4.突然のお見合い
翌朝。ハラルト特務が出勤しているのを確認するために、ロゼッタは朝一番の資料を持って研究室を訪れた。
「今日の体調はいかがですか?」
「昨日は済まなかったな。助かったよ」
その一言で、今日は一日幸せに過ごせる。
「あの…頭痛に効くハーブが入ったクッキーを作って
来たので、休憩の時にどうぞ」
お裾分け程度のクッキーを、デスクの隅に置く。
「ああ…ありがとう。」
昨日は勝手にキスしてごめんなさい。
そのお詫びもあったのだ。
スタッフルームに戻り、
自分の席で資料を、再確認していると
いつになく険しい顔をしたエクトール·ヴァルシエ
所長が現れた。
(どうしたのかしら?)
ふと、目線をやったロゼッタと目が合った。
ツカツカとロゼッタのデスク前に歩み寄り、
小声で話しかけてきた。
「ちょうど良かった、ロゼッタ。ハラルトが昨日
体調を崩したとか?仮眠室の記録があったようだ
が…
知っているか?」
ロゼッタに確認するのは、ほぼ専属のように
働いているせいだ。
「…はい。昨日部屋に入ったところ、頭痛でお困りの
様子でしたので……仮眠室まで付き添いました」
それを聞いて所長は勢いよく、ハラルト特務の
研究室のドアを開けた。
バン!
「とうとう体調を崩したらしいな。ハラルト!
こんどこそは見合いをするんだ!
こんな無理な働き方をいつまでもしないで、
きちんと家庭を持って、まともな生活をするんだ
ぞ!」
日頃からハラルトの働き方を気にかけていた所長は
ついに強硬手段に出たようだ。
開きっぱなしになった扉から所長の大きな声が
漏れている。
「来週こそ、私の姪との見合いの席を設けたから、
必ず来るように。今度こそ欠席は許さないぞ!
分かったな」
「……分かっています。来週は必ず出席します」
やけに素直なハラルトに拍子抜けしたようだ。
「……よし、今回は言質はとったからな!
じゃあ、来週だぞ、忘れるなよ」
ハラルトは伯爵家の嫡男だ。
侯爵家であるヴァルシエ所長の姪なら
素晴らしい縁談だ。
しかし…ロゼッタは……
そんな!ハラルト様が結婚してしまうなんて!
先ほどまでの幸せな気分が、一気に下がった。
※※
「ねぇねぇ、ハラルト特務お見合いするのかしら?」
興味津々に笑顔を向けている。
ロゼッタだって、今聞いたばかりだ。
「所長は勧めたいようね?」
あまり興味のないフリをする。
「てもさぁ?あの氷の伯爵でしよ?
お相手の方が不憫だわ」
セシルはハラルト特務が苦手だ。
愛想がない上に分かりづらい資料指示と難しい分野
ばかりだから…。と以前話していた。
「でも……お見合いの話は、興味あるわ!」
セシルの悪い笑顔。
「そ、そこは気になるわね」
心から思った。




