22.恋の病
翌日、なんとハラルト特務が体調不良で
休まれた。
彼は上級研究室でも超優秀な研究員だ。
その上、あれだけ無理な働き方をしていても、
体を壊したことなど一度もない、すごい人だった。
「一体、何があったんだ?
こうなる事を心配して、エミリーとの婚約を
勧めたのに…」
ほぼ専属のように働くロゼッタから、なにか情報を
得ようとしたのか、今わたしは所長室に呼ばれてい
る。
「ロゼッタ、最近のハラルトの様子、何かおかしい
所は無かったか?」
それは…答えに困る。
おかしいところだらけだ。
「あ…はい。少し思い悩んでいる様子でした…」
「な、なに?仕事が負担だったのか?」
「それはわかりませんが…」
ロゼッタから、『嫉妬』だとは言えない。
「熱を出したらしいが…少し様子を見に行って
くれないか?それで、今後の希望があれは、
遠慮なく申し出るようにと…伝えてほしい」
明らかにハラルト特務の仕事ぶりに頼ってきた
自覚があるように見えた。
けれどいくら所長に頼まれたとはいえ、
彼の住む伯爵邸ヘ向かうには、恋人としては
少し勇気が必要だった。
でも、とても心配だわ。
散々悩んだ挙句、
『私は、ほぼ専属スタッフだから行くべきよ』
と、自分を納得させて仕事帰りに、フェルド伯爵邸へ
向かうことにした。
退社時間が迫ってくると、自然とドキドキしてくる。
王都の中心から少し外れた場所にあるフェルド伯爵邸
は、伯爵家にしては相当大きな屋敷であった。
(立派なお屋敷…緊張するわ……)
門番に声をかけて、用件を伝えると、
「ハラルト様に女性のお客様……はっ…!
すぐに取り次ぎますので…こちらでお待ち
いただけますか?」
門番はすぐに屋敷へ向かった。
門の内側にある、ゆったりとしたベンチで、
しばし待たせてもらうことにした。
門のすぐそば、立派な木がいくつも植えられて
その成長具合から、この屋敷が随分長く
構えていることがわかる。
エントランスに向かって手入れされている
花々も、季節にあったものが都度植変えられて
いるようだ。
屋敷の方に目を向けると、使用人らしき
女性数人がこちらにやや急ぎ足で向かって
いるのが見えた。
椅子からゆっくり立ち上がる。
「もしや…ロゼッタ嬢でいらっしゃいますか?」
先ほどの、門番と一緒に迎えに来てくれたのは
侍女頭かと思われる年配の侍女だった。
「は、はい。そうです」
ロゼッタの返事を聞くと、侍女頭らしき女性は
「すぐに準備を!」
小さくな声で、
後ろに控えていた侍女2名にそう指示を出した。
「ロゼッタ嬢、ようこそお越しくださいました。
こちらに仕えております、クレアと申します。
奥様がお待ちでございますのでどうぞ。」
クレアは深々と頭を下げたのだった。




