7.気になる人
昨夜はよく眠れなかった。
ハラルト様のお見合いはどうたったのだろう。
エミリー様はどんな令嬢だったのか
どんな話をしたのか
ハラルト特務はどんな表情だったのか……
考え始めたらきりがなかった。
気がついたことにはすっかり夜が明けていた。
ロゼッタとは裏腹に、所長は朝からご機嫌に
ハラルト様の研究室をノックしていた。
所長があんなにご機嫌だなんて…
上手くいったんだわ…きっと。
書類を取りに来たフリをして入室しようか、
どうしようかと扉の前で迷っていると、後ろから
ハラルト特務が来た。
「ロゼッタ、ちょうど渡す書類がある…中に入るといい」
タイミングよく彼から声をかけられ、運よく研究室
に入室することができた。
「ん?ロゼッタ嬢も一緒か?まあいい、君も一緒に
聞くか?昨日の見合いの話」
所長なんて嫌い!
ロゼッタは、ウキウキしている所長が許せなかった
けれど、……その話の内容は聞きたかった。
「……所長、特に話すような事がありましたか?」
ハラルト特務は、淡々と答えながら机上の資料を
探している。
「君が見合いに来た事が、既に進歩だ。
とうだ?エミリーは可愛いかっただろう?
よく気が利くし、利口だ。君にぴったりだとずっと思
っていたんだ。迷う理由もないと思うが、返事は早め
に頼んだぞ」
「……ふう。はい。分かりました」
どちらともない返事をしてたかと思うと、
ロゼッタには
「これを合わせて頼む」
ど、どっさり資料を渡した。
「……はい」
いつもなら、資料の内容をパラパラと確認するけれど
今日はそんな事も気がまわらない。
膨大な仕事を恨めしそうに見ていると、
「どうかしたのか?ロゼッタ」
資料を持ったまま、動かないロゼッタに
珍しく仕事以外で話しかけてきた。
「あ、あのっ。ハラルト特務は婚約…されるのですか?」
一気に喋ってしまった。
……ああっ。仕事一筋のハラルト様に
こんな質問をしてしまうなんて。仕事に熱意のない
スタッフだと…思われたに違いないわ…。
今でも築いた信頼を…失ってしまったのかも…
今だって、ハラルト特務からは何の反応もない
ままだ。
答えなど聞けるわけがないと諦め、ロゼッタは
ドアに向かって歩き始めたその時。
「ロゼッタ…君は私が好きなのか?」
思ってもなかった質問がきた。




