6.あきらめきれない
ハラルト特務に出会って3年。
「もう、諦めなければいけないですよね…。」
ぎゅっと目をつむり、諦めきれない気持ちを
抱えて、ロゼッタは部屋を出た。
しばらくして、目覚めたハラルトは
かけられていたひざ掛けから、ほんのりラベンダーの
香りがする事に気づいた。
「ん、この香りは…ロゼッタか?」
ハラルトは、いつもハーブティーを淹れてくれる
ロゼッタから、花のよい香りがすると思っていた。
珍しく興味を惹かれ、その香りが何の植物なのか
自ら調べたのだ。
仕事中もふわりと香ると、彼女が入ってきたことが
確認しなくても分かる。
「——便利だな」
それくらいにしか思っていなかったが——。
先日の仮眠室でのロゼッタのキス。
休息時間のお茶。
そして——このひざ掛け。
いつも気づけばロゼッタがいること。
それは、
ハラルトが緻密に計算した偶然の確率を超えていた。
これ程一人の女性が関わる事はあるのか?
ハラルトの優秀な頭でも解けない謎だった。
※※
それから数日。
ハラルト特務は早めに仕事をきり上げ、
いつもより整った服装で見合いに出かけた。
ロゼッタはその様子を少し離れたところから
見送っていた。
このとろ、急にハラルト特務に近づいたように思って
いたけれど、今はやっぱりとても遠い。
数日前に頬にキスをした事が、ロゼッタには忘れら
れない思い出になった。
「とっても大好きでした。ハラルト特務……」
その日、ハラルトが研究室に戻る事はなかった。




