19.変化
その後数日は、なんとかいつも通りに仕事を
こなしていたけれど、みんな興味津々なようで
ハラルト特務の研究室から出てくる度に、皆から
痛いほどの視線を浴びた。
ちよっと……やりづらいかも。
「あの…ハラルト様。
先日仮眠室に運んで頂いた件がいろいろと
噂になっているようでして……」
基本的に視線を浴びるのは、ロゼッタだけれども。
でも、ハラルト特務は皆に知られてしまうことを
どう考えているのかも知りたかったし、話題の的に
なる事もそらしたかった。
「そ、それで、しばらく他の研究室の補助に入ろうかと
思っているのですが…」
今、モクモクと仕事をしている人にこんな話を
聞いていいのか分からなかった。けれど、
同じ職場なのだから、大切なことだとも思う。
ひと通り話終えたらもう部屋を出ようと思って
いたのに、ピタリとハラルトのペンを持つ手が
止まった。
「なぜ?皆に知られたら、今まで通りではダメなん
だ?」
ハラルト様は、また新たな恋愛の理論にぶつかったよ
うだ。
「私が君を好きで、君が私を好きだということは、
別に誰の迷惑にもならないはずだが?違うのか?」
1+1=2で、1+2=3である。と同じ理論。
流れとはいえ、自分の事を好きだと言ってくれた
ことと、仕事でも強く必要とされたと感じて
幸せから腰が腑抜けのようになって、
「はぁ〜〜〜。」
その場に、ぼうっとへたり込んだ。
「この理論に、問題があるようなら考え直そう
それまで、君は今まで通り私の補助のみするように」
な、なんだろう……。
このぐっ!とくる感じ。
これは独占欲!
そういえば、恋人ごっこのつもりで聞いていたけれ
ど、このごろは資料を届ければ手を取り
「ありがとう、ロゼッタ」と囁かれ…。
ハーブティーを入れたら、「君とたべようと準備して
いた」と、老舗の菓子が出てくる。
研究室から出てくる時は、ロゼッタに笑顔を
向ける…。
それがなんだか、とても自然なのだ。
今はまさに、
憧れの日常。そのものだった。
しかし、彼の愛情がこれほど染み
出してくると、いろいろと問題も出てくる
のだった。




