14.夢の日常
すごい!夢みたい!
ロゼッタは今、この3年のなかで一番幸せな
日々を過ごしていた。
「ハラルト特務。資料を持って来ましたっ!」
何百回と繰り返したこの言葉も、声が弾む。
「そうか…わかった」
「……。あのっ。資料を届けた時はっ!………ありがとうっ
て、手を握って見つめて下さいっ!」
言った!
これぞ!
ロゼッタが求めていた恋。
それが今、
——残念ながら、実験として叶おうとしている。
そう、あくまでも
ハラルト特務の『気持ちの変化が現れるか』という
実験とその考察のための恋人ごっこ。
「なるほど、恋人達はどうやら触れる回数が
増えるんだな。ところで、君は触れて欲しいと
言うが、触れたいとは思わないのか?」
「え…」
ロゼッタは少し恥ずかしくなった。
ちよっと。いき過ぎたかも…。
「あ、私も触れたいですが…まだハラルト特務の
お気持ちが、わからないので勝手に触れては
失礼かと…」
「それでは…正しい答えが出ないな。
恋人として過ごした結果。を知りたいからだ」
ハラルト特務は、データに一部不備があったと
言わんばかりの不満顔だ。
そ、そんな。
ハラルト特務が恋人なら…
私から抱きつきたいし、
キスだってしたい。
でもそれは…
本当の恋人になれた時——だ。
「……じ、じゃあ一番恋人っぽい事を!」
ロゼッタはそう言うと、
資料に、目を向けるハラルトの横に立ち
頬にキスをした。
「……!」
ハラルトが資料をめくる手がピタッと止まる。
「大好きな人には、頬にキスをしたくなります!」
それだけ言って、ロゼッタは急いで
研究室を出たのだった。
「そう言う事か」
ハラルトは真剣な顔をしてポツリと呟いていた。
きゃーーーーー!!
デスクに戻ってからのロゼッタは、
真っ赤だった。
きっと、身体中の水分が汗になっている。
「ロゼッタ。最近なんか変よ?
ボォっとしてたり、ニヤニヤしたり…
ん!まさか!ハラルト様と!」
セシルはいつもカンがいい。
「いっ、言わないで!セシル!」
「えー!ホントに?良かったじゃない」
細かく説明すると面倒なので…
想いが通じそうだ。
とだけ話す事にした。




