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転生したら最悪の領主で破滅寸前の領地を押し付けられたので内政チートで立て直します  作者: レモンティー


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第九十五話 帝国軍を撃破したのに、皇帝が降伏しなかった

帝国首都。

皇宮。

皇帝アウグスト・ヴァルディスは、玉座に座っていた。

その前には、敗戦報告書が積み上げられている。

『白河平原の戦い』

『主力軍敗北』

『ガイゼル将軍、捕虜』

『侵攻作戦、失敗』

皇帝は、静かに報告書を閉じた。

「……そうか」

大臣たちは、誰も口を開かなかった。

やがて、軍務大臣が恐る恐る進言した。

「……陛下」

「何だ」

「王国との停戦を、ご検討いただけないでしょうか」

皇帝は顔を上げた。

「停戦?」

「はい」

軍務大臣は続けた。

「今回の敗北で、帝国軍は大きな損害を受けました」

「……」

「さらに戦争を続ければ、国内経済にも重大な影響が……」

皇帝は、静かに言った。

「ならば、経済を戦争に合わせればよい」

軍務大臣は言葉を失った。


翌日。

帝国全土に、新しい勅令が出された。

『戦時総動員令』

成人男性の追加徴兵。

農産物の強制買い上げ。

鉄鋼生産の軍需優先。

民間輸送の軍用転換。

さらに、商人の在庫にも徴発権が適用された。

帝国は、再び戦争の準備を始めた。

アルフォンス城。

「……皇帝が、総動員令を出した?」

俺は報告書を見て、頭を抱えた。

ミディアが頷いた。

「はい」

「主力軍が負けたばかりだぞ?」

「はい」

「普通は、和平を考えるだろう?」

「普通なら、そうですね」

俺は天井を見上げた。

「……普通じゃないのか」

エリオが地図を広げた。

「帝国には、まだ本土守備軍があります」

ヴァルクも頷いた。

「地方の軍団も、完全には動員されておりません」

「……まだ戦えるのか」

「はい」

ヴァルクは答えた。

「ただし、軍の質は低下しています」

ミディアが続けた。

「問題は、軍事力だけではありません」

「……何だ?」

「帝国経済です」

ミディアは、帝国の交易記録を広げた。

「帝国は、軍需生産を増やしています」

「……ああ」

「ですが、その分、農具や生活用品の生産が減っています」

俺は頷いた。

「……当然だな」

「さらに、農民が徴兵されています」

「……収穫が減る」

「はい」

ミディアは続けた。

「輸送用の馬も軍に取られています」

「……食料が運べなくなる」

「そうです」

俺は帳簿を見た。

農業。

輸送。

工業。

商業。

すべてが、戦争に吸い取られている。

「……これ、長く続けられないだろ」

ミディアは静かに答えた。

「続けられません」

「……ならば、皇帝も分かっているはずだ」

「分かっていても、止められないのかもしれません」

俺は顔を上げた。

「……どういうことだ?」

その瞬間、統治システムが表示された。

【世界統治システム】

《帝国国家運営》

《軍事動員率:上昇》

《民間生産能力:低下》

《食料供給安定度:低下》

《国内不満:上昇》

そして《帝国統治システムとの競合を検知》

俺は目を細めた。

「……競合?」

新しい表示が現れた。

《帝国統治システムの最優先目標》

《帝国領域の拡大》

《中央統制の強化》

《軍事的優位の維持》

俺は黙った。

皇帝は、俺と同じような統治システムを持っている。

だが、目的が違う。

俺のシステムは、領地の生活を改善することで発展してきた。

皇帝のシステムは、領土を拡大し、支配を強化することで発展してきた。

「……なるほどな」

ミディアが尋ねた。

「何か分かりましたか?」

俺は答えた。

「皇帝は、戦争に勝ちたいだけじゃない」

「……?」

「戦争を続けること自体が、統治の中心になっているんだ」

帝国首都。

皇帝は、一人で統治システムを見つめていた。

【帝国統治システム】

《軍事的敗北を検知》

《推奨対応:再動員》

《領土拡張目標:未達成》

皇帝は、静かに呟いた。

「……アルフォンス」

そして、玉座から立ち上がった。

「お前は、国を豊かにすることで人を従わせる」

窓の外には、巨大な帝国首都が広がっていた。

「私は、秩序を与えることで人を従わせる」

皇帝は、静かに笑った。

「どちらが正しいか、決めようではないか」

アルフォンス城。

俺は、帝国の地図を広げた。

「……皇帝を倒すために、帝国へ攻め込むか?」

エリオが尋ねた。

俺は首を振った。

「それは最後の手段だ」

「……では?」

俺は答えた。

「帝国の人間が、戦争を続ける必要はないと思える状況を作る」

ミディアが顔を上げた。

「……経済ですか?」

俺は頷いた。

「そうだ」

そして、静かに言った。

「軍ではなく、暮らしから戦争を終わらせる」

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