風呂上がりの情報収集
2話です。
桜井さんはまだまだズレます。
よろしくお願いします!
風呂を二人で上がり、お茶を出してリビングのソファに向かい合って座った。俺はパジャマに、桜井さんは2枚目の全く同じスーツを着た。
「うーんと…なんで俺は監視されてるんです?」
まずここ聞けなきゃ無理。理解できるかは分からないけどね。
桜井さんがお茶を喉に通し、ひと呼吸置いてから、ゆっくりと口を開いた。
「伝えられません」
お茶飲む前に言えよ。
「なんでなの?」
「いかなる状況でも蓮司様の監視理由について言及することはできません。それ以外なら例外を除きお答えできます」
ますます怪しい。
「じゃあ親に電話するからね!?」
俺はスマホを取り出し母親に電話をかけた。繋がった。
「もしもし?お母さん?なんか変な監視員来てる!どうしたらいい!?通報!?」
『あ、蓮ちゃん?久しぶりね〜!最近学校はどうなの!?彼女できた?体育祭はどんな感じ?あとあと!』
「いいから!」
『…A.H.Aの桜井ちゃんでしょ〜!?色々あって蓮ちゃんの監視を頼んだのよ!私たちが帰国するまで監視お願いしてあるからね!』
俺は訳が分からなくなった。母親までそっち側かよ。「A.H.Aってデカい組織じゃないの!?そんなこといいの!?脅されてない!?銃口向けられてないよね!?」
嫌な予感しかしない!
『大丈夫!あの娘いい子だから!じゃ、これからお母さんとお父さんは二人で本場のハンバーガー食べてきま〜す!』
ブチッ。なんの電話だったんだ…桜井さんのことを知ってるのか?訳分かんねぇ…なんで一般家庭の親がA.H.Aとかいう超デカい組織に依頼できるんだろうか…
できる質問はあるんだっけ。俺はテーブルの真ん中に置いてあるバスケットからクッキーを取り、齧りながら質問をした。
「じゃあ〜好きな食べ物は何ですか?」
無意味。でもいいや、なんでもいいから情報だけ知りたいと思った。
「好きな食べ物ですか…」
お、流石にこれはいけそう。なんだかんだ好きな食べ物って聞くの楽しいよね。
「特に無いです」
じゃあなんで「…」つけたんだよ。何を考えてたんだ。
「強いて言うなら…レーションです」
レーションって軍隊の戦闘食だよね?ミリタリーオタクでも言わないだろ。ヤバい人じゃねぇか。撃たれないか不安だ。
好きな食べ物を聞いたところで何も得られないと思ったので、ちゃんと情報収集になりそうな事を聞いた。
「どこに住んでるんですか?」
また即答で
「伝えられません」
聞ける質問と聞けない質問の区別がムズいな…
と悩んでいると桜井さんが皮の鞄から紙を取り出した。
「こちらが報告書です。目を通してみてください」
お、規約とかのやつ?桜井さんから受け取った報告書を10秒ほどで軽く目を通してみた。
そこには監視の規約、桜井さんの実績、学歴、なんかめっちゃ載ってた。
すげぇな。主席特別監視官だってよ。なんだよそれ。
『監視員は、対象者の生存および安全確保を最優先とし、いかなる状況下でも対象者の指示へ服従する義務を負う。
睡眠時以外、いかなる場合でも対象者から目を離さないこと(例外規定なし。入浴、更衣、排泄の各プロセスにおける同伴監視の徹底)。』
って書いてある。
とにかくルールとしては、どんなときでも桜井さんが俺を監視するんだな。
嫌すぎる。逃げたすぎる。でも桜井さんが凄すぎるから多分逃げれない。
テロ止めてるしCQCらしいし。兵器かよこの女。
でもお母さんは桜井さんのこと知ってるし、多分襲われることはない。味方だと思う。
そこで俺が気になったのは桜井さんの学生時代の通知表の評価だった。
「めちゃくちゃ色々実績がある…成績もすごいな…体育も5だし、腹筋割れてます?」
ノンデリかもしれないが、体育が好きなのに体育で5は取ったことがないので言っちゃった。
「うぅ…」
え?どうした?照れたんだけど。褒められるの弱いのか。
桜井さんは服を着ているのに腹筋の辺りを両手で隠す。なんか俺悪いことしてるみたい。
「わ、…割れてますけど」
「やっぱり!俺なんか全然で、筋トレも続かないし…すごいんですね!」
俺は着ていたTシャツをまくり上げて腹を見せてみた。いや、別に童貞でも腹筋は出せるわ!
