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転生したら最悪の領主で破滅寸前の領地を押し付けられたので内政チートで立て直します  作者: レモンティー


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第八十五話 ガイゼルが十万の精鋭を率いてきたので、王都の防衛を諦めることにした

帝国軍十万。

その数字が王宮に伝わった瞬間、軍議室は騒然となった。

「十万だと!」

「バルド軍団を撃破したばかりだぞ!」

「敵には、まだそれほどの兵力が残っているのか!」

レアルは、机の上に広げられた地図を見つめていた。

帝国軍総司令官ガイゼル。

かつて十万の軍を率いて王国へ侵攻し、補給戦によって撤退を余儀なくされた名将。

その男が、再び十万の軍勢を率いて進軍している。

しかも今回は、前回とは違う。

補給路は三本。

後方には大型倉庫。

各軍団には予備物資が備蓄され、渡河設備まで準備されている。

「……本気だな」

レアルが呟いた。

ミディアが頷く。

「帝国軍は、前回の敗北を徹底的に研究しています」

「だろうな」

「こちらの補給妨害策も、ほとんど対策されています」

レアルはため息をついた。

「……嫌な相手だ」

新国王が口を開いた。

「レアル。王都を守れるか?」

レアルは地図を見た。

王都を囲む城壁。

その外側に広がる平原。

帝国軍が十万を展開できる広さがある。

「……王都に立てこもれば、しばらくは守れます」

「では!」

「ですが、勝てません」

会議室が静まり返った。

レアルは続けた。

「王都には大量の住民がいます。敵が包囲すれば、食料も水も不足します」

一人の貴族が立ち上がった。

「城壁があるではないか!」

「城壁は食料を生みません」

「……!」

「十万人を相手に籠城すれば、戦場は王都そのものになります」

レアルは静かに言った。

「それだけは避けたい」

国王が尋ねた。

「……では、どうする?」

レアルは地図の王都から、指をゆっくりと東へ動かした。

「王都の外で決着をつけます」

軍議室。

エリオが立ち上がった。

「帝国軍が王都へ向かう場合、主要な進軍路は三本あります」

地図に三本の線が引かれた。

北部街道。

中央街道。

南部街道。

「ガイゼルは、この三本を使って軍を進めるはずです」

ヴァルクが尋ねた。

「……なぜ分かる?」

「十万の軍を、一本の街道だけで進めることは難しいからです」

ミディアが補足した。

「兵士だけでなく、荷車、馬、補給隊も通ります。一本に集中させれば、行軍速度が大幅に低下します」

レアルは頷いた。

「……つまり、敵は分散して進む」

「はい」

エリオは続けた。

「ですが、決戦の前には必ず集結します」

「……どこで?」

エリオは地図の一点を指さした。

「白河平原です」

そこは、王都の東方に広がる平原だった。

北から流れる白河。

南側の丘陵。

そして、東西を結ぶ三本の街道。

「十万の軍が展開できる場所は、この周辺に限られます」

ヴァルクが腕を組んだ。

「……確かに、騎兵も歩兵も動かしやすい」

エリオは頷いた。

「だから、ガイゼルはここを選ぶでしょう」

レアルは、しばらく考えていた。

そして、ミディアに尋ねた。

「王都の備蓄は?」

「住民向けの食料は十分あります。ただし、十万の敵に包囲されれば、輸送が止まる可能性があります」

「王都から東へ向かう住民の避難路は?」

「確保できます」

レアルは頷いた。

「よし」

そして、軍議室の全員を見渡した。

「王都の城壁に主力を置く計画は中止する」

将軍たちが驚いた。

「……王都の防衛を放棄するのですか!」

「違う」

レアルは答えた。

「王都を戦場にすることを諦めるんだ」

「……?」

「敵が王都へ来る前に、こちらが決戦の場所を作る」

エリオが顔を上げた。

レアルは続けた。

「王都の外側で戦う。住民は避難させる。城壁には最低限の守備兵を残す」

そして、静かに言った。

「ガイゼルを、白河平原へ誘導する」


その夜。

帝国軍本陣。

ガイゼルは、王国軍の配置図を見つめていた。

「……王都の守備兵が減っている?」

副官が頷いた。

「はい。主力が東へ移動しています」

ガイゼルは眉をひそめた。

「……アルフォンスめ」

「王都を放棄するつもりでしょうか?」

「いや」

ガイゼルは首を振った。

「奴が、王都の住民を見捨てるはずがない」

そして、地図を見た。

「……王都の外で戦うつもりか」

副官が尋ねた。

「……どうされますか?」

ガイゼルは静かに笑った。

「望むところだ」

そして、命じた。

「全軍、白河平原へ向かえ」

アルフォンス城。

統治システムに、新しい表示が現れた。

【帝国軍進軍予測】

《主力集結予定地点:白河平原》

《推定兵力:十万》

《王国軍集結可能兵力:約六万》

《正面決戦勝率:低》

レアルは画面を見つめた。

「……六万対十万か」

ミディアが尋ねた。

「どうしますか?」

レアルは、少し笑った。

「正面から戦わなければいい」

エリオが頷いた。

「はい」

そして、地図を指さした。

「敵を十万のまま戦わせなければ、勝機があります」

レアルは笑った。

「……その通りだ」

三人の視線が、白河平原へ集まった。

決戦の準備が、始まった。

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