25.慌ただしい日常
「ハラルト。体調は良くなったか?」
所長は朝早くから研究室で待ち構えていたようだ。
「ご心配お掛けしました」
昨日の分、早く仕事に取り掛からねばと、所長へ
の挨拶もそこそこに、席についた。
「いやいや…!君の仕事は他にも回しておいた。
それより、ロゼッタに伝えてもらった件、
なにか要望は?」
そういえば忘れていたが、要望してよいのなら
一つしかない。
「では…ロゼッタを私の専属にしてください。
あ、それと所長。ロゼッタと結婚する事にしたので
他の研究室への立ち入りは禁止です。二人きりに
なるなど、とんでもない!」
この研究室で、ロゼッタと二人きりになれた事が
どれ程の幸せだったか!
他の研究員と、そのような時間を過ごすなど、
許せるわけがない!
「な、に?結婚!!そ、それは困った!
逆に、皆からはロゼッタを曜日ごとの担当に
してほしいと……」
じんわり汗をかきはじめる所長を尻目に、
ロゼッタがそろそろここに来る時間だと確認する。
コンコン
「失礼します。ハラルト特務。今日は資料どうします
か?」
ああ……ロゼッタは今日も可愛い。
「ロゼッタ、所長にも話したが、もう他の研究室へ
行かなくていいから、私のそばにいて欲しい」
「ま、待て待てハラルト、その件は調整が必要だ!」
所長は今の展開に一番ついて来れていない。
「ハラルト特務…私、昨日他の研究室から担当割を
渡されたんです」
そう言って、ロゼッタは一枚の紙を見せた。
「研究員が10名なので……ハラルト特務は月3回
担当させていただきます。」
は?
「ロ、ロゼッタ。君は淋しくないのか?」
あり得ない!10日に1回しか担当に来ないなんて!
「昨日、ハラルト特務の気持ちがよくわかって…
安心して仕事出来ると思ったんです。もうヤキモチ焼かずに、他のスタッフがハラルト特務を手伝っても
大丈夫です!」
満面の笑み。ああとても可愛いい。
その笑顔が私にだけ向けられて幸せだ!
しかし…私はロゼッタをさらに独り占めしたい!
「ロゼッタ!早急に君の家族に会いたい」
「ハラルト特務!」
「お、おい。ハラルト?一体どうしたんだ?
君は本当にハラルトか?」
こうしてはいられない。
所長の話など、どうでもよすぎて耳に入る
はずもなかった。