「ほら!腹筋なんもないんです!俺って」
桜井さんが俺の腹を目が開いてるか分からないぐらい目を細めて見たが、すぐに目を逸らした。
どうしたよ。
「佐、蓮司様…早くしまってくださぃ…風邪を引いてしまいますよ…?」
あ、風呂で俺がずっとそっぽ向いてたから腹見せるの初めてなのか。うん。え?
主席特別監視官、まさかの腹フェチ疑惑が浮上した瞬間だった。
受け入れるにはまだ早い気がするが、受け入れなくてもどうしようもないと思ったので、普通にアニメを見ることにした。
テレビで今期のアニメを桜井さんと(桜井さんは俺とテレビがどちらも見えるような角度で見てる。)見ている。今は23時。眠い。
だが眠れない理由がある。
ショートスリーパーだから?年越し前だから?
違うわ。寝る時どうするんだっていう不安がめちゃくちゃあるからに決まってんだろ!
あ、もっかい報告書借りるか。俺は隣に座っている桜井さんの方に顔を向ける。
「桜井さん?報告書もう1回貸してほしい」
桜井さんが足元に置いていた鞄から報告書を取り出した。
「どうぞ」
と一言だけ発して渡してくれた。睡眠睡眠睡眠…と小声で言いながら探す。見つけた。
【睡眠時はお互いに手錠をつけるなど対策をすること。】
ふーん、嫌だなおい。寝返りうつ時、関節イカれるって。
「桜井さん?この手錠って…」
そう聞くと桜井さんはまた鞄をガサガサした。
「こちらです。鉄製ではなく特殊樹脂製なので関節を痛めることはございません」
心読まれてるわ怖。まあそれなら安心、いや手錠嫌だけどな?
「ちょっと眠いからさ…寝ない?」
「もちろんです」
寝よう。怖い。怖いことは最初に終わらせるんだよ。
いや、もう受け入れてる俺の方が怖い。寝室に向かう。
そして俺は一人暮らしなのでシングルベッドだ。
「お、俺床で寝ますよ?」
「いいえベッドで寝てください。窮屈であれば私が起きておきます」
起きておきます!?ショートスリーパーどころじゃないな寝てねぇもん。
駄目だよ、とすぐ止めた。結局二人で寝ることになった。
「蓮司様、手錠の装着の御協力お願いいただけますか?」
「うう…」
手錠を付け、二人で繋がった。
逮捕されてないとしても嫌だ!スーツの人に手錠かけられたくないだろ!…あれ?普通に流したけど桜井さん、風呂上がってからもスーツ着てない?
「さ、桜井さん!?パジャマならないの…?」
「はい。任務中はスーツを着用します」
寝る時ぐらい任務じゃなくていいでしょ。A.H.Aどんだけブラックなんだよ。
「電気を消してもよろしいでしょうか?」
スイッチが届く距離に立っている桜井さんが言った。
「いいよ…?」
電気を消し、そのまま二人でベッドに入る。何度も言うがエロくないからな?手錠を付けてる腕を二人でかがげながら寝るだけだからな。
「蓮司様、おやすみなさい」
「お、おやすみ…」
…家にいるのは全然嫌じゃないんだけど、上手くやれるのか不安。…でもずっと家で一人じゃなくなって、音が聞こえるようになるかも。
一人で家にいるのは好きじゃない。
怖いから。知らない人が来たら怖いから。
でも桜井さんが来ても全然怖くなかった。
なんだか安心してしまった。
なんでもいいかもな。なんも考えなくてもいいかも。
明日からも頑張ろう。
「蓮司様。睡眠前にトイレは行きましたか?」
「うわあああっ!?」
目を瞑っていた桜井さんが急に目を開け、と、トイレ?の確認をしてきた。
「行ってないけど…」
「行きましょう」
あ、はい。
一日目終了です。
次は朝から始まります。
小説をあまり読まないし、小説を書いたことは無かったのですが、暗中模索で書き続けます。
3話もよろしくお願いします!




