2.片思いの現状
初めて補助に入った日。研究に没頭する真剣な眼差
しと、ひたむきな姿にキュンとした。
少し骨ばった細く長い指で、資料をめくる…。
そして、前髪の隙間からみえた、鼻筋の通った美しい
お顔に気づいた時……。
既に恋に落ちていた。
なんて素敵な人!
そこから毎日、彼の研究室から依頼される
仕事を一番にゲットするために、スタッフルームから
目を光らせていたのだ。
彼が扱う研究は、繊細なデータが多く
上級研究員であっても見逃してしまうようなものが
ほとんどだ。
加えて、クセのあるあの性格。
彼の言わんとする所に気付けるように
なりたい!
と、毎日のように難解な仕事と、向き合った。
そんな生活が1年ほどたったある日、
いつも通り資料を、預かり部屋を出ようとしたら
「君、名前は?」
資料からから目も離さず呼び止められた。
「は、はいロゼッタ·ヘートヴィヒです!」
向き直って、ハラルトをみる。
「そうか、ロゼッタか…」
チラリとロゼッタを確認したかと思うと、すぐに
仕事を再開した。それ以来ハラルトは彼女をロゼッタ
と呼ぶようになったのだ。
その時のロゼッタの興奮は、これまでにないものだっ
た。研究以外興味のないハラルト特務が唯一覚えた
スタッフ。
——この喜びは、誰にも奪われたくない!
あれから2年。
変わらない仕事ぶりを続けている。
「——ハラルト特務!今日はそろそろ休憩されては?
ハーブティーを淹れますね!」
彼は休憩もこちらで管理しなければ、
永遠に働いてしまう。
こんな面倒でクセの強い研究員との仕事はごめんだ
と、ロゼッタ以外のスタッフは、特務以外の研究室の
仕事をしている…。
コンコン。
「ハラルト、先日の王宮での説明だが——」
コンラート·ウェイル上級研究員である。
微笑むだけで、女性が見惚れるほどの容姿。
ハラルト特務の目は資料から離れることはない。
「ロゼッタ、ここに来ると必ず君に会うね。」
コンラートは微笑む。
「それで、結果はどうだったんだ?」
ハラルト特務は、仕事の話にしか興味はない。
「——特務。これが王宮からの質問だ。渡しておく
ロゼッタ、またね」
笑顔で手を振ってコンラートは部屋を出た。
「ハラルト特務、お茶が冷めてしまいます。すこし
休憩しませんか?」
ようやく、ロゼッタの方に目を向けた。
「ああ…そうだったな。わかった」
すっと立ち上がりこじんまりとした打ち合わせ
テーブルのほうへと移動する。
あー…スラリと背が高くて、このゆったりと
落ち着いた雰囲気が……!ステキ。
「ん?今日のお茶はいつもと違うような?」
やったわ!気づいてくれた!
ロゼッタの心は跳ね上がる程喜んだが、
嬉しさを必死に隠しながら答えた。
「そうなんです!このところハラルト様がお疲れの様に
感じたので、リラックス効果のあるお茶を選びまし
た!おいしいですか??」
「……そうだな」
ロゼッタの説明を聞いてくれたか分からないが
一滴も残さす飲んでくれた。
「ふうっ」
飲み切ると彼ははすぐに、仕事に取り掛かる。
ロゼッタは毎日、彼のためにお茶を淹れる。
しかし、研究員のためにお茶をいれているのも
ロゼッタだけだということを、彼は気付いても
いない。




