10.本当の立場
セシルのおかげで、いつもと違った仕事をして
気分が少しすっきりした。
オマケに、ハラルト様の資料と違って
わかりやすくコメントがついていたり、参考に文献を
載せてくれたりしている。
これならスイスイ仕事が捗りそうだ。
「すごいわ。コンラート様が人気なのわかるわ」
自然とそう思ったロゼッタ。
でも、気になるのはハラルト様の資料——
1日遅れで積み上がっている資料を急いで仕上げる。
すると……
「全く!なんなのこの資料!」
セシルはハラルト様の研究室から戻って以降、
やや機嫌が悪い。
「セシル、ごめんね。普段ハラルト様の資料を
見ていないと、やりづらいでしょ?代わるわ」
コンラート様資料を見てしまうと、ハラルト特務
の仕事は割増賃金が欲しくなるくらいだ。
「駄目よっ。いつまでもロゼッタがやってあげてちゃ」
セシルは、怒りながらも資料をチェックしている。
それに、ロゼッタに何か言いたげに、チラチラと
目線を送ってくる。
「どーしたの?セシル」
「……信じられない事に!ハラルト特務は、ロゼッタが
自分の担当だから、この仕事をやっていると思ってい
たのよ!」
あ…なるほど。
ロゼッタも納得してしまった。
ハラルト特務が1年経って名前を覚えた理由。
それは、1年間ロゼッタしかほぼ来なかったから。
ロゼッタが3年かけて築いたと思っていた関係は
彼にとって、『担当』だった。という事。
それなのに、一歩踏み込んでしまった。
気まずさが増して、研究室にますます入りづらい。
ロゼッタは、なるべく早く資料を仕上げ、
ハラルト特務が休憩に出ている間に、研究室へ
資料を持っていこうと決めた。
コンコン。
「失礼します」
「あら?ハラルト様じゃなかったわ」
いつもの研究室にいたのは、見知らぬ若い令嬢だっ
た。




