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仕事一筋の伯爵様は、愛について研究する  作者: シャルru


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15/26

15.本当の恋人

このところロゼッタを悩ませるのは、

 

 幸せな悩み。

 

 正確にはまだ片思いだけれど、叶うはずもなかった

 事が、次々と実現している。そのためか、

 ロゼッタの仕事は予定よりもかなり捗っていた。

 

 夕方が来るのが待ち遠しい。

 今度はどんな恋人ごっこを提案しようか。


 などと、浮足立って資料片手に研究室のドアを

 ノックした。


 コンコン。

「ハラルト特務資料を……」

 溢れんばかりの笑顔を引っさげて

 入室しようと半歩踏み入れた所で。

 

 ……これはまずい。と本能的に察知した。

 

 いつもの通りキチンと席についていたハラルト特務

 だけど…その表情は苛立ちを通り越した、苦悶に満

 ちた顔だったからだ。


 それでもステキ!

 

 苦しそうな表情なのに、そんな顔さえ胸が締めつけら

 れるほど素敵だと思ってしまう。

  

 はっ!でも、こんなときに、

『今日も頑張ったねって、頭撫でてください』

 

 なんて…とても言えない!


 一人百面相を披露しそうになり、慌てて

 出来上がった資料をハラルト特務の目の前に

 そおっと置く。


 さらに気配までも消して、

 頭を下げ、退出しようとした時。


 恐ろしく静かな研究室に、ハラルト様のステキな

 低い声が響いた。


「……ロゼッタ。データが合わない」


 え?

このところ調子が良いと思っていた仕事の進捗状況。

しかしミスがあったのでは意味がない。

 

「すみませんっ。し、資料に間違いがありましたか?」

 このところ恋人ごっこで浮かれていたから…。


 ハラルト様にとって何よりも大切な仕事の足を

 引っ張ってしまった!

 肩に力が入り一気に冷たい汗が背中を伝う。


 ところが……。

  

「そっちじゃない」

「はい?」


 他にロゼッタが提出したデータとはなんだろう?

 ポカンと立ち尽くしていると、


「さっき君は、恋人にしたくなる事として、

 私の頬にキスをしたが…

 以前、仮眠室で君は私の頬にキスをした。

 しかし…あの頃はまだ、恋人ごっこをして過ごしていな

 かったはずだ。データと行動が合わない…。

 しかし…好意的な行動だということは、一致している」


 研究発表を披露するかのように、事実だけを

 独り言の様につらつらと述べる……。


 あわわわわ。

 仮眠室! あの時ハラルト特務は起きていたの?!

 

 心臓が爆破しそうなほどの威力。

 

 パニックでロゼッタはおかしなことを口走る

「あ、あれは…想いを伝える事もできなくて…

 でも大好きで…それで…それで…」

 

 しどろもどろになりながらも、

 なんとかハラルト特務に説明しようとする。

 

「ほう。そうだとしたら、先ほど君は恋人だけの

 行動ではないことを、私に教えたということだな。

 訂正しておくよ。」


——訂正…。


 彼にとって、多少納得の得られた回答だったようだ。


「——す、すみませんでした…。眠っているときに…」

 ロゼッタは仮眠室での事をしっかりと謝った。

 が……。

 

「別に構わない。……嫌ではなかったから」

 

 ん?

 今なんていった?

 

「あの…それはどういう?」

 ロゼッタは、その辺を詳しく聞きたかった。


 じいっと見つめて、答えを待つ。

 

「君から頬にキスをされても、不快だとは思わなかっ

 た。」

 考察の事実だけを淡々と述べる。

 

「だから私は、自分も君を好きになれる可能性があると

 考えた。」

 最大の謎であった、エミリーではなくロゼッタを

 選んだ理由……。

 

 ええーーーー!

 そう言う事だったの?

 

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