9.いつもとの違い
自宅に帰ってからも、取り消せない発言に
頭を抱えていたロゼッタ。
明日からどうしたらよいか…
結局、分からないままの見合いの行方に
モヤモヤした夜を過ごしたのだった。
ああ、今日も眠れなかった。
なんとか気持ちを入れ替えて出勤したロゼッタ。
きっと、私のの気持ちなど聞いたところで、
悲しいけれど、ハラルト特務は何も変わるはず
がない。
そう結論づけた。
職場に着くと、セシルはもう出勤していた。
「おはよう。…セシル。昨日はごめんね。
おかげで少し気分転換が出来たわ。もう大丈夫」
ハラルト特務への気持ちはセシルにも相談
出来ない…。
そう思っていると…。
「……ロゼッタ。ハラルト特務の補助なんかさっさと
やめて、もっと他の研究員のところに行ったほう
がいいよ?
こんなに頑張って仕事してるのに、『ロゼッタ、
そこに置いといてくれ』なんて…あり得ない。」
セシルは少しお怒り気味だ。
「あ…ハラルト様は仕事にしか興味が無いだけで…」
何かあったのかな。と少し気になった。
「だから、今日はコンラート様の所にいってみて?
私が代わりにハラルト特務の仕事引き受けるから。」
セシルは、何やらメラメラと燃えているように見え
る。しかも、お気に入りのコンラート様の仕事を
ロゼッタに譲ってくれた。
今日はハラルト特務に少し会いづらかったから…
助かったかも。
「う、うん。たまにはそれもいいかもね!」
そうして今日、二人はいつもと違う研究員の仕事を
する事にした。
ハラルト特務以外の研究室なんて、いつぶりかしら。
コンコン。
「失礼しますコンラート様。今日の資料を取りに伺いました」
ドアを開くと、全く違った空間だった。
コンラートの研究室は観葉植物が飾られ、センスの良
い調度品も飾られていて、居心地の良い空間になって
いた。
「わぁ~。ステキな研究室ですね!」
「あれ?ロゼッタ嬢?嬉しいなぁ。今日は
君が担当してくれるの?」
コンラートは仕事の手を留めて、ロゼッタに話しかけてきた。
「あ、すみません。お仕事中に…」
「いや、構わないよ。少し休憩しようと思っていたか
ら。何か飲み物でも?」
「あ、それなら私が…」
「いいよ、座ってて。」
笑顔でコンラートはロゼッタの為にお茶を淹れてくれ
た。
「君の仕事が早くて正確だと研究員の間で評判だよ。
もっと僕の仕事も補助を頼みたいなぁ。ハラルト
だけじゃなくて…」
ドキリ。
ハラルト特務の仕事ばかりしている事はもちろん
バレている。
「あの…。ハラルト様の所は仕事が溜まりがちなの
で…」
それは事実だ。
「そ、そろそろ仕事に戻ります。では今日はこの資料
お預かりしますね。あ、お茶。ごちそうさまでし
た。」
いつもハラルトに渡される量の3分の1程度の資料を
受け取り、ロゼッタは部屋を後にした。
※※
ハラルト特務の仕事は、大の苦手だけどロゼッタを
なんとかハラルト特務の『魔の仕事地獄』から救う
ために、今日だけは頑張らなきゃ。
きっと、ロゼッタだって他の仕事を知れば、
ハラルト特務の仕事の異常さにはっきりと
気が付かはずよ!
セシルは鼻息も荒く、ハラルトの研究室の扉を
ノックした。
コンコン。
「失礼します。ハラルト特務。今日の資料を預かりに
来ました」
まるで棒読みの様な挨拶をして、中に入るセシル。
「ロゼッタ、昨日の資料はいつになりそうだ?
できれば今日中に頼みたい。それと、この資料は…」
「ハ、ラ、ル、ト特務?!」
昨日のつづきですか?と言いたくなるような
始まりに、ストップをかけた。
「ロゼッタではありません。セシルです。」
再び、ピタリと止まり、顔を上げるハラルト。
なぜまたセシルが来たのか?という顔をしている。
「……ロゼッタは休みか?」
「いいえ」
「………。」
他の理由が思いつかないようだ。
「——ではなぜ?」
「今日は、コンラート様のお仕事を補助しています」
「………。」
外国語を聞いたような顔をしている。
「——なぜ?」
優秀な頭をもってしても、理解不能なようだ。
「なぜって、別にどなたの補助についても問題ありません
から。私達は担当制では無いですから…」
セシルはさっさと資料を受け取って、部屋を出ようと
した。
しかし…
「担当制では無いと?」
その言葉は届いたらしい。
「そうです」
「——知らなかった」
それだけいうと、ハラルトは資料を渡して、
また仕事を始めたのだった。
!!信じられない!!
セシルは資料を掴み、怒り心頭で部屋を出たの
だった。
何なの!




