倉さんが死ななくて」
「とっ、殿痛いです。少しお力がお強いです」
経丸は慌てて
「あっ、すみません」
皆、笑う。
「殿、千崎はどうなりました?」
片倉の問いかけに経丸は片倉に向けて満面の笑みを向ける。
片倉は安堵の表情を浮かべ、そして涙をボロボロとこぼす。
士郎は経丸に
「勝ち鬨を上げましょうよ!経丸さん‼」
「そうですね!」
片倉は力ない声で
「待ってください殿!俺が勝ち鬨を上げるよ」
「えっ!」
驚く経丸の横で士郎がツッコむように
「何、無茶言ってんだ!瀕死の状態の癖に‼」
片倉は微笑みながら
「士郎君、こんな状態でこんな冗談言える俺、面白いだろ」
士郎は片倉に向けて親指を立て
「根性あるね」
片倉は少し落ち込みながら
「面白いって言ってよ~」
河野が真顔で
「片倉さん何が冗談だったんですか?」
河野の言葉に片倉は凄く悲しそうな顔をする。
皆はそれを見て笑う。
「今回の功労者片倉さんを胴上げしますか?」
片倉は力ない声で
「殺す気ですか~」
片倉の発言に士郎は一人高笑いする。
経丸は怯えた感じで
「発想が恐いです」
ひのは経丸の後に隠れながら
「士郎さんって悪魔ですね」
凛は煽るように
「兄貴、恐い~恐い~」
士郎は慌てて
「冗談だよ‼冗談だよ‼」
皆、笑い
経丸は笑いながら
「わかってますよ。士郎さん」
「よかったぁ」
と士郎が安堵の表情を浮かべると河野は士郎に向けて親指を立てて
「根性あるね」
士郎が
「やかましいわ!」
とツッコミ皆が笑った。
次の日、士郎達は焼け焦げになった館山城にいる。
河野は大声で
「すげぇ、黒焦げになりましたねぇ」
士郎が慌てて
「バカ!余計な事を言うな!河野‼」
経丸は炭を握り潰して両手を河野に見せながら笑顔で
「ホントですね、河野さん!真っ黒です‼」
「すげぇ‼すげぇ‼真っ黒だ‼」
経丸は明るい口調で皆に
「ワクワクしませんか」
士郎は経丸の言葉に戸惑いながら
「えっ?城が燃えたのに落ち込むじゃなくワクワクする?」
「一から私達の最高の城が作れるんですよ」
士郎は感心した口調で
「その前向きさ、凄いです」
経丸は笑顔で
「皆さんがいる限り天羽家は最高ですから‼」
経丸の言葉に皆、拍手する。
経丸は照れ、顔を少し赤らめながら頭を下げる。
士郎は両手を叩いて「パン」と音を鳴らして
「おっし!長経様の仇も討てたし、豪勢な食事会しようぜ‼」
経丸は目を輝かせながら
「いいですね!士郎さん」
「おっし!決まりばぁやんに頼むか」
そのタイミングで遠くから
「お~い士郎」
と言ってばぁやんが走って来る。
「おっ!ばぁやん走るなよ。八十五だろ転んで怪我したら大変だぞ‼」
ばぁやんは息を切らしながら
「食事の準備が出来たよ。冷めないうちに皆で食べに来なさい」
「えっ!準備してたの‼」
ばぁやんは士郎の肩を優しくポンと叩いて得意げに
「当たり前でしょ、あんたの考えてることなんかおばぁちゃんはわかってるんだからね」
「ばぁやん!それは最高過ぎるって‼」
経丸は目を輝かせて
「是非、いただきましょう」
士郎達は走って行く。怪我が治ったばかりの片倉だけゆっくりばぁやんの手を引いて食事会場に向かって行った。
士郎達はばぁやんが用意した食事会場に着き
たくさんの刺身や焼き肉が山ほど用意されていた。
士郎は驚き
「すげぇ!ばぁやん!こりゃやりすぎだって‼」
経丸は目をまん丸くして
「いつも凄いですけど、今日はより一層凄いです‼」
ひのが
「こんなすごい料理食べていいんでしょうか?」
凛はひのの肩をポンと優しく叩いて笑顔で
「言いに決まってんじゃん!私達の為に作ってくれたんだから‼」
稲荷は小さな声で
「美味そう」
と呟く。その横で河野が大声で
「エッグー‼エッグー‼」
ばぁやんの手を引いて遅れて来た片倉は食事を見てばぁやんに
「凄い、あなたは料理の神様ですか?」
ばぁやんは嬉しそうに
「そんな事言ってくれるの。嬉しいわぁ~私、料理の神様かも」
と言って笑いながら片倉の肩を優しく二、三回叩いた。
片倉も笑った。
ばぁやんが
「さぁ、皆!食べて食べて‼」
各々席に着き
経丸の掛け声で
「では、皆さんいただきます」
「いただきます」
士郎は豪華な食事を食べながら隣の席の経丸に
「経丸さん」
「何ですか?」
「天羽家最高だね‼」
経丸は笑顔で
「そうですよね!」




